ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
ケモミミの破壊力は抜群
旭日家 自室
朝。
俺はベッドに横たわったままジト目で見つめてくる紗夜を見ていた。気のせいだろうか。いや気のせいじゃない。なんど自問自答をしたのだろう……そう思いながらもやっぱり思ってしまう。
気のせいじゃないよな?
何度自問自答したのだろう。夢なら早く覚めてほしい。いや…これはこれで……待て待て。冷静に考えるんだ。
「やっぱり……変…よね?」
「ちゃんと頬を引っ張ったか?」
「……痛みは感じたけれど」
やはり現実なのか。それならなぜこんなことが起きている? 目の前に居る紗夜の頭には髪と同じ色の───。
犬耳が生えている。
それだけではない。もれなく尻尾も。
人の心を失くしてしまったと常日頃思う俺だがこれには思わず……可愛いと思った。こういうのは確か…ケモミミというやつか。ネットで見たことがある。
「あまりジロジロ見ないで……」
「いや、いつになったら覚めるんだろうと思ってな。夢だったらどれだけよかったことか」
いろんな意味で。
「今日練習だったよな? どうするんだ?」
「どうもこうも……このままじゃいけないわ」
「いっそのこと堂々としてればいいんじゃないか? 隠してる方が違和感───」
「いい加減布団から出なさい」
被っていた布団を引き剥がされてしまった。こんな大惨事でもしっかりしているんだなとつい感心してしまう。それにしても………紗夜のケモミミは破壊力がありすぎる。いつにも増して見てしまうな。
「あなたは…こういうのが好き……なの?」
「悪い……つい、な。似合ってるから」
そう言ってベッドから起き上がった。背伸びをしつつ、チラッと紗夜を見るとそっぽを向いていた。しかし、尻尾だけは左右に動いている。嬉しい……のか? それとも…恥ずかしいのか?
「どうやってCiRCLEまで行くか」
「いちおう帽子は被ってきたわ。けれど……」
「問題は尻尾か」
耳は帽子でどうにかなるとしてだ。尻尾は……どうしようもないな。上着を着ても隠しきれるかどうか……。
「いっそのことなんたらボールみたいに腰に巻き付けるのはどうだ?」
「いろいろ問題よ」
じゃあどうすれば……。
「ギターケース背負っても見える……よな?」
「後ろは大丈夫そう……ね」
お互い不安しかない。もういっそのこと休んだ方が良いとは思うが、体調が悪いわけではないしそれは……。と、言うよりその状態で行っても他のメンバーが驚くと思う。
「待て、他のメンバーが見たら───」
そこまで言ったところで俺のスマホが鳴った。かけてきた相手はどうやら今井らしい。とりあえず出てみることにした。
嫌な予感しかしない。
『あ、旭日君……』
「どうした?」
『大変なことになっちゃって………絶対笑わない?』
「笑わない……と言いたいが、内容による」
なんだ。さっきからとてもとても嫌な予感がしてならない。
『じ、実は……アタシと友希那に』
「もういいわかった。今日の練習はやめておけ」
『ちょっとまだ何も言ってないじゃん!!』
「あれだろ? 耳と尻尾でも生えたんだろ?」
『ええっ?! なんでわかるの?! 見てるの?! ど、どこ?!」
「落ち着け。面白いことに紗夜も同じ状態だからだ。タイミングよく電話が来たら誰でもわかる」
なんだか紗夜の視線が鋭いんだが………面白いって言ったことにご立腹なんだろう。じゃあなんて表現したらよかった? 非常に残念な状態か?
