孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです【本編完結】   作:Miurand

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 前回のあらすじ…。

 四葉の過去を聞いた悟飯だったが、今度は悟飯が自分の失敗談を話すことにした。悟飯は自身の失敗談を話し、四葉の失敗など気にするほどではないと伝えるが、四葉の反応は微妙だった。そこで悟飯は自分を責める方法に出ると、四葉は悟飯を擁護する発言をした。悟飯はこれを狙っていたのだ。これを利用して、四葉を擁護することによって、四葉に自信を少しでもつけようと模索したのだ。

 そして、四葉は人を守れる力を手に入れることができたら、その時は恋に積極的になれるかもしれないとのことで、悟飯は四葉に稽古をつけることになった……。


第11巻
第69話 決意


四葉は今日も孫家で修行をしていた。夏休みになったので一日中修行することができる。ようやく浮けるようになったので、今度は長時間浮く訓練をすることになるはずだった…………。

 

四葉「孫さーん!見てください!もうこんなに自由自在に飛べますよ!!」

 

四葉は浮かび上がるまでに時間を要したものの、一度コツを掴んでしまうと瞬く間に成長するようで、舞空術に関しては完璧にマスターしていると言ってもいいレベルにまで達していた。

 

悟飯「す、凄いね…。浮いてからたった1日で……………」

 

四葉「なんかやり方が分かったらすぐにできるようになっちゃいました!では次のステップをお願いします!」

 

だが、四葉の最終目標は空を自由自在に飛べることではない。姉妹や風太郎を守れるような力を手に入れること。なら戦いの仕方も教えなければならない。その基礎として舞空術や気の扱いを教えていただけに過ぎないのだ。

 

悟飯「よし…。気を具現化させることはできるよね?」

 

四葉「はい。それならこの通り!」

 

四葉はドヤ顔で気を具現化させる。そしてその気を自由自在に操っている。

 

悟飯「それじゃあ、気功波を試しに撃ってみよう」

 

四葉「こうですね!」

 

 

悟飯「わっ!?!?」

 

悟飯は咄嗟に四葉が繰り出した気弾を避ける。悟飯のすぐ横を通り過ぎた気弾は、地面に着弾すると大爆発した。

 

四葉「わっ!!孫さん大丈夫ですか!?」

 

悟飯「い、いつの間に気功波を撃てるようになったの……?」

 

四葉「えへへ…。ハンドボールを投げるイメージでやったらなんかできちゃいました!!」

 

なんかでできちゃう辺り特別な才能を秘めているのではないだろうか?そんなことは兎も角、力の制御に関してはイマイチなので、悟飯は力加減の修行をすることに急遽変更。

 

四葉は日頃からスポーツしており、特に力加減が重要なバスケも得意だからだろうか、悟飯に気の加減のノウハウを教わるとすぐに加減も覚えた。

 

悟飯「凄い……。基礎ができたら1人で勝手に成長していく…………」

 

悟飯は四葉の成長っぷりに最早感服するしかなかった。

 

四葉「いえいえ!孫さんのご指導があってこそですよ!」

 

そして四葉は満面の笑みで悟飯のお陰だという。四葉さんは本当にいい人だなぁ、今まで出会ってきた悪人に四葉さんの爪の垢でも飲ませてやりたいと思うほどだった。

 

四葉「じゃあ次はあれ教えて下さいよ!カメハメハ!!」

 

悟飯「そうだね……。でもそろそろお昼にしようよ。もういい時間だよ?」

 

四葉「おっと!もうそんな時間ですか!」

 

四葉も気のコントロールが上達してきたので、気を解放して高速で走ることも可能になっている。その為、悟飯と四葉は新幹線でも追いつけないほどの速さで孫家に戻っていた。

 

悟飯「いや〜……。正直四葉さんがここまでできるとは思わなかったよ…」

 

四葉「上杉さんなら、勉強もこうだったらよかったのに、って言いそうですね!」

 

悟飯「あはは!確かに言いそうだ!……まあ僕も今そう思ってるけど」

 

