孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです【本編完結】   作:Miurand

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 前々回のあらすじ……。
 二乃と五月が風呂に乱入してきたり、五つ子の祖父に三玖と悟飯の関係を誤解されたり、五つ子ゲームが開催されたりと、色々な目に遭っていた悟飯。

 五つ子ゲームは長い時間をかけながらも、見事に全問正解することのできた悟飯。

 そして前回は、悟空と零奈があの世で対談することになった。悟空のお陰で少しは零奈の心が軽くなったようだ。

 しかし、悟飯は恋愛に関する悩みが解決していない。付き合っていないのに二人とキスをしてしまっている悟飯。本当に刺されないか心配になってしまうが……。



第39話 謎の多い旅行

 

一方その頃、温泉では……

 

二乃「痒いところはありませんか〜?」

 

一花「もー、ここまでしてくれなくても良かったのに……」

 

一花は二乃に誘われ、2人で朝風呂に入っていた。今度はちゃんと混浴ではなく、女湯に入っている。

 

二乃「あら、足どうしたの?平気?」

 

一花「うん。山でちょっと捻っちゃって…。痛くはないかな?」

 

二乃「もう…。気をつけなさいよ?」

 

一花「……この温泉も変わらないね」

 

二乃「昔は五人で入ってたっけ」

 

一花「……それで、今日はなんで私なんだろう…?」

 

昨日は五人で入ったものの、普段は一緒に入るということはない。特に、特定の誰かと一緒に2人で入るということは尚更ないのだ。その為、一花は二乃が自分に何か用があって朝風呂に誘ったのではないかと簡単に推測した。

 

二乃「……一花の話が聞きたくなったのよ。ほら、あんたって沢山されてるらしいじゃない?告白とか……」

 

一花「…!!」

 

確かに、一花は姉妹の中でも突出して告白される機会が多かった。つい最近も三玖が変装していたとはいえ、前田に告白された。

 

こんな話を持ちかけてくるということは………。

 

二乃「こんなことは他の子には言えないわ。……好きな人ができたの」

 

 

 

 

一方その頃、五月が強引にマルオと会話をしてマルオを引き止めているのだが、そろそろお腹が空いて悲鳴をあげそうになっていた。

 

ちなみに、五月は気づいていないが、娘から声をかけられたのが嬉しかったのか、少しだけマルオの頬が緩んでいたのだが、それは別のお話。

 

 

 

 

二乃「恋愛相談なんだけど、出会いは最悪だったわ。でも気づいちゃったのよ。あいつが好きだって」

 

一花「…(二乃も三玖も五月も、みんな真っ直ぐで強いな…。でも私は……)」

 

二乃、三玖、五月の三人は、悟飯に対してこれまで様々なアタックを仕掛けていた。と言っても、二乃は参戦したばかりなので、先の2人と比べたらまだ数は少ないが……。

 

その三人はライバルがいるからかもしれない。だからここまで積極的に責めているのかもしれない。だが、一花の場合は状況が少し変わる。一花のターゲットである風太郎を狙うライバルというライバルは存在しない。だからなのか、一花はあまり積極的になれなかった。

 

いや、それだけではない。もしも自分の想いを風太郎に告げてしまったら…。今までのような関係ではいられなくなるのではないかと危惧しているのだ。だからこそ、既に告白した五月と二乃や、分かりやすいアタックをしている三玖を『強い』と言ったのだ。

 

一花「えっと、友達の話だよね…?」

 

二乃「私の話よ」

 

二乃は最早テンプレとも言える友達の話作戦を遂行しないどころか、隠す気が全くないらしい。

 

二乃「相手は……。だめ!こればかりは言えないわ!!秘密!!」

 

一花「……(知ってるけど…)」

 

一花は二乃の告白を影で聞いていたと言うこともあるが、そもそも二乃の想いは既に他の姉妹にも勘づかれている。鈍感な五月でも気付いているのだが、二乃はそのことに気付いていないらしい。

 

二乃「……つい先日、そいつに告白しちゃったけど、それが正解だったか自分でも分からないわ。そこで聞きたいの。告白されたら、多少は意識したりするのかしら?」

 

