ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
やっと7話ですね笑
日常編終わったら週2回投稿にするか考えてみます。
今回もいろんなキャラが出てきます。
それではどうぞ
第7話 変わりゆく日常
あれからというものの。何ら変わらない毎日を過ごしている。なぜ何も変わらないと言い切れるかって? そんなの簡単なことさ。
「旭日先輩、ごちそうさまです!」
「ひまりちゃん、旭日先輩に奢ってもらい過ぎだよ〜」
「それに食べすぎ」
放課後こうして羽沢珈琲店に居るんだからな。今日はプラス1名居る。ショートカットで赤メッシュが入っているクールな子、
「先輩も甘やかしすぎです」
「そう言うな美竹。俺は上原に自業自得という言葉を教えてやりたいだけだ」
「なるほど」
そこを理解されると色々誤解を招くからやめてほしいんだが? まぁ可愛い後輩のためにただケーキを奢っているだけだ。他意はない。……それでも奢りすぎか?
「いつもダイエットダイエットって言ってるんだから少しは控えなよ」
「わかってるよ〜」
そう言いながらも美味しそうにケーキを頬張る上原。本当に体重気にしてる女子か? ふと考えると日菜と紗夜はジャンクフード類が好きで食べてるのをよく見るな。なぜあの2人は体重を気にしない? 世の中には不思議なことがあるもんだな。
気にしたら負けだと思いコーヒーを一口飲んだ。……美味い。
「よくブラックのコーヒー飲めますね」
「美竹は苦いの苦手か?」
「ビターチョコとかなら少しだけ平気です…」
ブラック好きな人はあまり多いとは言えないな。苦すぎるってのが1番の理由か。飲んで慣れれば少しは変わると思うんだけどな。なかなか厳しいものがあるか。
「今日は宇田川姉待ちか?」
「巴待ちなのもありますけど、スタジオが時間まで空いてなくて」
「そういうことか」
バンドの練習となると場所は大切だよな。家がデカけりゃいいが、普通の家だとまず無理か。ここら辺はライブハウスなるものが近い所にあるらしいからいいみたいだが。主に紗夜と羽沢たちの情報だ。
コーヒーを飲みながら羽沢たちの雑談を聞いていると、テーブルに置いてある俺のスマホが震えた。通知欄に紗夜の名前。内容は次のライブのチケットの件らしい。
「幼なじみさんからですか?」
「まぁな」
スマホを手に取り返事を返すべくロックを解除した。昔の紗夜は聞きたいことがあると敬語で聞いてきたっけな。メッセージなのに。今はストレートにタメで話してくれるからありがたい。その方が話しやすいしな。
『今週土曜日のライブの件なのだけれど。チケットの取り置きしてもらえる?』
『もちろん。名前送っといてくれ』とだけ返してスマホを閉じてテーブルの上に置いた。今度は通知オフにして。
「旭日先輩ってパソコンめちゃめちゃ得意でしたよね?」
「なんだそのトゲのある言い方は」
「そう意味じゃないですよ〜」
本気で言ってるわけじゃないんだけどな。なぜそんなに苦笑いを浮かべる。さては……何かやましいことがあるな上原よ。
「実はポスター作ってほしくて」
「ポスターか。出来ないこともない」
「本当ですか?! じゃあ───」
喜びの声をあげようとする上原の言葉を遮るように俺は言った。
「待て待て。なんでポスターなんだ?」
「ライブにもっとお客さん来てほしいな〜って話してて、宣伝のために!」
なるほどな。それでポスター。まぁ悪くない考えなんだけど。
「作ったものにアドバイスはいいけど、1から作るのは悪いが断る」
「えぇ〜。ケチですね〜」
ブーイングがすごいな。主に1人だけ。
「自分達でまずは作った方が自分達らしさが出るだろ?」