四葉「急に辛辣ッ!!」

 

しかも雑談をしながら走ることも余裕だ。あっという間に孫家に辿り着いたのだが…………。

 

四葉「あれ?孫さん家の前に飛行機が止まってません?」

 

悟飯「あっ、本当だ。一体誰だろう…?」

 

 

 

ビーデル「あっ!どこに行ってたのよ悟飯君!!」

 

チチ「悟飯!!この女誰だべ!?まさか愛人じゃないだべな!?」

 

ビーデル「だーかーらー…!!そういうのじゃないって言ってるでしょうが!!何回言ったら分かるのよ!!」

 

何故かビーデルがここに訪れていた。なんでビーデルがここが分かったのか不思議に思った悟飯だが、以前の会話を思い出し、悟飯の情報を引き出しているなら住所を知っていてもなんら不思議なことではなかった。

 

悟飯「ビーデルさん、一体どうしてこんなところに……?」

 

ビーデル「いや〜、ちょっとあなたにお願いしたいことがあるのよ。あなたって空を飛べるじゃない?だから私にも空の飛び方を教えてほしいの!」

 

何ともタイムリーなお願い。つい先程まで四葉に教えていたところである。

 

悟飯「いや〜……。今は四葉さん……この人に教えているから手一杯で……」

 

ビーデル「あーあ。なんか拡散したくなってきた気分だわ」

 

悟飯「勿論いいよ!!喜んで!!」

 

四葉は悟飯が態度を急変させた理由は分からなかったが、ビーデルがしてやったりという顔をしているのを見て、何か脅迫をされているのではないかとあたふたしていた。まあそれは強ち間違っていない。

 

チチ「舞空術ってやつだか…?まあそれくらいなら別にいいだが、お礼って言ってエッチなことすんでねえだぞ?」

 

ビーデル「するわけないでしょうがそんなことッ!!!いーだッ!!」

 

チチ「なっ!?失礼な小娘だべ!!!べーだッ!!!」

 

ビーデル「失礼なのはどっちよ!!」

 

悟飯「ちょ、ちょっと2人とも!!」

 

四葉「………新たな修羅場の予感がします………」

 

こうして、悟飯達が昼食を済ませた後、気の特訓にビーデルも加わることになった。しかし四葉は舞空術を既にマスターしているので、気功波やそちらの方の練習をしたいところなのだが、ビーデルがいる手前、それはやり辛いということで、四葉には気のコントロールをとにかく極めるように自主トレーニングしておくように頼んだ。

 

悟飯「さて、まずは気のコントロールから始めようか!」

 

ビーデル「キ…?キって何……?」

 

悟飯「あれ?あっ、そうか。ビーデルさんに説明するのは初めてだったね。気っていうのは、生き物に流れているエネルギーみたいなものだよ」

 

ビーデル「生き物に流れているエネルギー……?うーん……。なんかいまいちピンと来ないわね……」

 

四葉「だったら私が実演してみせましょう!!!」

 

ビーデル「えっ…?」

 

四葉は有名人を目の前にしてテンションが上がっているようだ。

 

四葉「気というのは………。こんな感じのやつです!!」

 

四葉は右手に球状の気を生成し、左手を添えて、気の玉を微妙に遠くにある岩に向けてシュート!

 

気が岩に当たると丁度いい加減で爆発をした。その光景を見届けた四葉は何かをやり遂げたような清々しい笑顔をしていた。

 

 

ビーデル「……何?バスケをすると空を飛べるようになるってこと…?」

 

悟飯「ごめん。あれはちょっと分かりにくい例だから気にしないで」

 

四葉「ちょっと酷くないですか!?」

 

悟飯「気っていうのはね、こういうものだよ」

 

悟飯は四葉に教えたように、両手に気を集中させて、光を生み出して気を生成してみせる。その輝きにビーデルは目を奪われたようで、見惚れてしまっている。

 

ビーデル「へぇ…!綺麗……!」

 

悟飯「まずはこれを生み出せるようにしようか!」

 

