孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです【本編完結】 作:Miurand
言い忘れてた…。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
あっという間に年を越し、新年となった。例えお正月といえども、マルオは忙しいらしく、五つ子に零奈も加えた6人で初詣に行くことになった。そして今年は決定的に違うことが……。
風太郎「よう」
らいは「みなさん、あけましておめでとうございまーす!!」
風太郎とらいはも初詣に来ることだった。しかも去年とは違ってしっかり待ち合わせをしていた。
一花「フータロー君は相変わらずの服装だね……」
風太郎「仕方ないだろ。うち貧乏なんだから」
四葉「う、上杉さん!あけましておめでとうございます!」
風太郎「おう、今年もよろしくな、四葉」
四葉「…………」
風太郎「……ん?」
基本的な挨拶の返しだったと思うのだが、四葉の反応が妙に悪い。
一花「フータロー君さぁ………」
一花が呆れたような目で見る。何故だ心外なと思いかけたが、理由はなんとなく分かった。
もしも四葉が自分のために今日の着物を用意してくれたとしたら、俺はなんて声をかければいいのか………。
風太郎「四葉、その……なんだ?そのラクダ、かわいいな」
四葉「あ、ありがとうございましゅ……」
なかなかに初々しい光景だ。殆どが微笑んでいる中………。
二乃「あ〜…!ムズムズする〜…!!」
三玖「ケダモノ二乃よりはマシ」
二乃「へっ!!?な、なんのことよ!?」
五月「そうですね。肉食性獣よりはよっぽどマシだと思いますが…?」
二乃「だ、誰が肉食性獣よ!!?」
零奈「今日くらいは上品に振る舞ってください」
3人の言い争いは目に余るものであった為、零奈が軽く拳骨をして止めた。
二乃「てか2人とも、まさか私とハー君がどこまで進んだか………」
三玖「うん、知ってる。というか見た」
二乃「なに勝手に見てんのよ!?」
三玖「鍵かけない二乃が悪い」
五月「私は三玖から聞きました。まさか二乃がそこまで暴走機関車だったとは思いもしませんでした」
三玖「私なら節度を保った付き合いをするのに」
一花「……これはツッコミ待ちってことでいいのかな?」
そんな馬鹿げたやり取りをしていると、もう1組の兄弟………否、家族が到着した。
悟空「オッスみんな!元気そうだな!」
悟飯「あけましておめでとう!」
チチ「今年もうちの息子をよろしくだ。特に二乃さ!」
二乃「はい!今年とは言わず一生よろしくお願いします、お義母さん!」
実を言うとクリスマスに襲いに行ったあの日、二乃はチチにバレてしまったが、叱られるどころか歓迎される始末。悟飯が起きるまで雑談に勤しみ、いつの間にか歳の離れた友人のような関係になってしまったのである。
悟飯「に、二乃……恥ずかしいよ…」
零奈「孫君に上杉君、私のことはお義理母さんと呼んでもいいのですよ?」
風太郎「なんであんたまでノリノリなんだよ………」
まあそんな下らないやりとりをしつつも、色々あってお参りをするところにまでやってきた。神社にお参りということで、願い事を思い浮かべるわけだが………。
二乃「………今思うと、本気で叶えたい願い事があるならドラゴンボール使えばいいわよね?」
悟飯「それ言っちゃダメでしょ……」
二乃「それで、どんなお願い事をしたのかしら?」
悟飯「僕はやっぱり地球が平和でありますように、かな」
二乃「あんたらしいわね……。私は一生隣の人と過ごせますようにってお願いしといたわ♡」
無論、初詣でもイチャイチャを欠かさない2人だ。だが一見すると二乃が一方的に好意を出しているようにも見える。しかし……。
二乃「でもさぁ…、私と一生に過ごしたいとか、そういうお願いごとはしないの?」