「確かに。あたし達らしさ……か」
同意してくれたのは美竹だけか。1から作るのは難しいところがある。実際自分達で作ってきてお店に置いてくださいってお願いしに来るバンドも少なくないからな。宣伝って結構大事だし。
「て、ことだから。まずは頑張れ」
「もう少し考えてみます」
決して俺がやるのがめんどうとかそう言う話ではないからな。あくまでも自分達でやった方が今後の役にとかも立つだろうしって話だ。いずれは1から企画して単独ライブとか……な。
別の日の放課後。
今日はなにをするか。
そんなことを考えながらだらだらと帰り支度をする。バイトもない。部活はやってない。毎日羽沢珈琲店に行くのもどうかと思う。いや行ってもいいんだが、もっと他にやるべきことがあるのでは? と思ってしまう。
「帰らないの?」
「涼子か。放課後なにしようかなって」
「羽沢珈琲店は行かないの?」
「昨日行ったしなー」
「昨日も行ったんだね……」
2日続けて行くのはリスクが生じる。モカが居ると、飛ぶように金がなくなる。つい美味しそうにケーキを食べるもんだからついつい奢ってしまう。上原は……餌付け? 的な。結局は金がかかるということだ。カフェのケーキやコーヒーは美味いが、それだけお金がかかってしまう。
「今度の花フェスどうするの?」
「出る出る〜。今練習してるよ!」
「本当?! 絶対見るから頑張ってね!」
さて……どうしたものか。
「今年の花フェスも盛り上がりそうだね」
「そうだな。涼子も出るんだろ?」
「うん。花女の友達とね」
花高の伝統? というのかはわからんが、毎年1年生歓迎会の名目も兼ねて開かれる行事がある。まぁこの話はまた今度しよう。まだまだ先の話だ。
「とりあえず。俺は帰る」
「うん。また明日ね」
「また明日」
涼子は何か用事があるのだろう。帰り支度を終えた俺はその場で別れて、学校を後にした。
この時間帯はどうも羽丘の生徒が多いな。近くに校舎があるから必然的に多くもなるか。日菜に会えばどっか適当に寄り道して帰ることになる。もちろんバイトがなければ。会う時間帯が早いと高確率で遊びにどこか行こうと言い出すからな。
歩いていると見知りかけている茶髪の長い髪と知らない白髪の長い髪が見えた。どちらも羽丘の生徒。スカートの色からして日菜と同級生。羽丘はスカートの色で学年がわかるんだ。2年は青。1年が緑。3年は茶色。
特にかかわりはないからスルーだな。この時一瞬見えた顔に見覚えがあったのは気のせいだろうか。あの髪色と顔どこかで……。
曲がり角を緩やかに曲がっていくと背中まで届く見慣れた水色の髪が見えた。確実に紗夜だろう。
「紗夜。今帰りか?」
少し早歩きをして隣まで行って声をかける。
「今日は日菜と一緒じゃないのね」
「そんな毎日一緒に居ないさ」
昔は3人でよく一緒に遊んでいたんだけどな。いつしか2人に減った。俺と日菜。俺と紗夜という別れかたで。
「今日も練習か?」
「ええ。もうすぐライブがあるから」
「今度は上手く出来そうか?」
「……上手くやってみせるわよ」
俺の上手くやれるかは果たしてどうとらえたんだろうか。正直ギターを上手く弾けるかよりも、今度のバンド仲間とは上手くやっていけるかの方が俺は心配だ。何度紗夜だけハブはれただろう。気持ちをわかってくれない奴らに何度文句を言いに行こうと思っただろう。全部紗夜に止められて行けなかったが。
「今度はきっと大丈夫よ」
「……ならいい」
なぜ言えない。そんなの嘘だってわかっているのに。バンド関係の話であまりいい話を聞いたことがないからという判断ではダメなのはわかってる。どうしても紗夜の中に一歩踏み出すことをしようとしてないのは、本当に困った様子を見せないからだろうな。
