ウマ娘 紅の軌跡<再提出>   作:小鳥遊 小佳夏

12 / 14
クレナイの軌跡

学内レースでの復活の後、自信をつけた私は更にトレーニングを重ねた。そのままケガをする前に近づく体を取り戻すことができた。

そして時は過ぎ、有馬がやってきた。私が公式に復活する日である。どうしてもレースで勝てると踏めるだけの体を手に入れられなくて、ここまで来てしまった。正直言えばまだ足りないと思うのだけれど、そうしたらいつまでたっても出られないわよとあの時の録音を半目で見せるオウカに負けた。

実際、私が有馬への登録をしたら票が続々と集まり、まさかの一番人気で出走が決まった。

まあ予想はしていた。トレーニング続けている間も応援のメッセージや手紙が毎日のように届いていたし、時たま取材に来る記者が結構いたし。にしても、乙名史記者だったかしら? あの記者、過大に感じ取るの何とかしてほしいわね。次変なこと書いたら絶対会長と理事長に頼んで出禁にしてもらいましょう。

それはさておき。

中山競バ場。芝の香りと勝負服の感覚が懐かしい。

さて、有馬の人気を上から何人か紹介しておきましょう。

二番人気、アメリカから電撃帰国(私の介護のため)した後、目覚ましいスピードを見せるサイレンススズカ

三番人気、最近あまりレースに出てない(私の介護のため)けども出ると究極テイオーステップで勝利を収めるトウカイテイオー

四番人気、今日こそクレナイに勝って決着をつけられるか、波のあるウマ娘オウカ

きっちり私に関係のあるウマ娘が上位に来た感じね。私の紹介文?

一番人気、血の有馬から復活を遂げた軌跡のウマ娘。あの後も人気は衰えずその声援を背負って今日もトップでゴール板を駆け抜けられるか、キサラギクレナイ

なんかすっごいプレッシャーを感じなくはないわね。とはいえ、別に気にならないのだけども。

ちなみに、ルドルフ会長は観客席から応援してくれるそうだ。ルナも走ればいいと思うのだけど、今回は色々あって見送ったらしい。だが次こそはと言っていたので、次はルナも来るわね。間違いなく。

 

パドックに入ると、また横から強い視線を感じる。

「あなたは何をやっているのよ、オウカ」

「いや、あの時はこうやって宣言したっけと思ってね」

懐かしいわね。あの有馬が昨日のように思い出されるわね。

「今日こそ、しっかりと君を差し切って勝つ」

「じゃあ私はこう返しましょうか。ふふ、やれるものならやってみなさい。あのサイレンススズカでも見れなかった私を超えた先頭の景色。あなたに見られるかしら?」

あの時と同じセリフを返し、レース場内へと向かう。

 

「各場ゲートに入りました。体勢整えて・・・各ウマ娘きれいなスタートを切りました!」

ゲートが開いて一気にレース場に飛び出す。そのまま一気に加速して先頭に。

「さぁ先頭を行くはキサラギクレナイ。いつものように先頭を駆けていきます。それに続くは二番人気サイレンススズカ。クレナイに迫らんという気迫で追いついていきます」

第三コーナーから四コーナーを抜けて有馬を一周。あの時と同じ。順調に走っている。

「さぁここで後ろからオウカが上がってきた! オウカ凄い加速だ! その前トウカイテイオーも横に飛び出て加速! スパートをかけてサイレンススズカに迫ろうとしている!」

最終コーナーに入る。多分、後ろにはスズカがいる。見なくても聞かなくてもわかる。あれだけ一緒に練習したスズカなら、絶対にいる。わかる。

でも前にはいかせない。

「先頭からキサラギクレナイ、サイレンススズカ、トウカイテイオー、オウカと続いてくる!」

最終コーナーの第四コーナー。ここの立ち上がりと同時に一気に全力を出す。

「さぁ中山の直線は短いぞ! 後ろの娘たちは間に合うか!?」

「最初に立ち上がったのはキサラギクレナイ! あの時と同じ、前の有馬と同じように!! ぐんぐんと、ぐんぐんと加速していきます!!!」

「それに合わせてサイレンススズカもラストスパート! その後ろからトウカイテイオーとオウカが迫る!! 並んだ、四人が並んだ!! 年末の有馬は、夢の有馬は、いったい誰が制すのか!! 誰が勝ってもおかしくないこの状態、だれが最初にゴール板の前を駆け抜けるのか!!!」

あの時はここで転んだんだっけ。そう思いつつも、最後の、本当の最後の力を振り絞って全部の力でターフを蹴る。

「今ゴールしました!! 同着!! 同着です!! これは写真判定になるでしょう」

ゴール板を駆け抜けた後、ゆっくりと減速。うん、足に痛みはない。大丈夫。

「誰が勝った!?」

オウカの声が響く。確定板を見ると、未確定の文字が。写真判定をしているらしい。息を整えている間に結果が出た。場内に放送が響く。

「結果が出ました! 1着はキサラギクレナイ!! 血の有馬から完全復活!! 奇跡の大復活です!!」

「2着はサイレンススズカ、3着オウカ、4着トウカイテイオー、5着にライスシャワーという結果になりました!!!」

・・・勝った? ・・・勝った! 勝った!!!

だんだんと勝ったという実感がわいてきて、そのまま天に向かって叫んだ

「勝ったぁあああああああ!!!!」

それに合わせて観客席から大きな拍手が沸き上がった。

「勝てなかったか・・・」

「ふふ、私の前は誰にも譲らないから。また景色を見れるようにがんばりなさいな♪まあ、本当はちぎるくらいのつもりでいたから、私もまだまだなのでけどもね」

残念そうなオウカにそう返す。

「やっぱりあなたが強いわね。アメリカで、帰った後もしっかり鍛えられたと思ったのだけども」

「本当だよ。最後の最後で差し切ったと思ったのに」

「まだまだ。無敗のウマ娘の称号は降ろさないわ」

「「いや(いえ)、一度おろしてるじゃん(おろしてるじゃない)」」

そんなやり取りをしつつ、ライブの準備へ。

偶然にも今日の曲はSpecial record。4人で歌う曲だ。

「さぁ、ライブやってきっちり終わらせるわよ!」

「ああ!」

「ええ!」

「うん!」

 

その日のライブはいつもよりも盛り上がった気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。