悟飯「だって、世界が平和じゃなかったら二乃と一緒に過ごせるか分からないじゃん」
二乃「……!!!!ッッ」
と、一方的な攻めかと思いきや、不意打ちを食らって赤面する二乃まではいつものことである。
チチ「女たらし…………」
零奈「将来浮気しないか心配です」
三玖「大丈夫だよ、浮気する原因は大体性欲。つまり、私が相手をすれば問題ない」
五月「世間一般ではそれを浮気と言うのですよ!!?」
悟飯「あっ、そうだ。風太郎は何をお願いしたの?」
風太郎「俺か?俺は今年も順調に勉強できますようにだな」
四葉「え〜…………」
とまあ、いつもの馬鹿げたやり取りはあったものの、初詣はこうして終える。正月は過ぎてもまだ冬休み期間であるため、二乃と悟飯は久々のデートを、風太郎と四葉はマンツーマンによる勉強会をしていた。
二乃「ねえ、素朴な疑問なんだけど、上杉とはいつから仲がいいの?」
悟飯「えっ?唐突だね?どうしたの急に?」
二乃「いや、なんていうか、私達と出会う前から仲良かったじゃない?しかも上杉って基本的には他人を寄せ付けない節があるし、どうしてハー君とだけ仲良かったのかなって………」
悟飯「うーん………。僕も詳しいことは忘れちゃったなぁ…………。あ、もしかしたら…………」
悟飯と二乃がデート中のこと。二乃は唐突に2人の関係が気になったようだ。それもそのはず、最近の風太郎と悟飯は二乃が嫉妬しそうになるほどに仲がいいのだ。あんだけ散々ヤっておきながら男相手に嫉妬するのは如何なものかとも思うが、二乃的には悟飯の1番に自分がなりたいのであろう。
四葉「孫さんと上杉さんっていつから仲良くなったんですか?」
風太郎「なんだ急に」
四葉「いえ、他人をあまり寄せ付けない上杉さんが同じく勉強できるというだけで孫さんと仲良くなるものとは思えなかったので…………」
一方で、こちらでも同じような質問を受けていた。
風太郎「そんなことはどうでもいいだろ。とにかく今は勉強だ、勉強」
四葉「あっ、もしかして私が他の男の人の話題を出したから怒ってます?意外と嫉妬深いんですね!このこの!」
揶揄う口調でそう言う四葉だが、途中から顔がどんどん赤くなっていくのを風太郎は見逃さなかって。
風太郎「お前、自分が恥ずかしいならそういうことは言うなよ?」
四葉「あ、あはは…………」
風太郎「………だが、嫉妬だと思われるのは心外だな。仕方ないから話してやろう。言っとくが、嫉妬だと思われたくないから話すんじゃないからな!」
四葉「は、はい!(思いっきりそういう風にしか見えないのですが……)」
こうして、悟飯と風太郎の双方の口から過去が明かされることになる……。
時は遡って2年前の4月。この日は悟飯と風太郎が旭高校に入学する日だった。
悟飯「こ、ここが学校かぁ……。どんな人がいるんだろ………」
悟飯は初めて過ごす学校に若干の憧れと緊張があった。今までは山奥で暮らしていたし、なんなら街に出ることも少なかった。何故悟飯がこちらまで通うことになったのかというと、結論から言えば学費の節約である。
元々通う予定だったオレンジスターハイスクールにはない、学費免除制度というものがあった。日本は高校までの補助は手厚い傾向にある。とはいえ、日本国籍を持たない悟飯にこれは当てはまらないかと思われたが、成績が特に優秀だとこれまた学費が免除される制度があった。悟飯の成績ならこの制度を使えると考えたチチが、この高校に行くように進言して今に至るのだ。
「おい、校門の前で突っ立つな。邪魔だ」
悟飯「あっ!ご、ごめんなさい……」
本人達は気づいていなかったが、実を言うと彼らの出会いはいいものではなかった。
風太郎「全く……。高校に進学したから浮かれてるのか?中学だろうが高校だろうが勉強するための場所であることには変わりないってのに」