一花「……(二乃が、もしも悟飯君じゃなくてフータロー君に……だとしたら…………)」

 

 

 

『私の経験ではだけど………。ごめん。そういうのはなかったかな』

 

二乃の足を引っ張るような台詞が頭に浮かんだ。一花はそんな自分に嫌気がさしていた。

 

 

 

一花「うーん…。私の場合はちょっとは意識するかな?でも、それがきっかけで相手のことが好きになった、なんてことはないかな……」

 

これが一花の正直な感想だった。告白されれば多少は意識する。だが、それで相手のことが好きになるかと言われれば、また別の話だ。

 

二乃「……そう。多少は意識するのね。でも告白だけじゃ足りなそうね……」

 

一花「……二乃」

 

しかし、これだけは聞きたかった。あれだけ悟飯のことを嫌っていた二乃が、何故急に悟飯のことが好きになったのか。

 

一花「…出会いは最悪だったんだよね?なのにどうして今はその人のことが好きになったの?」

 

二乃「…あいつは私の大切なものを壊す存在として現れたわ。だけどあの夜、私の初恋の人に会ったのよ。だけどその初恋の人は、そいつの変装で、私が勝手に勘違いしてただけだった……」

 

この時点で既に二乃が自身の好きな人のことについて隠す気がないことが分かる。二乃の初恋の相手は、セルゲームに参加していた金髪の少年。そしてその少年の正体は悟飯であることは既に知っていた。

 

そんなことはお構いなしに、二乃は続ける。

 

二乃「……そして理解しちゃったのよ。私が拒絶していたのは、彼の役割であって、彼個人ではなかったことを……。王子様が彼だと気付いてからはもう歯止めが利かなかったわ」

 

一花「……」

 

だが、一花は知っている。今まで悟飯に対してどんな態度を取ってきたかを。

 

例えば初日。悟飯には効かなかったとはいえ、睡眠薬を盛っていたし、その後も授業を妨害していた。一度や二度ではない。

 

そんなことをしておいて、好きになったら態度を変えてアタックするというのは、些か都合が良すぎではないか?一花はそう考えた。

 

一花「…ちょっと都合が良すぎじゃないかな?最初は拒絶していたんでしょ?なのに、気付いたら好きだなんて……」

 

一花は少々苦笑いをしながら二乃にそう言った。別に二乃の恋路を邪魔するつもりはないが、いくら優しい悟飯でもそれを許してもいいのだろうか?と少々疑問に思ってしまった……。

 

 

 

というのは建前で、これ以上は恋愛に関する話をしたくなかったのだ。それをする度に、風太郎のことを思い出してしまう。そして臆病で卑怯な自分に嫌気がさしてしまうのだ。だからこの話を早く終わらせたかったのだ。

 

二乃「……そうね。こればっかりは自分でも引いてるわ。だからって諦めるつもりはないけど。だってこれは私の恋だもの。私が幸せにならなくちゃ意味ないわ」

 

一花「……(自分の恋だから、自分が幸せにならないと意味がない……か)」

 

一花「……もし、同じ人を好きな人がいたら?その子の方が自分よりずっと彼のことを想ってるとしたら?」

 

二乃「それは、そうね………。悪いけど蹴落としてでも叶えたい。そう思っちゃうわ」

 

一花「……(と、止まらない……!愛の暴走機関車だ!話も聞いてくれない!相談だって言ったのに!!)」

 

二乃「あんたと話せてよかったわ。やっぱ告白だけじゃ足りないのね」

 

一花「えっ…?な、何をするつもり…?」

 

二乃「手を……ううん。抱きしめて…、それでも分からないなら……。

 

 

 

 

 

 

キスするわ」

 

 

一花「!?ッ」

 

いきなり二乃がキスすると言い出したものなので、一花は驚いてしまう。だがこの子ならやりかねないとも思ってしまう。何故なら今の二乃はブレーキが壊れた愛の暴走機関車なのだから…。

 

一花「そ、それはまずいよ!いきなりキスって…!?」

 

二乃「……そ、そうよね。冷静に考えて……。下手くそだったら嫌われちゃうわ」

 

