孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです【本編完結】 作:Miurand
悟飯は自身の決意を3人に話した。そしてその日からは3年生としての生活がスタートしたのだが、なんと悟飯と風太郎が去年に引き続き同じクラスだったが、驚くのはまだ早い。なんと五つ子も揃っていたのだ。
五つ子が勢揃いということで、クラス中大騒ぎ。悟飯と武田が仲裁に入ったことによってその騒ぎは幾らかマシになった。四葉は突然風太郎を学級委員に推薦したが、その意図は一体………?
そして、悟飯は五月と共に変装をしてケーキ屋に行って新作を味わっていたが、二乃と風太郎にはその正体がすぐにバレてしまった。
悟飯が五月とケーキを食べに行った翌日……。
「えっ?上杉って誰?」
四葉「(もう忘れられてる!?)」
四葉は風太郎のプレゼントのついて、アイデアを聞くためにクラスメイトに聞き回ろうとするも、そもそも風太郎の存在は忘れ去られていた。と言うのは大袈裟だが、学級長としての印象しかないようだ。
武田「上杉君はそういうのは受け取るタイプじゃないと思うけど。ね?」
武田からはそんな回答が返ってくる。
「上杉君の好きそうなもの…?うーん………ごめん。全然分からないや」
女子にも聞くが、当然のように分からないと回答される。
「ところで四葉ちゃん!小耳に挟んだだけど、上杉君と付き合っているって噂、本当なの?」
四葉「………わ、私が上杉さんと…?」
「2人とも学級長で仲良さそうだし、あんな大胆に推薦するなんて勘繰っちゃうよね〜!」
「でも火のないところに煙は立たないって言うし!」
四葉「わ、私が上杉さんとつ……つき…なんて…!!恐れ多い!!」
「どうかなー?上杉君の方も満更でもないかもよ?」
なんて噂が蔓延っているのは事実である。四葉と風太郎が何気に共に行動することが多いことが原因なのだが…。
「中野さん!6.9秒!」
「6秒台?速え………」
四葉はこのタイムだったが、同じく共に走っていた三玖は10.5だった。五つ子なのにこの格差……。努力とは恐ろしいものである。
「でもあっちのがやべえよな」
「あっち?」
「ほら、孫だよ。あいつ5秒台だぜ?」
「おいおいえぐいな」
ちなみにだが、悟飯はそれでもかなり抑えている方である。本気を出せば恐らく0.0000000……(以下略)。
「体育委員いるか?これ片付けておいてくれ」
「今日は休みですよ」
「じゃあ学級委員頼む」
四葉「はい!」
風太郎「はぁ………はぁ…………」
悟飯「う、上杉君、大丈夫……?」
風太郎「やべぇ………しんどい………」
悟飯「お仕事変わろうか?」
風太郎「いや、それは自分でやる……」
風太郎は息を切らしながらも、学級委員としての仕事を熟す為に立ち上がって、一人で荷物を運ぼうとするが、風太郎にとっては重すぎた為に四葉と共に運ぶことになった。
「ほら〜やっぱり」
「絶対何かあるよね〜」
武田「………孫君。君は運動もできるんだね………」
悟飯「まあね」
ちなみにだが、武田は人並み以上には運動できるが、四葉や悟飯には及ばない。むしろその2人……特に悟飯が異常なまでにでき過ぎるだけである。
昼休みになった。悟飯は二乃と三玖と一花と共に誘われる形で食堂に行くことになった。
二乃「というか、前から聞きたかったんだけど、あの武田って奴といつ接点なんてできたのよ?」
悟飯「あー……。そういえば話そびれていたね……。あれは確か…………」
あれは1年生の時の中間テスト後の出来事だった。テストが全て返却され、学年単位で順位が公表された時のこと。僕と上杉君が1位だった。そのすぐ下に武田君の名前があったんだっけ?