無愛想な風太郎が通行の妨げになっていたところが本来の彼らの出会いだったが、この時は風太郎は関心がなかったため、悟飯は緊張していたため覚えていなかったのだ。
悟飯「うひゃ〜……。そっか、みんな学校に行ったことあるからそこまで緊張しないのかぁ……。僕も慣れるように頑張らないと…………」
そうして迎えた入学式。その保護者席にはしっかりチチと付き添いの悟天がいた。
入学式が終わった後は1年生のクラスに行くこととなる。悟飯と風太郎は1年生時は別クラスであった。風太郎は最初は勉強ができるということで大いに関心を寄せられていたが、彼自身の態度から次第と人は遠ざかっていた。風太郎があまりにも無愛想なことから、彼と仲良くしようとする者は現れなかった。
だが、同じく成績優秀者の悟飯は彼とは違い、柔らかい雰囲気だったので誰もが接しやすかった。知らない人と喋ることに慣れていない悟飯は緊張しまくっていた。
なんなら、その世間知らずな癖に礼儀を弁えており、誠実さ、優しさ、面倒見の良さ、天然さなどから悟飯の人気は主に女子を中心に急上昇していた。実はアプローチしていた女子もいたのだが、五月や二乃のように直球なアプローチではなかったため、全て悟飯が気づかずに撃沈していた。
だが、悟飯はある種の疑問を抱き始めた。
悟飯「……(話を聞く限りだと、みんなあまり勉強しないみたいだなぁ…)」
会話を聞く限りでは、勉強の話題は殆ど出てこない。テストに近づくと一気に質問される悟飯だったが、普段はそれとは全く関係ない雑談ばかり。オマケに勉強したくないという人までいる始末。悟飯は学校とは勉強する場だと教えられてきた。だから彼らの行動がいまいち理解できなかった。
悟飯「……(この学校にはちゃんと勉強している人がいないのかな…?)」
新生活が始まってしばらくして、悟飯はこのような疑問を抱くようになっていた。
一方で、風太郎も似たような感情を抱いていた。
風太郎「(やっぱりな…。自ら勉強し、進路を決める高校では勉強するやつは多少増えるかと思ったが、どいつもこいつも遊びやら恋愛やらどうでもいいことに夢中になっている連中ばかりだ。こいつらと関わっても時間の無駄だ。それなら勉強し続ければいい。そして、給料の高い会社に入れればいい……)」
風太郎は既に同級生達に最初から期待などしていなかった。受験を経て進学する高校なら多少はマシになるだろうかと考えていたが、そんなことは全くなかった。風太郎はこれまで通り勉強だけすればいいと思っていた。
そんな彼らが意気投合するのは、もう少し後のこと。
月日は過ぎて初めて迎えた定期テストである中間試験。悟飯は転入試験と同じように全て満点を獲得していた。入試の点数は公表されないが、定期テストからは生徒達の順位と合計点が記載され、それは生徒でも見ることができるようになる。つまり、悟飯は普通では考えられないほどの成績を残したことを確認することも可能だということだ。
「すっげぇ!!!!」
「孫君って勉強できるなぁとは思ってたけど、まさかここまでできるなんて!!」
悟飯「あはは……。どうも」
悟飯はクラスで賞賛の嵐に見舞われたが、悟飯としてはいつも通りやっただけに過ぎない。逆にみんなは勉強しなくていいのかと心配までしてしまうが、それは口に出さない。学生とはそういうものなのだろうとなんとなく理解していた。だが、自分は高校に通いたくて勉強しているわけではない。学者になりたいから勉強しているのだ。周りがどうであれ自分が勉強することに変わりはない。悟飯はこれまで通り勉強を続けようと決心する。
「うぎゃー!!俺赤点だわ!!」
「はっ?マジで?お前のとこ赤点だったらゲーム没収とか言われてなかった?」
「ゲームならまだマシだろ。俺なんてスマホ没収だぜ?」
