シンジは私のもの   作:5の名のつくもの

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もう感覚が狂ってきました。


一方的な再会

今日も今日とて、中学校に登校したシンジとアスカの2人は、相も変わらずの隣り合わせの状態で仲良く談笑していた。何かと疲れることが多く、ストレスも多い生活を送っている毎日において、比較的に自由のある学校で語り合うのは健全な鬱憤晴らしと言えよう。周囲のクラスメイトが時折輪に入ってくることがあるが、それは邪な考えによるものではない。単に2人と仲良くなりたい思いからであった。何も変な話ではないだろうが、気になる点がある。それは、入って来ようとする人物の大抵が女子生徒だ。男子はどうしていたのか。当然ながら、2人の輪に男子諸君が入る隙なんてあるはずがない。よって、男子は血の涙を流す者やシンジにしょうもない敵意を抱く者、どうにかして彼と彼女を引き裂かんと絶対不可能なことを狙う者等々の集団になっている。もはや、彼のクラスは火薬庫と同義であった。もし、何かしらの軋轢や衝突で火の粉が舞った瞬間には、ドカンと一発。

 

大変なことに、張本人であるシンジがこの火薬庫の状況を全く理解できていなかった。大変なことであるが、彼に責任があるというのは不正解である。なぜなら、彼は一切の悪意無しに、純粋に彼女と交流しているだけなのだ。周りがどう言おうと、どう見ようとも知ったこっちゃない。だって、自分は家族と話しているんだから。となると、この状況を理解をすること自体が全くもって変な話かもしれない。

 

さて、そんな朝の登校時間に教室の扉から1人の少女が入ってくる。朝だから当たり前のことだ。しかし、その少女はシンジ&アスカを除いた女子男子を問わず、皆が一様に驚かざるを得ない人である。真面目な性格を反映しているのか制服を崩さずに着ているため、服装は極めて普通だった。しかし、綺麗な髪色をしていて且つ、「美麗」以外に表現のしようがない顔立ちをしている、どこからどう見ても美少女。彼女が周囲から注目を集めないなんて話があるだろうか。いいや、絶対に無い。

 

「あら、レイじゃない。おはよう」

 

「綾波さんっ!?」

 

「レイ…ちゃん?」

 

アスカは至って普通の反応をし、その他の生徒は驚きの声を挙げることしか出来なかった。ただ一人、シンジは状況を呑み込めておらず、とりあえず挨拶をしようと思って席を立つ。彼が理解できないのは仕方のないこと。この少女は長い間学校を休んでいたため、新参者の彼が実際に会うことは無理だった。一応、彼女の存在は仲間内の内々で知らされていたが、実際に目にすることは今回が初めてである。

 

教室の扉からスタスタと歩いて向かう先。そこは…何ということだ。火薬庫の中心地ではないか。そう、碇シンジ君の後ろの席であった。最新の情報に更新して、彼らの位置を上から見てみる。まずシンジは真横に窓がある席のため、四方ではなく三方でクラスメイトに囲まれる形だ。三方の内、右サイドをアスカが抑えている。そして、後ろの席にレイと呼ばれた少女が座っていた。残された前方正面は別のクラスメイトだが、担任の配慮で優しくて真面目な生徒が置かれている。結論として、シンジへの配慮を幾重にも重ねた配置であると言えよう。

 

「彼女は綾波・レイ。私たちの仲間よ」

 

アスカはシンジにコソコソと耳打ちをして、必要最小限の文字数で少女がどんな人物かを伝えた。シンジは僅か3文字ながらも理解した。国家機密以上の存在である彼らは、私的な場において軽薄な行動と言動は厳に慎まなけばならない。普段の行動は一般市民とはずっと厳しくなる。彼はそれを意識しながら、自分の後方の席で持ってきたカバンを置いて、朝の準備をしている少女に語りかけた。

 

