ダンガンロンパ・scripter~絶望の舞台劇~   作:月乃と星乃

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長い間投稿できずにすみません!やっと書けました!


最期の餐はベノム味
【CHAPTER 2 】〈探索編〉前半


〈ピーンポーンパーンポーン♪〉

 

 

朝が来た。昨日のことを思い出してしまい、よく眠れなかった。

こんな状態でも寝れそうな人も何人かいるけど。

…まだ早いけど食堂に行こう。

いつまでも部屋に籠っているわけにはいかないし、心配も掛けたくない。

他の皆の事が気になる。

それに、僕が行かなかったら他の人にも悪いしね。

 

そういえば若鳩君も料理当番だったはずだ。どうなったんだろう?

 

綾織さん、喰田さん、シープ君の3人で準備してるのかな?

 

足取りは重いけど、手伝いに行こう。

 

 

 

食堂に着いた。

料理当番の人だけと思っていたけれど、唯輝とソフィーさんも来て手伝っている。

 

ウルフ君と生原君も着ているけど、手伝わずに見ているだけで、

五十嵐さんは木柳君とお喋りしてるみたい。

 

……あれ?喰田さんは?彼女も料理当番のはずだ。

しっかり者の喰田さんが遅れるなんて珍しいな。

 

そう思った直後にドアが開き、喰田さんが現れ、引きずって連れてきた

小鳥遊さんを椅子の後ろに乱暴に置いてから食事の準備に行ってしまった。

 

なるほど呼んできたのか。小鳥遊さんは、放っておくとずっと部屋で寝てそうだもんな…。

 

何か手伝おうと思って来たけど、皆の手際の良さを見ていると

僕の手伝いはいらなさそうで、むしろ邪魔になるかもしれない。

おとなしく座って待っていよう。

 

その前に若鳩君のことを聞いておこうかな。

誰に聞こうか…?話し合いに参加していた人がいいよね。

邪魔したら悪いから、食事の準備をしてる人以外にしよう。

 

五十嵐さんと木柳君はまだ会話中で割って入るのも悪いし…。

ウルフ君は怖い。しょうがない、消去法で生原君にしよう。

 

「生原君、昨日の若鳩君の処遇の話し合いがどうなったのか教えてくれる?」

 

「勿論いいぞ!脚本家よ。教えてやるからありがたく聞け!

監視をすることになったぞ。監視役はマフィア、柔道部、

大工、吾輩で交代しつつ行う!当初は両手を縄で縛るだけの予定だったが

マジシャンの縄抜けもできるという言動から、監視を付けることになった!

夜には両手両足を拘束してから大工かマフィアの部屋で寝かせるらしいぞ。」

 

まぁ…。それだけの事をやらかしたもんなぁ。

 

武道系の2人と、体格のいい怪力の木柳君か、それなら安心だ。

 

生原君が不安だけど…。

 

「生原君も監視するの?」

 

「そうだぞ!マフィアや大工、グルメリポーター、柔道部は反対したが

マジシャンが吾輩が監視になるなら大人しくしていると、希望したのだ。

吾輩はマジシャンも好きだからな!大歓迎だ!」

 

成程ね。若鳩君は生原君を気に入ったって言ってたもんな。

 

今は若鳩君どこにいるのかな?

 

気になったけど、若鳩君が鬼澤さんと一緒に厨房から出てきた事で、その疑問はすぐに解決した。

 

「よーぉ、江ノ本おはよーさん!」

 

若鳩君は昨日の事なんて反省していない様で、いつもみたいにへらへらしている。

 

「おいおい、もう8時になるぜぇ。綿古里は?まさか死んだのかぁ?

死ぬんならど派手に面白く死ぬか生きてるときにオイラのど肝を抜くような…。」

 

「若鳩」

 

鬼澤さんが若鳩君の台詞を遮る。

目と有無を言わせぬ気迫が全身で「黙れ」と言っている。

 

若鳩君は軽く肩をすくめると大人しく近くの椅子に座った。

 

「…アタイが呼びに行ってみるよ。心配だし…」

 

ガタッ。

 

椅子を引く音の方を見ると喰田さんが立ちあがっていた。

明らかに不機嫌でピリピリとした感じだ。

 

「喰田サン?」

 

皆の視線も、話しかけるソフィーさんも無視して、荒れた雰囲気のまま食堂から出て行ってしまった。

「ちょっと!どこに行くんだい!待ちなって!…あー、もう!!