「お前らの家厳し過ぎない?俺はなんにもペナルティないけど?」
「うぜぇな、お前今日奢りな」
風太郎「…………」
風太郎は最早自分の順位すらも見に行かない。何故なら自分が一位であることを確信しているから。他の生徒に競えるだけの力があるなんて期待していなかったから。だから風太郎はランキングが開示されてもいつも通り勉強を続けていた。全てはあの子との約束を果たすため。妹の為。いつか万札を神社に奉納できるように、そんな未来を目指してただひたすらに勉強する。
「いや〜凄かったな」
「まさか1位が2人もいるなんてね。今年の1年生は優秀だとかで先生達大騒ぎだったね〜」
風太郎「………はっ?」
この時、風太郎は初めて寝落ち以外でペンを落とした。
風太郎「なんだって……?」
風太郎は自分に渡された成績表を見る。国語100、数学100、英語100、理科100、社会100、合計500……こんな綺麗な数字が並び、順位の欄には『1』と記載されている。つまり、自分と同率の順位になる為には全て満点を取らなければならない。元々勉強ができる風太郎だから分かるが、ここまで完璧な点数を出すには並々ならぬ努力が必要だ。
風太郎「あり得ねえ…!きっと何かの間違いだ!!」
珍しく勉強を放棄した風太郎を見てクラスメイト達は驚いていたが、風太郎自身はそれどころではない。
風太郎「俺と張り合えるやつがいるだと!?」
一時は同級生に失望していた風太郎。関わっても何も得られないから関わろうとしなかった。そいつらと勉強したところでこっちの手間が増えるだけだから。ずっとそんな考えを持っていた。
風太郎「あり得ねえ!学生なんてどいつもこいつも恋愛や遊びに呆けているもんだ!!俺以外にそんな勉強してる奴なんて……!!」
きっとあいつらの見間違えだ。普段の風太郎ならそう思って気にしなかったはずだ。だが、彼は競う相手に飢えていたのかもしれない。自分と考えを共にする同志が欲しかったのかもしれない。その真意は風太郎自身にも分からなかったが、彼はただ自分と同じ成績を取った人物に興味が湧いた。
勉強と家族以外でここまで関心的になったのはいつぶりだっただろうか…。この時の風太郎は、まるで小学生の頃、新しいオモチャを与えられて喜んでいる時のような顔をしていた。
風太郎「はぁ……はぁ……………。こ、こいつか……!?」
上杉風太郎:500点、第1位
その下に…。
孫悟飯:500点、第1位
そう記載されていた。
風太郎「こんなやつが、学校にいたのか………」
一時は失望した同級生。その中に自分と競い合えるだけの相手がいることに風太郎は喜びを感じていた。無論、勉強する1番の理由は家族のため。それでも、自分と同じように猛勉強する同級生はいなかったため、孫悟飯という存在に興味が湧いた。
風太郎「おい!この孫悟飯ってやつは何組にいるんだ!!?」
「えっ……?確か……」
すぐ隣にいた同級生に悟飯のクラスを聞き、風太郎はそのクラスに行ってみた。孫悟飯とはどんな人物なのか。ただそれだけが知りたかった。
風太郎「………あいつか?」
「孫君すごいね〜!!私に勉強を教えてよ〜!」
悟飯「あ、あはは……。次の休み時間でね」
「私にも教えてほしいな〜!!この前も分かりやすかったもん!!」
風太郎「………はっ?」
風太郎が見た光景は、複数の女子に囲まれてチヤホヤされる悟飯の姿だった。勿論悟飯はこれを狙ったわけではなく、成績の優秀さと彼の性格がそれを引き起こしたに過ぎない。だが、前者しか知らない風太郎はこう思ってしまった。
風太郎「(あんな奴が俺と同格だと!!!!?)」
風太郎にとって、
気がつくと風太郎は教室の中に入っていた。そして女子を掻き分けて悟飯の前に立っていた。
「あれは………上杉風太郎…?」
「えっ?確かもう1人の1位だよな?」