このテストの時からだ。僕と上杉君が話すようになったのは。それまでは上杉君は誰とも喋ろうとしなかったし、僕もそれまでは上杉君は無口な人だと思っていた。だが意外にもお喋りなんだなぁ……と、話してみてイメージが変わった。この頃からはクラスは違かったが、上杉君とよく勉強するようになっていた。上杉君も誰かと勉強するよは懐かしみがあったようで、気分転換になったらしい。
で、僕が帰宅しようとした時だったかな…?
武田「君が孫悟飯君か……」
悟飯「……?君は?」
武田「僕は武田祐輔。この名前に身に覚えはないかい?」
悟飯「武田君…?ああ!学年2位の!」
武田「孫悟飯君!!今回は一位の座を譲ってしまったが、次は君に勝ってみせるからね!覚悟しておくようにね!!」
悟飯「えっ?」
最初は何故かライバル?敵?そんな感じだった。僕としては別に誰とも競っているつもりはなかったんだけど…、武田君はどうやら1位に拘っていたようだ。
しかし、1年1学期の期末……2学期中間、期末………。どのテストでも僕は満点をキープし、武田君は2位をキープしていた。
だが、武田君は毎回宣戦布告をしてくるので、僕も多少は武田君を意識するようになった。彼はただ一位に拘っているようには見えなかった。学年一位はあくまでも通過点……。そんな感じがした。
それで、僕は武田君にそれとなく聞いてみた。何故そこまで必死に僕に勝とうとするのかと。すると逆に、何故君は一位を取り続けることができるのか?と聞き返された。
僕には学者になるという夢があるということを伝えると、武田君も同様に夢があるとのこと。詳しいことは本人の口以外から口外するのは良くないだろうから夢は伏せておくけど、僕も彼も夢を追っている過程で勉強をしているに過ぎない。そんな共通点があったからか、ただ競い合うだけの関係ではなくなった。今ではどちらかと言うと、友達という言い方の方が合うかもしれない。
悟飯「………こんな感じかな」
三玖「そんなエピソードがあったんだ………」
二乃「だからあんなに親しげに話してたのね………」
一花「………ということは、フータロー君に対しても対抗心を燃やしているんじゃ…?」
悟飯「みたいだね。上杉君は他人に関心がないから、武田君の存在を認識しているのか怪しいけど………」
二乃「ずっと2位で上杉を追っていたのに、認識されてなかったとしたら憐れ過ぎない………?」
三玖「フータローだからあり得る……」
そういえば、今更だけど………。
悟飯「四葉さんと五月さんはどうしたの?」
三玖「四葉は五月と相談だって。よく分からないけど」
悟飯「ふーん?」
一体何を話しているんだろう…?
その日の放課後。本日は久々に全員で集まって家庭教師をすることになった風太郎と悟飯。一花は仕事で不在ではあるが、最近はみんなバイトをしていることもあって中々集まることができない為、これはチャンスだということで勉強会が開かれた。
三玖「ここで勉強するのも久しぶり」
二乃「最近はみんな忙しいものね」
四葉「一花は今日も仕事だけど、私も試写会行きたかったな〜……」
三玖「………ところで、五月はバイト…」
五月「ギクリ…」
二乃「あんた、まだ見つけてなかったの?」
五月「も、もう少しだけ考える時間を下さい………」
風太郎「お前ら、口より手を動かせ。月末の全国模試はもうすぐだぞ?」
二乃「ひと通り埋めたわ。はい、答え合わせよろしく。ハー君っ♡」
二乃は問題を解き終わると、悟飯の元に回答を提出するが、なんかあざとい。恐らく何かしら他意があるのだろう。
三玖「……私ももう終わってる」
二乃「邪魔なんだけど……」
三玖「なんで?」
二乃「はっ?」
悟飯「2人とも…!落ち着いて…!」
しかし、三玖が阻むように悟飯に回答を提出しようとする。そのせいか、二乃と三玖の間で喧嘩が勃発しそうな雰囲気になっていた。
風太郎「いや、俺の手空いてるんだが………」
四葉「模擬試験難しかったね〜」
五月「そうですね。しかしそれほど不安でもないというか………」
