なお、活動は停止してもTwitterでは元気に動いていると思うので、動きを知りたい方はTwitterで「5の名のつくもの」を見て頂ければと思います。
「これが、加持さんが持ってきた例の鍵」
「あぁ。向こうで予備として保管されていた『ネブカドネザルの鍵』だよ。この鍵で人を捨てる代わりに、限りなく高潔で全てを超越した存在となることが可能。さ、君が望んでいたものだ。君の好きなように、自由に使うとよい。私みたいな老いぼれには、持つだけで勿体無い」
「それじゃ、ありがたく使わせてもらうわね」
冬月の執務室の広さに合わない、割と小さな大きさの机の上には現金を詰め詰めするような合金製ケースがあった。更に中にはとってもフワフワ緩衝材が敷き詰められている。フワフワに囲まれているものは、とても気味が悪い注射器のような物だった。よく見ると、人間の体を模したデザインが施されていて割と凝っている。老人と少女の会話を聞いていれば、これの名称である固有名詞がわかる。その名も 『ネブカドネザルの鍵』と。
はて、聞いたことがない名前だ。『ネブカドネザル』とは何か。それ以前に見た目は(辛うじて)注射器なのに、名前は『鍵』となっていた。ううん?と唸らざるを得ないほど難解な代物だ。ただ言えることは、これに安易に触れてしまったはならないことだろう。
「しかし、本当にこれを彼に使うというのか?君が使うのなら理解できるが、彼に使うのは不要だと思うがね」
「確かにシンジはただの少年じゃない。神に選ばれた、人間の中でも特異な存在だからこれは必要ないかも。それでも、念には念を入れよをって言うじゃない。ダメ押しってやつかな。それに、私が使ってもどうしようもないじゃん。私をシキナミシリーズの一体と見誤った、あの愚かな使徒を喰う手筈だから」
「それは、確かにその通りだ。まぁ、君の考えたことだからこれ以上は言わんとしよう。さて、私は私で準備を進める」
ケースを閉めて鍵を閉めてベルトも巻いての丁寧に丁寧を重ねた収納をしてから、アスカは部屋を出ていった。残された部屋にポツンと座っている冬月は何となくで立った。既に仕事は大半終わらせ、やることは裏の準備をすることだけ。その裏仕事も「裏」の文字から分かるように、とてもだが表立ってはできない。コソコソ隠れてやるしかなかった。
「なんだろうな、こういうことを『血は争えない』と言うのかな。親と子は道は違えど、通過する駅は同じ。人を捨て、限りなく神に近い存在…いや違う。神と同等を超えてしまう、圧倒的な存在になろうとしている。まったく、この世はわからん。しかし、ユイ君…本当にこれでいいのか」
老人はガラス越しの外の景色を見て独り言をボソボソ呟いた。その表情は遠くを見ていた。
「え?シンジ君が体調不良?」
「えぇ。学校側から連絡が入ったから、恐らく本当のことでしょ。最近、流行り風邪があるから、誰かから貰ってしまったのかもしれないわね」
NERV本部で仕事をしていたミサトはリツコを経由して、今日は夕方から訓練に来るはずだったシンジが休みであることを知る。学校の行事やプライベートがあっても、原則的にはNERVでの活動が優先となっているのだが。とは言え、パイロットが体調不良となれば、中々そうもいかない。体調がエヴァ戦力に直結する以上、辛い身体に負担をかけることはご法度だ。静養に努めてもらのが一番のことと思われる。
「それに、惣流副司令が看病についてる。生活を共にしているから、彼のことは一番理解しているはずよ」
「そうね。でも、何とか明日には戻れるようにしてもらわないと。使徒はいつ来るか分からないから」
彼には一秒でも早く復帰してもらいたいミサト達だった。
