キセキの世代の敵であろうと思う   作:naonakki

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第四話

 ジェイソン・シルバーとナッシュ・ゴールド・jrによって、中学バスケ界が注目を集めている中、高校バスケ界もまた波乱を呼び寄せていた。

 

 数多の出場校がぶつかり合い、日本一の高校バスケチームを決めるインターハイ。

 その会場に詰めかけた多くの観客、そしてこの全国大会に駒を進めた各チームから放たれる熱気が会場中を包んでいた。

 しかし、それでもどこか盛り上がりに欠ける部分があった。

 その理由は明白であった。

 

 

 

「――うぉっ、やっぱすげえな洛山高校、敵なしじゃねえかよ」

「本当にな。ここ何年も優勝してるもんな……」

 

 現在、コートで試合しているのは優勝回数最多となる、最古にして最強の王者、洛山高校である。

 まだ一回戦であるものの、敵チームも毎年ベスト8内に名を連ねる強豪校である。しかし、その勝負はあまりにも一方的である。

 

「特にあの三人だよな……。恐ろしいよな、あれで一年生だって言うんだからな。あんなのがいたんじゃ今年も洛山高校の優勝は間違いないな」

「……そうだなぁ。ま、そんな洛山高校とは違うブロックになった俺たちはラッキーだったな」

「違いない」

 

 コートの景色をどこか遠い世界の出来事かのようにぼーっと見つめる彼らの視線の先には、敵チームを蹂躙する実渕玲央、根武谷永吉、葉山小太郎の三人がいた。

 元々、超が付くほどの強豪校だった洛山高校だが、彼ら三人の加入により、その強さに益々磨きがかかり、結果として他校と比較しても頭二つほど抜き出た状態へとなっていた。

 優勝は確実とされ、他チームが歯向かおうとする気力さえ失わせるほどだった。

 

 そして、そのまま試合は盛り上がり所も無く洛山高校の圧倒的勝利で幕を下ろした。

 

「……さて、じゃあ俺たちもそろそろ行くか。もう少しで試合だしな」

「まあ、俺たちの対戦相手はラッキーで勝ち上がって来た無名高だ、気楽に行こうぜ」

 

 試合結果を見届けた後、どこか気の抜けた雰囲気を醸し出しながら歩き出そうとする。

 

「先輩、大変ですっ!!」

 

 慌てて駆け寄ってくる男子生徒がいた。

 その表情は青ざめており、よほどの事態が起きたことを如実に語っている。

 

「どうした? 何があった?」

「はぁっ……はぁっ、次の対戦相手のチームが無名高だったので、どんなところか気になって様子を見に行ったんですが、と、とんでもない選手がいたんです!」

「とんでもない選手? 誰だそれ?」

「ちょ、ちょうどあっちの方に――」

 

 そう言われて、彼が指さす方へ視線を向ける。

 そして、すぐになぜ彼が慌てていたのか皆も理解する。

 先ほどまでののんびりとした雰囲気から一変、蜂の巣をつついたように慌てだす。

 

「お、おいっ、あれ、昭栄中の木吉鉄平じゃないか!?」

「……そ、それだけじゃないぞ、後ろにいるのは花宮真じゃないか?」

 

 皆が見つめる先には、チームメイトと楽しそうに談笑する木吉とそんな木吉を鬱陶しそうに見つめる花宮だった。二人が同一のチームメイトであることは、身に着けているユニフォームが証明していた。

 

 先ほどまでコート上で無双を果たしていた、実渕玲央、根武谷永吉、葉山小太郎、この三人と同格の存在――『無冠の五将』と呼ばれた二人である。

 

「う、嘘だろう? どうしてあの二人が無名高になんて……」

「ちょっと待て……、一番後ろにいる奴も見たことあるぞ」

「…………あいつ、帝光中の元キャプテンの虹村じゃないか?」

「虹村って、キセキの世代を率いていた奴だよな……。一時は中学生最強とか言われてた……」

 

 その虹村は、最後尾から満足そうにチームメイトの姿を見つめていた。彼は何かを期待しているようにワクワクした様子を見せており、その瞳にはここではないどこか遠くの景色が映っているようだった。

 ちなみに、ただでさえ初めての全国大会の舞台に緊張しまくっていた日向達は、周りからの多くの視線に耐え切れず、生まれたての小鹿のようにぶるぶると震えている。普段、気の強いリコでさえ、その表情は緊張で強張っている。

 

「……ど、どうなっているんだよ、無名高のはずじゃなかったのかよ?」

「お、おい、学校名はなんて言ったっけ?」

 

 そう問われた男子生徒は慌てたように記憶を探る様子を見せる。

 

 

 

「え、ええと、確か――――、誠凛高校です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無名高である誠凛高校の名前は、たちまちのうちにその名前を周囲に轟かせていく。