四葉「だよね!」
三玖「うん。学年末試験はみんなで乗り越えたんだもん」
二乃「一度越えた壁だもの。余裕だわ」
四葉「こうなるといよいよ卒業も見えてきましたね!上杉さん!!」
風太郎「……よっしゃ!!答え合わせするぞ!!」
ということで、4人の成績は右肩上がりになっていた。
それならばどれだけ良かったことだろうか。現実は非情である。情け?そんなものはない(無慈悲)。
風太郎「嘘だろ……?ほとんど赤点じゃねえか……………」
あろうことか、何故か3人の成績は落ちていた。
悟飯「こ、これは酷いね…………」
風太郎「お前らあれか?学年が上がると脳がリセットされる仕組みなのか?」
四葉「なるほど!道理で!!」
悟飯「何そのシステム…。厄介ってレベルじゃないよ………」
三玖「できたと思ってたのに………」
二乃「言い訳になるかもだけど、ここ最近は仕事ばっかであんま自習できてないのよね」
悟飯「……なるほど。確かに五月さんの点数は殆ど下がってない………」
五月「すみません!すみません!!」
風太郎「無事卒業とか言ってる側からこれだ。俺の模試勉強もあるってのに………。じゃあ、間違えた箇所から順番に確認していくぞ」
「「「「お願いします!!!」」」」
そして、しばらく復習をしていた。最初の頃とは違って、みんなやる気があるので、同じできない状態でも、圧倒的にこの状況の方が良かった。やる気があるのとないのとでは、頭に入る知識量もかなり変わってくる。やる気があるとは素晴らしいものだ。
ピンポーン……
だが、途中でインターホンが鳴った。
五月「はーい……」
五月が玄関に出る。宅配便か何かかと予想していたが、訪問してきた人物は……………。
「失礼するよ」
風太郎「!?っ」
三玖「お、お父さん!?」
なんとマルオが来たのだ。まさかとは思うが、強引に連れ戻す気だろうか?
二乃「どうしたのよ急に………」
マルオ「もうすぐ全国模試と聞いてね。彼を紹介しに来たんだ。入りたまえ」
悟飯「か、彼……?」
「お邪魔します。申し訳ない。突然押しかける形になってしまって」
悟飯「た、武田君…?なんで……?」
何故か武田がマルオの紹介したい人物として目の前に現れた。
二乃「えっ?君って………」
三玖「どういうこと?」
四葉「私、何がなんだか………」
その突然の訪問者に戸惑いを隠し切れていない各々。それもそのはず、武田と彼らは殆ど接点がない。悟飯でも個人的に関わりがある程度だ。
マルオ「今日からこの武田君が君達の新しい家庭教師だ」
二乃「はぁ!!??」
五月「ど、どういうことですか!?説明して下さい!!」
マルオ「おっと……。言葉足らずだったね。上杉君に代わる家庭教師が武田君だ」
四葉「ど、どういうことですか?」
マルオ「……上杉君。先の試験でも君の功績は大きい。孫君も謙遜か事実かは分からないが、君を必要としている程だ。成績不良で手を焼いていた娘達が優秀な同級生に教わるということで、一定の効果を生むことを教えてくれた」
三玖「それなら、フータローを変える必要はないよね?」
四葉「なんで上杉さんだけ……!!」
悟飯「………あっ」
悟飯はマルオの意図に気付いたようだ。優秀な同級生………。風太郎の成績を知っている悟飯だけが意図に気付いたのだ。
マルオ「そう。それは彼が未だに優秀ならの話だ」
四葉「……えっ?」
三玖「ど、どういうこと…?フータローはいつも通り満点を取ったんじゃ…?」
マルオ「孫君は順位と点数を維持していたが、残念ながら上杉君はどの科目でも点数を落とし、順位も落としている。孫君に次いで優秀な同級生となったのが彼だ。僕個人としては、孫君1人でも十分だと思っていたが、彼は1人では厳しいと言っていてね。確かにボディガードも兼任しているとなると負担は計り知れない。ならばということで、もう1人の家庭教師に相応しいのは彼だと判断した」
マルオの正論に何も言い返せず、空間が沈黙の渦に包まれた時。その沈黙を武田が破ったのだが………。
武田「ふっふっふっ…!