駅付近まで出るとさすがに人通りが増える。花女の生徒やら羽丘の生徒やらサラリーマンやらで人が溢れかえっている。人を避けながら歩いていると、ふと紗夜の足が止まり後ろに振り返った。それに気づいたのは少し先まで歩いた時。
「紗夜?」
「ごめんなさい。ケース当たってしまいました?」
「あ、全然大丈夫っ!」
「そうですか。では」
どうやら紗夜の背負っているギターケースが紫色のツインテールの子に当たってしまったようだ。特に問題に発展することなく解決したのかすぐに追いついてきた。ってか今の宇多川妹じゃんか。
ふと後ろから聞こえてきたバンドという単語が少し気にはなったが、今は頭の片隅に追いやった。
「大丈夫か?」
「ええ。ケースが当たってしまっただけよ」
「そうか」
ふと辺りを見るとたくさんの人でごった返している。
「今日も人が多いな」
「駅の近くだもの」
2つの女子校の最寄駅だもんな。制服可愛いとかで人気の花女。進学校として有名な羽丘。どっちも偏差値高いんだよな。トップの成績の紗夜と日菜。
「ここでいいわ」
「おう。帰り遅くなるなら連絡しろよ。最近物騒だし」
「ありがとう。でもたまに寝てるじゃない」
「グーの音も出ないこと言うな。努力はする」
紗夜と別れ、とりあえず端の方に移動してスマホを取り出した。通知欄には特に意味がないスタンプ連打の痕跡。あとで智紀はしばくとしてだ。
「「はぁー」」
ふと重なったため息。聞こえてきたのは右の方。
「とは言ったものの……」
今井リサ。日菜と同学年の羽丘の生徒。たまに日菜を送る時声をかけている。日菜がな。……というかさっきすれ違ったな。
「あ。ヒナの幼なじみさん」
「ひと昔前のギャルさん」
「酷〜い。やっぱ見た感じの人っぽい」
「どういう意味だ」
あれか。見た感じ冷たそうな人ってか? 悪いが冷たいんじゃなくてこれが通常運転なんだ。昔から無表情だの、仏頂面だの言われてきたからな。ん? 冷たいを否定出来ていない。
「ねね。この後暇?」
「暇だったとしても君には付き合わないけど?」
「うわ〜。先手取られた〜」
その誘い方だとすぐバレるだろ。どう考えても。
「旭日君って面白いね」
「どこがだ。用がないなら帰らせてもらう」
駅の方へと歩き始めると見事に通路を塞がれてしまう。
「あーちょっとちょっと! コーヒーおごるから少しだけ付き合ってよ」
なん…だと。コーヒーが飲める。
「……仕方ない」
コーヒーが飲めるならここは仕方ないことにするか。決してコーヒーで釣られたわけじゃないからな。ここ重要。
「(本当にコーヒーで釣れた〜。ヒナの言ってた通りだ〜)」
紗夜を送った後は特にやることがなかった俺は今井リサにアクセサリーショップに連れていかれ、散々どれが似合うか聞かれた挙句やっと近くのカフェに来た。ここに来るまでにざっと1時間。よくアクセサリーショップであんなに時間潰せるな。関心だ。
「ごめんね〜。新しく出来たばっかりだったからつい長居しちゃって」
「本当だ。コーヒーがなかったら帰ってたところだ」
なんて冗談でしょー? とか言っていたが割とマジで帰ろうかと思ったぞ。ああいう店には行かないから何がなんだかわからん。紗夜と一緒に初めて楽器店行った以来だな。この気持ちになるのは。あれもわけわからなかった。
「ヒナとはずっと居るの?」
「まぁ……ずっとだな。幼なじみだし」
産まれた時かららしい。詳しくはよくわからん。産まれた時のことなんて覚えてる人は居ないだろ。小さい頃よく3人で遊んだものだ。
「アタシも幼なじみとずっと一緒だから同じだね〜」
