〈 病院 〉
帝国学園との試合から数日後アツヤは診察のため病院を訪れていた。
「うん。今日も以上なしだね。何か最近変わったこととかはあるかい?」
「うーんそうだなー。そういえば最近夢を見るんだ。車の中で小さな少年が二人で話している夢を」
「ふむふむ、なるほど」
「先生」
アツヤは真剣な目を先生に向けて尋ねる。
「この間雷門中で試合があったんす。でも俺はその試合に立つことができなかった。あいつらが羨ましかった」
「アツヤくん・・・」
「俺はサッカーをするのが怖いんだ!!記憶が戻ってしまうのが怖いんだ!」
「大丈夫さ。そう悲観的にならなくても。君なら乗り越えられる!君は必ず過去と向き合ってサッカーをするよ!」
そう、先生はアツヤを励ます。
「すんません。先生に強く当たるべきではないのに。ありがとうございます。相談に乗ってくれて」
「うん。またなにかあったら相談してくれ!今日の診察は以上だよ」
「はい、また来ます」
アツヤはそう言い診察室をでて帰ろうとするが視界の端に白い髪の青年を見かける。
(あいつは豪炎寺修也。どうしてこんなところに)
気になったアツヤはそのまま豪炎寺についていくと、豪炎寺は【 豪炎寺夕香 】と書かれた病室に入ろうとしていた。
「おい。どうしておまえがこんなところにいる」
アツヤが声をかけると豪炎寺は振り返る。
「おまえは吹雪か」
実はこの二人雷門中では同じクラスに所属しているため顔見知りである。
「なんだ、この前の試合で怪我でもしたのか?」
「いや、そうじゃない。ただのお見舞いさ」
豪炎寺は病室を指さし答える。
「入れよ」
アツヤがそう言われ病室に入るとベットでは少女が眠りについていた。
「妹の夕香だ。もうずっと目を覚まさないんだ」
「そうか」
「そういえば、吹雪はなんで病院に?」
「ただの診察だよ。俺幼いころに事故にあって記憶がなくなっちまったんだ。だからその定期診察だよ」
「すまない」
返ってきた答えに申し訳ない気持ちで謝る豪炎寺。
「気にすんな。俺が自分で言ったことだ」
そういうが少しだけ病室の雰囲気になる。そこでアツヤは話を変えて聞く
「この間のシュートよかったぜ。流石は炎のエースストライカーだ」
「よせ、本来であれば試合に出るつもりはなかったんだ」
少し困った顔をする豪炎寺。
「あ?じゃあなんで試合に出ようと思ったんだよ?」
「去年のFFで自分の応援に来ようとしてくれた夕香が事故にあって昏睡状態になってしまった。そんな俺がサッカーをやっていいのかと。でも、円堂の諦めないあの姿勢に体が勝手に動いてしまったんだ」
「そうだったのか。なぁ、後悔はなかったのか?」
「確かにあの時は夕香に対して申し訳ない気持ちがあった。でも、あるやつに言われたんだ。夕香は俺がサッカーをやっている姿を見たくて応援にいったのではないかと・・・。だから俺は後悔なんてしてないし、夕香が起きたときに喜んでもらえるようサッカーをこれからも続けていくことにした」
豪炎寺はすべてのことを話すとアツヤに聞く。
「円堂や風丸に聞いたぞ。おまえもサッカーをやるのか悩んでいると・・・」
しかし、アツヤはその質問に答えを出すことができなかった。
すると豪炎寺はアツヤにいう。
「吹雪、おまえ、サッカー好きか?好きなことに理由はいらないんじゃないか?」
"『アツヤ、サッカーって楽しいね!!』
『ああ!最高だぜ!!』"
その言葉にハッとなったアツヤは昔二人で遅くまでボールを蹴っていた日々を思い出す。
(そうだ!俺がサッカーをやる理由は怖いからなんかじゃねぇ、楽しいからやりたいと思うんだ!)
「ありがとな!豪炎寺!!俺もう一度やるぜ!サッカー!!!」
そう言い病室を飛び出していくアツヤ。
【病院では走らないでください!!!】
取り残された豪炎寺はアツヤの行動の早さに唖然とするが廊下から聞こえる看護師の声に笑みを浮かべた。
今回の話、時系列としては尾刈斗戦が終わってからというものです。なので、豪炎寺はサッカー部に加入済みです。
次回12月13日0時を予定してます。