評価が急激に減ったためにモチベーションがダダ下がりしてしまい、投稿が遅れました。
てなわけで、お楽しみください。
「え!?か、香澄ちゃん!?って、きゃっ!」
頼斗はこちらに走ってくる香澄をうぅわめんどくさっ、と思いながらも、視界の端で今にもこけそうな真由美を視認していた。いつもの真由美ならヒールをひっかけて転ぶということはないだろうが、彼女も動揺していたということだろう。
「よっ。まったく…何してんだよ」
「す、すみません…」
それを頼斗は、真由美の右手を掴んで止めた。そしてグイッと彼女の手を引っ張り、体勢を元に戻した。
「離れろって…言ってるだろ!!」
が、頼斗のそんな優しさなど知ったこっちゃないと言わんばかりに香澄は頼斗に飛び蹴りを繰り出す。頼斗はおいおい嘘だろ?と思いながら急接近してくる膝を見ていたが、達也が突如二人の間に立つ。
「へ!?ちょぅわわっ!?わーっ!!?」
そして香澄の膝を掴み、バレエのリフトよろしく持ち上げた。どうやら推進力は魔法だったらしく、発動者である香澄が設定していないベクトルへ力がかかったことで魔法は定義エラーで強制解除され、香澄は重力に従って落下する。このままでは骨折とまでは行かなくとも、これから入学式を迎えるにはあまりに凄惨な様になってしまう。
そう理解した頼斗は子供を高い高いするように香澄の両脇に手を挿し込んで持ち上げた。身長差のせいで香澄の足はプラプラと地面から浮いている。
「………!ぃやーっ!ちょっと!降ろしてー!」
「はいはい」
状況を理解し、顔を赤くしてジタバタと暴れながら香澄が叫んだので、頼斗はストンと香澄を地面に降ろした。香澄は地面に降ろされるとすぐにやって来たもう一人の少女…泉美の方へ後ずさり、CADに手を添えた。
「香澄ちゃん!?一体何が」
「泉美。コイツら、ナンパ男たちのくせに強い」
「(えぇ…?)」
今にも魔法を使おうとしている香澄に、頼斗は内心呆れていた。その後ろから迫る拳も含めてだ。そして香澄は泉美の方へ話しながらCADに手を添える。
「泉美、『アレ』やるy」
「ぅぎゃっ!!?」
そして、香澄が言い終わる前に真由美の
「香澄ちゃん!!!貴女何をしているの!!??よりによって達也君と華貫先輩の前で!!!自衛目的以外で魔法を発動させるのは、校則違反以前に犯罪だって教えてるでしょ! それを入学初日から…『校内を自由に見学したいから』と言われたから先に来たけど、もしかして別の場所でも魔法を使ったんじゃないでしょうね!?」
「あててて……え?先輩…?」
痛みを堪えながら、香澄がそ~っと頼斗を見上げたので、頼斗は右手を上げて答えた。
「ああ。お前らの姉ちゃんの一個上で、今年からこの一高の教官実習生になる、華貫頼斗だ。一応非公式だが、教官と同等の権限は与えられてる」
「………!」
「………じゃあ、ナンパ男じゃなくって………」
「単純に昔の顔馴染みだったから話してただけ」
「………」
「…香澄ちゃん?………し、死んでる………!」
完全にやらかしたと悟った香澄は、いつかの鈴音のように魂が抜けたように地面にへたり込んでしまった。そして真由美は、ハッとしたように達也たちに向き直る。
「えっと…ごめんなさい!!無茶なお願いだとは思うんだけど、ここは私に免じて、見逃して!」
真由美は素早く頭を下げたが、当の頼斗は惚けたように口を開いた。
「何言ってんだ?俺はさっきまで『綺麗に咲いてた桜見てたから』今ここで何が起きたか知らないんだが…達也君。ここで何か起きたか?」
「………いえ、何も」
「そう。なら俺はちょっと急用思い出したからもう行くわ。誘導頼める?」
「わかりました」
「よし。あぁそうそう七草。
「………はい!」
「よし。君たちも、早く行かんと席なくなるぞ。そいじゃ」
頼斗の言葉の意味を理解した真由美は頷き、それを確認した頼斗は満足げに頷き返して校舎の方へと歩いていった。
その後、改めて香澄と泉美(巻き添え)が真由美からこっぴどく叱られたことは言うまでもない話である。
その後、こっそり校内の至る所にある魔法感知のセンサーの記録をいじくって香澄の魔法の使用をなかったことにした頼斗は椅子に身を預ける。
「まったく…にしても、今年の首席は七宝か……いや絶対面倒事になるじゃん」
頼斗は顔を苦くした。というのも、七草は元々
つまり、端から見れば七草家は二つの研究所の成果だけを盗んで成り上がった、と言われてもおかしくないのだ。事実、同じ『七』の魔法師の家系である七宝と七草はあまり仲がよろしくないと言われている。
