ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
今回はCiRCLE回です。いろんな登場人物が居るので少し覚えるのに苦労するかと思いますが、少しずつ覚えてもらえると嬉しいです!
日常回残すはあと4話です。
それではどうぞ。
第6話 CiRCLE
今日は世間で言う土曜日。高校生である俺は特に部活をやっている訳ではないので休みだ。CiRCLEでのバイトも今日はシフトが入っていない。
何もない日は寝ていたい時間まで基本寝ているんだがな。今日だけはちょっと違った。
寝癖のある頭をぽりぽりかきながら、着信音で眠りから呼び覚ましたスマホを耳に当てる。
「どうした……?」
「お休み中のところ……げほっ、げほっ! すいません….」
電話の相手はバイト先に最近入った
「不甲斐ないばかりに…げほっ。風邪を引いてしまいました……」
「それは災難だったな。お大事に。じゃあ」
「ちょっと待ってください! げほっ、げほっ!!」
わかってる。どんな要件かなんてわかってるさ。バイトを代わってほしいんだろう。だが他にもバイトを代わってくれる人はいくらでも居る。土曜日くらい休んでも。な?
なぜ代わる代わらないの話が出てくるのかって? 鈴音は優秀すぎてな。仕事をスポンジのように覚えていき、なんと即戦力へ。驚きだろ?
「私自身もバイトに穴を開けたくは……げほっ、げほっ! ないんですけど…お母様が許してくれなくて」
「だろうな。熱がある中、バイト行けなんて基本言わないだろう」
「いえ! 私は40度の熱があろうとも、頭が割れそうな頭痛でも行きます!!」
うるさいんだよなー……。
大きい声にすぐに耳から遠ざけ、頃合いを見てまた近づける。
「熱でバカになったか?」
よっぽど重症なんだろうな。それとも本音なのか。まぁどっちにしろ俺に電話をかけてきている時点で察したよ。涼子は外せない用事があるんだろうな。でなければもう解決している。
優秀と言ってもまだ居ても居なくても大丈夫なようにシフトは組まれて……。
『そういえばまりなさんが、今回のシフトは最低限の人数しか入れられなかったって言ってたよ』
『じゃあ1人抜けるのも苦しいな。だってさ旭日』
それにこういう時は大抵グループのメッセージに来るんだが。どうやらそういうことらしい。シフトを決めているのはオーナーだから、今回はやってくれたみたいだ。
「とりあえず休んで風邪を治せ。いいな?」
「この恩は必ず……」
「返さなくていい。真宗と喧嘩さえしなければ」
「あ、それは無理な話です」
なんなのコイツ? 真宗と喧嘩するのが趣味と言わんばかりに喧嘩しようとするな。困るのは俺たちなんだが……。
いつまでもグダるわけにもいかない。行かないという選択肢は用意されてないし。
通話を終了し、急いでバイトに行く準備を進める。こういう時ほどバイクが便利と思ったことはない。
CiRCLE。ロビー。
準備してから30分後。我ながら早く来れたと思う。制服ちゃんと着れてないが。こんな状態で紗夜に見られればお小言をもらうことこの上なし。そんなことを言っていると本当に現れそうだからやめておこう。
シャツのボタンを締めながらロビーに来ると、ちょうど個人練習にでも来たのか紗夜と受付をする
「夕? 今日もバイトなの?」
神は俺を見捨てた。
「まぁ…そんなところだ」
絶対指摘してくるだろうな。名札付けてないし。ポケットだし。無線機と繋がってるイヤホンは首にかけてるし。
「身だしなみくらいちゃんとしなさい」
「まぁまぁ。夕君代わりで急いで来てくれたから多めに見てあげて」
「……そういうことなら」
四十崎さんのおかげで助かった。まぁ俺自身が気をつければ言われることじゃないんだがな。てっきり誰も居ないと思って。
受付を済ませた紗夜はスタジオへと入っていった。
「ありがとうございます」