一花「……(そういうことじゃないよ!?まあ、悟飯君なら下手でも全然嫌ったりしないだろうけど……)」

 

 

次に、二乃は目をギラリと光らせ、一花に急接近する。

 

二乃「あんた、キスシーンはもう済んだのかしら!?」

 

一花「な、何をするつもり…!?」

 

二乃「いいじゃない!姉妹なんだから!!」

 

一花「姉妹だからダメなのぉおおおッ!!」

 

二乃の暴走具合には、長女の一花も流石に骨が折れた……。

 

 

 

 

 

「ひゃ!」

 

「まだ冷たい……」

 

「やめて下さいよぉ!」

 

「あっ!二乃と一花も来たみたいだよ!」

 

 

 

 

祖父「今来たのが一花と二乃」

 

風太郎「えっ?」

 

祖父「あれが三玖」

 

風太郎「えっ?」

 

祖父「その隣が四葉」

 

風太郎「えっ…?」

 

 

悟飯「……」

 

僕は五月さん、二乃さん、三玖さんの三人に誘われる形で海に来ている。悟天とお母さんは山で自然を堪能しているところだ。

 

……ところで……?

 

悟飯「……上杉君、何をしているの?」

 

風太郎「師匠にあいつらの見分け方を教わっているところだ」

 

いつの間にかお爺さんを師匠呼びしている……?それにしても、五人を見分けるコツをどうしてこんな必死に………。あっ、偽五月さんの件か…。

 

祖父「……お主。三玖と付き合っているんだから、せめて三玖の顔は分かるんだろうな……?」

 

……誤解されたままだったんだ…。今のうちに誤解を解いた方がいいかな…?

 

悟飯「あの、僕は三玖さんと付き合ってるわけじゃ……」

 

祖父「なに…?それなのに孫と接吻したのか?殺す……」

 

悟飯「い、いやだなぁ!冗談ですよ!冗談ッ!!」

 

祖父「笑えぬ冗談はよせ」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

風太郎「はっ?せ、接吻!?お前、何してんだよこんな時に………」

 

悟飯「あ、あれは色々あって…………」

 

ダメだ…。このままでは僕がどうしようもない女垂らし野郎に認定されてしまう気がする……。

 

祖父「お主、どれが三玖か当ててみろ」

 

悟飯「へっ…?」

 

今は五人とも五月さんの格好をして遊んでいる。だから顔だけで見分けるのはとても難しい。時間をかければできないこともないのだが、1人見分けるだけでも10分ないと厳しいのが現状だ。

 

だから、今は気を使って区別するしかないのだ。

 

悟飯「……今、海の水を汲んだ子が三玖さんですよね?」

 

祖父「……なかなかやるではないか…。だが儂はまだお主を認めたわけではないぞ…?三玖に案じて許してやってるだけだ……」

 

……ここで否定をしたらまた……。どうやったら誤解を解けるのだろうか…。

 

「わあ!たくさん釣れてますね!」

 

風太郎「ああ、殆ど爺さんの手柄だがな」

 

「これはなんて魚ですか?」

 

祖父「メバル」

 

「これは?」

 

祖父「アイナメ」

 

「これは?」

 

祖父「クロダイ」

 

(みんな一緒に見える……)

 

 

「これは?」

 

祖父「ああ…。これはキスだな」

 

「…!!」

 

その言葉を聞いた途端、五月の格好をした五人のうちの1人が、ズンズンと悟飯に歩み寄ったが………。

 

「………今じゃないわね。五月の姿じゃむしろ五月が有利になるかも……」

 

「………」

 

 

 

悟飯「……?」

 

な、なんだ…?上から何か落ちてくるような気が……?……いや、あれは…!!

 

 

 

 

 

ブンッ‼︎

 

 

 

 

 

悟飯「……!!」

 

 

突然、謎のマシンが空中に現れた。しかし、角度的に他のみんなはこれに気付いていなかった。

 

しかも、そのマシンは、悟飯も見覚えのあるものだった。

 

悟飯「……まさか…!」

 

 

ドシューン‼︎

 

悟飯「!?」

 

しかし、そのマシンは急発進をして、海の向こうへと姿を眩ましてしまった。

 

 

悟飯「……間違いない…。あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ザバァアアアアアアアンッ!!!

