ダンガンロンパ・scripter~絶望の舞台劇~ 作:月乃と星乃
「大・正・解~~~~~!!!「超高校級の不運」秋雨彦吉君を殺した犯人は「超高校級の幸運」晴天四葉さんでしたー!皆様おめでとうございます!いやぁ、流石ですねぇ。
まだ舞台が始まったばっかりなのに全滅しなくてよかったですねっ!」
とても嬉しそうに高笑いをしながら拍手をするジョーカー。不愉快だ。
何も言えない。晴天さんに、彼女になんて言葉を掛ければいいのか分からない。
この場でどんな事を言えばいいの…?
「おいおい、晴天ー。これからお前はど派手な処刑をされるんだぜぇ。
よかったじゃねぇか!最期を華々しく飾れてよぉ。
裁判もなかなかスリルがあってよかったし。遺言ぐれー、言ってた方がいいぞぉ。」
若鳩君はケラケラとそれはもう楽しそうに、無邪気に笑って言っている。この状況でだ。
罪悪感なんてものは当然ないんだろう。
彼だってこのコロシアイ学園生活に巻き込まれた被害者で、僕達と同じ立場の仲間のはずなのに。
こんなことは思いたくないけど…。狂っている。彼、若鳩君が理解できない。
「………い。うるさいうるさいうるさい!!!!元はと言えばあなたのせいでしょ!
秋雨くんを説得していれば私を食堂に呼び出さなければこんなことにならなかったのに!!
私は悪くない!だって仕方なかったんだよ!あのまま何もしなかったら私が殺されていたんだよ!?
先に襲ってきたのは秋雨くんなんだよ!!正当防衛だもん!!私だって死にたくなかった!!
何で私にしたの!?私がなにかした!?答えてよっ!!」
晴天さんが勢いよく立ち上がって若鳩君に噛みつくように喚き散らす。
「おー。もちろん理由はあるぜぇ。お前、幸運だろ?
どんなことが起こるかなぁって結構楽しみにしてたんだけどなぁ。」
だが若鳩君は涼しげな表情でさらりと答えた。
嘘はついてなさそうだな、ただどうなるか気になった。どんな幸運が起こるか試してみたかった。
それだけの理由で晴天さんをターゲットに選んだのか。
「若鳩智空ではなぜ江ノ本望夢の原稿用紙を盗んで名前を偽ったのじゃ?」
涼し気な顔の若鳩君に綾織さんが問いかける。
「お~それはなぁ、当ててみな!もう分かってんだろぉ?」
「都合がよかったからだろ。」
「ウルフ?どーいうことっスか?」
ウルフ君の言葉に五十嵐さんは首を傾げた。
「五十嵐、あんた本当に馬鹿ね。猿の方が利口よ。少し考えたら分かるじゃない。
江ノ本以外の奴が手紙で呼び出したとして晴天が来るかしら?早朝に一人で来いって条件付きでね。
一番小柄で臆病であろう綿古里やめんどくさがり屋の小鳥遊なら違和感がある。怪力でがたいのいい木柳。マフィアのウルフ。柔道部の鬼澤。変態変人の生原なら警戒する。
残りの奴でも晴天よりも背が高いが同じような背丈だから警戒して来ないかもしれない。
でも江ノ本は綿古里の次に背が低くて小柄だし。才能も文系。動機が発表された後に
一人で秋雨を追いかけて行く位には仲間を大事に思ってるし、綿古里ほどは臆病じゃない。」
「それに晴天は有馬のファンでしょ~。
その有馬の親友であり幼馴染である江ノ本の頼みは断りにくいだろうねー。」
なるほど喰田さんと小鳥遊さんの言う通りそんなことで僕にしたのか。納得だ。
秋雨君が僕を呼び出したのは恐らく一番殺しやすそうだったからだろう。
それに僕から友達になりたいって言ってるからきっと来てくれるって思っていたんだろうな。
裏切った事になっちゃったかな…。
秋雨君は家族を、両親の事を大切に思っていたし才能が「不運」だ。
不安で不安で仕方なかったんだろう。動機が発表されたときに顔を真っ青にして逃げてたし。
この状況から、自分の不安や恐怖から両親に対する思いから皆を裏切って僕を殺そうと思っていた。
死んでしまう前に話し合いたかった。そうすれば思い留まってくれていたかもしれない。
仮に説得して失敗したとしても少しだけでも心が軽くなっていたかもしれない。
自分を裏切って殺そうとしていた相手だけど、死んでほしくなかった。
生きててほしかったと思ってしまっている。
「そんなことより!晴天さん、仕方なかった?正当防衛?よくもまぁーそんなことが言えますねぇ。皆様を犠牲にしようとしてたくせに!」
ジョーカーの言葉に晴天さんは固まる。
「学級裁判のルールは説明しましたよね?当然、晴天さん犯人を間違って選んだら皆様が処刑されるのも知ってたでしょう?それなのに、議論中、江ノ本君や有馬君、若鳩君を犯人扱いしたく・せ・に!