さて、話題の中心である碇シンジ氏は事実として風邪に近しい症状に襲われていた。伝染する危険性が高い咳やクシャミの類はしていないが、38度弱の高熱と強い倦怠感に襲われている。排泄以外で動けないためベッドに寝て、頭には冷え冷えシートを張り、布団と毛布を何重にも包んで全身を暖かくしている。そして、隣には心配そうに彼を見守るアスカがいた。
「『ネブカドネザルの鍵』を服用してから、約2時間でピークに達している。なら不幸中の幸い。これからは熱は下がるし、体も楽になるはず。大丈夫、私が隣にいるわよ」
風邪の発症…ではないようだ。恐ろしく、おぞましいことに、見た目から分かるがいかにも危険でしかない『ネブカドネザルの鍵』を彼に使用したらしい。彼の首筋にはやや大きめの注射痕が残っている。刺すだけで痛そうな注射をして、更に副反応で苦しむことになるとは。なんとまぁだ。
「あ、アスカ」
「はいはい。イマイクカラ」
苦しそうなシンジに呼ばれて、アスカは自分もベッドへ潜りこんだ。あくまでも副反応であって、伝染性は皆無である。よって、別にべったりと密着しても不都合は生じない。むしろ密着したほうが彼を安心させられる。彼と向かい合う様にして寝そべる。
「ちょっと顔を見せてね。瞳孔が開き切って、目は(本体の色の意味で)赤く染まっている。大丈夫、大丈夫。シンジは今、高潔な存在になろうとしているだけ。これを耐えたら、永遠を手に入れられるの。誰にも傷つけられない、誰にも干渉されない、誰にも馬鹿にされない。しかも、何よりも私とずっと一緒にいられるわ」
「はっ、はっ。かっ」
これを耐えた先に栄えある結果が待っているとしても、今の現在進行形における苦しみが大変なのだ。「忍耐」や「我慢」と世間一般ではよく言われるが、そんなことは第三者が自分とは関係ない他人事だから言えることだろう。本人にとっては、もう我慢ならない。シンジはドンピシャでその状態にあって、呼吸がたどたどしくなってきた。これはいけないと間髪を入れないで少女が動いた。
自分で蒔いた種である以上は、自分で収穫しなければならない。
「んっ」
「…」
目にも留まらぬ速さで彼の口を塞いだ。ただ塞いだだけでは空気の取り込みを不可能か著しく困難にしてしまい、真逆の効果を生じさせう。それも考えて彼女は自分が持っている余剰な空気を彼に送り込んだ。
「はぁ…あ、あぁ」
「普段一日に何十回とキスしているから慣れたもんでしょ?こうすれば、落ち着けるから」
「うん、ありがとう。でも、違う意味で落ち着かないや」
呼吸に加えて口調は普通に戻っている。やはり、彼の適応能力は未知数で、且つ予想以上だった。『ネブカドネザルの鍵』はその性質上、極僅かを突き抜ける、絞りに絞られた本当に限られた者しか使えない。その中でも彼は生まれ持った運命の力も相まって、短時間で己のものにしていようとしていた。それでも、アスカの観察にあるように両目は赤く染まり、見た目での異常が見受けられる。
「もう、仕方ないわね…ん」
再び彼女は彼と重なった。今度は空気を送る目的ではなくて、互いに燃え盛る感情が起爆剤になった愛を求める目的だった。互いの口の中を舌が走り回って絡み合う。ここまで行くともう止まらない。暴走機関車となった少年は大爆発する。そのまま両手を彼女に通して、全身を弄り回った。普段の生活では彼女にいい意味でおんぶにだっこな彼だが、こういう時は一転攻勢の鬼だった。彼女を責めに責めて、息継ぎをする暇を与えない程にアスカを貪って食らいつくす。
その後、彼らは半日以上をベッドの上で過ごした。何があったかはご想像にお任せてするが、一応のヒントを出すとしよう。夜になって夕食を食べる時には、アスカの方は疲労困憊だった。ただ、彼の方は元気いっぱいシンジパ〇マンであった。また、夕食を食べた後も2人は濃密な時間を過ごしたのであった。
続く
皆さんが安寧の日々を送られることを、心からお祈り申し上げます。