街のお花屋さん   作:坂ノ下

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第32話 新人記者 二川二水 ④

 鼻をつく火薬の臭い。脚が折れてあちこちに散乱した椅子や机。床には守衛を含めた数人の人間が倒れ伏している。

 朝に見た時とはかけ離れた光景だった。支局のエントランスホールに現出した惨状に、二水は後ずさるどころか前へと進む。

 

「携帯……通じないっ。助け、呼ばなきゃ」

 

 電波の状態が悪いのか、携帯電話が繋がらない。

 そこで二水はそのまま正面の出入り口をくぐろうとする。

 倒れているスタッフたちは皆、息があるようだった。すぐにでも救急車を呼ばなければ。

 とは言え、考え無しに飛び出たりはしない。三年ほどのブランクがあっても二水は元リリィだった。ガラスが割れ骨組みばかりとなった扉を、慎重に動かし開けていく。

 二水は元リリィだ。不用意に建物内から飛び出さず、外の様子をジッと窺う。

 ところが、いざ小さな体が外へ出た直後、押し戻されて支局内に逆戻りしてしまう。

 

「何をしてますの!」

 

 直前まで本当に気付かなかった。

 故に二水は誰かに抱き締められ押し戻されたことに驚き、その相手の顔を見て更に驚いた。

 

「楓さん! どうしてここに!?」

 

 目の前に広がる豊かな膨らみ、その上の険しい顔を見上げて二水が尋ねる。

 

「パリ市庁舎に、テロをほのめかす脅迫状が届いたのですわ。ターゲットまでは不明だったので、警察が市内を警戒していたのですが」

「へぇ~流石はグランギニョル、情報が早いですねえ……って、そんな状況で歩き回ったら危ないですよ!」

「危ないのは貴方でしょうが!」

 

 楓が眦を吊り上げて美しい顔を歪ませる。絵画や彫像の如く整っている分、余計に威を放って見えた。

 

「真っ先に新聞社が襲われた以上、下手人の狙いはメディア関係者と見て間違いないでしょう。それなのにノコノコと建物を出ようとして。いいカモですわ!」

「それは……」

 

 そんなことはない。自分なりに警戒していたし、救急車を呼ぶという優先事項もあった。

 しかし、現に楓の接近に気付けないなど迂闊な点も否定できない。二水は反論の言葉を失った。

 

「心配せずとも、警察と救急は出動済みですわ。それより今の貴方は、ご自分の身を守るのが先ではなくて!?」

「うっ……」

 

 正論だった。

 楓の言うことは大抵の場合、正論だった。昔から。

 

「大体、二水さんは――――」

「確かに! 今の私はもうリリィじゃありません。だけど、それを言うなら、楓さんだってリリィじゃないでしょう! それなのにっ、楓さんは、他人のことばっかりで……」

 

 思わず感情をさらけ出す二水。

 尻すぼみになったのは、自分でもよく分かっているからだ。自分自身の幼さを。子供っぽい、意地のようなものであることを。

 二水が心の内を吐き出すのを待ってから、一度は沈黙していた楓がゆっくりと口を開く。

 

「二水さん」

「……はい」

「リリィだからこそできることは、確かにあるでしょう。ですが大切な人を案じるのに、リリィかどうかは左程重要ではありませんわ」

「だから、それは楓さんも一緒なんじゃあ……」

「わたくしたちは、わたくしたちらしく戦う。前にも言ったはずですわよ」

 

 楓の言葉の意味を考えようとする。

 しかしいつまでもこうしているわけにはいかない。

 携帯でどこかとやり取りをした後、楓が今度は外へ出るように促してくる。

 

「もう大丈夫なようです。参りましょうか」

「どこに、ですか?」

「絶対安全なグランギニョル本社……と言いたいところですが、二水さんは日本大使館に保護して頂くべきですわね」

 

 二人が話している間に、ストレッチャーを押す救急隊員たちがエントランスに入ってきて救助活動を開始した。

 不幸中の幸いか、派手な爆発の割には命に別状は無さそうだ。

 隊員の一人に「治療は必要ですか」と問われ、楓は丁重に断った。そうして徒歩で歩き出した彼女の背中は眩しいぐらい堂々として見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 支局のビルから出てきた二水は騒然としたパリ市街の光景を目の当たりにする。

 道路脇に武骨な装輪装甲車が鎮座し、街のあちこちで黒い制服と防弾チョッキの集団がサブマシンガンを抱えて目を光らせていた。内務省隷下、国家警察所属の保安機動隊である。

 更に注意深く周囲を窺うと、二水は幾つかのビルが自分たちの支局と同じような被害を受けていることに気付いた。恐らくは、全て新聞社やテレビ局。マスメディアを標的にした同時多発テロ。

 

「そんな、こんなことが起きるなんて」

 

