ボーボボ 異世界転生する
『知るかボケー!!」「ぎゃー!!」
ボーボボキレた!天の助がぶん殴られて吹っ飛んだ。
「なんだこの展開は! 俺はどうなっちまったんだ!?」
ボーボボに首を掴まれ、宙吊りになっている首領パッチとヘッポコ丸が叫ぶ。
「もういいや……とりあえずお前ら全員死ね!」
「えええええ!?」「ひいいい!?」
ボーボボは二人を放り投げると、その前に立ち塞がった。
「覚悟しろ、このクソ野郎ども……」
そして静かに腰を落とし、拳を構え――
「必殺・鼻毛真拳奥義『お尻からビーム』!!」
ズバアアァン!!
「ぶげえええぇ!!」「ギャアアアアア!!」
突如、背後からの攻撃で首領パッチとヘッポコ丸が吹き飛ばされる。
二人が振り返ると、そこには腕組みしたボーボボの姿があった。
「なんだよテメーコラ!」「どこから湧いて出たんだ!」
「…………」
二人の罵声にも答えず、ボーボボはただ佇んでいる。
その異様な雰囲気に気圧されながら、二人は同時に思った。
((こいつ……いつもと違う))
だが次の瞬間、二人は更なる衝撃に襲われることになる。「俺の名はボーボボ……」
「!?」「な……なんだって?」
突然語り出したボーボボに、首領パッチもヘッポコ丸も思わず耳を傾けてしまう。
「三度の飯より鼻くそが好きで、宇宙一の鼻くそマニアだ……」
「おい、なんか始まったぞ」「何言ってんのか全然わかんねえけど……」
「この世に生を受けた時から常に鼻くそを欲している俺は、いつしか鼻くそを食べなければ生きていけない体になってしまったのだ……」
「あの……ちょっと待ってくれないかな? さっきから何言ってんの?」
「俺は自分の運命を呪い、神を呪った……しかしそんな時、俺の前に一人の男が現れたのだ……」
「あ、ああ」「うんうん」
「そいつの名前は田楽マン……奴との出会いが全ての始まりだった……」
「いや、本当になんの話してんだテメーは!」
「奴は言った。俺に力を貸してくれるなら、代わりにお前の夢を叶えてやる、とな……」
「夢だと?」
「そうだ……夢とはすなわち、鼻くそを食べること。そうだろう?」
「……」
「だから俺は願ったのだ。どんな手を使ってもいい、とにかく鼻くそが食いたい!と」
「……」
「すると不思議なことに、俺は鼻くそを食うことができるようになった。俺は感動したよ……これこそが神の思し召しであると」
「……つまり、今の君は神様の力によって鼻くそを食べられるようになったというわけ?」
「その通りだビュティ。俺は今、世界中のあらゆる鼻くそを自由に食べることのできる能力を得たのだ」
「へー、すごいねー」
「それだけではない。この世のありとあらゆる物質を構成する原子の中には鼻くそが紛れ込んでいる。それを取り込むことで、俺達はいかなる物理攻撃も無効化できる無敵の存在になったのだ!」
「おお! それは素晴らしいですね!」
「ああ、おかげで俺はもう負ける気がしないぜ!」「でもボーボボさん。一つだけ気になることがあるんですが」
「なんだ? 言ってみろ」
「鼻くそを食べるために努力するんじゃなくて、鼻くそのための努力をするっておかしくないですか?」
「うるせえ黙れ!」
「ぶぎゃあ!!」
ボーボボに顔面パンチされて、天の助が吹っ飛んだ。「ボーボボ……テメエ、いい加減にしやがれ!」
首領パッチが怒りの形相でボーボボを睨む。
「こんな茶番劇見せられて、はいそうですかなんて言えるか!」
「茶番だと!?」
「ああそうだ、この上なくくだらねー話だ!」
「首領パッチ、テメーは許さねえ!」ボーボボが首領パッチに飛びかかる。
「死ねやボケェ!」
「ふんぬ!」
ボーボボと首領パッチが組み合う。だが、その力は互角――ではなかった。
「ぐお!?」
「どうしたボーボボ? 力が弱くなってるぞ?」
「ば、馬鹿な!?」
首領パッチの言うとおり、ボーボボは先ほどまでの勢いを完全に失っていた。
「どうしたボーボボ? この程度で終わりか?」
「う、うおおおぉ!!」
それでもなお、ボーボボは首領パッチを押し返そうとする。
「無駄だボーボボ。俺達には鼻くその加護がある。お前の攻撃など、一切効かん!」
「何言ってんだ? 鼻くそ食えば元気百倍なのに、なんでテメーは弱ってんだ?」
「それがわからんから困っているのだ!」
「……まあいい、ボーボボ。お前のことは嫌いじゃなかったぜ」
「どういう意味だ!?」
「俺が代わってやるよ」
「なに!?」
「ボーボボ、お前はここで死ぬべき男じゃない。俺の仇を討つため、そして鼻くそのために、ここは俺に任せて先に行け!」
「首領パッチ、貴様……うおおおおおぉ!!」
「待てボーボボ! 一人でどこに行くつもりだ!?」
ボーボボの叫びも空しく、首領パッチは立ち塞がるボーボボを突き飛ばす。
「行くぞビュティ!」
「あ、うん」
ボーボボを置いて、二人は走り出す。
「待ってくれー!」
「……」「……ボーボボ、大丈夫かな?」
「大丈夫だ。アイツは俺より強い。心配するな」
「……うん」
「それより、俺達は俺達のやるべきことをしよう」
「……うん」
「ビュティ、お前は俺が守る。だから安心しろ」
「……うん」
「おい、聞いているのか?」
「……ん? ああ、ごめん。夕飯のこと考えてた」
「……」
「……あのさ、ヘッポコ丸君。やっぱり私……」
「諦めるな!」
「!」
「お前がどんなに不安でも、俺は絶対にお前を見捨てない。だから、信じてくれ」
「……わかった」
「よし、行こう」
「……ねえ、ヘッポコ丸君」
「なんだ?」
「……ありがとう」
「……え?」
「……なんでもない」
ビュティは顔を赤らめて俯いた。
「さあ、まずはどこに行けばいいかな?」
「……」
ビュティは無言で前方を指差す。
「よし、行くぞ」
「ああ、ちょっと待って」
「今度は何だ?」
「……実は、お腹が減っちゃったんだけど」
「そういえば、もう昼時か。どこかで飯を食おう」
「そうだね」
「なにが食いたい?」
「ラーメン!」
「またラーメンか? よく飽きないな」「だって美味しいもん」
「まあいい。俺も丁度、ラーメンが食いたかったところだ」
「やったー! あ、でもお金持ってないよ」
「俺が奢ってやる」
「ホント!?」
「ああ。好きなものを頼め」
「わあ、嬉しいなあ!」
「ふっ、まったく大げさだな」
「えへへー」
ビュティとヘッポコ丸は連れ立って歩き出した。
「……ねえ、ヘッポコ丸君」
「なんだ?」
「……これからどうなるのかな?」
「さあな。だが、なんとかしてみせるさ」
「……そうだね」
ビュティは顔を上げて、空を仰いだ。
「ああ、いい天気だなー!」
「そうだろう。俺が守っているからな!」
「……ん? それってどういうこと?」
「いや、気にするな」
ビュティは首を傾げたが、すぐに気を取り直した。
(まあいいか)
空はどこまでも青く澄み渡っていた。
第三話『天の助の逆襲』完
第四話『首領パッチとボーボボ』に続く
気が向けばまた投稿します