シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

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セントラルドグマ

「Willeの阻止部隊が来たわね」

 

「ムカつくオリジナルにねぇ。ガキを渡すわけにはいかない!」

 

セントラルドグマに突入したNERV側のエヴァは第十三号機と肆号機の2機である。しかし、新たに支援射撃と共に降下したエヴァを視認した。そのエヴァは片腕に青い塗装が施されている。あれは反NERV組織のWilleが保有するエヴァに違いなかった。

 

Willeの目的は不可逆的なNERVの撃滅である。

 

「スナイパーが1機上方に潜んでいる。あとの2機は近接戦という布陣を敷いた」

 

「悪いね。僕は彼の味方として、計画の邪魔は許せない」

 

エヴァ第十三号機は儀式の発動が優先された。護衛機を務める渚カヲルと肆号機が妨害を許さない。肆号機は武器の携行を許された。一方の第十三号機は無駄な物を携行することを許されていない。肆号機は死神の鎌を振り上げ、Wille側の緑色の機体を狙ったが、上方に配置されたスナイパーが徹甲弾を直撃させた。

 

「やれやれ、流石に被弾し過ぎると、肆号機の覚醒が覚束ないか」

 

「支援射撃は任された。さっさと行きなさいな!」

 

「はい!」

 

たった1機でも戦力差が大きく開かれ、かつWilleはスナイパーを配置している。NERVはエヴァ同士の近接戦を想定した。これは客観的な視点から不利が呈されたる。もっとも、エヴァに関する技術はNERVがWilleを突き放した。この場における数的な不利を技術と練度で埋める。スナイパーが放つ徹甲弾は肆号機の装甲が阻んだ。そして、肆号機は被弾から位置を逆算している。セントラルドグマにある遮蔽物を確保して照準を絞り切らせなかった。

 

護衛機がスナイパーに意識を削がれる間である。残りの2機が第十三号機に接近を試みた。護衛機が対象から離れることはいただけない。いいや、第十三号機の高度な自衛に期待した。

 

「私が格闘戦を担当するから。シンジはATビットをお願い」

 

「うん。任せて」

 

第十三号機に肉迫するWille側の機体は紅い弐号機と緑色の知らぬ機体である。

 

NERVが保有した弐号機は第十の使徒戦から大破した後に処分された。現NERVは弐号機をスケールダウンさせた量産機を運用する。碇シンジ奪還作戦において、大人のアスカが量産機を操縦した。つまり、Wille側が弐号機を運用することは解せないだろうに。おそらく、平行世界からの介入者が弐号機を持参した、または、図面等を持参して建造した。

 

緑色の機体は見覚えが無い。戦闘中であるがデータベースにアクセスした。AIは正確でないものの「仮設伍号機」を導出する。これは旧ベタニアベースで運用された。同地に限定した局地戦に特化したエヴァであるが、Willeは使える物は何でも使わなければならず、一度は自爆した「仮設伍号機」を引っ張り出している。

 

「やっぱり、ATフィールドを持たないエヴァか」

 

「碇さん! お願いですから、言うことを聞いてください! あの女に乗せられたんですよねぇ!」

 

相互に通信を繋いでいない場合を考えた。各機はスピーカーを標準装備している。仮に所属先が異なろうと意思疎通は可能なため、Wille側は最重要人物以外の何者でもない碇シンジの説得を試みた。

 

「フォースの発動を邪魔すること。それが僕の幸せを阻むと知ってほしい」

 

「そういうことだから」

 

交渉は決裂に終わる。

 

「なら、実力行使のみ!」

 

「死中に活を求めます!」

 

2機のエヴァが第十三号機へ飛びかかる。Wille側の弐号機は薙刀を振り回し、同伍号機は模造品の槍を突き出した。一般的なエヴァンゲリオンはパイロットの意思に応じてATフィールドを展開する。しかし、このエヴァンゲリオン第十三号機は特殊を押し立てた。

 

「まったく! 駄々っ子の面倒ほど大変なの!」

 

「は、速い!」

 

「ごめん。僕は僕の道を歩きたいんだ」

 

第十三号機は人体で言う肩甲骨あたりから小型機を射出した。そして、薙刀と槍の両撃をATフィールドで防いでいる。ポイントはエヴァから展開される常識を破り、射出したてホヤホヤの小型機が展開した。

 

