リリンの骸が崩壊すると第十三号機の足場がきえるわけだが、絶望を司るロンギヌスの槍を左右で持ち、なぜか重力を無視して浮遊状態にある。それは哀れなエヴァMk-6も同様であり、これを異常と言わずして、何というべきか。
「NERVのエヴァにパターン青! やっぱり、第十二の使徒が潜んでいやがった!」
「私が撃破します!」
辛うじて、急速充電が間に合った伍号機がMk-6の撃滅を試みた。しかし、無限のエネルギーを生み出すS2機関を標準搭載する。NERVのエヴァが総じて有利と評価した。伍号機は銀色の肆号機に弾き飛ばされている。
「Mk-6は白い月で第十二の使徒を素体に作られた。これで、ようやく、役目を果たすよ。お疲れ様だ」
肆号機が死神の鎌を振り下ろす。Mk-6の首がスパッと切断された。頭部と身体が分離して撃破を思わせたが、どちらも切断面より奇怪な航跡を生じさせ、浮遊を維持する第十三号機に纏わる。あっという間に第十三号機はコアらしい球体に包み込まれた。
「全身かコアね。フォースの起こし方は変わらない」
「どうすれば…」
「好機を窺うしかないじゃん?」
いったい、何が起こっているのだ。
第十三号機は赤い球体のコアに包まれている。自機の周囲確認が不可能な代わりに絶大な利点を確保した。なんと、全身がコアという特殊な状態から絶対的な防御を得ている。Willeのエヴァにはノーチャンスを授けた。
「これで第十三号機と私の覚醒がなる。シンジに遅れること14年かぁ」
「僕は第九の使徒があるからね。この第十二の使徒は譲る」
第十三号機は快調な快調である。
ただし、覚醒に達するまでは暇が多かった。シンジと大人アスカはイチャイチャして暇を潰している。エヴァ第十三号機の設計図を引いた者の計らいだ。パイロット2名の間に隔壁は設けられない。そんなこんなを経て巨大なコアは収縮を開始し、サクランボ程度の大きさに縮こまり、大人アスカの口元へ運ばれた。
「味は期待しない方が良いよ」
「良薬は口に苦し。そういうこと」
大人アスカがサクランボをかみ砕き、第十三号機本体もコアをかみ砕いた。第十三号機は白色化して周囲を明るく照らす恒星と変わる。一方の大人アスカはシンジが言った通り、苦みを覚えざるを得なかった。NERVの食事はドロドロのお世辞にも美味しいと思えない。第十二の使徒を凝縮したコアの味もお世辞を排除する程に美味しくなかった。
「おいしくなっ!?」
彼女が正直な感想を述べようと口を開ける。そこへ少年の舌が捻じ込まれた。大人のアスカと14歳のシンジが大人のキスをしている。主にシンジの方から愛情が流入した。彼の愛はアスカの身体を駆け巡っている。
「ありがとう。おかげで苦さを忘れられた」
「我慢することは時に毒となる。我慢しないでね」
シンジの優しさが光る頃に第十三号機は形態を変化させた。いわゆる疑似シン化形態である。頭上に天使の輪を浮かべることに代表された。第十三号機と初号機の覚醒に共通点が多く確認できる。そして、仲良く覚醒した肆号機を伴い直上へ急上昇した。セントラルドグマは地下最深部に設けられたが、電磁カタパルトを上回る速度で射出される。
地上へ出るとガフの扉が開かれていた。
「あぁ、フォース・インパクトが始まる。そして、ミサトさん達が来た」
「黒い月の完全顕現までは待機で」
「どうせ、向こうのエヴァが止めに来る」
ガフの扉へ向かおうとする道中である。第十三号機へ高速で迫る大戦艦を確認できた。この世でエヴァが小粒に見える戦艦は、反NERVの錦の御旗を掲げるWilleのヴンダーしかない。シンジは艦内で幽閉されていた。それ故に全貌を見ることは初めてらしい。
何をするのかと思いきやだ。ヴンダーは艦首を思い切り第十三号機に突き刺し、かつ艦前方にATフィールドを展開する。なるほど、第十三号機は脱出不可能な磔にされた。さらに、フォース・インパクト発動の真っ只中にある。