ビーデル「……分かったわ」

 

悟飯「難しいことは考えないでね。両手にエネルギーを集中させるイメージだよ」

 

ビーデルは両手に力を込めるが、それはただ力んでいるだけ。悟飯はリラックスするように指摘し、ビーデルは深呼吸をして集中する。

 

しばらくビーデルに付きっきりで面倒を見ていると、ビーデルは四葉よりもコツを掴むのが早かったのか、すぐに気を具現化してみせたのだ。

 

ビーデル「あっ!できた!」

 

悟飯「おお…!ビーデルさんは格闘家なだけあってコツを掴むのが早いね…!これならすぐに空を飛べるようになりそうだ」

 

ビーデルはやはり武道家というのが大きいのだろう。気のコツを掴むのはかなり早かった。

 

ビーデル「それじゃ、次はいよいよ空を飛ぶ練習ね」

 

悟飯「舞空術も基本的にやることは変わらないよ。心を落ち着かせて、空を飛ぶイメージを思い浮かべればいいよ。一度浮かべば後は簡単だから」

 

 

 

 

 

 

悟飯とビーデルが舞空術の練習をしている時、暇を持て余していた四葉は悟天と模擬戦をしてみることにしたようだが………。

 

悟天「ほらほら、こっちこっち!」

 

四葉「は、速いですよ〜!!」

 

悟天は遠慮というものを知らないようで、超サイヤ人に変身していないとはいえ殆ど加減をしていない。

 

四葉「むっ…!そうだ!」

 

四葉はポンと手を叩いて何かを閃いた動作をする。手に気を集中させると、紐のような気の塊を生み出した。否、紐にしては少し太い。

 

四葉「それっ!!!」ギュルル‼︎

 

悟天「わっ!!!!」

 

その紐……いや、リボン型の気は悟天を捕らえることに成功した。

 

四葉「やったー!!!悟天君を確保ッ!!!」

 

悟天「ぐぬぬぬっ…!!」

 

悟天は力で振り解こうとするが、どうやらちょっとの力では振り解くことはできない程硬いらしい。

 

悟天「なら!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

悟天は金色の炎のようなオーラを発生させ、金髪を逆立てて瞳をエメラルドグリーンに変化させる。超サイヤ人に変身すると、四葉のリボン型の気はすぐに突破される。

 

四葉「ず、ずるいですよ!!私はサイヤ人じゃないのでそんなことできませんッ!!!?」

 

超悟天「超サイヤ人を使わないなんて一言も言ってないもん!」

 

四葉「むむっ…!そういうこと言うと女の子にモテませんよ!!」

 

超悟天「別にいいもん。…って、あれ?今何時だっけ?」

 

四葉「えっ?今ですか?丁度3時ですけど?」

 

四葉はその辺に置いておいたスマホの時刻を確認して悟天に伝える。

 

超悟天「わっ!このままじゃらいはさんとの約束に遅れちゃう!!ごめんね四葉さん!!」

 

ドシューンッ!!!

 

悟天は超サイヤ人のまま舞空術で日本に向けて発進した。その理由を四葉の耳は一語一句零さずに聞き取っていた。

 

四葉「ら、らいはちゃんが、悟天君を……?何事ッ!?これは一大事ですよ!!?」

 

四葉は異常事態を察知し、急いでスマホを取り出して、らいはの兄である風太郎に連絡を取る。

 

 

 

 

風太郎「はぁ……。まさからいはに見られるとは思わなかった………」

 

風太郎はというと、『高校生のための恋愛ガイド』という本を購入したことがらいはにバレて少しいじられていたのだが、ふとらいはが『約束がある』と言って外出したのだ。

 

風太郎は一花の件で少しは恋愛に関心を持ったのか、はたまた射止めたい相手でもいるのかは不明だが、このような本を買うなんて、1年前の彼からは想像できる者は誰一人としていないだろう。

 

そんな風太郎は、珍しく勉強をしていなかった。それが幸いして、四葉の着信にいち早く気がついた。

 

