ウマ娘 紅の軌跡<再提出>   作:小鳥遊 小佳夏

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血の有馬

「速い速い!! これはセイフティリード!! キサラギクレナイ、またも後続と大差をつけて今ゴール!! 二回目の天皇賞秋を制しました!!」

メイクデビューでセンターを飾った後。クレナイの快進撃は止まらなかった。皐月賞に始まるクラシック路線は難なく制覇、同時期のティアラ路線に当たるものもオークスはダービーと同日になったため集草できず、しかし前後の桜花賞と秋華賞は制覇。その後菊花賞ほぼ同時期に行われる天皇賞秋に無理矢理出走し、無理がたたったのか不調でハナ差のぎりぎりで勝利。ジャパンカップから念願の有馬へと駒を進め、辛勝ながらも勝利。クラシックながら秋シニア三冠を制した。次の年には天皇賞春に始まる春シニアから二度目の秋シニアを目指し、ジャパンカップまで無敗という偉業を成し遂げていた。まずそもそも、最初に出た天皇賞秋でハナ差勝利を不調と言われているのが凄いのではないだろうか。

そして二回目の有馬へ。ここで勝てば二度目の秋シニア三冠という日の当日。観客にはクレナイの姿を見ようと、大勢のファンが詰めかけていた。

そしてレース前のパドック。クレナイが空を見上げ、今日も快晴だなどと思っていると、ふと横からの目線を感じた。

「・・・(じーー)」

そちらを向くと、隣にいるウマ娘がこちらを見ていた

「何かしら?」

「キミがキサラギクレナイ、でいいんだよね?」

「ええそうよ」

「ボクの名前はオウカ。今日はキミに勝つ」

オウカ、オウカ・・・。ああ、あのオウカか。私が出るに出られなかったオークスを制し、その後は失速するも今年になってまた伸びてきた波のあるウマ娘。そしてチームスピカのメンバー。テイオーの時には居なかったから、オウカとの交流は殆ど無い。

にしても、ダービーとオークスを同時にはやめてくれないかしらね。さすがの私でも、移動時間も確保できないんじゃ出るに出られないし、というか移動時間が確保できても同日連戦とかさすがに勝てる気がしないのよね。

それはさておき、オウカとは強いて言えば何回か一緒のレースに出たことはあるが、全て私の後ろにいたウマ娘ね。そんな彼女が私に勝利宣言をぶつけてくるなんて、面白い。クレナイは挑発的な視線を向ける。

「ふふ、やれるものならやってみなさい。あのサイレンススズカでも見れなかった私を超えた先頭の景色。あなたに見られるかしら?」

オウカとクレナイ。互いに闘志をたぎらせつつ、出走の時間となった。

なおこの時のやり取りは皆に見られており、唯一クレナイに勝利宣言を叩きつけたウマ娘として、オウカの名前は歴史に残ることとなった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「各ウマゲートに入りました。・・・・・・・・・スタートです!!」

ゲートが開き、一斉にウマ娘が飛び出す。先頭を切るのはもちろんキサラギクレナイ。二番手にオウカ。そしてその後ろからはライスシャワーが続く。

そのまま中山競バ場の4コーナーに突入。先頭集団の順位は変わらず。そしてぐるりと一周してそろそろスパートというとき。一気にオウカがスピードを上げた。

「おっと、ここでオウカがスパート!! キサラギクレナイに並んできたぁ!! そしてそれに続くライスシャワーもスピードアップ!!! 差せるか、ライスはクレナイとオウカを差すことができるのか!!!」

スピードを上げたオウカはそのままクレナイに横並びとなり、そのオウカに"ついていく"ライスもそのまま桜花の真後ろに付け、最後に差し切る体制に入った。そして三人がもつれたままレースは最後の直線に入る