そんな両家の人間が対峙したらどうなるか……もう言わなくてもわかるだろう。
「………頼むから面倒だけは起こすなよ…?」
相も変わらず、この男はフラグ建築にかけては世界十指に入るだろう。
「しつこいなぁ…邪魔しないでくれる?七宝君」
「お前の出る幕じゃあないって言ってるんだよ。喧嘩売ってるのか?七草!」
「(………もう実習生辞めたい)」
目の前で繰り広げられる喧騒を見ながら、頼斗は仏頂面でそう思っていた。
ことの発端は、バイク部とロボット研究部…通称ロボ研による、部員の取り合いだ。
が、取り敢えず教官としての本分を全うするため、頼斗は二人の仲裁に入った。
「ハイハイストップストップミニストップ。取り敢えず二人とも落ち着きなさい。あのね…問題を止める役割の人たちが問題起こしてたらダメでしょ?七宝君は、もう少し協力を覚えなさい。今は部活勧誘期間。風紀委員だろうが部活連だろうが生徒会だろうが、互いに協力しないといけないんだから。目的が同じなのにいがみ合ってたら元も子もないってわかるでしょ?」
「………はい」
「七草も。ここは既に部活連が仲裁してるんだから、他の所で起きてるトラブルを解決するってメリハリを着けないとダメよ。ここで喧嘩してる間に別の所でトラブル起きてたらどうするの?」
「………すみませんでした」
「…よろしい。じゃ、二人とも頑張ってね?十三束君。後は任せていいかな?」
「わかりました」
二人ともひとまずは頭を下げたので、頼斗は頷いて部活連の十三束にその場を任せた。
が、ここから更に問題事が起こる辺り、彼も相当呪われているらしい。
頼斗がトラブルを知ったのは、帰宅後ビルドフォンにかかってきた達也からの電話からだった。
「民権党の神田議員が一高に…?面倒だな」
『ええ。俺も文弥も亜夜子から聞いた話ですが…来週の水曜日に取り巻きの議員たちを率いて一高に押しかけるそうです』
頼斗と達也が苦い顔をするのも無理はない。というのも、民権党の神田議員とは、最近になってマスコミに露出してきた野党の若手議員だ。ここまでは良いのだが、彼が魔法師たちから嫌われるのは、極端に魔法師に対して批判的な思考だからである。最近では『軍に魔法師が入るのはいかがなものか』と、表面上は魔法師の擁護を論じているが、その実態は…
「魔法師が国防に関われないように徹底的に排除しようとか…今や魔法先進国で魔法師を国防の戦力にしてない国なんて無いのにね…それで魔法師が国防に関われなくなって、国が侵攻を受けて陥落なんてなったらそれこそ目も当てられないよ。だいたい、新ソ連の佐渡島侵攻や大亜連合の沖縄侵攻を撃退したのも大部分が魔法師のお陰だってのにね………それで?わざわざかけてきたってことは、まーた何かやる気?」
『ええ。明日先生に『重力制御、クーロン制御、
「………大出力レーザー砲…ではなくその魔法を使うってことは…『恒星炉』?そうだね…ガンマ線フィルターはほのかちゃんで、重力制御は深雪ちゃん。クーロン制御は五十里が妥当な人選か…中性子バリアと第四態相転移はどうするの?」
『中性子バリアは水波に任せるつもりです』
「水波?……あ~、穂波さんの娘さんか。障壁魔法が得意なんだっけ。じゃあ第四態相転移は…七草シスターズ辺りで良くない?二人なら大丈夫だろうし。ただ…これには一つだけ懸念がある」
『懸念…?人選としては良いと思いますが』
「違う違う。そっちじゃなくって」
ブンブンと手を振りながら、頼斗は更に顔を苦くして口を開いた。
「七宝君だよ。今年の首席の。彼がこの事………特に七草シスターズがメインメンバーになってこの実験をするって分かったら絶対面倒事起こすもん」
『………そういうことですか』
「だからなるべく、実験の後は七草姉妹と七宝君がトラブル起こさないように注意しないとね」
『わかりました。こちらでも検討してみます』
「お願いね。それじゃ」
そう言って、この日の二人の会話は終わった。
時は遡り、四月六日の朝、福島県の砂浜は雲一つ無い晴天だった。
21世紀初頭に起きた震災の二次災害で発生した原子力発電所のメルトダウン、それによる放射性汚染物質の被害は魔法師らの活躍によって、ほぼ完全に解消されていた。
「………………」
そんな福島県の砂浜に、一人の男が流れ着いていた。
着ている服はボロボロで、まるで遭難してきたかのようだ。
さて、いかがでしたか?
やっぱダブルセブンはキャラとの絡みは作りやすいけどライダーに変身からの戦闘がもうオリジナル展開入れないと最後辺りだけになっちゃうんですよね。
あと高評価欲しいですお願い致しますorz
では、また次回で。