風太郎「おい学年1位、俺と勝負しろ」
風太郎は唐突にそう言った。
悟飯「えっ?えっと………。君は?」
風太郎「俺は上杉風太郎だ。一応この学校の主席だ」
悟飯「あっ、うん。よろしく……」
風太郎「で、だ。俺と勝負をしろ、学年1位!!」
悟飯「ど、どういうこと??」
悟飯は風太郎が何を言いたいのかよく理解できなかった。学年1位ということは、おそらくテストで勝負をしようということなのだろうが、何故その結論に至ったのか理解できずにいた。
風太郎「お前のような女たらし野朗と俺が同格というのは断じて許せん。勉強ってのは遊びじゃねえんだ。勉強を女遊びの武器にするんじゃねえ」
悟飯「えっ?な、何を言ってるんだ君は……?」
悟飯としては女遊びをしているつもりもないし、遊びで勉強しているわけでもない。しかし、そんな事情を知らずにチヤホヤされている悟飯を見た風太郎は誤解したまま話を進める。
風太郎「いいか?勝負は2回だ。次にある期末テストと2学期の中間テストだ。そこで実力の違いってやつを見せてやる……!!!」
風太郎はそれだけ言うと教室から去っていった。
「なにあれひどーい!!」
「孫君は真面目な人なのに!遊びなんかで勉強なんてしてないよねー?」
悟飯「う、うん………」
「確か上杉風太郎君だっけ?なんて薄情な人なんだろうね!?」
悟飯「………なんだったんだろう」
だが、自分と同じように勉強に勤しんでいる同級生もいるんだなぁと、悟飯の頭の中に上杉風太郎という名前と顔は強く印象に残った。その数日後に第2位の武田祐輔という少年にも宣戦布告されたのだが、これは以前語ったので割愛しよう。
そして迎えた期末テストの結果開示。風太郎は今回こそは自分の独壇場だと踏んでいた。
風太郎「(ふふふっ…!孫悟飯め。1学期の中間テストが一番簡単なテストだということを知らずに全力を出してしまったようだな。お前は女共にチヤホヤされる為に勉強したのだろうが、今回はそうはいかんぞ。何せ期末テストから難易度が上がるからな。中間では成績がよくても期末では順位がガタ落ちなんて話はよく聞く……)」
心でそう呟きながら成績表を開いた。前回と同じく100が五つに500と1の文字が堂々と記載されていた。
風太郎「ふっ……。勝ったな」
風太郎は勝利を確信した。
だが、彼の期待は裏切られることとなる。
風太郎「…………はっ??」
またしても、彼の名前の下に孫悟飯に1の文字があった。
風太郎「な、何故だ……。何故女遊びの為にそこまで勉強できるんだ……!!」
風太郎はとんでもない勘違いをしているが、事実悟飯はモテる。一部では悟飯は誰かと付き合ってるとか、何股もしているなんて大変失礼な噂も出ている程なので、悟飯がチヤホヤされている姿を見た風太郎がそう勘違いしてしまうのも仕方ない。
そして1学期が終わるまでの数日。彼は悟飯の行動を出来るだけ監視していた。他の人に怪しまれていたがそんなことを気にしている場合ではなかった。このままでは自分が勉強し続けていたことが馬鹿らしくなってしまう。自分が勉強してきた意味を持たせる為でもあった。
風太郎「………あいつ」
意外にも、悟飯から女子に話しかけることはなかった。寧ろ全てが受け身。オマケに休み時間だろうがお構いなしに勉強に時間を費やしていた。
風太郎「………女遊びの為ってわけじゃないのか………?」
約2ヶ月でようやく誤解は解けたものの、一度競争相手として見てしまうとどうしても勝ちたくなってしまうもの。風太郎は次こそは必ず勝つと意気込み、夏休みは高校受験以上に勉強することを決意した。
風太郎「うおおおおおお!!!!」
らいは「お兄ちゃん気合い入りまくりだけどどうしたの?」
勇也「そうだぞ風太郎。受験も終わったんだからもうちょっと気楽になってもいいんじゃねえか?」