「さぁ中山の直線は短いぞ!! 後ろの娘達は間に合うのか!!」

クレナイもゴールが見え最後のスパートと足に全力を入れた時。クレナイに事故が起こった。

「っ!?!?!?」

芝に突いた右足が何かにとられ、前に出せない。咄嗟に左足で地面を蹴るも、それ以外何もできない。

「おおっっと!? これは、クレナイが転倒した!? クレナイが転倒!!!!!」

ウマ娘の最高速は優に60km/hを超える。それも成長目覚ましく、またスパートをかけたウマ娘ともなれば、80km/hを超えても不思議ではない。その状態のウマ娘が転べばどうなるか。まあ無事で済むわけがないのは想像に難くないだろう。芝にたたきつけられ、そこで私の意識は途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ボクはオウカ。波のあるウマ娘と呼ばれている。その由来は、オークスを制するも天皇賞秋では惨敗。有馬ではそこそこ。今年に入って、また調子を伸ばしてきたから。今日は念願の二回目の有馬。レース前のパドックで、隣になったクレナイに勝つと宣言した。彼女は天皇賞春の時、ううん。桜花賞も、秋華賞の時もボクの前にいた。追いつきたいと走ったけれども、追いつけなかった。だから有馬では絶対に勝つ。そのためにクレナイに勝利宣言をした。向こうはボクが誰なのかすらピンと来てなかったみたいだけど、まあボクの成績じゃ仕方がない。でもボクはクレナイのことをよく知っている。学園じゃ有名人だし、彼女の理念、すべての勝利と称号をを実現ぜんと、出るレースすべての勝利をかっさらう。ボクはティアラ路線に出るも、桜花賞と秋華賞はクレナイに完敗。ダービーと同日でクレナイが出るに出られなかったオークスのみ勝利し、これもクレナイが出ていれば取れなかった勝利と言われたことがある。実際それはそうだと思う。あの時のボクでは、絶対にクレナイに叶わない。でもそのあとトレーニングを重ねてクレナイに追いつこうと努力した。結果天皇賞春で再度負けたけど、桜花や秋華の時より、タイム差は縮まった。あの時よりももっとトレーニングを積んで得た今回の有馬。年末の中山で行われる夢の祭典。今日こそは勝ち、ボクの夢を叶える。

 

レースが始まり、ボクはクレナイの後ろに付けた。クレナイの戦法は逃げ。ボクは先行。最後までくらいついて、そのまま追い抜く。そしてラストスパート。なんとかクレナイの横に並べたところまでは覚えている。そのあとは無我夢中だった。無我夢中に走って走って、ゴール板を駆け抜けた。ボクがクレナイの隣に並んで、そのままゴールしたはず。多分、ぎりぎり。あそこから抜け出せるほど、ボクはクレナイより強くはないし、それを許してくれるほどクレナイも弱くはない。結果は、勝ったのはどっち。そう思って確定板を見ると、トップにボクの番号が、そして二番にはライスシャワーの番号が出ていた。

なぜ? クレナイに何かあった? そう思ってゴールに目を向けると、ゴールライン手前で一人のウマ娘が酷い姿で横たわっているのが見えた。

あれは・・・あの勝負服は・・・っ!!

「クレナイっ!!」

すぐさま駆け寄るも、片手と両足がぐちゃぐちゃに折れ曲がり、体中から血を流している。

どうして、なんで・・・。そう思いながら、あまりの傷の酷さに何もできず、棒立ちになっているしかできなかった。

 

結局その後、クレナイは救急車で搬送された。

後続のウマ娘はボクの後にライスシャワーが続いたが、彼女はボクしか見てなかったようで、全力でゴールできたらしい。それ以降は数バ身空いていたこともあり、クレナイを避けようと大混戦に陥った。

そして荒れに荒れた有馬。クレナイの搬送やクレナイの姿を見た観客に体調不良が多発したこともあり、いつもより時間をおいてのウイニングライブになった。ボクはウイニングライブなんかやってる場合じゃないと思ったが、だがレースに勝ったウマはライブをするのが責務と観戦していたルドルフ会長に言われ、何とか踊り切ることができた。その後、ボクはレースで最後まで走ることができなくなった。

 

この大事故は後に、血の有馬として語り継がれることになった。

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