シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

34 / 48
『希望の少年は災厄の象徴へ』に入りきらなかった部分を番外編として置いておきます。




新劇場版:Q
章間 空白は本当にあったのか


「ねぇ、シンジ」

 

「なに?」

 

「ずっとこうしてたいね」

 

「そうだね。だけど、戻らなくちゃいけない。14年も楽しんだら、ひとまず、十分じゃないかな」

 

赤い海が広がる砂浜に少年と少女の姿があった。白シャツのボタンを外し、Tシャツは破れて、ズボンもチャックが開いている。そんな学生服姿の少年がいる。一方で所々がビリビリに破れたプラグスーツ姿の少女もある。そんな2人は砂浜で押し寄せる波の音に耳を傾けた。先まで行われた純情の跡が砂浜に刻まれている。砂浜の所々は波と違った液体に染められた。

 

「もう14年も経っているのね。レイのおかげで外部世界と繋がれている。レイもいればよかったのに」

 

「綾波が初号機の守護者となることを希望している。そして、僕たちがショックを受けないため、現実世界と仲介者を務めてくれた。綾波には感謝してもし切れない。だから、必ず、僕たちの新世界を創り直さないといけない」

 

少女は少年に身体を預け、遠くを見つめた。彼女の視線の先には2人の親友の頭だけが鎮座している。此方を見つめているが、特段の不気味さや嫌悪感は覚えなかった。むしろ、見守ってくれて安心を覚える。彼女のサラサラとした長髪は撫でられる度に艶を増した。

 

「NEON GENESISか…まだ遠いのね」

 

「簡単にできたら、なんか、面白くないよ」

 

「それもそうね。予想外の介入があって、面白くなってきたもの」

 

この世界が現実世界でないことは自明の理だ。

 

世界は円環の中で動いている。この円環を外れて独自の道を歩み始めたが、想定外のイレギュラーが発生した。円環を外れた副反応に別の世界と交錯してもおかしくない。その交錯がお互いに譲り合って回避する、または片方が譲って回避するが好ましかった。

 

問題は互いに譲らないで衝突する場合である。

 

「うっ」

 

「あたしが守るから。何も心配しなくていいから」

 

少女は少年を勢いよく押し倒した。豊かな母が顔に覆い被さる。彼女の呼びかけに反応したくても、モゴモゴと上手く伝えられない。沸き上がる感情が優先されて気づけなかった。むしろ、力を強めてしまった。

 

「あいつらには身体も魂も渡さない。慰み者にされるぐらいなら一緒に…」

 

力強く宣言することは中断を余儀なくされる。少女は恍惚とした表情で身を捩じらせた。

 

「わかった、わかった。残された期間を無駄にしなくないんでしょ。ほら、来てよ…」

 

あれから目覚ましい覚醒を経た少年の一撃に次ぐ一撃は重たい。

 

目が覚めるその時まで少年と少女はお互いを求め合った。

 

たとえ、目覚めても会うことに変わりない。

 

二度と離れることのない。

 

14年間を共にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。