風太郎「そうは言ってられねえよ。俺はなんとしてでも負かしたいやつがいるんだ。同率じゃダメなんだ。俺が勝たなければ意味がない!!!」
らいは「お兄ちゃんと同率ってことは、その人も全部満点なの!!?」
勇也「すっげえな。逆に勿体無く感じまうぜ」
猛勉強の末に迎えた二学期中間テスト。風太郎はここで決めてやるといつも以上に燃えていた。全て満点は相変わらずだったが、前よりも解くスピードが飛躍的に向上していたため、この前よりも見直しに時間を使うことができた。自分の成長を実感したと同時に今度こそ勝利を確信していた。
風太郎「…………おいおい」
だが、またしても悟飯は1位だった。風太郎が全て満点だったのにも関わらずだ。
風太郎「………これは認めるしかねえ。こいつも俺と同じように、何かの為に勉強してるんだ。そうじゃなきゃここまで長続きなんてしないはずだ」
1年生の2学期中間テストが終わったタイミングから、風太郎は孫悟飯を競争相手として見なくなった。寧ろ、初めて関わってみたいとさえ思った。
風太郎「焼肉定食、焼肉抜きで」
いつものメニューを注文した風太郎は食事を受け取った後にいつもの定位置につくことはなく、誰かを探し回るように歩いていた。悟飯がたまに食堂を使うことは把握している。その理由は………。
風太郎「………おいおい、話には聞いていたが…………」
悟飯「ぷはーっ!美味しかったぁ!」
4人席を1人で存分に使うほどの量の弁当を完食した悟飯の姿があった。
悟飯「さて、今日の復習をしておかないと…………」
風太郎「…………」
風太郎として久しぶりに自分から相手にコンタクトを取ろうとする。その為多少は緊張感を感じた。だが、自分が家族以外で興味を持つ相手は孫悟飯が最後だろうと思っていた。
風太郎「隣、いいか?」
悟飯「いいけど、君は確か……。上杉風太郎君……だっけ?」
風太郎「お前、よく俺のこと覚えてるな」
他人に関心がない風太郎は人の名前を覚えるのが苦手だ。その為、殆ど話したことがないのに自分の名前を覚えていた悟飯に感心してしまった。
悟飯「あはは…。まあね。だっていきなり勝負しろって言われたら、そりゃあ印象に残るよ」
風太郎「あの時はすまなかったな。お前が女子達にチヤホヤされているのを見て、つい女遊びの為に勉強してるのかと思っちまってた」
悟飯「あ〜…。あの時の言葉はそういうことだったんだ…………」
こんな説明を受ければ失礼だと怒るのが普通だろう。しかし、悟飯は怒るようなことはしなかった。寧ろ今までの疑問が解けてどこかスッキリしたような表情だった。
風太郎「(こいつ、変わってるな)」
風太郎は孫悟飯という人間が他の人とはどこか違う気がした。なんというか、余裕があるようなそんな感じだ。
風太郎「なあ、いきなりこんなことを聞くのは変かもしれんが、お前はどうしてそこまで勉強するんだ?」
悟飯「えっ?」
風太郎「お前が休み時間でも抜かりなく勉強しているのは知っている。ただの自己満足ってわけじゃないだろ?お前があの成績をキープし続けているのはそれ相応の理由が……勉強する理由があるからじゃないのか?」
普通ならこんなことを会ったばかりのやつにはしないだろう。それは風太郎でも分かっていた。しかし、彼は今すぐにでも知りたかった。何がそこまで悟飯を勉強させるのかを。
悟飯「……僕は小さい頃から学者さんを目指しているんだ」
風太郎「学者………学者!!!?」
想像以上のスケールで風太郎はびっくりしてしまった。
悟飯「最初はお母さんに学者になりなさいって言われたのがきっかけだったんだ。でも、色々あって自分が学者になりたい理由を見つけたんだ。今までは家で自習してたんだけど、そろそろ学校に通った方がいいってお母さんに言われたんだ」
この色々という言葉には悟飯なりの重みが含まれていた。ピッコロとの修行、ベジータ達との交戦。フリーザ達との激闘。セルとの死闘……。