 二水が想像を超える事態に息を呑む。が、取り乱す程でもない。もっと酷い惨状は幾らでも見たことがあるから。

 辺りを見回しながらも、前を歩く楓の後ろに付いて行く。そんな二人の四方をいつの間にか囲んでいた黒服たちは、楓を警護するグランギニョルの人間だろう。

 

「そこのちっこいの、ブンヤだな?」

 

 突然掛けられた声に、二水は立ち止まる。

 声の出どころは一行の前方7~8メートル先、建物と建物の隙間の路地裏から出てきた人影だった。両脇をそれぞれ白人と黒人の機動隊員に掴まれ引き摺られた東洋人の男である。

 状況からして、一連のテロの犯行グループか、その容疑者だろう。

 その痩せ気味の男は目を吊り上げ二水を睨み付ける。

 二水の首には社員証の他、紐付きのカメラがぶら下がっていた。

 無視すべきか反応すべきか二水が迷っている内に、男は捲し立てるように話し続ける。

 

「お前らが悪いんだ。あること無いこと面白おかしく書きやがって。おまけに、あんな舐め腐った風刺画まで……。喧嘩を売ってきたのは、お前らの方だろう」

 

 男が何のことを言っているのか、二水はすぐに見当がついた。ついさっきまで仕事で取り組んでいた、タイムリーな話題であった。

 

「なあ、お前らブンヤは海洋派から幾ら貰って書いてんだ? クソ貴族どもから幾ら貰ったんだ? 言ってみろよ!」

 

 フランスメディアからのバッシングに腹を立てた大陸派のシンパ、と言ったところだろうか。

 二水も彼の言いたいことは分かったが、反論の仕方が思い浮かばない。どんな言い方をしても余計に怒らせる気しかしない。そもそも相手にしなければ良いのだが。

 とは言え全く無視するのも気が引けたので、二水は当たり障りの無い話で誤魔化すことにした。

 

「いや~、随分と流暢な日本語ですねえ。びっくりしましたよ」

「流暢も何も、その方恐らく日本人ですわよ」

「えっ!? 日本人が何でこんなこと……」

「さて? 旅行中にテログループに感化されたか、移住したはいいものの職を失って路頭に迷っていたところを勧誘されたのか。何にせよ、些末なことですわ」

 

 身も蓋もない楓の指摘を受けて、男の目線が動く。矛先が変わったのだ。

 

「お前……知ってるぞ。何とかって会社の娘で、貴族だったな。お前の会社も海洋派なんだろう?」

「あら、流石わたくし。有名人ですわね」

「ハッ! 汚いことして金稼いで、それをブンヤどもに揉み消させているってわけか。上流階級様の考えそうなことだ」

「想像力が豊かなのは結構ですけど。もう少し建設的な方向で活かしては如何?」

 

 両腕を機動隊員にがっちり拘束されたまま、男は口だけを盛んに動かす。

 楓は真正面から怨嗟を浴びながらも、涼しげな様子で流している。

 流せずに男のペースに乗せられたのは、むしろ二水の方だった。

 

「待ってください。私たちはそんなことしていません。楓さんは、そんなことしません」

 

 自分だけならいざ知らず、楓のことまで言及されては黙っていられなかった。

 

「惨めだな。欧米人の顔色窺って、金持ちに尻尾振って。それでジャーナリストを名乗れるのかよ」

「グランギニョルのお嬢様だから、お金持ちだから一緒にいるんじゃありません。楓さんだから、一緒にいたいって思うんです」

 

 優雅で、気品高く、よく気が回り、仲間想いで、好きな娘のことになると暴走する。それら全てひっくるめた上で、楓は二水の憧れだった。憧憬は理解から最も遠い感情だと言われるが、二水の場合は――少なくとも他人よりは――理解した上で憧れていたのだ。

 

「見苦しいんだよ。女特有の感情的な庇い合い。どうせ腹の中じゃあ、マウント取ることばかり考えてるくせに」

「貴方、妄想が過ぎますわよ」

「女の言う友情ってそういうもんだろ。それとも何か? もしかしてお前らレズか?」

 

 そう言って口の端を皮肉げに歪めた男に対し、楓は一瞬たりとも躊躇わずに言葉を返す。

 

「わたくしはそうですが、それが何か?」

「開き直りやがった。『何か?』じゃねーんだよ。てめえだって親父とお袋から生まれたんだろうが。その親の営みを否定するような真似して、悪いと思わないわけ?」

「思いませんわね。貴方のご家庭では、同性を愛したら磔にされ火あぶりにされるんですの? それは大変難儀ですこと。お悔やみ申し上げますわ」

「てめえ……喧嘩ならいつでも買うぞ? あぁ!?」

 