事実上の無防備に陥った。
もっとも、疑似シン化形態である以上は、神器以外の攻撃を受け付けない。
「無駄なことを…」
「すごいな。死中に活を求めることに関して、ミサトさんの右に出る者はいないよ」
第十三号機を磔にした後は、主砲から反射弾の砲撃を加える。ATフィールドに反射する実体砲弾による物理的な破壊を試みた。ヴンダーは総旗艦で『神殺し』の異名を有する。フォースを発動させるNERVの新型エヴァを破壊することは神殺しと言えた。
しかし、みすみす、神殺しを見逃す失態を天使が犯すわけがないだろうに。
「はい、覚醒した肆号機が取りついた。これでヴンダーはフォースが収まった後に居残ることができない」
「カヲル君のタイミングはいつも絶妙だなぁ」
シンジと大人アスカは当事者にもかかわらず、あくまでも、舞台を観劇する客の立場を堅持した。ヴンダーは神殺しと虚妄を携えた哀れな者に過ぎない。そして、颯爽が最も当てはまる登場を纏ったエヴァ肆号機がヴンダーに取りついた。
ヴンダーによる一連の無駄な抵抗は地上から嫌程によく見える。
セントラルドグマから3機のエヴァがひょっこりと姿を現した。
この3機は旧来型な上に覚醒のかの字もなかった。
「ほいっと。ありゃ、こいつは酷い」
「ヴ、ヴンダーが」
「まったく、いつになっても、世話が焼ける」
Wille所属の3機と3人は凄惨な光景に三者三様の反応を見せる。フォースの発動中につき、空は赤く染まり、赤い大地から瓦礫の類が浮き上がった。そして、ヴンダーは覚醒したNERVのエヴァに取りつかれる。目標の第十三号機は進路を修正してガフの扉を目指した。
「よし、こうなったら。新弐号機はヴンダーの救援に向かう」
「このマリちゃんとサクラちゃん。2人でフォースを止めろってこと?」
「分かっているなら、さっさと行きなさい!」
エヴァ3機体制であることを活かして二手に分かれる。格闘戦に秀でた新弐号機がヴンダー救援に向かった。八号機と伍号機は第十三号機を活動停止に追いやる。咄嗟の判断であるが、非常に考え抜かれ、疑義を挟む余地は残されなかった。
新弐号機は急速充電の際に左腕部をガトリング砲に換装する。新弐号機は基本的な設計や思想が比較的に新しかった。ヴンダーは肆号機から破壊光線を数発貰って推定中破に追い込まれる。さらに、肆号機からシステムに対するハッキングを被った。新弐号機はヴンダーが推進力を失い、低空を這いずるタイミングを見計らう。
「あんたねぇ、第一の使徒タブリスと円環の理を俯瞰し、人間と使徒の狭間となる『渚』なら。ちょっとは手伝おうと思わないの?」
「平行世界からの介入者である君たちには悪いね。ただし、元はこの世界の君やシンジ君が望んだことだ。はたして、良くも悪くも、赤の他人でもある介入者に協力できるかな」
「なら、殺させてもらう」
ヴンダーに取りついた肆号機は覚醒して両腕を粘液に変えた。この粘液がヴンダーに対するハッキングを仕掛けている。肆号機から出ているため、機体本体を撃破すべきだ。ここにNERVの肆号機とWilleの新弐号機のタイマン勝負の幕が上がる。
「徒手空拳に何ができるっての」
「何かができるんだ」
ガトリング砲の残弾を肆号機へ贅沢に吐き出した。ヴンダーに対するハッキングは移動が許されない。つまり、肆号機はATフィールドを展開する、又は装甲で耐えるしかないのだ。ガトリング砲の射撃を回避するわけがない。
「面倒な! こいつも全身がコアでアダムスの器じゃない!」
「タブリスって呼んでくれると嬉しいねぇ」
確実に肆号機は損傷したが、数秒後には綺麗に再生されていた。
いわゆる、全身がコアである。
ヴンダー甲板上の戦いは始まったばかりだ。
続く