 ここはアタイに任せてアンタら先に食べときな!喰田と話した後に綿古里の所に行くから!」

 

鬼澤さんは僕達にそう言うと喰田さんを追いかけて出て行ってしまった。

 

どうしよう?僕も追いかけたほうがいいかな?

 

「おい、なにボーっとしてんだ。先に食っとくぞ」

 

「ウルフ、でも…ええんか?」

 

「せっかくの飯が冷めんだろうが。それにただ呼びに行くだけなのに大人数で行くのかよ。

 鬼澤が自分から任せろって言ってんだからいいだろ。」

 

まぁ、それもそうか。大人数で行くのも良くないだろうし、お腹もすいたしな…。

 

「時間が掛かるようダッタら、探しに行こうヨー!」

 

ソフィーさんの提案に賛成して、今いる皆で先にご飯を食べることにした。

 

「はーい!皆様おはようございますっ!」

 

うわぁ、ジョーカーかぁ。会いたくないのにな。

 

「消えろ。目障りだ。」

 

「どっかに行くっス!」

 

「お前なんか大嫌いや!」

 

ウルフ君、五十嵐さん、木柳君をジョーカーは無視して話し始めた。

 

「皆様に良い事を教えてあげようと思いましてねぇ。」

 

良い事?信用できないな。

どうせ、ろくでもない事だろう。

 

でも、このおかしい状況の情報が少しでもほしいから聞いた方がいいかな…。

ご飯の前に聞くだけ聞いておこう。

 

「二階へのシャッターを上げて行けるようにしておきましたよ!

 皆様への学級裁判に勝ったご褒美です。行動範囲が広くなるんですから感謝してくださいね~」

 

ありがたいけど、感謝はしたくないな。

僕達をこんな目に合わせている訳だし。操ってるのは、黒幕はどんな人だろ?

 

「学級裁判が終わるたびに上の階に行けるようにしてあげますからねっ。頑張ってください!」

 

頑張るも何も、学級裁判なんて二度とやりたくない。

言い終わった後、ジョーカーはまたどこかに行った。

 

「うむ、新しく2階に行けるのじゃな。物語が進むのう。探索に行くとするか。」

 

「ヒロ!ご飯を食べてからにするっスよ!後で皆で探索するっス!」

 

早速探索に行こうとする綾織さんを、五十嵐さんが呼び止めた。

綾織さんは黙って頷いてから席に座る。

 

さて、ご飯にしよう。やっと食べられる!

 

皆でご飯を食べていると食堂のドアが開いた。

 

あっ!喰田さんと鬼澤さん。そして、綿古里さんもいる。

綿古里さんも含めて3人が来てくれたことに対しては喜ぶべきだろう。

でも素直に喜べない。

 

何故なら…。

 

喰田さんと鬼澤さんの間に険悪な雰囲気が流れているし、綿古里さんは

目を真っ赤にして泣いている。

 

何があったんだろう…?

 

「わー!どうしたんっスか!」

 

「皆様、何があったのですか?綿古里様大丈夫ですか?」

 

「何?」

 

「何か力になれるコトがあったら言っテ!どうしたノ?」

 

「どないしたんねん!言ってみい!」

 

五十嵐さん、シープ君もソフィーさん、木柳君も食事を中断すると

席を立ち、3人に声を掛けている。

 

唯輝も「何?」としか言ってないし無表情だけど心配している。

 

ウルフ君はどうでもよさそうに見ている。小鳥遊さんは見てすらいない。

綾織さんはじっと見ているけど、何を考えているのか分からないな…。

若鳩君と生原君は楽しそうに見ている。

 

僕も3人の元に席から立って駆け寄る。

とりあえず何があったのか聞かないと!

