引き続き、転生者フィーバーをお送り致します。
ではでは!どうぞ!
大亜連合の襲撃により、完全に戦場と化した横浜の大通りの一角では、達也のクラスメイトや深雪を中心とした警戒チームが敵と戦おうとしていた。
「…って!戦闘用ロボット!?」
ビルの死角からキュラキュラと無限駆動を鳴らして現れた直立式戦闘用ロボットには、右手にチェーンソー、左手に火薬式の杭打ち機、右肩に榴弾砲、左肩に重機関銃が取り付けられているそれは、かなり物騒且つ不恰好である。それが四台。それも十人近い兵士をわらわらと連れてきた。
「数多ッ!?」
「………ちょっとめんどくさい、かも…!」
想定外の数に一向が嫌な汗を流した時だった。
『!!??』
何かの叫びと共に、突然空中からバカデカい光の大剣が振り下ろされ、地面を閃光で埋め尽くした。その後に残っていたのは、先ほどまで戦闘用ロボットだった何かと黒焦げの兵士たちのみ。
「………ふう…」
『………』
驚くことに、その事象を起こした張本人は自分たちと大して歳が変わらなさそうな黒いロングコートを着た一人の少年だった。特徴的なのは、ピコンとアンテナの様に誇張してるアホ毛である。右手には杖のように突き立てられた剣が握られていた。
「やっぱ広域制圧はアルトリアに限るな」
「………………誰?」
「ん?あぁ俺?」
少年が質問の主…エリカたちに振り向くと、少年から半透明の金髪の女性のような靄が一瞬現れ、幻のように掻き消えた。それと同時にアホ毛がペタリと元に戻る。
「俺の名前は『
少年がカッコよく決めようとした直前、上空から粘着質の糸が少年…霊我の手を絡め取って街の彼方へと持っていってしまった。
「………何だったんだ?」
「…さぁ?」
ポカーンとするレオに、エリカも気が抜けたように答えるしかなかった。
横浜の地下シェルターへと続く、薄暗い通路。魔法科高校の生徒たちの大半が現在教官たちとそこへ避難する道中だった。
しかし、一同は同じように地下シェルターを目指す二人の不審者と出くわした。
一人はやけに筋骨隆々で目つきが若干鋭く、大人が学生服を着ているような感覚さえ憶えるような青年。
もう一人はピッチリ綺麗に整ったスーツ…所謂執事服に身を包んだ、白くなった髭と頭髪を持つ壮年男性。しかしどこか若々しさも感じ取られる。
勿論敵と思った魔法科高校の生徒…コンペの警備隊に志願した生徒たちへ魔法を使おうと構えたが、二人は両手を上げながらそれを遮った。
「お待ちください。我々は敵ではありません」
「取り敢えず話を聞いてくれねぇか?」
「………名乗れ」
生徒…一高の元生徒会副会長の服部が命令すると、二人はすんなりと答えた。
「条ノ内城護。こんなナリだが一応高校生だ」
「ロズワール家の
「……?」
服部は聞いたこともない名前により一層疑問を憶えたが、その疑問は壮年の男性…セバスによって中断を余儀無くされた。
「それよりも……後方の通路から武装した連中が近づいて来てます。全員ハイパワーライフルで武装してるようなので、下がることを勧めますが」
「ま、詰まる所俺たちに任せろってこった」
「なに!?」
「つーわけだ、チェンジで」
青年…城護がポンと服部の肩に手を置いて一同の右側、先ほどセバスが言った通路の曲がり角と生徒たちの間に入るように陣取った。
そして、それを合図にしたかのようにゲリラ兵とおぼしき集団が、銃…ハイパワーライフルを一斉に連射してきた。
迫り来る凶弾を、セバスは己の身を鋼のごとく硬化させて、城護は翳した右手から黄色のスライム…タロットカードの14番、『節制』のスタンドである『
弾幕が途切れるも、そこにあったのは生徒たちを守るように立つ無傷の二人だった。
「この程度で我々を殺せると思っていたとは…」
「やれやれだぜ………」
無傷の二人に驚いている兵士たちに、二人はトドメを刺しに入った。
セバスから射殺すような威圧感と共に放たれた拳撃と、城護から現れた光るメロンのような人型スタンド…タロットカードの5番、『法皇』のスタンドである『
「…さて、邪魔者は排除致しましたので行きましょう。この先には兵士はいないようです」
「念のため天井に注意しとけよ」
そう言って先へと進む二人に、聞きたいことが山のようにある服部を先頭にして一同はシェルターへと進んでいった。
「数が、多い……っ!」
雫が目にしたのは、自分たちと一緒に街の人々を避難させるために呼んだダブルローターの輸送ヘリが上空に姿を見せ、着陸しようと高度を落としている最中に空気中から湧いて出たとしか言いようの無い唐突な登場を見せたのは、明らかに季節外れの黒い蝗の大群だった。
ポーチから取り出したCADで、ループ・キャストの『フォノン・メーザー』を撃って蝗を焼き消すが、まるできりがなかった。ほのかはこういった状況に有効な魔法が使えないが、このままではヘリが危ない。
そう思われた矢先だった。
突然地上から凄まじい風圧が飛ばされ、蝗の群れをヘリから無理矢理離れさせた。直後に空から炎に包まれた翼竜と鰐のような列車が空にレールを敷いて蝗の群れに突撃し、あっという間に全ての蝗を消し去った。
「次はどっちだ時喰王ニキ!?」