 インターハイ初出場にして、その一回戦の試合内容はあの洛山高校の圧勝劇を上回るほどであった。

 木吉鉄平、花宮真、虹村修造――、中学生時代その名を全国に轟かせた、名実共にトップクラスのバスケプレイヤー達が同じチームに所属したという事実も他校に衝撃を与えた。

 しかし、さらに一人。無名であるものの、その三人をも上回る実力者、氷室辰也もその存在を周囲に知らしめていく。

 そして他のチームメイトである日向達も始めこそ緊張していたが、落ち着いてからは全国大会にふさわしいプレーを見せていく。

 

 他校が急いで誠凛高校についての情報を集めていくと、驚きの事実が発覚していく。

 今年バスケ部が創設されたばかりの新米チームである事。さらに部員が全員一年生である事。

 まさにダークホースであり、誠凛高校は二回戦、三回戦と危なげなく勝ち進んでいく。

 そして、別ブロックでは、洛山高校も順当に勝利を収めていく。

 

 洛山高校の優勝で終わると思われた今年のインターハイ。

 それは、誠凛高校の登場で急に結末が分からなくなり、否が応でも盛り上がっていく。

 そして、とうとう決勝の時がやってきた。

 

 

 

 会場は満席。皆、これから始まる熱い試合が待ちきれないとばかりに落ち着かない様子である。やがて、両チームの選手が入場してくる。その瞬間、会場中が大歓声で包まれる。

 

 洛山高校 VS 誠凛高校

 

 果たしてこの展開を誰が想像できただろうか?

 幾多の強豪校を圧倒的差をつけてなぎ倒してきた両校の激突。その結末がどうなるか誰にも想像がつかない。

 

 

 

 そして選出達もこれから始まる試合が楽しみとばかりに期待の表情を浮かべ、敵のチームを見つめる。

 

「――まさか、ここであなた達と戦うことになるなんてね? それにしても意外だったわ。特にあなた達二人が一緒のチームにいるなんてね」

「まったくだ、お前らが一緒のチームなんて違和感しかねえぜ」

 

 実渕と根武谷が見つめる先には、早く試合がしたいとウズウズしている木吉と面倒そうな態度を見せる花宮と、対照的な二人がいた。

 

「黙れ、ぶち壊すぞ? ……くそっ、虹村の奴の口車に乗ったせいでこんなことに。やっぱり別の学校に行くべきだった」

「まあまあ、そう言うなよ花宮? 俺たちこれからもチームメイトなんだし、楽しくやっていこうぜ!」

「そうだぞ、花宮。楽しんでこーぜ!」

 

 ヘラヘラと陽気なノリで花宮の肩に腕を回し、明るく諭す虹村と、同じく明るく笑いながら元気よくそう言い、花宮の肩を叩く木吉。この二人の言動に花宮は額に血管を浮かばせ怒りを明確に表すが、抵抗しても無駄だと分かっているのか、これからの戦いにこれ以上無駄な思考をしている余裕は無いと判断してか、無視を決め込む。

 

「……くそ、こいつら全員暑苦しくてうざくて仕方ねえ。誰か俺と馬が合うやつが一人くらいいてもいいだろ。……まあ来年に期待か」

 

 花宮の独り言は、歓声にかき消され誰の耳に届くことは無かった。

 

「……ははは」

 

 そんなチームメイトの様子を見て、苦笑いを浮かべる氷室。

 本来、日本に来るのは来年になる予定だったが、シルバーが日本に渡ったと同時に無理を言って日本に来て、シルバーがやがて入学すると言った誠凛高校に入学していた。

 氷室は、シルバーとバスケをする日々を楽しく思うと同時に日本のバスケのレベルの低さに少々がっかりしていた。

 ……けど、まあ。

 

「ねえねえ、氷室だっけ? 試合見てたよ! 俺、あんたと戦うのちょー楽しみにしてたんだよね! 今までの試合は退屈だったからね……」

「……あぁ、よろしくな」

 

 葉山からの言葉を受け、その考えを改める。

 これからの試合は楽しめそうだな……。

 冷静な様子を見せつつ、その内を戦意の炎で満たしていく。

 

 

 

 そして、とうとうインターハイ決勝が始まった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、やってるやってる」

「凄い観客だな……、この前の試合の時にも思ったが、日本のバスケでもこれだけ盛り上がるもんなんだな」

 

 観客席の最上部、そこにこの人ごみでも一際存在感を示す集団が現れた。

 大の大人を遥かに上回る肉体を備えた彼らを見て、誰も中学生だとは思わないだろう。

 周囲は「……あそこにいるの、この前全中を制覇した――」、「あれ、シルバーとナッシュじゃないか?」と騒ぎが大きくなっていく。

 しかし、シルバーもナッシュも気にした様子を見せることなく、その視線をコートに向ける。

 