 

「皆、心配してくれてありがとうね!でも大丈夫だから安心しな。」

 

「いや、喰田さんか、鬼澤さん。何があったか聞かせてくれる?気になるし。

話したくなくても…。時間が掛かってもいいから話してくれないかな?」

 

僕がじっと目を見つめて話すと軽くため息をついて話してくれた。

喰田さんはそっぽを向いたままだ。

隣では五十嵐さんとソフィーさんが綿古里さんを慰めている。

 

「あの後、喰田を追いかけたんだけどね。綿古里のドアの前で何度もインターフォンを鳴らしてたんだ。

 綿古里が怖がった様子で出てくると、

 喰田は「いい迷惑だからさっさと出てきなさい。」「あんた皆で決めたルールも守れないの?」

「つらいのはあんただけじゃないのよいい加減にしてくれる?」とか酷い事を言うんだよ!」

 

怒りを露わにして言う鬼澤さんに対して喰田さんは

 

「何よ。本当の事じゃない。うじうじして皆に迷惑をかけて綿古里あんたむかつくのよ。

 鬼澤、私は自分の言いたいことを言っているだけよ。

 わざわさあんたらと喋る度に気をつけないといけないの?そんなの嫌よ」

 

全くひるみもせずに堂々と言ってのけた。

 

「おい喰田!そんな言い方はないやろ!仲間なんやから助け合うべきやで!気遣えや!!」

 

「黙りなさい、木柳。」

 

「なんやと……!!」

 

「あんたの言う「仲間」は顔色を窺って機嫌をとらなくちゃいけないの?

 自分の気持ちを無視しても相手を立てなくちゃいけないくて、

 赤ん坊みたいにあやさなくちゃいけない奴?

 困っていれば自分はなんにもしなくても勝手にどうにかしてくれるロボット?

 そんなのならいらないわ。分かったら黙ってくれる?筋肉だるま」

 

「てめぇ…!!!」

 

「わーーーーーーー!ナギ駄目っス!」

 

「stop!!木柳サン!」

 

近づいて喰田さんに手をあげようとした木柳君の右腕を五十嵐さんが、

左腕をソフィーさんが掴み止めた。

 

「…」

 

唯輝は喰田さんを庇うように黙って前に立った。

そして「二人とも悪い。謝って」と言った。

 

だけど…。

 

「はぁ!?何でオレがこんなやつに強要されて、謝らんといかんねん!

 仲間が死んで悲しむのは当たり前のことやろ?なのにきつい事言っておいて

 何とも思ってへん喰田が悪いやろ!!!」

 

「私もあんたなんかに謝りたくないわ。私に命令するなんて有馬、

 あんたそんなに偉くなったの?うざいからほっといて。」

 

まずい…!

唯輝は木柳君には「暴力はよくない、喰田さんには皆に為に少しでいいから言葉に気をつけてほしい」

「皆大切な仲間だから喧嘩している場合じゃない協力してほしい」って言うのを言いたいんだろう。

 

でも、全然言葉が足りない上に、声が普段より大きめだし、淡々としている。

さらに目つきが悪いせいで威圧感があることも助長して、他の人から見たら

二人に謝れと強要しているように見えているみたいだ。

 

どうしよう…。なにか言うべきかな?

何を言おうか言葉を選んでいるうちに頭が混乱してきて、食堂が静寂に包まれる。

 

「………」

 

僕達の視線と雰囲気に耐えられなかったのか、喰田さんがため息をついてから、口を開いた。

 

「…一応謝っておいてあげるわ。ごめんなさい。これでいい?」

 

「いや、なんやねんその態度!オレも悪かった。…すまへんかった」

 

喰田さんの後に木柳君がいつも通りの切れのいいツッコミを入れて謝った。

だけど二人とも渋々謝った感じだ。

 

その後、揃った皆でご飯を食べた。木柳君と喰田さんも一緒に。

よかったぁ…。

一応とはいえ、仲直りしてもらえて。

 

 

焦りは禁物だし、無理やり仲良くしてもらおうとするのも良くないだろうから

時間は掛かるかもしれないけど、少しずつ仲良くなってくれるといいな。

 

 

さて、ご飯も食べ終わったし片付けも手伝って終わったし、早速二階を探索するぞ!

電子生徒手帳を起動させて地図を見ると二階のも見れるようになっていた。

 

新しく行けるようになった所は図書室。プール。保健室。大浴場(サウナ)。

トレーニングルーム(更衣室)か。

 

図書室は綾織さんが喜びそうだな。

大浴場は和風だったら唯輝、ソフィーさん。

トレーニングルームは五十嵐さんと鬼澤さんが喜びそうだ。

 

映画館とかあればいいのに。

 

まぁ、贅沢なんて言ってられないか。こんな所、長居もしたくないしな。

 

唯輝にさっそく大浴場に行こうと言われたけど探索したいからごめんと断った。

 

この前の学級裁判から、落ち込んでいるみたいだし、後で励ましにいこう。

一人でも探索くらいできるからね。

 

よしっ、時間は沢山あるし行くぞ!