「気にしないで。急な呼び出しだったんだから。……でも今回は運悪かったね。たまたま最低限しか人居ない時で」
「本当ですよ」
この人は
美人でよくお茶を誘われるらしいが、今のところ恋愛には微塵も興味ないためほぼ断っている。無類の猫好きで猫カフェには一緒に行くらしいが、猫としか戯れていない。将来の夢は猫をたくさん飼える所に住むことらしい。その為にCiRCLEでバイトをしている。
「こういう貧乏くじを引くのはいつも夕君だね」
「まぁ仕方ないです。市野木さんなんて適当な理由つけて来ないでしょう?」
「確かに」
女の人を見つけるとところ構わずナンパする。もはやそれが口癖なのでは? と思う程に。大抵「ごめんなさい」されて終わりだがな。だが、この人のすごいところはめげないところだ。
ちなみにさっき電話かけてきたのは鈴音ユキ。俺と同じ高校の後輩。涼子をこよなく慕うロシア人と日本人のハーフ。長い銀髪を後ろの低い位置でまとめている人。
容姿端麗、文武両道。はっきりとした物言いをする。特徴はたくさんあるがなによりも……もう1人の後輩の柏崎真宗とよく意見が合わず口喧嘩をする。あとは風邪を引くとバカになる。
真宗に関しては午後に来るみたいだから、話はまたその時にするか。
涼子に関してだが、とても気がきくいい人だな。セミロングの黒い髪をいつもポニーテールにしている人。
さりげないフォローが得意で、いつも助けられている。機材が好きでこのバイトを始めたそうだ。元々バスケ部のバリバリの運動部。よく智樹と連れ回されてた。
CiRCLEにはユニークな人が集まっている。というかユニークな人しか居ないのでは? と思うほどに。
身だしなみを整え終わると同時に後ろの方から声が聞こえてきた。
「あ、夕君。今日は突然ごめんね」
振り返るとやはりまりなさんのようだ。
「慣れてるので大丈夫ですよ」
「そう言ってくれるとありがたいよ〜……」
本当に申し訳なさそうに言うまりなさん。別にこの人が気にすることではないんだ。俺よりもバイト歴長いのに自ら出てこない人たちが主に悪い。
この人は月島まりなさん。CiRCLEのスタッフの人で黒髪のショートヘアーの人。気さくで優しい人で、怒ったところを見たことがない。それといつも忙しそうにしていて、見てるこっちが心配になるレベル。この人の手だけは煩わしてはいけない。
「李乃ちゃん。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい、わかりました。夕君あとお願いね」
「了解」
さてと今日もマイペースに仕事しますかね。
スタジオの方へと行ってしまった2人を見送り、ロビーでお客さんが来るまでぼーっとすることにした。
受付、掃除をしてはぼーっとしてを繰り返しているとグループメッセージにお見舞いメッセージが飛び交った。だいたいお大事になのに1人だけ『早く治してお茶行こう』とか息を吐くようにナンパするやつとか居るからな。ちなみにこのグループはバイトメンバーだけのやつだ。スタッフさん込みのはまた別にある。
賑わうカフェを外から眺めていると、早速同じシフトの人が出入りする。ポスター貼り替えたりとか、カフェテリアの掃除とかやることはたくさんあるもんな。
ロビーに来ると話しかけてきた。
「夕君、毎度大変だね」
「電話来たものですから」
「じゃあ俺の時も頼もうかな」
「それは市野木さんに頼んでください」
今話しているのは四十崎さんとは違う大学に通っている大学2年生の人。
普通に仕事してくれるんだが….…時々めんどうだなって思う時があるらしく、気付いたら居ない。つまり仕事を押し付けられる。
「今日は晴れていて休みだから人がたくさんだね」
「繁盛していい感じですね。時給増やしてほしいです」
「それはオーナーに相談しないと」
ついでに海藤さんがたまに仕事押し付けて姿消すんですって言ってやろうかな。まぁ真宗や鈴音ほど大変じゃないからまだいいか。市野木さんよりは遥かにマシだ。