「流石だな。洛山高校相手にリードを守ってるな。……まあ、そうでなくちゃ困るがな」

「……ほぉ、あれがシルバーが言ってた奴らか。確かにうまいな。……ふ、やはり俺も日本に対する認識を改める必要がありそうだな」

 

 コート上では、無冠の五将である三人がいる洛山高校相手に苦戦しつつも着実に試合展開を自分たちのものにしている虹村達の姿があった。

 

「あれが俺たちが入学する誠凛高校か……、辰也の奴、楽しそうにバスケしてるな」

 

 シルバーの隣に立つ火神は自分も混ざりたいという風にウズウズした様子で試合を見つめる。

 

「……ちっ、なんでこんな暑苦しいところに俺が来なくちゃいけねえんだ」

 

 一方、シルバーに強制的に連れてこさせられた灰崎のみがコート上の試合にほぼ無関心であり、だるそうな様子を隠しもせずぼうっと立っている。

 

「そう言うな灰崎、あれが来年俺たちが所属するチームだ、お前の大好きな虹村さんもいるんだ、しっかり見とけ」

「誰が大好きだ。適当なこと言ってんじゃねえ、ぶっ殺すぞ」

 

 灰崎はそう言いつつも、渋々と試合を見つめる。なんやかんや、灰崎も今ではバスケに対する情熱を持ち、取り組んでくれている。これも虹村の存在のおかげである。

 

 

 

 

 

 試合は接戦であったが、それでも誠凛高校は洛山高校にリードを許すことなく、そのまま試合は終了となった。

 試合終了のブザーと同時に、今日一番の大歓声が会場を包んだ。

 中学の全国大会に続く大波乱であった。

 創設一年目の、一年生のみで構成された無名高による優勝劇。そんな漫画のような展開に周囲も興奮を抑えきれない様子だ。

 

 

 

 ……ようやくここまで来た。

 結果的には、俺が想像していた以上のメンバーを集めることができた。

 

「皆、既に言ったことだがあれが俺らが来年、所属するチームだ」

 

 その俺の言葉にナッシュ、火神、灰崎は振り向いてくる。

 

「……でもよお、俺らの相手になる奴なんているのか? なんかすげえ奴らがいるって言ってたけどよ」

 

 火神のこの言葉に俺は、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「あぁ、とんでもねえ六人の強敵が来年、俺たちの前に立ちはだかってくる。今も、その実力をどんどん伸ばしているだろう……。どれだけ強くなってくるのか、この俺にも未知数だ。……もしかしたら負けるかもしれない、それほどの敵だ。俺が保証する」

 

 原作でキセキの世代に敗北したシルバーたちの姿を思いだしながらそう答える。

 もう流れは原作とかなり異なっている。何が起きても不思議ではない。

 

「お、おいおい、シルバーが負けるなんてあり得るのかよ? 一体誰だよ、そいつらは?」

 

 俺の自信満々の言葉に冷や汗を浮かべながらそう問いかけてくる火神。

 灰崎は俺が言っている強敵というのが、自分のかつてのチームメイトであることを何となく察しているのか、納得した様子である。

 

「まあ、いずれは分かることだ。それまで楽しみにしとけ」

 

 その俺の言葉に、火神は納得はいっていない様子だがそれ以上は追及はしてこなかった。

 

 キセキの世代が全員同じ高校――洛山高校を目指すことは青峰から確認している。前に電話で確認したから間違い無い。

 つまり、来年また今日と同じ組み合わせで試合を迎えることになるのだ。そして来年は、今年なんて比較にならないほど熱い試合になるだろう。

 

 ちなみに青峰の電話番号を知っているのは、以前試合後に青峰から聞いてきたからだ。どうも俺は青峰からは気に入られたようだった。ちょくちょく連絡くるし。

 あれだけ煽ったからむしろ嫌われているかと思っていたが、そうでもなかったようだ。

 多分だけど、自分より強い奴が見つかって嬉しいのだと思う。知らんけど。

 

「よし、じゃあ早速帰って練習するぞ!」

「おっしゃ!」

「はあっ!? 今日も練習するのかよ!?」

 

 やる気を見せる火神とナッシュ、そして嫌がる灰崎を引きずって会場を後にする。

 

 

 

 ……はぁ、早く来年になってほしいぜ。

 




更新遅くなってすんません。

全中→インターハイの順にしたけど、現実だと日程逆?
まあその辺は気にしないでくれると嬉しい……。

ちなみに時系列は、二話→三話→一話→四話です。
ややこしてくすみません。

最後に感想ありがとうございます!
更新楽しみにしているというコメント大変励みになっております!
(なるべく早く更新できるように頑張ります……)
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