これらを通して、悟飯は1人でも多くの人を救いたいと思うようになっていた。そして自分の研究で人を救える何かを見つけ出せないかと思い立ったのである。その為、現在は生物系の学者を目指しているらしい。
風太郎「………そうか。一応似たような理由だったんだな」
悟飯「……逆に君はなんで?」
風太郎「……そうだな。お前だけ言うのもフェアじゃないよな」
まさか会ったばかりの人にこんなことを言うことになるとは思ってもいなかった。だが、不思議とこの悟飯とは仲良くなれる気がした。自分と同じように人のために役立てるように勉強しているなら……。そう思ったから、風太郎が勉強する理由を悟飯に教えた。
風太郎は家族……正確に言うと、妹の為に。悟飯は大勢の人の為に。結局は彼らが勉強する理由は同じようなものだった。
風太郎「………なあ、孫……」
勉強せずに遊んでばかりいる同級生に失望すらしていた風太郎。
悟飯「うん……?」
何故同級生達は勉強しないのかと疑問に思っていた悟飯。
風太郎「これからは、一緒に勉強しないか?そうすればお互いに得られるものがあるかもしれないぜ?」
悟飯「……!!」
そんな彼らが勉強する理由をお互いに知れば、仲良くなるのは最早必然と言うべきものだった。
悟飯「勿論!これからよろしくね、上杉君!!」
この日、悟飯にとって初めて自信を持って友人と言える存在ができた。以前までは風太郎一人でいることが多いと言われていたが、この時からは悟飯と一緒にいることが多いと言われるようになっていた。
また、いつも顔を変えない風太郎だったが、悟飯の前では次第に色々な表情を見せるようになり、『あの上杉を笑わせる孫は何者だ……?』と言われるようになったと同時に、『上杉君もちゃんと笑えるんだね』と、同級生達の間での風太郎に対する評価も改まりつつあった。
そんなこともあり、風太郎に声をかけようとする同級生が増えたのだが…。
風太郎「勉強の邪魔だ。放っておいてくれ」
こんな感じで、悟飯以外には相変わらず関心がないと言った様子で突き返すだけとなり、再び風太郎に話しかける人がいなくなったとか………。
武田「大体こんな感じの話だね☆」
時は戻って現在。デート中の二乃と悟飯に懇切丁寧に過去のことを説明していた武田だったが、ようやく説明を終えた。
二乃「説明ありがとう。だけどなんでここにいるのかしら?」
武田「たまたま君達を見かけてみれば、上杉君と孫君の過去の話をしていたようだったのでね。ここは僕が語らずにはいられないって思って出てきたまでだよ」
二乃「説明してくれたことには感謝するけど、デートの邪魔よ。帰ってくれない?」
悟飯「まあまあ……」
武田「しかし孫君。そんなにデートばかりに時間を費やして大丈夫なのかい?もうすぐ受験ではないのかい?」
二乃「ハー君はあんたなんかよりよっぽど頭がいいから余裕なのよ」
悟飯「そんなことないけど……」
武田「何故僕には当たりが強いんだい?」
二乃「デートの邪魔をしてるからよ!!いいからどっか行きなさい!!!」
悟飯「まあまあ二乃、落ち着いて……」
こうして、二乃に悟飯と風太郎の過去が明かされた。四葉にも風太郎の口から明かされていたのだが、こちら側は大変なことになっていた。それは次回語るとしよう……。
なんか今までで一番作り込んだ気がする……。悟飯の体育の話とかいれてもよかったんですけど、今回は悟飯と風太郎の馴れ初めを書きたかったのでそちらは省きました。恐らくこの辺は番外編で気が向いたらやると思います。悟飯と風太郎は幼馴染ってわけでもないので、最初から仲がいいとは考えにくいですしね。多分同じ一位を取る悟飯に対抗心を抱いていたと思います。
ファンアートの紹介は……今週中にできればいいけどできるか怪しい()