「あまり予想はしたくないが、おそらくあこと白金もだろうな」
『アタシもそんな気はしてる………』
「いったいどうしたら……」
なるようにしかならないな。
CiRCLE スタジオ
結局予想は当たってしまい、あこと白金にも生えていた。考えていても仕方ないので、危険を承知でどうにかこうにか怪しまれながらCiRCLEにRoseliaが集結した。
そりゃあもうみんなの頭には耳があって、尻尾も生えてる。何が不思議って普通の耳もちゃんとあるんだからな。
「友希那さんちょー似合ってます!」
「そう?」
「はい! リサ姉も紗夜さんもりんりんも、みんな似合ってるっ!!」
落ち込んでいるのは3人だけ。意外と湊が平気なのはなんでなんだろうと思う。逆に今井が落ち込んでいる。こういう時あこと一緒に盛り上がってるイメージだが。
「学校どうしよう……」
「このままでは……」
「行け…ないです……よね」
行ったら大騒ぎになることは間違いない。ここまで落ち込むのは、それも仕方ないことだ。ここに来るまでの間、耳と尻尾が生えている人など1人もいなかったのだから。
「まぁ……なんだ。そう落ち込むな」
規則性はいったいなんなのかはわからない。湊、今井、あこには猫系。紗夜と白金は犬系。……学校の問題か?
「音が結構聞こえるから私は気に入ったわ」
「(友希那は猫好きだからな〜………だから落ち込んでないのかな?)」
「呑気に構えてる場合か? 学校はどうする気だ?」
「行かないわ」
「それはどの類の冗談だ?」
「歌うことに支障がなければいいとは思う。けれど……」
「こうしてないとダメになりそうじゃないですか………?」
俺が悪かった。空元気だったとはつい知らず。
「もう! どうすればいいの?! どうなっちゃうわけ?!」
「今井さん、落ち着いてください……!」
「焦ったっていいことはない」
「旭日君はいいよね! 普通なんだから!」
「男に生えたって誰も嬉しくはないだろう」
「旭日君……その発言はちょっと」
「まずはなぜこうなったか考えよう」
耳生えたくらいで逃げたりはしない。今はどうやったら解決出来るのか考えないとな。
「皆さんなにか心当たりがある方は居ますか?」
「って言われてもな〜」
「寝て起きたらこうなっていたことを考えると、寝ている間に何かされたとしか考えられないわ」
「そうだとしたら……怖い……ですね」
「うん。何されたのかわからないもんね……」
寝ている間の可能性もあるが、それはあまり考えられないな。音もなく侵入することは可能でもなざ無差別ではなくRoseliaを狙ったかだ。意図的な可能性もあるが、そうする理由がわからない。
「突然生えたのはもうどうしようもないが、理由があるなら考えればわかるかもな。例えば何か飲んだり食べたりして突然変異とか」
「そんなファンタジーなことってありますか?」
「あくまで可能性だ。他には……」
「魔法……とか」
「白金さんそれは……」
「もう日現実的なことが起こってる時点で否定は出来ない」
「確かに…そうね」
6人居ても答えはなかなか出ない。事例が事例だからな。無理もない
考え続ける中、イヤホンから真宗のヘルプを求める言葉が聞こえてきた。放っておけるわけもない。一旦この場を後にした。
CiRCLE ロビー
「助かったっす、先輩」
「気にするな。本来は俺が居るべきなんだ」
「そういえば、問題? は解決したんすか?」
「いいや。全然進展なしってところだ」
ロビーで団体のお客さんをさばいた後、そんな会話をしていた。間違っても他のお客さんをRoseliaの居るスタジオに入れるわけにはいかない。間違って案内してしまう可能性もあるしな。
ふと受付の内側の床に置いてあるダンボールが目に入った。
「なんだこのダンボールは」
「俺が来た時からありましたよ? 先輩も知らないんですね」
「まぁな」
どうやらガムテープなどで塞がれていないのを見ると、開いているらしい。
「2人とも、お疲れさまー」
「四十崎さん、お疲れ様です」
「お、お、お……疲れ様ですっ!」
おどおどしてい真宗は置いといてだ。
「四十崎さん。このダンボール知ってますか?」
「ダンボール?」
「これなんですけど」
床から持ち上げてカウンターの上に置いた。中身を確認すると、なにやらラベルの付いていないコーラのようだ。本数は5本。
「あーこれね。昨日こころちゃんのお兄さんが持ってきたやつだよ」
「鋼太さんが? なぜです?」
「こころちゃん達と一緒に来て……ロシアンコーラを作ったからバイト仲間でぜひって」
「あの人は……またくだらないものを作って」
ロシアンコーラってなんだ? ハズレがものすごく不味いんだろうけど。それにしても本数が足りないな。ここにあるのは5本。残り5本はどこに行った?