ヤッタ!!勝った!勝ったぞ!!イエス!オーイエス!!イエスイエスイエスッッ!!!!!!」
武田はキャラが変わったように風太郎に勝利したことを大喜びしていた。
武田「上杉君!長きに渡る僕らのライバル関係も今日で終止符が打たれたッ!!ついに僕は君を超えたッ!君の代わりも僕が務めてあげよう!!始まりは2年前、学年トップを目指して……」
風太郎「いや、お前誰だよ」
武田「えっ?ほら!ずっと2位に迫っていた武田祐輔………」
風太郎「あんなに突っかかってきたのはそういうことだったのか。ずっと分からなかったんだが………。今まで満点しか取ってなかったから、2位以下は気にしたことなかったわ」
武田「2位、以下ッッ……!!!」
テンションだけで天国に到達しそうだった武田を、風太郎のそんな正直で遠慮のない一言が地に叩き落とした。
悟飯「(なんか武田君が可哀想…)」
二乃「(2位以下…。憐れだわ…)」
五月「……分かりました。学年で一番優秀な生徒が家庭教師に相応しいというのなら構いません。恐らくそれだけが理由ではないのでしょうが……」
マルオは以前、五月に対して『上杉君が嫌いだ』と暴露していた。恐らく今回の提案も私情があってのことだろう。だが五月はそんな理不尽な提案に抵抗する為、こう宣言した。
五月「しかし、それなら私にも考えがあります。私が3年生で1番の成績を取ります!!」
四葉「えっ?」
二乃「えっ?」
三玖「えっ…?」
悟飯「んっ…?」
マルオ「ふむ……」
五月にとっては無謀な提案に、各々がつい反応してしまう。確かに五月は成績が下がってないとはいえ、学年トップの成績を取るなど今のままでは夢のまた夢である。
マルオ「いいだろう」
三玖「ちょ、ちょっと待って!お父さんに何言われても関係ない!フータローは私達が雇っているんだもん!!」
二乃「そうよ!ずっとほったらかしにしてたくせに、今になって…「いい加減に気付いてくれ」」
二乃はマルオに対して反論しようとしたが、武田の一言がそれを阻んだ。
武田「上杉君が家庭教師を辞めるということ、それは他ならぬ上杉君の為だ。君達のせいだ…!君達が上杉君を凡人にしたんだ!」
武田は生徒である4人を責めるようにそう言う。つまり、五つ子5人が風太郎の足を引っ張っていると言いたいのだ。
マルオ「彼には彼の人生がある。解放してあげたらどうだい?」
悟飯「い、いくらなんでもそんな言い方は……!!」
この言い方には流石の悟飯も思うところがあった。確かに足枷になってしまっているかもしれない。とはいえ、流石に言い過ぎだと、悟飯は少々怒りを感じた。
武田「では何故今まで満点を維持していた上杉君が点を落としたんだい?」
悟飯「そ、それは…………」
しかし、風太郎の成績低下の要因である事実には変わりない。悟飯はそれも承知していたので、言い返すことはできなかった。
武田「僕個人としては君にも家庭教師をやめてほしい。ライバルがこういう形で実力を失う姿を見たくないんだ」
悟飯「な、何を言って………」
武田「孫君、君はまだ満点を維持し、一位の座を僕に譲ってくれないね。僕としても学年一位に上がりたいところではあるが、勝つからには本気の相手に勝ちたいんだ。誰かに足を引っ張られることのない、最高のコンディションの相手を負かしたいんだ。だから君も凡人になる前に…………」
悟飯「………………」
確かに武田の言い分も一理ある。このままでは悟飯の成績にも影響しかねない。とはいえ、武田は何度も執拗にあの5人が足枷になっていると言った。直接そう言ったわけではない。だが、意味としては言ったといって差し支えない。