 

最初に来たのはプールだ。別に泳ぎたいってわけじゃない。

僕は体力がないしそこまで酷いわけじゃないけど運動音痴だ。

 

そこには鬼澤さんと五十嵐さん、若鳩君がいた。

 

「あれ?二人とも泳ぎに来たの?」

 

僕の質問に2人は答えてくれた。

 

「違うよ。江ノ本、アタイと五十嵐はトレーニングルームでトレーニングしようと思ってきたんだよ」

 

「?」

 

「さっきジョーカーに聞いたら更衣室にトレーニング機器が勢揃いしてるらしいっス!

プールはその奥にあるらしいっスよ!」

 

へぇ、なるほどね。僕も少しくらいはトレーニングしようかな。

人並みの体力と運動神経は欲しいし。

 

「江ノ本~。ドアの横にあるカードリーダーに電子生徒手帳を重ねれば開くらしいぜぇ。

その赤の扉を開けてみ…いてぇ!!」

 

台詞の途中で若鳩君は隣の鬼澤さんに頭を叩かれた。え?何で?

 

「江ノ本、ドアに貼ってあるプレートを見てみな」

 

鬼澤さんに言われてドアに近づいて見てみた。

赤と青のドアがあるけど、赤でいいや。あっ、「女子更衣室」って書いてある。

 

ふと、ドアの上を見てみた。

そしたら天井にガトリング砲が設置されていて銃口がこっちを向いている。

 

ええええええ…!

何でこんな物が?物騒すぎるでしょ…これって…本物だよね?

 

「異性の更衣室に入ろうとしたらハチの巣にしてやる!って万が一全ての銃弾を躱しても

 お仕置きするってジョーカーが言ってたよ。」

 

いや、万が一ってそんな芸当出来る人いないでしょ。いたら人間か疑うレベルなんだけど。

 

「教えてくれてありがとう鬼澤さん、死んじゃうところだったよ。

 若鳩君、さっき僕に女子更衣室に入るように言ったよね?どういうつもり?」

 

「面白そうだからっ!人が目の前で撃たれる所なんて見た事ねーし!一度くらい見てみたいだろ?

 安心しろよぉ。マジックで生き返らせてやるからよぉ!」

 

悪びれる様子もなくケタケタと笑ってる。

人が目の前で撃たれる所なんて普通は一度も見たくないんじゃないのかなぁ。

 

「トモ!すげーっス!マジックってそんなことも出来るんっスね!!」

 

「おー。そうだろそうだろぉ。五十嵐ぃ、お前でいいから…」

「若鳩、あんたを女子更衣室に入れてやろうか?」

 

「すみませんでしたぁー。オイラが悪うございましたぁー。」

 

鬼澤さんに睨まれて若鳩君はあっさりと謝った。

まぁ笑っているから反省はしてないだろうけど。

 

「とりあえず、アタイが若鳩を見張っているから江ノ本が男子更衣室。

五十嵐が女子更衣室に入って中を調べてきてくれるかい?」

 

「了解!任せるっスよ!」

 

「うん、いいよ。ちょっと待っててね。」

 

女子更衣室は五十嵐さんに任せて僕は男子更衣室に入った。

 

 

男子更衣室の中は青色のカーペットに白い壁。

女子アイドルのポスターが貼ってある。

ランニングマシーンに色んな大きさのダンベルに名前の知らないトレーニング機器、

水色のベンチに普通のロッカー。

部屋の端っこの籠の中には清潔な真っ白いタオルが沢山あるな。

 

女子更衣室の事も聞いたけど大体同じだった。

違うのはカーペットとベンチが赤色。ポスターが男子アイドルなくらいらしい。

 

プールに行ってみたら大きな競泳用プールだった。

入り口近くの壁に床暖や暖房や冷房を入れれるスイッチがある。

浮き輪もビード版もビーチボールやシャチの浮き輪まで。本当に準備がいいな。

 

さて聞きたい事は聞けたし調べ終えたから別の所に行こうっと。

 

 

 

次に来たのは保健室だ。

ドアを押したけど開かなくて困ってたら、引き戸だった。ちょっと恥ずかしい。

部屋の左の方には大きな白いガラスケースの棚が3つ並んでいて、

左の方は水色のカーテンで仕切られている。

右側の隅には冷蔵庫かな?

