シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

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今回はストーリーの重要な部分を散りばめたものです。疑問に思う点が多いでしょうが、ネタバレや根幹に関わる質問にはお答えかねますのでご了承ください。皆様で考えてくださると、嬉しいです。


2つの密会

NERV本部では先の使徒戦の分析が進められている。今まで全く手も足も出なかった使徒をエヴァンゲリオンによって撃滅することに成功したのを喜びたかったが、あの戦いで得られたデータを分析せずしてどうするというのだ。難解で且つ莫大な量でも、それは研究員にとっては黄金の宝の山でしかない。研究員に限らず、一部の事務系の職員までも巻き込んだNERV本部フル稼働で、次なる使徒の出現に備えようとしていた。よって、今のNERV本部は大慌てのドタバタ騒ぎであり、せっかく勝ち取った平和がまた違う戦争にすり替わっている。本末転倒でないだけマシだろうか。

 

しかし、その戦争を免れた者がいた。関係者の中でも、あの少年少女たちは比較的に温和な日々を送っている。学校で勉強に励んだり、NERV本部で訓練を積んだりなどして過ごしていることは好ましいことだろう。そんな彼らは、今日の訓練を終えたエヴァパイロット達は、更衣室で普段用の服にチェンジするために着替えていた。もちろんながら、男女と別れてである。

 

~更衣室~

 

「零号機の実戦投入は間に合いそう?」

 

「えぇ。何とか。弐号機は」

 

「やっと調整が終わったから、同タイミングでいけそうよ」

 

女性用の更衣室では、2人の少女が着替えながら話していた。おや?エヴァパイロットは2名ではなかったのか。確かに先の使徒戦の時点では2名だったが、正確には本部に3名が在籍している。彼と彼女を除いた1名は、不慮の事故で大けがを負ってしまっていて、とてもだが実戦には耐えらない様子であった。したがって、実戦はおろか表に出てくることは無いに等しい。ようやくの最近になり、高度な医療と本人の治癒力の甲斐あって完治を果たした。少女と少女、元からNERV本部に在籍していた両者は昔からの顔見知りであり、更にどうやら2人だけの秘密の特殊な事情があってか、その仲は非常に良好だ。

 

「あんたには感謝しないといけないわね。私の勝手な願いを汲み取って、実現してもらったことを」

 

「気にしない。私は碇君の幸せを願ってる。だから、碇君を幸せにできるアスカに託しただけ。過去も、今も、これからも全部を」

 

真面目な顔をして答えた。その表情は単に内面の真面目さを反映した結果じゃない。自身の確固たる信念や正義を持っている人間が出す表情である。同時に、彼女独自の力強い使命感を醸し出していた。

 

「そうそう。ずっと先のことだけど、本当にいいのね?創り上げる新世紀をシンジと生きること。それを、あなた自らが進んで捨ててしまっても」

 

着替える作業を止め、質問を投げかけられた少女は微笑と併せて答えた。

 

「構わない。私は碇君を苦しめてしまったから。私は最期まで彼を守れなかったから。だから、一緒に生きる資格はないわ。彼のことをアスカに託して、私はサポートに徹するだけ。それが私に許された唯一の生き方なの」

 

「相変わらずねぇ。わかった。それでも、気が変わったら何時でも言いなさい。計画の内容もスケジュールも、ちゃんと余裕を持たせている。あなた1人ぐらい増えても、何ら問題ないわよ」

 

「ありがとう。考えておく」

 

神の耳によって、傍から聞いているだけでは何が何だか分からない。非常に濃いことを話していることは読めるが、肝心の濃さの源が読めない。一体何があってこの2人は話しているのだろうか。仲が良いことは素晴らしいことこの上ないだろう。それでも、恐ろしい事が話の「核」となっている気がしてならない。

 

「よっし。この後冬月先生の所に行ってくるから、先に失礼するね」

 

元気よく活発な少女は、そそくさと更衣室から去っていった。普段ならば仲良く語り合っているのだが、今日は用事が残っている。しかも、その用事は建前上のトップの所に行かなければならないため、許されるだろうが遅刻することは出来ない。やむを得ず、無駄話をしないで更衣室から直行するしかなかったのだ。ただ、無言で去るのは礼儀としてよろしくない。一言でも、ちゃんと断ってから去るのが礼儀としては最低限である。

 

かくして、更衣室に残された比較的物静かな少女。彼女は着替えを終えても、ずっと物思いに耽っていた。誰も入って来ない場であるから、1人でじっと考えることに過不足無しのピッタリ。彼女には、彼女なりの想いがあったようだった。

 

~司令官室~

 

「いやいや、申し訳ないね。訓練終わりで来てもらって。まぁ、座りなさい」

 

司令官室を訪れた客に対して、ここのNERV本部のトップである老人こと、冬月コウゾウは席に座ることを促した。客は素直に着席して、老人と向かい合う。

 

「さて、どうだね?シンジ君とはうまくやっているか」

 

「そりゃぁ…もうよ。毎日一緒に(ベッタリと)過ごしている。あの男のせいで精神面は虚弱で、過去を引きずりがちだけど、きっと(私と過ごす)時間が癒してくれるでしょ。審判の時までには鍛えておく」

 

「ふむ、わかった。彼との付き合いについて、私が口を挟むことは絶対に無い。君の思うが儘だ。存分にやりなさい。私は君たちの清純な関係を歓迎するよ。さて、本題に入ろう。頼まれていた君のお願いには、全部に満額回答が出来そうだ。弐号機の段階的改修、ネブカドネザルの鍵、リリスの流用その他諸々を」

 

専門用語チックな単語が並べられ、常人はもちろんのこと、関係者でも理解できないかもしれない。中二病をこじらせた男子がつらつら語るようにも聞こえるが、残念ながらこれら全部が実際に存在する。一個目は目に見えて現存するし、皆が知っているので問題ない。その後が難解を極めていて、この場にいる祖父と孫娘の関係に見えてしまう、上司と部下だけで通じ合っていた。

 

「あれはどうなっているの?シリーズは」

 

「あぁ、そうだったそうだった。いかんな、年のせいかすぐに出てこない。シキナミ・シリーズについても用意できる。だが、モノがモノだけに時間を要する。まぁ、使うことになるのは先だから勘弁してもらえんかね。一応、オリジナルは既に完成済みでいる」

 

「確実に用意してもらえるなら文句の一言なんて言えない。しかも、もう完成しているなんて。流石は冬月先生、あの男を早々でレイに屠ってもらって良かったわ。先生があの男に持って行かれたら堪らないもの。先生より優秀な人をくだらない妄想を持った奴に与えるなんて、勿体無いを通り越してしまう」

 

ある人物を恐ろしく貶しながらも、目の前で座っている老人を手放しに褒めちぎった。見た目に反して、能力がずば抜けている老人、冬月は「まんざらでもない」と軽く息を漏らした。

 

「ユイ君が遺した彼だ。私の生涯の使命は、その彼の面倒を見てあげること。と言っても、私だってこの年だからな。長いこと生きることは、まず出来ないよ。私にできることはさせてもらうから、後は君の好きなように、よしなにしなさい」

 

「言われなくても、冬月先生」

 

続く




次回は彼女と彼の直接的な、ちゃんとした初邂逅の予定です。
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