「本数足りないですよね?」
「それは……昨日Roseliaに匠君が配ってて」
「あの人も勝手なことばかりして」
「で、でも市野木先輩も悪いことをしたって謝っていましたよ?」
「ダメだ。処刑する」
「物騒だな〜」
全く。これだからナンパバカは。バイト仲間でって分けられたものを勝手に他の人に渡すなんて………な?
「まさか……な?」
「どうかしました?」
「スタジオに戻る」
「了解っす」
こんなにも仮説が外れてほしいと思ったことはない。
CiRCLE スタジオ
扉を開けて中に入ると全員の視線が一気に集まる。
「昨日ラベルの付いてないコーラ飲んだ人は手を上げろ」
無言で全員手を上げた。どうやら決まりらしい。
「よかったな。元に戻れるぞ」
「ほ、本当?!」
「嘘だったらどうなるか……わかっているわね?」
「大丈夫だ。今呼ぶから待ってろ」
とりあえず全ての元凶である鋼太さんに電話をかけて、すぐにCiRCLEに来てもらうように頼んだ。
「いや〜まさかRoseliaに耳と尻尾が生える日が来るとは」
そう言ってゲラゲラ1人笑う鋼太さん。俺を含めた6人の冷たい視線が刺さっていることも知らずに。
「笑い事じゃないですよ」
「すまんすまん」
中でも紗夜と湊だけは本当に怒っているんだろう。オーラがすごいというか……。まぁそんことに気づくわけもないのが鋼太さんなんだが。
「えっと……わたし達がもらった……コーラが外れ…だったって……ことでしょうか」
「そそ。ホントにたまたまだと思うけど。今回は運がなかったな」
「も〜変なもの置いて行かないでくださいよ!」
「作ったら試したくなるのが発明家だからな。後悔は微塵もない」
「少しは反省してください」
全くもって反省の様子は伺えない。だが、元に戻す薬は元々作っていたらしいからすぐ戻れるだろう。そこの準備の良さは完璧と言うべきか。
「本当に元に戻れるんですかー?」
「疑っているのか? 宇田川妹よ」
「少しだけ……」
「大丈夫だ。変化する薬と元に戻る薬は既に自分の体で試している。もちろん戻れた」
自分の体で試す。これもまた鋼太さんのすごい所だ。戻れなかったらいったいどうするんだろうか………。
「じゃあグイッといっていって」
疑いの眼差しがある中それでも飲むしかないのが現状。諦めて5人が一斉にコーラを飲んだ。
そして………不思議なことが起こった。5人の体が光ったと思ったらみるみるうちに元の姿に───。
「戻ったー!」
「あこも!」
「わたしも……戻りました」
「耳と尻尾はもうないようです」
4人共元に戻ったか。これで一件落……4人?
「待て……1人戻ってないのがいないか?」
「え? そ、そんなこと……」
なんだか嫌な予感がするんだが。
「みんな急に大きくなってしまったけれど大丈夫かしら?」
下の方から声が聞こえてきた。全員がそこに視線を向ける。
「ゆ、友希那が……」
「猫になってますよ?!」
「これはどういうことですか?!」
「そ、そんなことが………ありえるんですか?!」
「焦るな。ただ単に猫に………」
なるのか? 普通。ならないよな。
「あれ? 元に戻るやつじゃなくて、さらに成長させるやつだったのかな?」
「鋼太さん……」
結局、湊はちゃんと戻れたがしばらく5人は……いや、俺も含めてコーラを飲むことが出来なかったのは言うまでもない。
明るい話が好きという意見が多かったので前々から書いていた非日常の方を投稿してみました。
こっちの方はちょっとぶっ飛んだことを書いていこうと思います。