 口から泡を飛ばさんばかりに食って掛かる男。全身を必死に揺さぶるが、自分よりずっと体格の良い男たちに拘束されているため、叫び声だけが威勢よく跳ね回る。

 

「大人しくしろっ!」

「暴れるな……暴れるなよ……!」

 

 それまで黙していた二人の機動隊員も、男が全力で暴れようとするので、手に力を込め直しているようだ。

 

「お巡りさんよお、この女どもも捕まえてくれよ。悪徳企業と、人の不幸を飯のタネにする卑しいブンヤだ。この女どもを――――」

「分かった分かった。お前さんの言う通り、女ってのは悪辣な存在だ。だからお前さんのように純粋で良心的な男が近寄ったら駄目なんだ」

「男は男同士、仲良くしようぜぇ」

 

 男を左右から挟んでいる機動隊員たちが密着を強め、体を無遠慮に押さえ付けて再び暴れ出せないようにする。

 挟まれている方は堪ったものではないだろう。

 

「さっ、触んじゃねえ!」

「触らなきゃ逮捕できないでしょ」

「女の子とは楽しくお喋りしておいて、俺たちとは仲良くできないってのか? それってぇ、男性差別ですよね?」

 

 そのまま二人と一人は警察の装甲車内に入っていき、やがて騒ぎ声もピタリと止んだ。

 二水は呆然と立ち尽くした後、暫くして思い出したかのように呟く。

 

「何でお巡りさんまで日本語なんでしょうか」

「二水さん、ご存じないんですの? フランスでは今、日本のサブカルが密かなブームですのよ」

「一体どんなサブカルなんですかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パリ同時多発爆破事件。

 メディア関係者を中心に数十名もの重軽傷者を出したこの事件、奇跡的にも死者ゼロで終息を迎えることができた。

 犯行グループのメンバーに複数の日本人が含まれていた事実は、後に欧州内の一部ゴシップ誌から『()()()()以来の日禍論』と騒がれることになる。

 

 事件直後、パリ市内の日本大使館に保護された二水。彼女は館内に小さいながら個室を宛がわれた。

 個室の中、二水はベッドの上に腰掛けて気まずい想いでじっとしている。何故気まずいかというと、そのまま大使館内について来た楓が部屋の中で佇んでいるからだ。

 やがて俯いていた二水が意を決して顔を上げる。

 

「……さっきは、すみませんでした。楓さんは私のことを心配してくれたのに、あんな、子供みたいなこと言って」

 

 頭が冷えたせいか、あの時は感情的に反発してしまった二水も、ようやく素直になれた。

 

「共にリリィとしてチャームを振るっていた頃。『二水さんはわたくしのようなリリィにはなれない』と申し上げたこと、覚えていますか?」

 

 楓は二水の謝罪には答えず、爆破事件の折に言いかけた台詞の続きを口にする。

 

「はい、勿論忘れたりなんかしません」

「あれは今でも同じですわ。今の二水さんはリリィでも警察官でも軍人でもなく、ジャーナリスト。貴方の得物はカメラとペン。二水さんには二水さんならではの戦い方があるでしょう」

「それは、その通りです」

「そして二水さんのような方が存分に輝ける世を維持していくことこそ、わたくしたちの務めと心得ていますわ」

 

 滔々と語りながら、楓は二水のすぐ前まで移動してから腰を屈め、ベッドに座る二水と目線を合わせた。

 二水は一瞬だけ目を逸らしそうになるものの、自分の顔を捉えて離さない青い瞳に、自分の姿をあるがままに映し出す青い瞳に、すぐに惹き込まれて離れられなくなる。

 

(楓さん、昔と同じだ。昔と同じ、眩しいままだ)

 

 二水は言葉にはせずとも、密かに心配していた。楓が数年来の懸想の相手に失恋したことで、何か変わってしまったのではないかと。

 だがそれは要らぬお世話だった。

 

『夢結様に愛想を尽かしたら、いつでも歓迎いたしますわ~!』

 

 いつの日だったか、楓が放った軽口は本当に軽口だったわけである。本当はそんな事態になるなど信じていないし、望みもしない。楓は今も昔もそういう人間なのだ。

 昔から彼女のことを見ていた二水はよく知っている。確固とした自己を持ち、同時に周りの仲間たちへさりげなく気配りをする彼女のことを。

 自分とは違う、自分にはできないことをやってのける。そんな彼女だから二水は惹かれたのだ。

 

「……いや、でも、ちょっとおかしいですよ。テロ事件中の安否確認なんて、グランギニョルのご令嬢自ら果たすべき務めじゃないですよね?」

「…………」

「いや、勿論私としては嬉しかったんですけど。でもグランギニョルの次期総帥が、テロ発生中の街中を歩き回るのはどうかと思うんですが」

「…………全く、細かいことに拘りますわねえ!」

 