確かに最初は反抗的だった。でも今は一生懸命努力している。そんな彼女達を足枷と呼ぶことを悟飯は許せなかった。
悟飯「……君は、みんなが頑張っている姿を見たことある?ないでしょ?できなくても、諦めずに努力する彼女達の姿を…………」
武田「な、何を………」
悟飯「何も知らない癖に……。彼女達の努力している姿も見たこともないくせに……!知ったような口を聞くなッッ!!!!!!」
ブォオオオオオオッ‼︎
武田「!?っ」
必要以上に5人を貶す武田が許せなかった。とはいえ、流石に超サイヤ人に変身する程ではなかった。
だが、悟飯は感情を制御しきれずに気を少々解放してしまった。その影響で一瞬とはいえ、部屋の中に強風が吹き荒れた。
マルオ「しかし孫君。武田君の言っていることは間違いではないはずだ。現に上杉君は順位を落とした。これが何よりの証拠ではないかね?」
悟飯「あなたもあなたですよ、マルオさん。上杉君に一回怒られたくらいでここまでしますか?」
マルオ「………なに?」
まさか自分自身にも怒りの矛先を向けられると思っていなかったのか、マルオは怪訝な素振りをしながらも、平静を装って返事する。
悟飯「あなたが忙しいことは重々承知している。5人を育てるために一生懸命働いていることも、5人のことを考えて家庭教師を付けたことも承知しています。だが、あなたは娘さんを見ていない。分かっていない」
マルオ「………どういうことかな?」
悟飯「そもそも、何故彼女達が家出したのか、まさかとは思いますけど理解してないわけないですよね?彼女達が家出をしたのは、立ち入り禁止になった上杉君を必要としていたから……」
マルオ「しかし上杉君はあの時自分から辞めた。それを娘達が無理矢理……」
悟飯「ええ。確かに上杉君本人の意思ですよ。やめたのも、再開したのも。そもそも何故上杉君が辞めようとしたのか、分かっています?彼女達は一度家出をする程の大喧嘩をしました。その仲を戻す為に彼は奮闘しました。でも本来ならこれは家庭教師がするべきことではありませんよ?それなのに、上杉君はそれが上手くできなかったからと言ってやめたんですよ?」
マルオ「………何が言いたいんだい?」
悟飯「あなたが娘さん達を気にかけてあげないから…「悟飯。もういい」」
悟飯「上杉君!今まで僕も我慢していたけど、いい加減……!!」
風太郎「やめろ」
悟飯「う、上杉君………?」
風太郎はヒートアップした悟飯を抑えるようにこう続ける。
風太郎「確かに2人の言う通りだ。武田が俺を過剰に評価してんのは分かった。お前が言っていることも間違っていない。確かに俺は凡人になった」
風太郎は落ち着きながら、静かに淡々と語る。
風太郎「だが去年の夏までは……。あるいはこの仕事を受けていなかったら……俺は凡人にもなれていなかっただろうよ…………。
教科書を最初から最後まで覚えただけで俺は知った気になっていた。知らなかったんだ。世の中にこんな馬鹿共がいるってことを。俺がこんなにも馬鹿だったことを…。こいつらが望む限り、俺は付き合いますよ。解放してもらわなくて結構だ」
マルオ「そこまでする義理はないだろう?」
風太郎「……義理はありません。だが、この仕事は俺達2人にしかできない自負がある!!こいつらの成績を落とすことなんてしません。俺の成績が落ちてしまったことに関してはご心配をお掛けしました。
俺はなってみせます。武田に勝ち、学年一位………いや、全国模試一位に!!!!!」
風太郎は自信満々に宣言した。
四葉「う、上杉さん!!?」
風太郎「なんだよ!?」
五月「流石に全国は無茶ですって!」