あっそういえば「信じて」って言ってましたね~!皆様があなたを信じて間違った犯人を選んだらどうしてたんですか?皆様が次々に処刑されるのを優越感に浸って見物でもしてました?
それとも「皆、ごっめん☆私の為に死んで♪」とでも言うつもりでした?
いやぁ、良い趣味していますね!素晴らしい!」
芝居掛かった口調と振る舞いをしながら晴天さんに話しかける。
「お前っ!オレ達を裏切ったんか!!!」
「やめな木柳。…晴天、アタイ達のことを見殺しにするつもりだったのかい?」
ジョーカーの後に鬼澤さんが問いかける。怒鳴った木柳君を軽く制して鬼澤さんは責めているようではないが少し怒っている感じだ。でも怒りを面に出さずにできるだけ優しく問いかけている。
皆がただ黙って見ている中、晴天さんは涙をポロポロと零しながら口を開いた。そしてそのまま自分の事もこの事件の事も喋り始める。
「………そうだよ。ごめんね。私はね、本当は限界だったんだ。
だってずっとずっと「普通」だったから私は見た目も美人でもなければ不細工でもない「普通」だし、
テストを受けたら平均点よりちょっと上か下か位。カリスマ性もないし秀でた才能もない。
家もお金持ちでもなければ貧乏でもない、「普通」の家。両親も平凡。
家族との関係は最悪でもなければ最高でもない「普通」の関係。
友人の数も多くもなければ少なくもない「普通」そんな私が人と違うのは「幸運」くらいなんだよね。
でもその「幸運」も大した物じゃない。一獲千金!は無理だし商店街の当たりくじで一等も無理。
何十回も同じ幸運を!も無理。本当に急いでいるときに信号が青だったり、
すごく落ち込んでいたときに飲もうとしたお茶に茶柱が立っていたり、
そんなあってもなくても変わらないささやかな「幸運」なんだ。
でも別にそれでよかった。
今の生活に環境に何も不満はなかったし、このまま「普通」に暮らして年をとって
「普通」に死んでいくんだなと思っていた。
…そんな私の所に希望ヶ峰学園からの通知が来て。正直あまり行きたいと思わなかった。
貴族の中に平民が天才に中に凡人が行くようなものでしょ?
でも家族も友人も大喜びしてたし私も将来にプラスになるだろうし今からでも頑張ればいいか、
そのうち学園での生活が私にとっての「普通」になるまで早く慣れればいいやって。
思い直して入学したんだよね。
………でもっ!こんな「異常」な生活になるなんて思ってなかった!
もう嫌!!!早く帰りたい!!「普通」を取り戻したい!!!」
そう言って晴天さんは喚き散らした。
僕も気持ちは分かる。
ずっと当たり前に過ごしてきた日々が普通の生活が奪われてしかも相手は唯輝以外初対面の人だらけ。
頼れる両親などの大人はいない。
外からの連絡手段もなく外の事を知るすべもない。
いつ誰に殺されるのか。また、いつ、どんな動機がくるのかも分からない。
新しい環境に対する戸惑いに恐怖。
ずっと「普通」の生活を送ってきてこれからも「普通」に過ごせるって晴天さんは思ってたんだろうな。
だから、家族や友人のいる平和な「普通」の日常を取り戻すために僕達を裏切った。
僕が秋雨君の手紙を読んで食堂に行ってたら殺されていた。
いや、晴天さんの立場に僕がなっていたかもしれない。
だからこそ他人事のように見れなかった。
「はいはい、もういいですか?早くお仕置きをはじめましょ~!!」
「お仕置きって………!!?」
「もう、綿古里さん!ちゃんと説明したでしょっ!処刑ですよぉ。」
処刑…!?まさか本当にやるの?秋雨君を殺してしまっている以上、
今更冗談なんてことはないだろう。
一体なにをするつもり?嫌だ!