それと今オーナーという単語が出てきたが、この人もまた忙しい人なのかあまり姿を見かけない。実質CiRCLEの代表はまりなさんだ。イベントとかでも主体になって動いているし。
会話をしているとスタジオから3人お客さんが出てきた。ちょうど終わりの時間らしい。
「俺が清掃に行くよ」
「……お願いします」
俺的には掃除の方がいいんだが。まぁ仕方ない。会計とかだけ済ませてあとは終わりだろうしな。
2人はフライヤーやチラシが貼ってある方へ。1人が受付に来た。
「明日って空いてないですよね?」
「そうですね。2日後の16時から18時までは空いてますよ?」
「じゃあその日にお願いします」
「かしこまりました。ではお待ちしてます」
次回の受付を済ませて、お客さんがCiRCLEを出て行くのを見送ってから気を抜く。
あの3人は高校生だから平日だと夕方がいいって話だ。昼間は大学生とかが多めな印象だ。あとは個人的に練習に来る主婦の人とか。まぁガラガラの時もある。
こういう時は楽でいいんだがな。
なんてのも束の間。5分くらい経った頃にまりなさんから仕事を頼まれたみたいで結局俺がスタジオの清掃をした。どっちもやる羽目になるとは……。
気づけば1時間経っていた。お客さんというか予約の電話とかがそこそこあったし、やることもまあまああったからな。あっという間だ。
ロビーで次回CiRCLEにて行われるイベントの内容を見ていると扉が開いた。お客さんではなく、バイトの人だ。
「あら、旭日さん。ごきげんよう」
「お疲れ。今日は真面目に仕事してるんだな」
「いつもしてますわよ?」
嘘つけ。ニコニコ笑顔ですぐ嘘つくなコイツは。
この上品な話し方をする子は
普段はあんまり仕事しないお嬢様なんだが。なぜそれでも許されるかって? それは早乙女があの弦巻財閥に並ぶ
「休憩か?」
「はい。それよりも鈴音さんは大丈夫なのでしょうか…?」
「大丈夫だろ。電話でも元気にしてたぞ?」
「それならいいのですが」
ここでうっかり大丈夫じゃなさそうだった。なんて言ったら鈴音が可哀想になってしまう。かかりつけの医者をたくさん引き連れて鈴音家へ突撃してしまうから。
いい意味でも悪い意味でもこの子はぶっ飛んでる。海藤さんと同じように忙しい時はちゃんと働いてくれているし。
「とろころで旭日さん。BLとはなんでしょうか」
早乙女はいきなりぶち込んでくる。
….…箱入り娘な感じしないのに、実は箱入り娘でしたという早乙女の質問。
そう。早乙女麗華という人間は箱入り娘なのだ。だが、世間でよく見る清楚な雰囲気で、子供はキスしたら出来るみたいな感じの子ではない。隙あらばお客さんとおしゃべり(本人は世間勉強といいはる)をするわ、こうして気になったことをすぐストレートに聞いてくる。見た目とはまた違った印象だ。
そして聞いてきたことに対する答え方によっては……な? 殺されかねん。
「そうだな。まずは言葉のなりたちから説明しようか」
「いえ…意味を知りたいだけなので、言葉のなりたちは結構ですわ」
「そうか? どこから話すか」
俺の知っている(以前クラスの女子になぜか巻き込まれた際に得た情報)ことを語り始めた。
BLとはboys' loveの略称。男性キャラクター同士の恋愛模様や性的な表現を含む関係性を描いた作品ジャンルで主に女性が描いているらしい。読者層は女の人が多い。
「まぁ…男性同士の恋愛などをそのように呼ぶのですね」
「そうだな。1つ言っておくが、全部受け売りだということは忘れるな。頼むから」
「わかりました。間違っても旭日さんから詳しく聞いたとおっしゃるな。ということですわね」
そうなんだが….…。こう、もう少し言い方を考えてくれないだろうか。なにも俺の名前を出す必要性はないわけで。
ちなみにだが、どこからともなくお付きの人が現れる時があるから注意だ。場合によって………な?