三玖「フータロー!もう少し現実的に………」
風太郎「あ!?学年一位じゃ今までと変わらないだろ!?」
流石の風太郎でも無謀だと感じた4人は風太郎に詰め寄る。
二乃「全国模試十位以内!!」
五月「これでどうですか!!」
風太郎「おい!離せ!!」
武田「………大きく出たね。無理に決まっている。それも五人を教えながらなんて…………」
マルオ「………いいだろう。もしこの全国模試でそのノルマを達成できたら、改めて君が相応しいと認めよう」
こうして風太郎のノルマは定められた。
マルオ「当然だとは思うが、孫君には上杉君以上の成績を出してもらうが、異論はないね?」
悟飯「…………ええ。その代わり、僕が一位…………いや、全て満点を取った暁には、僕のお願いも聞いてもらいますよ?」
「「「「ま、満点ッ!!!?」」」」
五月「い、いくらなんでも流石に満点は……!!」
三玖「ご、悟飯…!!もう少し冷静に……」
悟飯「静かにしてて」
マルオ「ほう?ちなみにどんな願いだい?」
悟飯「簡単なことですよ。これ以上は父親としての仕事を放り出さないこと。たったこれだけです」
マルオ「………具体的には?」
悟飯「娘さん達としっかりと向き合うこと………」
風太郎「お、おい…!それ以上は……」
マルオ「ふむ。いいだろう。そのノルマを達成できた場合は君の願いを聞き入れるとしよう。だが、達成できなかった場合は…………。分かってるね?」
悟飯「………」
悟飯はマルオの問いに対して無言だったが、マルオはそれを肯定と見做した。
マルオも悟飯の言い分に思うところがあったのか、悟飯の要求を案外すんなりと了承した。
マルオ「それじゃあ、期待してるからね……。頑張りたまえ」
武田「覚悟しておくんだよ、2人とも」
こうして、2人は五つ子の住むアパートを後にした。
武田「しかし中野さん。良かったのですか?」
マルオ「何がだい?」
武田「孫君は他人の家庭事情に干渉しがちと言いますか……」
マルオ「………いや。彼の言い分はよく分かっている。僕は娘達から逃げているのかもしれないね……」
武田「な、中野さん?」
マルオ「おっと失礼。今の独り言は聞かなかったことにしておいてくれ」
武田「は、はい………」
どうやらマルオも自分が父親としての役割を果たし切れていないことがなんとなく分かっていたようで、他人に指摘されてしまうとは、父親失格ではないだろうか…?そんなことを考えていたかどうかは本人にしか分からない。だが、娘達とまともに接していない自覚はあったようだった。
武田「ところで、孫君は何者なんですか?彼が怒った瞬間、室内であり得ない程の強風が吹き荒れましたが………。それに孫君が彼女達のボディガードをしていたなんて、一言も………」
マルオ「………君は知らなくていい。彼には彼の事情がある、とだけ言っておこうか」
マルオ「(しかし、まさか孫君があんなに怒るとは思わなかった………。下手したら彼の方が父親として適性があるのではないだろうか……?)」
流石に冗談を交えた考えであるが、マルオは以前の風太郎、そして今回の悟飯の指摘も相まって、自分がこれから父親としてやっていけるのか不安になっていたのだが、それを顔に出さないようにしていた。
風太郎「お前……。心臓に悪いからやめてくれ…………」
五月「いきなりビックリしましたよ。武田君に対して怒鳴るなんて………」
三玖「お父さんに対しても怒るし……」
四葉「ヒヤッとしました…………」
一方で、悟飯は4人に先程のことで軽く説教を受けていた。
悟飯「でもあれは武田君の言い方が悪い。いくらなんでも言い過ぎだ。何も見てこなかったのに……。それにマルオさんは私情を挟み過ぎだ。一度上杉君に指摘されたぐらいであんなに……」