これ以上誰にも死んでほしくない!
「待ってください!晴天様は罪を犯しましたが処刑なんてあんまりです!どうか許してください!
お願いします!」
「えー、嫌ですよー。人を殺しておいて罰がないなんてありえませんね。
お仕置きがないと私も観客もつまんないですし」
シープ君が涙目でジョーカーの足元に跪き懇願したがジョーカーは気にも留めてない。
「晴天、アタイが時間を稼いでやる。逃げな。」
鬼澤さんがジョーカーの前に立って晴天さんに言う。
「あーもう!流石に見殺しにはできひんやろ!オレも加勢するで!」
「OK!ワタシも頑張るヨ!」
「……。俺も」
「ヨツバを逃がすっス!」
木柳君、ソフィーさん五十嵐さん唯輝もジョーカーの前に立ちふさがる。
「微力ながら私も手伝わせて頂きます」
「やめろシープ。お前がやるくらいなら俺が行く。危険なことはするな。」
ウルフ君がシープ君の腕を掴んで引っ張る。そして自分が代わりに前に出た。
当然僕も加勢るすべきだろう。仲間を見殺しになんてできない。
助けてあげたい、力になりたい、死んでほしくない。
本心で心の底からそう思っているはずなのに僕は動けない。
怖い。
僕なんかが行っても迷惑だ。
力になるわけがない。足手まといだ。
そもそも晴天さんは皆を犠牲にしようとしていたんだぞ?自業自得じゃないのか?
言い訳ばっかり思い浮かぶ膝ががくがくと震える。
怖くて全然動けない。
「あーはいはい、おとなしくしててくださいね」
ジョーカーがそう言った直後に、どこからともなく無数の鎖が勢いよく伸びてきて
晴天さんの手足にからみつき皆の動きを封じた。
そしてその内の一つ首輪の付いた鎖が逃げる暇も与えずに、そのまま晴天さんの首をがっちりと捕らえる。
「死にたくない!助けて!嫌だ嫌だ嫌だっ!!嫌あああああああああ!!!」
晴天さんは必死に叫びながら身体ごと部屋の奥に暗闇の中に引きずられていった。
姿が完全に見えなくなった後に皆の鎖がほどけどこかに引っ込んでいった。
晴天さんはどうなったのか?そう考えたが考えるまでもなかった。
スクリーンに映っていたスロットマシーンの映像が真っ白に変わり大きな文字が書かれている。
《セイテンさんがクロに決まりました。オシオキを開始します。》
その直後に再び映像がかわり晴天さんの状態が映った。
【* 明日天気になぁれ ♪】
《超高校級の幸運 晴天四葉 処刑執行》
大きな家の屋根に晴天さんは腰に縄を巻かれて吊るされている。
空は曇りでいつ雨が降ってもおかしくない。
晴天さんの近くの窓が開いている。中には母親の仮装だろうか?エプロンをつけているジョーカーがいる。
手には「遠足の注意事項と必要な物」と書かれた紙を持っていた。
そして3人の一回り小さめの園児服を着たジョーカーがいた。
3人ともパンパンのリュックサックを持って目を輝かせて、期待に満ちたかのような顔で
ぶらりと吊るされている晴天さんを眺めている。
遠足を楽しみにしている子供たちとその母親。晴天さんはてるてる坊主に置き換えている様だ。
晴天さんも理解したのだろう。真っ青な顔で手を前に組んで必死に晴れるように祈っている。
その祈りが届いたのかな?太陽が顔を出して晴天になる。
よかった…と晴天さんの表情にも安堵か浮かぶ。
だが太陽の光が晴天さんを照らしてしばらくたつと晴天さんが汗をかいてきた。
顔も赤い。どうしようこのままじゃ熱中症になっちゃう。
その直後!母親ジョーカーが縄を包丁で切った。晴天さんはそのまま悲鳴を上げながら地面に落ちた。
その後地面で痛そうに呻く、死んではないけど重症みたいだ。
逃げることなんてできない。母親ジョーカーが晴天さんに近づいて
そのまま晴天さんを肉切り包丁で切り始めた。
斬られている間ずっと晴天さんは暴れて叫んで全力で抵抗していた。
でもジョーカーは悲鳴も血飛沫も気にせずに手を休めることもない。
徐々に晴天さんがおとなしくなって力尽きた…。
そして晴天さんをバラバラにしてしまい楽しそうに鼻歌を歌いながら、
3人分の弁当箱につめると子供ジョーカー達に手渡しする。
子供ジョーカー達はそれを喜んで受け取り、リュックの中に入れると仲良く手をつないで
嬉しそうに青空を見上げながら遠足に向かった。
「うっひょーーーーー!初めてのお仕置きはいかがでしたか?いい仕事をしましたねぇ。私は!」
もの凄く楽しそうなジョーカーに何も言えなかった。
途中で映像から目を逸らしたかったけどそれすら出来なかった。酷い。酷過ぎる。こんなのって…!