時は過ぎて午後。気づけば午前中が終わっているという素晴らしい時間の過ぎ方だ。ということは早乙女と海藤さんに代わって真宗と萩野が入るってことか。メンバーの入れ替えだ。多少は楽になるかなってぐらいか……。
その前に休憩行くとするとしよう。
ロビーを後にして、事務所の方へと訪れた。
「お疲れ。急な呼び出しに応じてくれてありがとう」
ちょうど
「いえ。今度都合悪い時に鈴音に代わってもらうので」
「それがいい」
この人はバイトリーダーの
「旭日、すまないが見てもらえるか? 壊れてしまったようだ」
そう言って渡してきたのは無線機。
「………充電ないだけですね。代わりのやつ使ってください」
「そうか。すまない」
そしてこの人はすごい。CiRCLEでバイトをしているのにも関わらず機械音痴。機材の操作は一切出来ない。未だにガラケーで、メールがまともに打てない。電話は出来るんだけどな……。それを含めても周りの状況をよく見ていて、指示が的確だ。機械以外は完璧。
「君は本当に笑わないんだな。友達には笑われたよ」
「人それぞれですから。天堂さんの場合はおそらくギャップかと」
「ギャップか。私はなんでも出来そうなイメージとよく言われる」
だいたい合ってるよな。そこが男の人に受けるかどうかはわからない。少なくとも俺は機械いじりが出来ないと無理というのはないな。スマホで連絡取れれば。
天堂さんのとの会話を終え、俺はそのまま休憩へと入った。
CiRCLE ロビー。
「はいもう1回!」
「か、勘弁してくださいよ〜」
休憩から戻ると、なにやら
「あ! 夕先輩助けてください!」
「こらー! すぐ旭日君に頼らない!」
「えぇ〜……萩野先輩のお、鬼!」
そう言うと俺の所まで走ってきて後ろに隠れる。これはこれは面倒な現場を目撃してしまったようだな。
紹介しよう。今、後ろに隠れているのが
真宗は軽い女性恐怖症らしい。なんでも環境がそうさせてしまったとか。父親は単身赴任。母親、2人の姉、妹との生活を毎日送っていると前に聞いた。CiRCLEでバイトをしているのはそんな自分を変えたいから。まだ結果という結果は出ていないが。
「旭日君からも何か言ってよー。すぐ頼りに行こうとするんだから」
真宗に怒っているのは同じバイト仲間の
背が低いのがコンプレックスでその話題に触れると怒る。とても頑張り屋だが、から回ってしまうこともしばしば。無類のアイドル好きで、アイドルの話が始まるとめんどい。長い茶髪のストレートの子。
「まだ入ったばっかりだし仕方ない。ゆっくりで俺は良いと思う」
「ん〜旭日君がそう言うなら」
「いろいろ教えたい気持ちはわかるが、真宗は女の人が苦手だから余計にな」
「でもユキちゃんとは話せるじゃん」
それはそうなんだよな。なぜか真宗は同時期に入った鈴音とは話せる。……これにもいろいろわけがあってだな。
簡潔に説明するとだ。2人のバイト初日。俺と涼子の2人で面倒を見ることになり。いろいろ教えていくうちに鈴音が真宗に対して煽り的なことを言ったら、口喧嘩に発展。それ以来緊張よりも嫌いという感情がどうやら先に来るようになった。
「あれは話しているというより喧嘩してるって言った方が正しいだろ」
「た、確かに……」
「まぁ真宗。萩野もいろいろ教えてあげたいみたいだし、話くらいは聞いてみろ。これも練習だ」
「わ、わかりました。夕先輩がそう言うなら頑張ります!」
返事だけはいいんだよな……言い方は悪いが。でも仕事は少しずつ覚えてきてはいるから大丈夫だろう。
真宗を萩野に任せ、恐らく誰もしていないであろうトイレの清掃へと向かった。
中に入ってチェックシートを確認すると案の定まだ誰も手をつけていないようだ。
「さて、やるか」
掃除用具が入っている扉を開け、用具を取り出し、清掃を始めた。
今思えばもう戦力として数えられている鈴音は正直すごいと思う。あっという間に仕事覚えるし。真面目だし。だからこそ、真宗は焦っているのだろう。自分も早く覚えないとって。
焦る必要なんて全然ないと思う。覚える速度なんて人それぞれだし。俺なんて覚えようとしなければ何一つ頭の中に入ってこない。もちろん授業だってそうだ。本当はダメだからな? でも興味ないことって覚えられないよなっていう言い訳。
音楽関係は母さんの影響で興味があった。バンドのこともたくさん聞いたし、楽器のことも。やっぱり軽音部の顧問だったからか、知識はかなり持っていた。それをお酒片手に楽しそうに語るもんだから俺まで覚えてしまったわけだ。
本当。楽しそうだったよ。
この先。CiRCLEという場所でいろんな波乱が待ち受けていることを。俺はまだ知らない。
後ほどキャラクター紹介を出したいと思うので、暇な時間見てもらえると嬉しいです。
さて、今回たくさんのユニークなキャラが出てきました。これからあいだあいだにバイトメンバーとの日常を挟んでいくので、よろしくお願いします。主にはだべるだけですが……。
次回はやっとRoseliaのメンバーの1人が登場し、さらにRoseliaバンドストーリー1話の部分も始まります。
高評価、お気に入り登録待ってます。
それではまた次回。
2022/1/5 追記
キャラクター紹介を出したので、6話までで登場したキャラの大まかなことはわかります。
好きなキャラ等出来てくれれば作者は嬉しい限りです。