風太郎「こんなガチギレしてる悟飯は初めて見た…………」
五月「私達のために怒ってくれるのは嬉しい気はしますが、限度というものがありますよ!」
二乃「………でも、パパに対して言ってほしいことを言ってくれたのはスカッとしたわ」
三玖「で、でも……」
風太郎「………ということがあった」
一花「あの悟飯君がそんなに怒ったんだ………?想像できないや……」
風太郎「俺も約2年の付き合いだが、初めて見たぞ…。あんな悟飯は…………」
風太郎は翌日から、登校中だろうが構わずに模試勉強をするようになった。そこに一花がいつものように風太郎を待ち伏せし、コーヒーを貢ごうとするも、風太郎はコーヒーが苦手な為失敗した。
一花「でもフータロー君も悟飯君も大きく出たよね。フータロー君は10位以内、悟飯君に至っては1位で、しかも全科目満点でしょ?」
風太郎「流石に俺も止めたんだが、あの時の悟飯は一切引かなかったんだ。でも悟飯なら本当に取りかねないぞ?」
一花「あはは……。確かに……。そして相手はあの武田君でしょ?」
風太郎「知ってるのか?」
一花「2年の時同じクラスだったからね。あの時からザ・好青年って感じだったよ。あれはあれで大変そうだったけどね」
風太郎「まあ相手が誰であろうと負けるつもりは毛頭ない。これから月末の試験まで勉強漬けだ。覚悟しろよ」
一花「わ、私達もかぁ……」
風太郎「とはいえ、他の姉妹と違い、学年末試験の頃から働きながら勉強してきたお前だ。何も心配してないがな」
一花「……!むふふ、乙女の扱いが上手になりましたな〜」
風太郎「あれ?お前眼鏡とか掛けてたっけ?」
一花「今更!?前言撤回!!やっぱり鈍ちんだね……」
一花は風太郎の台詞に感心しかけたが、結局はいつも通りの風太郎であったことで若干期待外れ感が否めなかった。
一花「もっと早く気付いてほしかったかな…。どう?少しは知的に見えるんじゃない?まあ一応変装なんだけどね」
風太郎「変装……?」
一花「ほら、昨日私が出た映画の完成試写会があって、そこそこテレビとか取り上げられたみたいだしさ……。お、覚えてる?映画の時のことなんだけど……」
風太郎「………ぷくく…!声をかけられないように変装してたのか…!これは大女優様だぜ……!!」
風太郎は笑いに堪えながら一花を揶揄う。
一花「もー!恥ずかしいから言わないで!!」
風太郎「……おや?あれお前らの妹じゃねえか?やっと追いついたみたいだな」
一花「……そ、そうだね」
一花は風太郎との2人きりの時間が終わってしまうと思うと、少々寂しい気持ちになり、もう少し2人きりで居たいと思うようになった。
風太郎「また五月何か食ってやがるな。四葉の声はうるせえし、二乃がうちのバイトに入ってきた時はビックリしたな。向かいのパン屋で三玖が働き出したと聞いた時はもっと驚いた。何故かライバル店の客向きが減ったとうちの店長が喜んでたな………」
一花「……(やめて…!それ以上は他の子の話をしないで…!!)」
一花は気がつくと風太郎の手を取っていた。姉妹の話をされると、一花の独占欲がグツグツと湧き、姉妹の話を中断したかった。
一花「ねえ、このまま2人でサボっちゃおうよ?」
"私だけを見てほしい"
一花のそんな乙女チックな思いが一花の口を自然と動かした。だが風太郎は全国模試の為に猛勉強中だ。
風太郎「ダメっしょ」
一花「」チーン
そんな提案が通るはずもなかった。
一花「いいじゃん!少しだけ!」
風太郎「模試があるって言ったろ」
一花「1限目体育だよ!!」