 楓の態度が一変した。

 

「細かくないですよぉ」

「細かいですわ! 小さいですわ! これだからチビッ子は!」

「チビッ子じゃないですぅ! もう大人ですぅ!」

 

 二水が柄にもなく一生懸命に否定する。

 すると何を思ったのか、楓の顔が近付いてきた。二水の前髪を手で掻き分けると、露わになったおでこに軽く音を立てて口付けをした。

 

「んなっ!? なななななななっ」

「フフフ、この程度で真っ赤になるとは。やはりお子ちゃまのチビッ子ですわね」

 

 二水が両の目をパチクリさせて、口をパクパクさせる。

 その様子がおかしいのか、楓は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「好きな人にされたら、誰だってそうなりますよ……」

「何か仰いまして?」

「いえ、何も!」

 

 こうして二水の欧州出張は「無事に」とは言い難いものの、一応の成功を収めることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、帰国して休暇を挟んだ二水は本来の職場へと出勤した。

 ここで上司の承認を経て、出張の成果である記事をようやく形にできるのだ。

 本社ビルの国際部、懐かしささえ覚えるそのオフィスに二水が帰還を果たす。

 

「あーーーーーーーーーっ!」

 

 オフィスに足を踏み入れて早々、けたたましい叫びが二水の耳に飛び込んできた。

 奇声の主は、この部屋の主だった。一番奥にある自分のデスクの前で仁王立ちし、天井を仰いで咆哮している。

 

「ぶ、部長? これは一体……?」

「二川さん、これ見て……」

 

 困惑する二水の横から同僚記者が新聞紙を差し出してくる。それは同業他社(ライバル)が発行した先日の新聞だった。

 ちょうど二水が巻き込まれたパリでの事件について、社説で論じているようだ。

 

 

 

 

 


 

 遠くフランスで起きた衝撃的な事件から幾日か経った。

 犯行グループの雑多な国籍によって当初は複雑視されていたこの事件も、全貌がだんだんと分かってくる。

 大陸派を激しく批判するフランスメディアへの報復。それが彼らの動機であった。

 いかなる理由があろうとも、言論が脅かされる事態に陥ってはならない。社会の公器であるマスメディアが抑圧されるということは、その社会全体がいつ抑圧されてもおかしくないことを表していた。

 この事件以降、欧州各国では大陸派が疎まれて海洋派が勢いを増している。

 

 だがちょっと待って欲しい。本当にその道で良いのだろうか?

 

 未だ多くのヒュージネストの脅威に曝され、塗炭の苦しみに喘いでいるアフリカ・中東地域。そんな彼らに人道的見地から手を差し伸べようというのが大陸派の主張である。

 自分たちさえ良ければいいという『自国ファースト』の風潮は、国際協調の理念に泥を掛ける行為だろう。

 以前から、隣人を思いやる大陸派の人々への誹謗中傷は目に余るものがあった。今回の事件はそういった攻撃に対する義憤の表れなのである。

 いかにジャーナリストといえども無謬の存在ではない。ペンが容易く人を傷つけ得る事実を自覚し、いかなる時もファクトチェックを欠かさず実行するべきだ。それを怠ったフランスメディアに自戒と猛省を促したい。

 言うまでもなく、この問題は日本においても他人事ではなかった。

 助けを求める声なき声を黙殺してはいないだろうか。

 言論の自由を盾に他人を傷つけてはいないだろうか。

 遠き欧州の地を他山の石として、日本人は思い遣りの精神を養わなければならない。

 それにつけても、今必要なのは政権交代ではないか?

 

                                 (夕日新聞 論説委員)

 


 

 

 

 

 

「えぇ……」

 

 社説を読んだ二水はますますもって困惑した。

 文章の繋がりが所々おかしいのは、まだいいだろう。だんだんポエムと化しているのも、まあ許容範囲だ。

 しかしながら、前半部分でテロを批判しつつ後半では擁護している矛盾はいかがなものか。

 

「確かこの新聞社って、日本の台湾外征は批判してたような」

 

 いっそ清々しいまでの変節ぶり。記者という仕事に対してそれなりの矜持を持つ二水にとって、驚き呆れるばかり。

 

「二度と! ジャーナリストを! 名乗るんじゃあないよ!」

 

 尚も歯を剥き出しにして吼え続ける部長。

 言論封殺を許容するかの如きライバル紙の論調は勿論のこと、今回は彼女たちの身内までも被害を被っている。

 文句の一つや二つや三つ、言いたくなるというものだ。

 とは言え、そんな突っ込みどころ溢れる文にも見るべき箇所はある。最後の方の、極々一部分の話だが。

 

「他山の石にしないと」

 

 二水は自らにそう言い聞かせてから、久方ぶりに自分のデスクに着いた。

 

 

 

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