人の命を人権をなんとも思っていないのか?言い返すどころか立てない。
地面に膝をついて俯いて吐いてしまわないように手で口を覆うので精いっぱいだ。
そんな僕のとなりに唯輝は来てしゃがみ込み何度も何度も優しく背中をさすってくれている。
唯輝自身もつらいだろうに…。
なんとか辺りを見渡すと皆、色々な反応をしていた。
泣きながら何度も誰かに向かって謝罪の言葉を発するシープ君。
そのシープ君の背中をウルフ君は優しくさすってもう片手で肩を抱いて何かを言っている。
「もう、もう嫌ですっ!解放してください!家に帰してくださいよぉ、うええええええええん!!」
なりふり構わず綿古里さんが泣き叫ぶ。
綿古里さんを泣いているソフィーさんと、綾織さんが優しく慰めていた。
喰田さんは怒りに満ちた目でジョーカーを睨みつけている。
小鳥遊さんはただスクリーンを見たまま茫然と立ち尽くしていた。
生原君は「ふむ、これがお仕置きか見てる分は楽しめたが贅沢を言うなら生で見てみたかったものだ。
終わってしまえばつまらんな。」
言葉の通りもう死んでしまった晴天さんに対して無感情だ。
見てるときに楽しんでいたって言うのも事実なんだろうな。
若鳩君はそれはもう満足げだった。アニメ好きの子供が自分の好きなアニメを見終わった後みたいな感じだ。
「ふざけんなや!!なんでこないなことすんねん!命をなんだと思っとるんや!!なにが目的やねん!!」
「そうっス!最低っスよ!!この外道!!!」
木柳君と五十嵐さんがジョーカーに怒鳴る。返事は…。
「うるさいですねぇ。まだこの舞台は始まったばっかりですよ?
出演者であるのに退場なんてできませんよー。私の目的なんてわざわざ言わなくてもどうせ分かりますって。例え皆様が知りたくないって言おうが喚こうがこの舞台の最後にはね!」
「どういう意味だい?」
「そのままの意味ですよ~。鬼澤さん。それまでせいぜい舞台を続けてください、
それと秋雨君の死体は綺麗に片付けておきましたからねー。それではまた!」
それだけ言い残すとジョーカーはどこかに行ってしまった。
出来れば二度と会いたくない。
いつまでも死体があるのは困るけど…せめてちゃんと埋葬してあげたかった。
この学園の中じゃ無理だろうけど…弔ってあげたかったのに。
それすらもしてあげられない。
その後、僕達は取り残された。
最初に喋り始めたのは若鳩君だ。
「あっはははははは!おいお前らぁなーんて面してんだよぉ!裁判もお仕置きも中々楽しめただろっ。
早く帰ってコロシアイ生活を続けようぜぇ!次はどうしようかなぁ、どうなるかなぁー。っ!!!!」
ダンッ!
若鳩君はそれ以上喋らなかった。いや、喋れなかった。
目にも止まらない速さであっという間に鮮やかにウルフ君が若鳩君を床に組み伏せていた。
「おい、ウルフどうするつもりじゃ?」
「綾織、決まってんだろ。腕と足。一本ずつ折る。安心しろ若鳩。
腕は利き手じゃねぇ方を折ってやるよ。どっちだ?」
えっ!?いやいやそんなあっさりと当然の様に言われても!
「ウルフ、何のつもりだい?」
「今回の件はこいつにも責任があるだろ。ろくでもねぇ奴だって事も分かったしな。
逆に聞くがこれだけの事をやらかしてあんな本性を見て何にもしねぇのか?