 

 

「きゃっ!!」

 

「な、なによ!?」

 

 

マシンが突然現れた位置から真下に何かが落ちた。いや、誰かが落ちた。

 

悟飯「と、トランクスさん!!」バシューン‼︎

 

 

悟飯は五つ子の祖父が目の前にいることをお構いなしに、舞空術を使ってその人物の救出に向かった。

 

悟飯「無事ですか!トランクスさん!!」

 

……そう。この悟飯の言動から、マシンとは、タイムマシンのことを示唆していたのだ。だが…………

 

 

悟飯「……?トランクスさんじゃない…?………気はそこまで弱っていない…。気を失っているだけか…?」

 

四葉「待って下さい!お父さんはお医者さんですから、一度お父さんに見てもらいましょうよ!」

 

悟飯「そうか…。分かった!!」

 

 

ドシューンッ!!

 

 

悟飯は全速力で旅館に戻って行った…。

 

風太郎「な、なんだ…?何があったんだ…?」

 

祖父「……あの者……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「マルオさんはいますか!!」

 

マルオ「……君は娘達と共に海に行っていたはずだが…?」

 

悟飯「この人が……」

 

マルオ「……なるほど…。私も命を救う医師だ。今できる限りのことはしてみよう」

 

悟飯「いえ、命の心配はいりません。ただ気絶しているだけだと思うのですが、一応……」

 

悟飯は空から落ちてきた人をひとまずマルオに任せた。気を感じることはできるし、そこまで弱っているわけでもないので、命の心配はいらない。

 

だが……。

 

マルオ「……左腕を失っているようだね?だが、出血していないところを見ると、かなり前に失ったものと思われる……。特に気にする必要はなさそうだ。君はもう戻っていていいよ。この人は僕が見ているよ」

 

悟飯「……ありがとうございます」

 

悟飯が助け出した謎の人物…。彼は孫悟空によく似ていた。だが悟空にしては髪が短いし、雰囲気も違う…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなもバスで戻ってきたようで、さっきのことを心配されたが、特に問題はなさそうだと言っておいた。実際、命に別状はない。

 

……おや?部屋に戻ると、二乃さんからと思われる手紙が……。夜に展望台に来てと書いてある。……なんだろう?

 

 

 

 

悟飯「どうしたの、二乃さん?」

 

二乃「あら、ちゃんと手紙を読んでくれていたみたいね」

 

今度は五月さんの格好をしているわけではないらしい。

 

二乃「ちょっとあんたと話をしたかっただけよ」

 

悟飯「それなら電話でもいいんじゃ……」

 

二乃「細かいことは気にしないの。それでさ、この鐘、知ってる?」

 

ああ…。これは先日、江端さんが説明していた鐘だ。確か、男女2人で鳴らすと結ばれるとかなんとか………。

 

悟飯「……って感じの鐘だよね?」

 

二乃「そうよ。よく覚えてるわね?」

 

悟飯「ま、まあ……」

 

二乃「………」

 

悟飯「………?」

 

ん?二乃さん、突然目を瞑ってなにをしているんだ…?

 

悟飯「二乃さん、眠いの?」

 

二乃「あーそうね。確かに眠いかも。王子様がキスしてくれれば目が覚めると思うんだけどな〜」

 

悟飯「………」

 

 

なるほど。二乃さんの目的がよく分かった。ダメだ。これ以上付き合ってもいない女の子とキスするわけにはいかないぞ。既に2人とキスしてしまっている。それだけでも充分まずいのに、更にもう1人とキスしました、なんてことになったら……いよいよあのお爺さんに殺されてしまう……。

 

 

二乃「逃がさないわよ」ガシッ

 

悟飯「わっ!!」

 

立ち去ろうとしたら、二乃さんが僕を掴んできた。

 

悟飯「だ、ダメだって!付き合ってもいないのにキスするなんて!!」

 

二乃「ふーん?三玖とはしたのに?」

 

悟飯「…………えっ?」

 

な、なんで……?いや、三玖さんみたいにカマをかけているに違いない…!二度も同じミスはしないぞ…!!