これがエヴァ第十三号機の切り札である『ATフィールドビット』とされた。長ったらしい名前を省略して『ATビット』が通称である。ATビットは第十三号機本体がATフィールドを持たない弱点を埋めた。

 

ただ、子機が展開する都合より、微細な隙を確認できる。

 

「そこぉ!」

 

「ざ~んね~ん」

 

ATビットがコンマ秒の単位で遅れた。この虚を逃さずに薙刀を差し込んだ。2対1の構図を活かしてATビットを翻弄するが、第十三号機もパイロット2名の運用が組まれ、実際は2対2のフェアが指摘できる。セントラルドグマの戦闘はエヴァの性能でなかった。エヴァのパイロットの技量が問われる。

 

「オリジナルに勝てるわけがないでしょ。おバカちゃん」

 

「ちぃ!サクラとのコンビネーションで仕掛ける!」

 

ATビットの隙間は碇シンジが設けた誘いだった。その上で近接格闘戦に秀でたアスカ同士が読み合いの末に大人が勝利を収める。第十三号機のダブル・エントリーシステムの面目躍如だ。パイロットが2名の強みは適材適所を可能にする。

 

大人でオリジナルのアスカは熟練の格闘戦を見せつけた。

 

天才で神のシンジは抜群の戦闘センスを光らせた。

 

アスカは当然と豊かな胸を張る一方のシンジは天才を遺憾なく発揮する。サードチルドレンか第三の少年と呼ばれる碇シンジは天性の才を隠し持った。能ある鷹は爪を隠すと言うように「ここぞ!」で繰り出す。

 

「サクラさん。もう、やめてくださいよ。僕だって手を上げたくないんです!」

 

「大丈夫ですっ! 私が必ずし助け出します!」

 

ATビットが防御一辺倒なんて思われたら悲しい。ATフィールドは使い方次第で攻撃に転用でき、それこそ、第十の使徒が多重ATフィールドをプレス機に変えた。ATビットが複数機の数を活用しないことがあろうか。伍号機(?)をATビットの群れで追い詰めていくが、決して、撃破までは持って行かないで苦境に置き続けた。

 

「しまったっ!」

 

「サクラっ!」

 

「よそ見はご法度じゃない?」

 

弐号機と伍号機(?)は仲良く弾き飛ばされる。Wille側のエヴァは旧態依然とした内部電源が続投された。エヴァの活動には時間制限が設けられる。さらに、激しい機動戦は電力消費を増した。セントラルドグマで活動できる時間は、あれよあれよと短縮されていき、遂に弐号機も伍号機(?)も非常電源に移行する。

 

「ダメだ。弐号機も電池切れ、マリ!」

 

「スペア投下するけど、間に合わない! こっちでやってみる!」

 

第十三号機が優先すべきはWilleの排除よりではなかった。儀式のフォース・インパクトの発動に尽きる。Willeの妨害が沈静化すると、踵を返して、リリスの骸へ向かった。セントラルドグマの足場が悪い故に走らない。一歩と一歩を踏みしめながら歩いた。

 

「AA弾は効果なし。ならば、徹甲榴弾で内部から食い破るしかない」

 

スナイパーはライフルに徹甲榴弾を装填した。どれだけの損傷を与えられるかわからない。とにかく、妨害するだけ妨害し、時間を稼ぎたかった。エヴァへの急速充電は名ばかりである。フル充電までには最低でも数分を要している。

 

「お忘れ物よぉ!」

 

2発の徹甲榴弾が登山中の第十三号機へ飛翔した。

 

第十三号機は心強い共に背中を預ける。

 

「なにっ! 砲弾を空中で!?」

 

「防ぐことができないなら迎撃すればいい。それだけのこと」

 

渚カヲルの肆号機が死神の鎌で砲弾を真っ二つに切断した。

 

「再装填が間に合わない!」

 

少年は友を全面的に信頼している。登山中は足を一寸たりとも緩めなかった。すでにリリスの骸の背中まで到達している。2本の槍の前に立ち、徐に槍を見上げ、息を吸って、それから高らかに宣言した。

 

「フォース・インパクトを始めよう」

 

第十三号機は独特の駆動音と共に胸部に隠された両腕が露わになる。

 

4本腕に持ち前の馬力を流し、思い切って、2本のロンギヌスの槍の引き抜いた。

 

リリスの骸が崩壊する。

 

隠れていた者が再起動する。

 

続く

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