殺されないだけ感謝してほしいくらいだな。」
鬼澤さんの問いにウルフ君が冷たく答える。
ウルフ君の言っている意味は分かる。
若鳩君が余計なことをしなくなるように処置をするってことだろう。
「言っておくが止めろとかやりすぎとか言うなよ。そんな綺麗ごと言うなら若鳩が次に同じようなことをしたときに責任がとれるか?」
僕を含めて何人かがウルフ君に何か言おうと口を開こうとしていた。
でもその前に釘を刺されてしまう。
言い方はきついけど正論だ…。
「お兄様!お願いですやめてください。どうかご慈悲を…!他の方法を考えましょう?」
シープ君が必死に涙目で訴える。
「…チッ」
ウルフ君が舌打ちをして若鳩君に手刀を叩きこみ気絶させた。
「シープに免じて止めてやる。こいつの、若鳩のこれからの処遇をどうするか話し合って決めるぞ。
お前ら、話し合いたいに参加したいならついて来い」
「……お兄様。ありがとうございます」
気絶した若鳩君を引きずってウルフ君がエレベーター向かう。その後をシープ君がついて行く。
「アタイも参加するよ」
「私も行くわ」
「オレも行くで!」
「吾輩も行くぞ!マジシャンの処遇はどうでもいいが。どんな結果になるのか見ておきたいからな!」
鬼澤さん、喰田さん、木柳君、生原君は話し合いに参加するみたいだ。
「もう終わったんでしょ~。さっさと帰って寝よーっと~(´ぅω・`)」
小鳥遊さんは大あくびをするとエレベーターに向かった。部屋で寝たいようだ。
「儂は本の続きでも読むとするかの。」
綾織さんあんなことがあった後なのに…。のほほんっとしている。
ソフィーさんと五十嵐さん、綿古里さんも行ってしまった。
こんなところにいつまでもいるわけにもいかないし、いるのも辛い。
最後に残ったのは僕と唯輝の二人だけだった。
なんて声を掛ければいいんだろう?
"大丈夫?"
そんなわけ…大丈夫なわけがない。
"なんとかなる?"
何をしようともこの最悪な状況は変わらないし変えれる案もないし無責任だ。
"気にしないで?"一緒に過ごしていた仲間が殺されて目の前でお仕置きされて、
しかもお仕置きされたのは僕達がボタンを押したからだ。
なのにそんなこと言えるわけがないし、言ったところで気にしないことが出来るわけがない。
それどころが…。
人に声を掛けるどころかまだ僕はしゃがみ込んだままで立ち上がることさえできていない。
背中をさすってもらっているままだ。
「……!」
唯輝は背中をさするのを止めて黙って優しく頷いてくれた。
今の僕は顔色が悪いだろうし、気分が悪い。いつ吐いてもおかしくないように見えてるだろう。
このまま吐いてしまったら唯輝も汚れるだろうに…。
…自分が惨めで情けない。
「ごめん……。」
それだけ言うと僕は泣いた。一度泣いてしまうと涙が止まらなくなってしまった。
散々泣いた後には色々なことを言ってしまった。
内容は覚えて無いけど不安や悲しみなんかを言葉にしてぶつけてしまっていたと思う。
でも唯輝はずっと黙って言い返すことも不満を言うこともせずに最後まで聞いてくれていた。
時々「ちゃんと聞いているよ」と言うように話に相槌を打つかのように優しく背を撫でてくれた。
いつもなら「子ども扱いしないでよ!」って手をのけていただろうけど今はそんなことしない。
僕は落ち着いた後に唯輝に謝った。
いつものように「別に」って言ってくれた。
そして一緒にエレベーターに乗って帰った。
…。もう二度とこんな事が起きないように頑張らないと
具体的には何をどう頑張ればいいのかは分からない。でも決意だけはしなくちゃと思った。
頑張ろう。
《生き残りメンバー》
有馬 唯輝 【俳優】 綾織 博夏 【図書委員】
生原 命 【生物学者】 五十嵐 俊穂 【陸上部】
ウルフ 【マフィア】 鬼澤 凛 【柔道部】
江ノ本 望夢【脚本家】 喰田 奈味 【グルメリポーター】
木柳 修哉 【大工】 ソフィー・リエーティ【ピアニスト】
シープ 【牧師】 小鳥遊 架澄 【ゲームクリエイター】
若鳩 空智 【マジシャン】 綿古里 安麻依【手芸部】
《DEAD》
秋雨 彦吉【不運】…晴天 四葉により撲殺。
晴天 四葉【幸運】…学級裁判で敗北により処刑。
……残り14人。
【CHAPTER 1 】舞台の開幕は絶望と共に。【END】