 

真ん中には背もたれ付きの椅子が3つ並んでいて大き目のテーブルがある。

入口のすぐそばにはシンプルな洗面台が一台ある。床は真っ白なタイルだ。

 

あっ、ウルフ君にシープ君。生原君がいる。

 

「ねぇ、3人とも何か分かったことがあるなら教えてくれるかな?」

 

生原君は喜々として、シープ君は優しく教えてくれそう。

でもウルフ君は「自分で調べろ」って冷たく言うんだろうなぁ。

 

「左の方のカーテンの向こうはベットだ。4つ綺麗に並んでるし、

 カーテンで仕切れるようになってる。

 右の棚には包帯とか絆創膏ガーゼとか色々な医療器具にビーカーとかの実験道具。

 真ん中には栄養剤やプロティン、睡眠剤。左の棚には毒薬や劇薬が並べられてる。

 詳しい事を知りてぇなら生原に聞け。」

 

………!!?

 

えっ?ウルフ君?この前聞いた時には冷たく

「自分で今から調べればいいだろ」って言ってたのに。

 

ぶっきらぼうだけどちゃんと質問に答えてくれた!

 

「…なんだよその顔はお前が聞いてきたんだろうが」

 

「う、うん。ありがとうね。」

 

お礼を言ったら舌打ちをして保健室から出て行ってしまった。

 

 

「江ノ本様。お兄様は、前回の学級裁判で江ノ本様が活躍して

 勝利に導いてくださったのを感謝しているのです。私からもお礼を言わせてください。

 辛い中、皆様の命を助けていただきありがとうございます。」

 

そう言うとシープ君は頭を下げてきた。

あの学級裁判を思い出したのだろう、悲しそうな顔をしている。

眠れなかったんだろう、その眼には隈ができていた。

 

「いや、いいよ。僕だけの力じゃないし、皆のおかげだよ。」

 

成程。だからウルフ君はあんなに素直に質問に答えてくれたんだ。

意外と義理堅い人なんだな。

 

「ありがとうございます。では私もこれで。」

 

シープ君は軽く会釈するとウルフ君を追って出て行ってしまった。

 

毒薬に劇薬かぁ。そんな危ないものは処分しておこう。

ゴミ袋にまとめて焼却炉に放り込んでしまえばいいかな?

 

「脚本家よ。どうした?そんなにまじまじと左の棚を見つめて。

 毒薬に興味があるなら使ってやろうか?自分の身で体験したいか?

 吾輩が使っているところが見たいか?それなら吾輩がもがき苦しんで、

 生を実感している姿を見ててくれ!なんなら踏みつけてもいいぞ!」

 

そんな体験。こっちから願い下げだよ。

とんでもないことをいい笑顔で目を輝かせながら言っているから怖い。

 

「危ないから処分しようとしているだけだよ。」

 

「ふむ、そうか。でも無駄だぞ。」

 

え?無駄?

 

「何で?」

 

「説明してやろう。何らかの形で処分してもジョーカーが新しい物を用意すると言っていた。

 それに毒薬や劇薬がなくなっても作ればいいだけの話だ。

 ここにある薬と道具を使えば吾輩なら今ここでざっと数十種類は作れるぞ。」

 

恐ろしい事を平気で言うな…。

確かに生原君なら生原君の才能なら出来る。…いや、出来てしまうだろう。

 

彼には良心も常識もない。

「生物」だったら命令を聞き自分の好奇心のままに周囲なんて気にもせず何でもするような人だ。

 

「生原君。薬学の経験もあるの?」

 

「専門家ほどではないがな。調べても細かい成分じゃなくて大体の成分しか分からないが

 既存の薬品を混ぜて調合作ることは出来る。一から作るのは無理だな」

 

それでも十分にすごいと思う。

 

「絶対に毒薬や劇薬は作らないでね。」

 

「うむ、いいぞ。」

 

あっさり承諾してくれたけど、一時的なものだろう。

他の誰かが「毒薬がほしい」って頼んでもあっさり了承してしまう可能性があるな。

 

悪い意味で人の差別をしない。

「生物」であればみんな同じ、それが彼なんだろう。

 

冷蔵庫の中には輸血パックが沢山あった。血液型ごとに綺麗に並べて保管してある。

 

一通り調べたな。次の所に行こう。

 

 




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