風太郎「それなら…。って、そんなわけにはいくか!!」
一花はなんとか2人でサボって2人きりの時間を作ろうとしたが、風太郎が真面目、模試前ということもあってその努力は無駄に終わった。
一花がギリギリまで粘っていると、2人は遅刻寸前になってしまった。
風太郎「お前がダダこねるから遅刻寸前じゃねえか!!」
一花「フータロー君真面目すぎ!」
風太郎「ただでさえお前は昨日の勉強会をサボってたんだ。しっかりしてくれ」
一花「……(サボってたって……。私は私で仕事してるんだけど…!そもそも私抜きで話が進んでたのも少し気にしてたんだからね!)」ムスッ
一花は頬を膨らませながら、心の中でそうグチを漏らした。確かに一花は仕事で参加することができなかっただけなので、ただサボっているのとは訳が違う。まあ言葉の綾だろうが……。
ガラッ
「一花さん!朝のニュース見たよ!!」
「女優ってマジ!?」
「びっくりしたぜ!まさか同じクラスにこんなスターがいるなんて!」
「ずっとこの話題で持ちきりだよ!」
風太郎「……そんなにデカい映画だったのか?」
一花「まあね……」
クラスメイトの騒ぎ様に、風太郎は余程大きい映画でかつ、大々的に報道されたことを察した。
風太郎「……どうでもいいけど、オーデション受けてよかったな。これでお前は立派な嘘つきだ」
ドクンっ
クラスメイトの賛辞も確かに嬉しかった。だが、どんな賛辞よりも、一花にとっては、風太郎の何気ない一言の方が心に響いた。
ちなみに、一花と風太郎が来る前のこと……。
武田「孫君。昨日はあんな無礼をして済まなかったね。あれは上杉君と君を焚きつける為に敢えてああいうキツい言い方をさせてもらったよ」
悟飯「……僕も少し頭に血が昇っていたみたいだからお互い様だよ。だけど、僕を本気にさせたこと、後悔するよ?」
武田「ふふっ…!そうこなくちゃ……!やはりライバルと競うなら本気の相手じゃなきゃね!僕も負けないからね!!」
こんなやり取りがあった。
三玖「……焚きつけるためって…。余程本気の悟飯を負かしたいんだね……」
五月「………あんなに燃えている孫君は初めて見た気がします」
二乃「えぇ……。そうね…………。まるで別人みたいだわ…………」
武田の焚きつけ作戦は見事に成功し、悟飯は本気になった。果たして、悟飯は自ら課したとんでもないノルマを達成することができるのか?
また、風太郎も武田に勝利することができるのか?それとも、今回も武田が勝利するのか?
史上初の悟飯の模試による激闘が、幕を開けようとしていた……。
今回の武田君が五つ子を足枷だというシーン。あれは独自解釈も少々含まれています。武田が五つ子を足枷と言う時、悟飯は何かしら思うところはあるだろうと思いました。ただ一回言った程度では流石にキレはしませんが、武田がしつこく五つ子を足枷だと言ったことによって悟飯の怒りが小爆発しました。そして正しさばかりを語るマルオにもその被害が及んだ感じです。
キャラ崩壊してないかな?大丈夫かな…?でも悟飯は風太郎よりも感情的な部分はあるはずだから……、違和感はないかな………?
というわけで、悟飯は五つ子は足枷ではないことを証明する為に本気を出した感じです。次回の悟飯は少しキャラ崩壊しているかも…?
タイトル的に悟飯の新形態が出るのでは?と予想した人もいるかもしれませんが、残念ながら違います。
ちなみにごと嫁の映画見てきました。とにかく最高でしたね!!なんなら2日連続で見たくらいですしw
まだ見てない方は是非見てください。ごと嫁好きで見ないのは普通に損ですよ!
……今になって喪失感来た…。