風太郎「なんだ?勉強に関する質問か?夏休みに入ったばかりだってのに関心だな。他の姉妹にも是非見習ってもらいたい」

 

 

 

『上杉さん!!悟天君がらいはちゃんと2人で出かけるみたいですけど、これどういうことかご存知ですか!?』

 

風太郎「……はっ?」

 

風太郎は先程の出来事を思い出す。あんな本を持っていることがバレて恥ずかしい思いをしていた為、らいはが何故出かけるのか気にする余裕がなかった。しかし、四葉のこの着信によって風太郎は一気に覚醒した。

 

風太郎「(待て?まさかあの時の懸念が現実になろうとしているのか…!?でも悟天はまだ一桁だ…!いや、あのらいはのことだ…!!まさか……………)」

 

一言付け加えておくと、風太郎はシスコン。それは読者の皆さんも知っているだろう。しかし、四葉もらいはにぞっこんである。『上杉さんと結婚すれば合法的に姉妹に…?』なんて口走るくらいには。その為、四葉もある意味シスコンなのだ。

 

そんな2人が似たような状況を想像して慌てている。そんな2人が同じ結論に到達することは容易かった。

 

 

 

「『これは事実確認をする必要がある!!(ありますね!!)』」

 

勉強なんてそっちのけで風太郎と四葉は急遽悟天とらいはの尾行をすることになった。

 

 

 

 

 

ブォンッ!!!!

 

 

ビーデル「うわっ!!?な、何!?」

 

ビーデルは突然の強風に驚いて、せっかく浮けていたのに地面に着地してしまった。その強風の正体は全速力で走ってきた四葉なのだが………。

 

悟飯「ど、どうしたの四葉さん…?そんなに慌てて……?」

 

四葉「ごめんなさい孫さん!!急に用事ができてしまったので今日はこれで失礼します!!ありがとうございました!!!」

 

ドシューンッ!!!!!

 

四葉は一言悟飯に伝えてさっさと全速力で日本に向かってしまった。何故筋斗雲を使わなかったのかと不思議に思いつつも、余程何か重要な用事でもできたのだろうか?と悟飯は呑気に考える。

 

ビーデル「……ねえ悟飯君。あれぐらいまで飛べるようになるにはどれくらいかかるのかしら?あれぐらい自由に飛べるようになるまでここに通うわ」

 

悟飯「あ、あはは…………」

 

ビーデルがようやく浮けたことによって、悟飯はビーデルの訓練を終わらせることができると、なんとか上手く誘導していたのだが、四葉のこの一連の行動によって全て崩れてしまった。

 

孫悟飯の苦悩は続く………。

 

 

 

 

 

 

20分程経過した。その頃には四葉は上杉家には到着していた。そして風太郎と会ったのだが………。

 

風太郎「ど、どうしたんだ四葉?何故そんなに息を切らしている?」

 

四葉「ちょっと急いで来ただけなのでお気になさらず…!!では早速らいはちゃんと悟天君を追いましょう!!」

 

風太郎「おい待て。らいは達がどこに行ったのか分からないだろ?闇雲に探しても意味がないだろ?」

 

四葉「私のリボンセンサーがこっちだと反応しています!!」

 

風太郎「それ、あてになるのか?」

 

本当は気を利用して追っているだけだ。四葉は基礎がしっかりできてしまえば後は勝手に成長するタイプ。その為、人の気を追うことも容易くなっていた。しかしそれは風太郎には公表しない。自分がみんなを守れる力を手に入れたと確信してから打ち明けるつもりのようだ。

 

 

 

 

少し歩くと、確かにらいはと悟天の姿を確認した。

 

風太郎「お前のリボンセンサーとやら案外精度いいんだな。もしやリボンが本体なのか?」

 

四葉「そんなことありませんからね!?本体は私ですよ!?」

 

その言い方だとまるでリボンは四葉の体の一部だと言っているようにも聞こえてしまうが、細かいことは気にしないでおこう。

 

四葉「むむっ…?公園に行きましたよ?」

 