 

悟飯「嫌だなぁ…。証拠もないのに…。その場面でも見たのかな?それとも、信憑性のない噂に惑わされたとか?」

 

二乃「三玖がね、寝言で『悟飯とキスできた…。やった……嬉しい………』って言ってたのよ」

 

悟飯「………」

 

いや待て、冷静になろう。寝言が証拠になるわけがない。そんなの横暴だ。

 

悟飯「……三玖さんの夢の中での話じゃないかな…?僕は三玖さんとそんなことした覚えはないよ…?」

 

二乃「いや、今日の朝からどうも三玖の様子がおかしいのよ。史上最高レベルで機嫌がいいのよ。そこまで三玖を上機嫌にできるのはあんたくらいだと思うのよ」

 

悟飯「い、いや?そうとも限らない  ないよ?」

 

二乃「あの後三玖に問い詰めてみたのよ。そしたら自白したわよ。三玖からキスしたんですってね?」

 

み、三玖さん!?

 

二乃「明日から三玖のご飯に甘いもの入れまくるわよって言ったらあっさり降参したわ」

 

それはずるいよ…。

 

二乃「あんたとキスした理由が、五月と同じ土俵に立つためだとか言ってたのよ。これはどういう意味なのかしらねー?」

 

悟飯「………あ、あははは」

 

二乃「言っとくけど、逃げたらパパとお爺ちゃんに言うから」

 

お爺さんはともかく、マルオさんには絶対に言わないで!?こんなこと言われちゃったら絶対に逃げられないよ!?

 

ああ……。僕はどうしようもないダメ男だ……。

 

二乃「……やっぱりなし」

 

悟飯「………えっ?」

 

二乃「こんなズルい方法でキスしても虚しいだけだわ。姑息な手を使わずに真正面から挑みたいわ」

 

悟飯「二乃さん……」

 

二乃「……どうしても私とキスしたくなかったら、私なんか放っておいて旅館に戻ればいいわ。だけど、少しでも私とキスしたいって思ってくれるなら…、ここに残ってほしいの!」

 

……二乃さんは本当に僕のことを好きでいてくれているんだな…。でも二乃さん。その言い方はさっきよりもずるいと思うよ……。僕は五月さんと三玖さんとキスをしてしまっている。それなのに、二乃さんだけ拒否だなんて………。

 

…………でも、付き合ってもいないのにキスするのも良くないことだ。だったら僕はどうするべきなんだ?二乃さんの想いに応えてあげるべきなのか?それとも、このまま旅館に戻った方がいいのか…?確かに、戻ればこれ以上は過ちを犯すことはない。だけど、二乃さんの心を傷付けることは間違いない。

 

 

 

『相手とキスする想像ができるか---』

 

 

 

……できないことはなかった。むしろ違和感がないように感じられた。……………ということは………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「…………えっ?」

 

おや?二乃さんの様子が……。

 

悟飯「どうしたの?」

 

二乃「……ママ?」

 

悟飯「えっ?」

 

まま…?ママって言ったのか…?ママって、母親を意味する言葉だよな…?でも、五人のお母さんは病気で亡くなったはず……。ドラゴンボールを使っても生き返らせることは不可能なはず…。

 

 

「………二乃」

 

二乃「ほ、本当に、ママなの…?」

 

「二乃、久しぶりですね」

 

どうやら、二乃さんから見たら、本当に母親らしい。……なんで?そんなはずはないぞ…?一体、どういうことだ?

 

二乃「ねえ、ママはあの日死んだはずよ…?葬式もしたし、火葬するところだって見たのよ…?」

 

零奈「ええ。私は確かに一度死にました。ですが、娘のお陰で現世に戻ることができました」

 

……娘?どういうことだ…?二乃さんは様子を見るに知らなそうだから、他の4人の誰かが生き返らせた………?