「最近、第三新東京市に引っ越して来て、この中学に転校した碇・シンジです。君は…」

 

「私は綾波・レイ。よろしく、碇君」

 

ふむ、何てことはない。初対面同士の者が行うであろう、典型的な会話だった。だがしかし、このクラス内ではNN地雷が炸裂した時と同じぐらいの衝撃を与えていた。既に彼が鋼鉄のガードを有するアスカと砕けてた仲となっているだけで、クラスはおろか学校全体に爆弾を投下する事態が発生していたのに、今回は綾波・レイと”普通”の会話をしたことがNN地雷の炸裂を引き起こす。不発だったら、どれだけ良かったことか。

 

(シンジへのヘイトが高まっている。ま、それはそれで、良い娯楽になるかな。あんた達が私やレイに近づけると思ったら大違いなのよ)

 

二度あることは三度あると古人は偉大な言葉を残してくれた。まさにその通りであって、またもや碇シンジへピリピリした気が向けられてしまった。ただ、幸いと言うと変かもしれないが、槍先を向けられたシンジは何食わぬ顔をしている。つまり、一切気にしていない様子だった。いや、気にしていないのではない。ただ単に気づいていない。

 

空気がひりつく気を送る元凶の気持ちは理解できる。クラス内で絶対的な強さを持つ少女2名が、ひょっこり出てきた転校生と普通に会話しているなんて、もう堪ったもんじゃないだろう。1名は学校生活で必須となる事務的なことなら話せたが、そこから先が全くと言っていい程無い。関わりを持つための前提である礎すら作ることが不可能である。もう1人については、まぁ無関係の極みであった。休むことが多いことも大きいが、彼女は何よりも無口で微動だにしない。事務的な話をしても、素っ気ない返事しか送られてこない。ガードがうんたらかんたら以前に、彼女は他者への興味が皆無に尽きている。辛うじて会話となってくれる事務的でも、アッサリと返されてしまう。自分達とは次元が違うようだ。

 

それなのに!なんであいつ(シンジ)はと思っている。おぉ、怖い怖い。

 

「いつまで立っているのよ。座って座って」

 

「あ、うん」

 

レイはとっくに朝の準備を終えて座っているのにシンジは立ったままであり、どこかレイを見下している感じがある。シンジはそれに気づいていなかったので、アスカが助け舟として着席を促す。これで同じ目線となったシンジとレイだが、彼はとても居心地が悪かった。

 

「えっと、僕に何かおかしなことがあるかな?」

 

「いいえ。何もない」

 

座ったのはいいものの、レイはシンジをジッと熱い目で見つめていたのだ。すんごくジッと見られるので、シンジは自分に異常が生じているのかと聞いてしまう。彼女曰く「何もない」らしいが、それなら何故にジッと見てくるのか。そこまで集中して見られると、対象は怖く感じてしまうだろう。疑念が恐怖へとシフトしようとしたタイミングに、少女は軽く口角を上げた。

 

(うっ!)

 

(あらあら。レイが潜ませてきた本性を剥きだしてきたわね。やるなら徹底的に。あいつらに絶望を教えてやるなんて。優しいのね)

 

世界中を見回しても中々見られない。屈託のない、純粋な気持ちからなる笑顔の破壊力たるや凄まじい。直接攻撃を受けた少年は仰け反りかけて、レイとある程度の親交を持つ少女は苦笑いを浮かべざるを得なかった。ここまで彼女が感情を表に出したことは、今までにゼロ・ゼロ・ゼロ。彼女は彼に対してなら、己に秘めたる正直な感情を一切の逡巡をしないで見せる。つまり、彼女は彼に興味を持っていて、受容する姿勢を見せたのであった。

 

「と、とりあえず。今日から学校では(多分NERVでも)一緒になるから。改めて、よろしくね」

 

あの攻撃を受けても、しっかりとした口調で喋ることが出来たシンジは称賛されるべきだろう。

 

続く

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