「あんたも幼なじみが居るのか?」
「うん。すっごい頑固だけど」
頑固な幼なじみか。俺のところも似たようなものだな。紗夜はああ見えて退かない所がある。妥協がないというかなんというか。悪い所ではないんだ。決して。
「学校じゃ日菜はどんな感じなんだ?」
「気になる?」
「少しは」
なにやらかしてるかわからないしな。俺に迷惑がかかるのはもう慣れてるからいいが、他の人に迷惑がかかってるとなると話が変わる。それにまた誰かにいじめられてるかもしれない。
ふと脳裏に浮かぶのはあの時日菜をぶった奴の憎しみが宿った瞳と悔しそうな表情。
「んーアタシもみかけるだけだからな〜。あ、でもいろんな人と話してるのは見るかな」
「そうか。ならいい」
ひとまずは安心だな。
コーヒーを一口飲むと、カフェオレを飲んだ今井が次の質問を投げかけてきた。
「旭日君は学校でなにしてるの?」
「寝てるかぼーっとしてる」
なんの躊躇いも戸惑いもなく答える。
「ね、寝てるんだ」
「あれは催眠術の一種だろ?」
「うんとは言えないけど、アタシもたまーに違うこと考えちゃうな〜」
苦笑いを浮かべながら話す今井の話はかなり共感出来る。あんなのずっと毎日一日中聞いてられる方が無理なんだ。そんな奴が居るなら俺からすると超人だ。俺よりも存在価値がある。
「やばっ。そろそろ帰らないと」
時間を確認するなり急ぎの様子で言った今井。アクセサリーショップが足を引っ張ったな。
「送るか?」
「大丈夫。旭日君は意外と優しいんだね〜」
「意外とは余計だ」
まだ残っているコーヒーを飲みほし、このお茶代も俺が出そうとしたが見事に今井に断られた。バイトしてるから大丈夫と結構強引に押されてしまったな。まぁしつこくしすぎてもだし仕方ないか。
別れ際に見せた笑顔と「またお茶しよ」の言葉がどうにも頭から離れなかったのはここだけの話だ。なんか負けた気がする。
それに……前にも同じようなことがあった気がする。初めてお茶をしたはずなのに。ただのデジャブか。
───────☆
午後の授業はどうしても眠気に襲われてしまう。船を漕いでいる生徒。なんとか眠気に勝とうと腕をつねったりする生徒。中には突っ伏してしまっている生徒も。窓からのそよ風が心地いいのもあるのだろう。
するとターコイズ色の長い髪の少女は黒板からふと外に視線を向ける。
あの時なら真面目に授業を受けているのかと心配していたが、今はそんな心配をすることはない。そんなバカバカしい心配の方がいくらかマシだと思うのは何故だろうか。
その時───強い風が教室に吹き込んだ。
きっちり書かれたノートのページを何枚もめくった。前髪を押さえながら少女は目を瞑る。
『心配するな……必ず帰ってくるから』
彼の言葉が聞こえた気がした。
直後、いつもカバンにしまっているはずのスマホが机の中で光った。幸いにもマナーモードになっていたらしい。
画面には母親からのメッセージが映し出されている。
メッセージを見た瞬間───涙が溢れて止まらなかった。
ノートにぽたぽたと落ちる涙は止まることを知らない。顔を手で覆い、嗚咽をなんとか堪える。
「──のバカ………」
これは彼が残した当たり前な日常の話。
友達の友達とでも意外と話せてしまう主人公。コミュ力はそこそこある感じですね。作者は無理ですが笑
今回のイベントの話もいつの日かやりたいですね〜。日菜が誰かに教えたりするのは作者も意外でした。あの話をどうしたら上手く書けるか考えるのが楽しいです。
次の季節ネタは恐らくバレンタインになるかと。もしくは書きたくなった話を書くかです。
感想、お気に入り登録待ってます。
それではまた次回。