 

いや、ドラゴンボールでも不可能なことを、あの4人ができるはずがない…。

 

零奈「……あなたは?」

 

悟飯「ぼ、僕ですか?孫悟飯です。二乃さんを含む、娘さん達の家庭教師をさせていただいてます」

 

零奈「孫悟飯…?あなたが……」

 

悟飯「……??」

 

零奈「……ここでは平和に過ごしているのですね……」

 

悟飯「えっ?それ、どういう意味です?」

 

零奈「細かいことは気にしないで下さい」

 

二乃「……ママ…!ママ!」バッ‼︎

 

二乃さんは、久しぶりにお母さんと再会できた嬉しさを抑えられなかったのか、二乃さんのお母さんに飛び込んだ。

 

二乃「会いたかった…!会いたかった…!!」

 

零奈「私もですよ、二乃……」

 

2人が抱き合うその光景は誰がどう見ても、愛している親と、愛されている子であった。

 

だけど、どうもおかしい…。怪しい…。本来なら生き返ることのできない人のはず……。それにも関わらず、こうして僕たちの前に現れている…。二乃さんが認めているのだから、少なくとも外見は二乃さんのお母さんで間違いないのだろうが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零奈「ハッ!!」

 

バシュッッ!!!!!

 

二乃「キャッ!!!!!」

 

次の瞬間、何故か零奈の気が急激に高まり、それと同時に二乃が光だした。

 

 

シュン‼︎

 

 

二乃「はぁ……はぁ………な、何が起きたの…?」

 

悟飯は二乃の危険を察知し、何かが起こる前に二乃を零奈から引き剥がした。

 

悟飯「………一瞬だが、二乃さんの気があんたに移されるように感じた……。なんのつもりだ?」

 

零奈「………娘を返しなさい。例え孫君でも私の邪魔をするなら、容赦しませんよ?」

 

悟飯「な、なにを…?」

 

零奈「はぁっ!!」

 

 

カァッ!!!

 

 

悟飯「なっ…!?」

 

なんと、零奈が気弾を発射した。

 

 

二乃「きゃっ!!」

 

 

ビュン‼︎

 

 

悟飯が二乃に覆い被さると、そのすぐ真上をエネルギー弾が通過した。

 

エネルギー弾の風圧によって、鐘が揺らされて鳴り響いている。

 

悟飯「二乃さん、大丈夫?」

 

二乃「………まさかそこまで歓迎されているとは思わなかったわ」

 

悟飯「えっ…?んっ…!!」

 

 

………二乃と悟飯の影が重なった。

 

 

悟飯「な、ななな、何を…!?///」

 

二乃「……恋は攻めてこそとは思ってたけど、あんたには特に有効なのがよく分かったわ」

 

悟飯「二乃さん!?今の状況分かってる!?」

 

二乃「ああ。鐘が鳴り響いているわね。そしてこの鐘の近くにいるのは私とハー君だけ。あら?これって伝説が本当なら………」

 

 

 

カァッ!!!

 

 

悟飯「はっ!!」

 

 

バシンっ!!

 

 

またしてもエネルギー弾が飛んできたものの、今度は悟飯が弾く形で被害を免れた。

 

悟飯「お前!!何者だ!!二乃さんのお母さんじゃないな!?」

 

零奈「何を言っているのですか?私は正真正銘、二乃の母親の中野零奈です」

 

悟飯「それはおかしい…!ならなんで気を扱えるんだ!?気を扱える人は、地球上ではかなり限られた人数しかいないはずだ!!」

 

そう。中野零奈は一般人のはずだ。にも関わらず、こうして気弾を発射したので、悟飯は警戒心を強める。

 

 

 

シュン‼︎

 

 

零奈「はっ!!」

 

 

ドカッ!!

 

 

悟飯「がっ…!!」

 

 

悟飯は突然のことに対応できず、零奈の攻撃を許してしまった。

 

悟飯「だりゃ!!」

 

悟飯は拳をいくつも繰り出すものの、零奈には1発も当たることはなかった。

 

 

 

ドコォオオッ!!

