シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

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朝起きてUAなどを確認したんですが、妙に増えているなと思ってふとランキングを見ました。すると、本作が43位(執筆時点)に入っていました。皆様のご愛読に感謝申し上げます。


学校に行こう【前編】

pipipipipipi…

 

置時計の電子アラーム音が鳴り響いた。

 

「んと…朝か」

 

昨日は激動の一日を過ごしたことで、心身ともに疲れていたシンジはあっという間に眠りについた。もちろん、隣には彼女がいたのは言うまでもない。軽い毛布を引っぺがして、朝の活動に入るためにもぞもぞ動こうとした時だった。

 

「起きた?」

 

「うん。ちょっと眠たいけど」

 

隣で寝ていたはずのアスカが起きていた。可愛い寝起き顔をしていて、写真を撮りたくなってしまっても責められない。屈託のない微笑みをたたえているアスカ。昨日のハキハキとした雰囲気と異なり、穏やかで柔和な雰囲気は愛しさを覚える。

 

時計のアラームを止め時間を見ると、現在は朝の7時だった。見事なまでの早起きである。それもそのはずで、シンジとアスカは中学生なのだ。8時半ごろには中学校に登校を終える必要があるため、朝食やその他家事を含めた時間を逆算した上の早起きが絶対となる。

 

「眠かったら、そのままでいいよ。家事は僕がやるから」

 

「その言葉に存分に甘えたいけど、シンジに全部押し付けるのは良くない。起きた以上は、私もやるから」

 

シンジは二度寝しても構わないと彼女を気遣ったが、それを彼女がやんわりと断る。彼一人だけに家事全般をやらせるのは気が引けるとして。まぁ、それは建前であった。本音は常時彼とピッタリ引っ付いていたい気持ちがあったから。簡潔にすれば、彼と離れたくなかったということ。そんな気持ちには、2つの意味が込められている。1つは過去の反省と培ってきた想いから、少しでも彼と離れ離れになってしまうことが苦痛だから。

 

もう1つは…。

 

(シンジは私だけのもの。既成事実にするために、あいつを私に依存させる。私だけがシンジを理解できる。私だけがシンジを受容できる。そうよ、私だけがシンジを愛することができる。だから、離れてしまうことは許されないし、誰にも引き離されない。人間を捨ててでも…)

 

完全に目を覚ますため、スタスタ洗面所に向かう彼の背中を見つめて、彼女は変わらぬ微笑みを維持していた。ただし、その心では悍ましい彼女の野望が淡々と語られている。誰よりも彼を想う少女、アスカは誰よりも彼を狂い愛していた。

 

洗面所で顔を洗い、飛び跳ねる寝ぐせを直したら、キッチンで軽い朝食を作る。食パンをトースターで適度に焼いて、焼いている時間は卵をゆでて、電子レンジで温野菜を作る。サッと時間をかけないで作れるメニューが朝食だ。それぞれ出来上がったものからお皿に乗せて、テーブルに並べていく。主夫力の高いシンジの技術とアスカの的確なサポートの甲斐あって、スムーズに作業は進んでいき、あっという間に朝食が揃った。温かいうちに食べ進める朝食は、2人の今日の予定を確認する場となる。

 

「今日から新しい学校か」

 

「私たちエヴァパイロットの仕事は使徒を撃破することだけど、それだけじゃダメ。勉強にも力を入れないと、使徒を倒し切った将来を(2人で)生きていけないわよ」

 

「生きて行くため…か」

 

彼は今まで一日一日を生きることに精一杯であり、真面目に将来を生きる事なんか考えたことが無かった。ようやく得られた安寧があってこそ、まともな学生生活を、普通の中学校生活を送れる。貴重な学生生活を無碍にしてしまうことは自分が自分を許さないだろう。

 

「クラスは私と同じで、心配することは何もない。男子は知らないけど、女子は優しい子しかいないから。いじめなんてもっての外、皆がシンジを受け入れてくれる」

 

アスカは昔から第三新東京市で暮らし、中学校生活を送っていた。よって、クラスのことを知っている。彼の不安や不確定要素の解消及び排除に一役買ってもらう。シンジは何から何まで彼女のお世話になって申し訳なく思い、また同時に全幅の信頼を置いた。何かあっても、彼女に頼りさえすれば、幾らかはどうにかなるかもしれない。

 

さて、朝食は本当に軽くで済ませてある。すぐに食べ終え、その後は歯磨きなど本格的な準備を始めた。朝食の片づけと身支度を交代交代で行うことで作業の効率化を図る。作業が終われば、家庭ゴミを纏めたりなど、極めて一般的な市民生活を送っている。どこか誰かと比べれば、彼らの生活は非常に文化的と言えよう。

 

~出発~

 

朝に行う全ての家事を終え、制服に着替えたりと身支度が完了すれば家を出るだけだった。まさかバラバラに出発するわけがない。ちゃんと仲良く手をつなぐことを前提とした出発をする。

 

「「行ってきます」」

 

彼らの家があるマンションから中学校までは徒歩圏内で、通学に関して困ることは一切ない。アスカに案内され歩いていると、同じ中学校に通っているであろう学生で合流して、歩く道は混みだした。アスカの案内が中断されても、これなら中学校にまでスムーズに行けそうなぐらいだ。幸いにも、移動に障害は生じていないが、予想外のことが生み出される。

 

(…)

 

(…)

 

(…)

 

何やらシンジとアスカのことを見て、ごにょごにょと噂話か何かをしている。2人にばれないように努めているらしいが、意外とコソコソ話はバレやすいもの。当然、若きカップルには筒抜けである。

 

「アス…」

 

「気にしないの。良いじゃない。あいつらに言わせておけば。それだけ人気者って考えれば、逆に嬉しく感じれない?」

 

アスカは毅然と言い放った。噂なんて捨て置けばよい。どうせ、くだらないことでも言っているのだろうから。噂なんてものを逐一気にすると、自分の精神をすり減らしかねない。ならば、逆に捉えてしまえばよろしいのだ。エヴァの戦闘力には精神状態も大きく影響する以上、どうやって自分のメンタルを保つか。それは極めて重要に尽きる。

 

「すごいなぁ。アスカは」

 

中々に強い彼女の精神力にシンジは尊敬の念を抱いた。ここに彼女がいなければ、自分は周りの圧に押されて潰れていっただろう。彼女がいてくれたおかげで、圧を跳ね返すことが出来ている。身近な人は誰よりも強かった。

 

今更ながら、なぜ2人がこれほどまでの注目を集めてしまうのか。それは、簡単で、元々アスカの人気が絶大だったからによる。彼女は校内で絶大な人気を誇っていて、数多もの学生が突撃を敢行するも、全てあえなく失敗に終わっていた。鋼鉄と言ってよいガードの硬さを有する彼女が、見ず知らずの少年と仲良く手を繋いで登校しているではないか。この景色が切り取られ、周囲の男子女子問わず、誰もが皆に驚愕を与えるには十分過ぎた。一度燃え上がった火は中々消しづらいのに、大注目の2人は無視する。これによって、文字通りの「火に油を注ぐ」ことになる。

 

結果的に、シンジは初登校にしては、強すぎる印象を周囲に与えてしまったのだ。

 

続く

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