『こっちや!先行くで!!』
「せっかちだな…ッ!」
炎が消えた翼竜の上に乗る白い服の男が声を張り上げると、列車から関西弁が聞こえてきた。そのまま列車は雄叫びを上げて別の方向に行くと、翼竜もそれを追いかける。そして地上にいたゴリゴリマッチョも、クラウチングスタートの構えを取った直後、アスファルトを吹き飛ばして追いかけていった。
「…………雫…私、幻覚見てたのかも…」
「………奇遇。私も」
二人はその様子に目を疑うしかなかった。
その後真由美の魔法で敵兵たちを掃討し終え、地上にいる摩利、桐原、壬生、五十里、千代田たちにほのかが光学迷彩の魔法で姿を隠したヘリが回収に入った。
『お待たせ摩利。ロープを下ろすからそれを使って上がってきて』
「ああ、頼む」
真由美のせいで呆気なく終わってしまったために微妙に釈然としないものを感じながらも、摩利は残りのメンバーに声を掛ける。彼女たちが周囲の警戒を欠いてしまった事を責めるのは難しいだろう。さっきまで激戦の渦中だったが、今は光学迷彩を解除したヘリが頭上から守ってくれている。安堵感を覚えても致し方無い。が、ゲリラの十八番は、このような状況での不意打ちである。
「危ない!」
摩利がいち早く気づき、桐原と五十里がそれぞれ壬生と千代田を庇うも、銃弾は彼らに迫り…
…横から飛んできた
『!!?』
ゲリラたちや摩利たちまでもその結果に驚いていると、不意にどこかからウエスタン風の音色が聞こえてきた。
思わずゲリラたちと摩利たちが音色が鳴る方を向くと、オレンジのヘルメットを被り、同じくオレンジのズボンを履いて、黒のライダースを着ている作業員のような男がハーモニカを吹きながらゆっくりと歩いてきていた。そしてピタリと止まると、ハーモニカの演奏を止めて小さく、しかしはっきりと言った。
キメ台詞だったのだろうか、妙にキリッとした顔で言ったが、後ろにいた三本の刀を腰に提げた男がハリセンのように黒刀…秋水の峰でヘルメットをガンと軽く叩いた。
「…冗談だ。それよりさっさと終わらせるぞ」
「おう」
作業員…6号ニキこと
明人が左手でアプリチェンジャーをずらすと、駅のホームと線路のようなパーツが露になる。明人はそのレールの上に右手で持ったビルドレッシャーを乗せ、台詞と共に勢いよくスライドさせた。
ビルドレッシャーをスライドさせると、明人の前に踏切の遮断機のようなエフェクトが現れ、遮断機が上がると同時にビルドレッシャーが線路を展開しながら中央の円を通り抜け、宙を走る。白線の外側にいたゲリラ兵は、無惨にもビルドレッシャーに弾き飛ばされて戦闘不能となった。
そのまま遮断機は明人の体に装着され、明人はオレンジのスーツに遮断機のような模様のベルトを纏う。そしてビルドレッシャーが明人の顔の周りをグルグルと回り、レールがマスクとなってメットに埋め込まれて、明人は『トッキュウ6号』に変身した。
「よし、いくぞ」
あまりのできごとに、ポカンとなる摩利たちを置いて、明人は誘導棒…ユウドウブレイカーを構えてゲリラたちに向かって走り出した。
「……って、刀三本……?曲芸か?」
閻魔を口に咥え、初代鬼鐵を左手に、秋水を右手に持ったリューマに、桐原は呆れたような声を出した。と、リューマは桐原の方を向いて器用に言い放った。
「それはどうかな…ッ!!」
そう言うと同時にリューマは大きくジャンプ、両手の刀を閻魔と交差するように振り上げ…
叩きつけるように刀を振り下ろした。その威力で凄まじい土煙が上がり、兵士たちが紙細工のように軽々と宙を舞った。その威力は曲芸のものではなく、事実の剣術であると、桐原は同時に理解させられた。
しかしそんな感傷に敵が浸らせてくれるはずもなく、通りの奥から戦闘用ロボットが更に5台おかわりされてきた。
「面倒だな。一気にいくぞ!」
「任せろ」
明人がユウドウブレイカーのレバーを押すと、何かを装填するスロットが出てきた。明人はそこに金色のドリルを持つ青い列車…ドリルレッシャーをセットし、スロットを閉じ、クルリと回してキャッチした。
「はあああぁ…!!」
「『三刀流・百八』……!」
音声が鳴ると、ユウドウブレイカーの先端にドリルのように回転する螺旋状のエネルギーが形成されていく。更にリューマも刀で円を描くような体勢を取り、刀をゆっくりと振りかぶる。
線路を形成しながら放たれたドリル状のエネルギーの先端にリューマが放った三つの飛ぶ斬撃が加わり、スクリューのように回転を加速させて5台の戦闘用ロボットを纏めて貫いた。戦闘用ロボットは虚しくバチバチと火花を散らし、次の瞬間同時に大爆発した。
「…よし、この辺りは終わりだな。次いくぞ」
「ああ」
猛ダッシュで街の方角へ向かう二人を見送った摩利たちは、真由美が自分たちを三回呼ぶまでただただ茫然としていた。尚、なぜか桐原は目を輝かせていた、と追記しておく。
さてさて、いかがでしたか?
個人的には6号ニキと三刀流ニキのくだりが一番やりたかったのでブチ込みました。
さて次回、一応主人公なのに今回は出番が一切無かった頼斗君とあの転生者がタッグで戦います!
お楽しみに!
では、また次回で。