 

 

悟飯「ぐっ…!!(まさか、人造人間として蘇ったのか…?いや、それなら気を感じないはず……。いや、セルみたいなバイオロイドタイプならあり得るのか…?だけど、肝心なのは『娘が生き返らせてくれた』と言っていたことだ…。これが真実なら、人造人間という線はかなり薄くなる……)」

 

一般人であるはずの零奈が、超化していないとはいえ悟飯を圧倒することができる理由は、人造人間として改造されたぐらいしか思いつかないが、Dr.ゲロの名前が上がってない上に、自身の生前の記憶も残っている様子なので、その可能性は限りなく低い。

 

悟飯「はぁああああッ!!」

 

 

ボォオオオッ!!!

 

 

零奈「……それは、超サイヤ人」

 

超悟飯「……なんであなたが超サイヤ人の存在を知っている…?」

 

零奈「……五月の記憶を介して知っていますからね」

 

超悟飯「……一体どういう意味だ?五月さんの記憶を介している…?」

 

零奈「お喋りが過ぎましたね……。二乃をこちらへ引き渡して下さい」

 

超悟飯「……そいつはできないな」

 

零奈「なら、力づくで従ってもらうまでです!!」シュン

 

 

零奈は常人には見えないスピードで悟飯に接近する。しかし……。

 

 

超悟飯「だっ!!」

 

 

ドカッッ!!!

 

 

零奈「ぐっ…!!」

 

超サイヤ人になった悟飯には余裕で目で追うことができた。

 

超悟飯「はぁあ…!!はっ!!」ブンッ‼︎

 

続いて悟飯は零奈の足を掴むと、回転を始めて零奈を振り回し始める。ある程度勢いがつくと、悟飯は零奈を遥か上空に投げつけた。

 

 

零奈「はっ!!」バババッ‼︎

 

 

零奈は体制を立て直すと、悟飯に向けて気弾をマシンガンの如く連射した。

 

 

超悟飯「なっ…!?二乃さんがいるのにお構いなしに!?」

 

二乃「きゃっ!!」

 

悟飯は二乃を庇いながら気弾の雨を器用に避けた。

 

 

超悟飯「はっ!!!」カァッ‼︎

 

 

零奈「…!!」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

悟飯は更に隙をついて気弾を発射し、見事に相手に直撃した。

 

超悟飯「二乃さん、怪我はない?」

 

二乃「……あ、ありがとう…。やっぱりあんたは金髪の方がカッコいいわ」

 

超悟飯「そ、そう……」

 

褒められて若干嬉しい悟飯であるが、状況が状況なので、素直に喜ぶことはできなかった。

 

 

零奈「……なるほど。私が知る孫君よりもかなりできるようですね」

 

 

相手は先程の気弾が効いたのか、多少はダメージが入ったように見える。

 

零奈「……かー、めー、はー、めー…!!」

 

超悟飯「……!?あ、あれは…!?」

 

なんと、零奈はかめはめ波の体制に入った。実際に両手で青い光を作り出している。あれは間違いなくかめはめ波であった。しかし、五つ子の母親である零奈が何故かめはめ波を使えるのか悟飯は疑問に思ったが、考える余裕などなかった。

 

 

超悟飯「……かー、めー、はー、めー…!!」

 

 

二乃「やめてッ!!」

 

 

超悟飯「…!!」

 

二乃「これ以上ママを傷つけないで!!」

 

超悟飯「で、でも!あれは偽物で!!」

 

二乃「それはなんとなく分かるけど、それでもママを傷つけてるみたいで…」

 

零奈「波ぁああああああああッッ!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

超悟飯「まずい…!!」

 

 

二乃「う、うそ…!!」

 

実の娘である二乃がいるにも関わらず、躊躇なくかめはめ波を放っている時点で、本物の母親であるはずがないのだ。しかし、二乃が言うには、どこからどう見ても本物の母親らしい。

 

 

バチッッ!!!

 

超悟飯「はぁぁぁぁ……!!!」

 

 

悟飯は零奈の放ったかめはめ波を次第に押し始める。わざわざ超サイヤ人2にならなくても押し返すことは可能だ。

 

 

 

ドンッ!!!

 

 

悟飯は零奈のかめはめ波を跳ね返した。

 

 

ガシッ!!

