シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

22 / 48
今回はLAS要素無いです。

※諸々の都合で極めて奇怪な内容となっています
※ご質問を受けましても、ネタバレで答えられない点は答えられません


知ってはならないことを、汝は知りたいか?

老人の目の前の扉が開かれた。箱が高速で昇降する、エレベーターと呼ばれる文明の利器で移動しようしている。中には誰も乗っておらず、空間を独占できよう。仮に乗っていたとしても、大体の職員の者は知っている。また、頻繁に顔を合わせて仕事で話し合う者もいるので、決して気まずくはなかった。それでも、自分1人だけの独占は中々に気分がよろしいことだった。

 

しかし。

 

「私の後頭部に拳銃を押し当てても、何にもならんよ。葛城君」

 

「あなたが素直に答えてくれればいいんです。何度も聞いても、冬月司令は濁すだけでした。ちゃんと答えてくれないから、このような手を使わざるを得なくなりました」

 

誰もいなかったはずなのに、白髪の老人の後ろには女性が立っていた。また、後頭部に自動拳銃を押し当てていた。護身用で用いるには威力が高すぎる代物で、一発で何がとは言わないが吹っ飛ばすことが可能である。

 

「まぁ、いいだろう。して、この私に何を聞きたいのだね?君には広範で且つ強大な権限を与えている。しかも、MAGIを含めたNERV内のデータベースには全てアクセスできるキーもあるんだ。君が知れないことは一切ないだろうに」

 

「いえ、ありました。では、率直にお聞きします。『人類補完計画』とは何でしょうか」

 

「ほう、君は着実に真実へたどり着こうとしているのだね」

 

背中でしか聞こえてないが、この人物の声は先と打って変わって冷えたものだった。順を追って説明すると、確かに葛城ミサトには事実上の指揮官として、広く強い権限が与えられていた。また、各使徒の分析やセカンドインパクトなどの通常であれば手に入れることが絶対に不可能な情報を彼女はワンタッチで手にすることが可能なのだ。高位の幹部級職員の面々でも、特に彼女は優遇されていると言える。

 

そんな彼女でさえ、知れなかったことが幾つかある。彼女の気持ちとしては、全部を隅々まで知り、心に秘めていた謎を解き明かしたかった。単に好奇心旺盛なわけではない。彼女は父親から逃れられない呪縛を背負わされ、その呪縛から逃れる気は無いが、せめて自分の代で清算をしたいと思っている。その清算のためには情報が必要で、謎を解明しなければならない。

 

「『人類補完計画』…懐かしい名だ。その計画は確かに存在していた。なにせ、この私も関わっていた。だから、間違いのない事実だよ」

 

「その言い方ですと…」

 

「そう、今はもう既に存在していない。計画の概要から詳細までの全ては、ある者によって葬り去られた。私以外の関係者共々を」

 

このニュアンスだと、老人は『人類補完計画』に関わっていて、何かしらの役割を担っていたと聞こえた。しかし、それは現在は存在していない。それは自然消滅の類ではなく、何者かの手によって抹消(&抹殺)されたらしい。ミサトは眉間にシワを寄せて、疑念を分かりやすく示すしかなかった。

 

「なぜあなたは生きているのですか」

 

「失礼極まりない文句だが、君の次なる疑問は尤もだから答えるとしよう。私は見逃されたおかげで、こうして生きている。主観的又は客観的見ることを問わずして、私は『人類補完計画』に関係はしていた。だが、私は道具を用意したに過ぎない。過去に私は大学で教鞭を取っていたから、専門知識は相応に有している。その知識を利用して道具を揃えさせられた事実もあった。全てが葬り去られた際に特別で生存を許された」

 

重要なポイントは受け身である点だ。自分は首謀者に操られただけで、老人自身は体よく利用されたお人形だと言った。これが嘘か誠かは不明であるが、信じるしかない。誰かからお目こぼしをしてもらったことも。

 

「そんなあなたがNERVの司令に?」

 

「あぁ、見逃してもらったのは条件付きでね。こうして人類を守り、使徒を殲滅する。全てが終わり次第に完全に解放されるはずと聞いていた。どうやって、私のことを監視しているかは分からん。だから、君達には秘密を抱えてでも、やらねばならん」

 

「そうでしたか。貴重なお話をありがとうございました。今日の所は引き下がるとしましょう」

 

本音は「もっと聞きたい」だが、彼女の思考回路はパンク寸前だった。濁流の如く流れ込んだ奇怪な新情報に対応は送れている。いくら彼女の優秀な能力を以てしても、驚くべき情報の処理には時間を要してしまった。途中階でエレベーターを降りた葛城ミサトは冬月コウゾウから語られたことを反芻する。

 

(人類補完計画は存在していない?そんなことがあり得るというの…じゃぁ、なんで)

 

このNERVで最高位に座り、世界的にも(裏ではあるが)絶大な力を持っている老人が語ったのだ。これ以上に信頼のおける情報はまずない。この者の言葉に信頼性が無いと言うならば、どの情報を信頼できるというのだ。現代の生き証人なのだぞ。

現代で60歳以上を生きられている者は案外限られていた。昔は長寿で有名だった日本も、大災厄によって破壊しつくされた。日本に限らず、世界中で大災厄とその後の汚染や障害によって、長生きは珍しいことになってしまった。もちろん、珍しいと言っても、最近は要塞都市の建造やエヴァの活躍によって、人々は比較的でも安全に暮らせるようになる。そう遠くない未来では、長生きは当たり前になるだろう。

 

本当にそうだろうか。

 

それも、希望的リフレインとなろうか。

 

~NERV本部最深部~

 

「やれやれ、葛城ミサトか。彼女の父である葛城博士が遺した計画を世界を創造する者らで改編してしまったことについては、謝らねばならんだろう。そうだな?リリスよ」

 

冬月の前には十字架で磔にされた巨大な存在があった。言わずもがな、第二の使徒リリスである。これをNERVは命を懸けて守っていて、扱いを一歩誤れば終末のラグナロク又は終末のインパクトが発生してしまう。いかなる手段を問わない。使徒を殲滅し、リリスを守る。

 

そのためのNERV。

 

そのための第三新東京市。

 

そのための子供たち。

 

そのためのエヴァ。

 

「碇の奴は己をアダム、ユイ君をイブとして世界を創りなおそうとしていたが、奴は恐ろしい間違いをしていた。いった、誰がお前をアダムと言ったのだね」

 

キリッとした表情で普段見せない冷酷な視線でリリスを貫いた。

 

「アダムはシンジ君。イブはアスカ君。レイ君は2人の願いを執行する者。この図式は永遠に変わることはない。不変の真理を受け入れず、見誤った末の悲劇。いや、喜劇とも言えるかもしれん。まぁどちらにせよ、私は自らの願いを彼らの願いに託すだけ。それが、老いた爺に許されたこと」

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。