 

 

超悟飯「ぐっ…!?」

 

二乃「は、ハー君!?」

 

零奈「私はこの時を待っていました。あなたの気をいただきます」

 

超悟飯「ぐっ…!!あっ…!!(な、なんだ…!?僕の気がみるみる減っていく……いや、吸い取られているのか…!?これじゃあ、まるで人造人間19号や20号みたいじゃないか…!!ということはやっぱり…!!)」

 

しかし、悟飯は力を出そうにも、首を思いっきり掴まれている上に、自身の気をどんどん取られているため、時間が経てば経つほど抵抗が出来なくなる。が、既に抵抗ができるほどの力が残っていない。

 

超サイヤ人2に変身しようにも、力が入らない為にそれも叶わない。

 

二乃「ママ!ハー君を離して!!ハー君は敵じゃないの!!」

 

零奈「二乃は黙っていて下さい」

 

と、零奈は冷たく言い放った。

 

二乃は確信した。目の前にいるこの人間は、自分の母親によく似たただの他人だと。

 

零奈「二乃?私達は長いこと離れ離れになってしまいました…。でももう大丈夫です。母である私が戻ってきました。これからは一花、三玖、四葉、五月と共に6人で暮らしましょう?」

 

一見、久々に娘に会えた母親が、娘に同居を提案しているように聞こえる。というか、側から見たら殆どの人がそう判断するだろう。

 

しかし……。

 

零奈「永遠に………」

 

二乃「えっ………?それ、どういう意味…?」

 

 

 

 

シュイン…

 

 

悟飯「ぐっ…!ぁ…!!」

 

そして、悟飯はとうとう超サイヤ人の状態を保てなくなってしまった。

 

二乃「ママやめて!それ以上はハー君が死んじゃう!!」

 

 

 

 

 

ドゴォオオオオオッ!!!!!

 

 

 

零奈「……!!」

 

 

悟飯「がはっ…!!」ドサッ

 

 

何者かが零奈を攻撃したことによって悟飯は解放された。

 

 

二乃「ハー君!しっかりして!!」

 

悟飯「ぐっ…!油断した…!!」

 

「……君は…」

 

二乃「あの…!ありがとうございました!!ハー君は私の大事な人だったんです!あなたがいなかったら、ハー君はもしかしたら………えっ…?あなた……………」

 

「……そうか。それは良かった」

 

シュン

 

零奈「……あなたは…」

 

突如、悟飯と二乃の目の前に現れた、山吹色の道着を着た戦士。

 

「零奈さん。もう人造人間17号と18号はあなたが倒しました。それなのに、何故まだ戦うんです?この人達は明らかに人造人間とは関係がない……」

 

零奈「…私は娘を失いました…。だから取り戻す必要があるのです。もう娘を失わないため、私が娘達を守ってあげなくてはならない…!!」

 

その戦士の雰囲気は、どことなく悟空に酷似していた。しかし、額には傷があり、左腕を失っている。さらに、悟空のような独特な髪型ではない。

 

「五月を解放して下さい…!!お願いします…!!」

 

零奈「それはできません。私は他の4人とも共に過ごす為に過去に来たのです。もしその邪魔をするなら、例えあなたでも………」

 

「……そうか。なら…!!」

 

 

ボォオオオッ!!!

 

超サイヤ人に変身した戦士は、未来の世界でたった1人……いや、正確には2人で戦い続けていた。

 

「オレはあなたを止める!!例えこの身が滅びようともッ!!!!」

 

その誇り高き戦士の名は、孫悟飯という……。

 





 初めてリクエストにしっかり?応えたような気がする…。ということで、未来悟飯は本編でも登場することになりました。今回のストーリーは、未来悟飯を出してほしいという沢山の要望から生み出されたものですので、間接的に読者の皆様が作ったようなものです。

 未来悟飯の登場だけでなく、零奈が謎の復活。未来悟飯が現代に来た理由、零奈が生き返った理由は、未来世界での出来事と合わせて判明させる予定ですので、あと数話はお待ち下さい。次回、次々回、その次くらいまでは未来世界の話になると思います。
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