風太郎「公園で何するんだ…?遊ぶのか?」

 

 

 

 

らいは「はい悟天君、これどうぞ!」

 

悟天「?なにこれ?」

 

らいは「いいからいいから!開けてみて!」

 

らいはに言われた通りに悟天は箱を開けてみる。するとそこには………。

 

悟天「あれ?クッキーだ?」

 

らいは「ちょっと試しに焼いてみたんだ!良かったら食べてみてよ!」

 

悟天「いいの?僕の家あまりお菓子は出てこないからうれしいや!やったー!!」

 

 

 

 

風太郎「らいはぁ…!俺を1人にしないでくれぇ…!!!」

 

風太郎はらいはの行動に今にも泣き出しそうになっている。

 

四葉「しかしらいはちゃん。まさか今のうちに胃袋を掴んでおこうって作戦では……?恐ろしい子…………」

 

そもそも孫家でお菓子類が出ないのは珍しいと感じた。食事は沢山出てくるのだが、間食系はお客用に取ってある程度で自分達が食べる用には殆ど買っていないのだ。

 

クッキーを食べ終えたらいはと悟天は再び立ち上がって移動を開始する。

 

風太郎「よし!追うぞ!!」

 

四葉「上杉さんの瞳に炎が見えるような気がする…………」

 

 

 

四葉と風太郎はしばらく尾行していると、らいはと悟天はあるスーパーに辿り着いた。

 

風太郎「スーパーマーケット……?荷物持ちにするつもりか……?」

 

四葉「むむっ………。取り敢えず店内に入ってみましょう」

 

 

風太郎と四葉も店内に入ることにする。

 

 

 

らいは「ありがと!この卵1人1パックまでしか安くならないんだけど、悟天君もいると2パック買えるよ!」

 

悟天「クッキーもらったから、これくらいなら別にいいよ」

 

 

 

四葉「……あれ?」

 

風太郎「もしかして、本来の目的はこの為……?なるほど…!家計を考えての行動だったんだな!らいはマジ天使!!」

 

四葉「上杉さんがキャラ崩壊している………」

 

 

 

急遽尾行することになった四葉と風太郎だったが、2人(特に風太郎)が懸念するような事態にはならなそうだったので、そのまま引き返すことになった。

 

風太郎「しかし、クッキーで釣って買い物に付き合わせるとは、らいはも恐ろしいやつだ…………」

 

四葉「……そうですね」

 

しかし、四葉は疑問に思った。ただ買い物に人数が必要なら、風太郎を連れて行けばよかったのではないか?そうすればわざわざクッキーを作る必要はなかったはずである。なんなら風太郎と悟天を纏めて連れてくれば3パックも買える。ともかく合理的な方法とは思えない。

 

そう考えると、わざわざクッキーを焼いたのは・・・・

 

風太郎「ん?どうかしたか、四葉?」

 

四葉「な、なんでもありませんよ!!私はこれで失礼しますね!!」

 

風太郎「しっかり勉強しろよ〜!」

 

四葉はある考えに結論に辿り着いたが、風太郎に言うと面倒なことになりそうだと思い、敢えて黙っておいた。

 

四葉「……私、何気に上杉さんとデートしてたんだ……………」

 

2人で尾行することをデートと呼ぶなら、恐らくそうなのだろう()

 

 

 

そんな尾行デート(?)があった翌日。四葉は今日も元気に悟飯の元で修行していた。そろそろかめはめ波を撃てそうである。

 

四葉「波ぁあああああッ!!!!」 

 

ズォオオオオオオオッ!!!!

 

……と、空に向けて一本の青白い光が四葉の両手から放たれた。四葉はかめはめ波の習得に見事成功したのである。

 

四葉「やった〜!!撃てましたよ!!見てました!?」

 

悟飯「うん。もう技の基礎もばっちりだね。正直これ以上教えることはあるのかな…………」

 

四葉はもうZ戦士に加わっても申し分ないのではないだろうか?実戦経験がないのが少々不安だが、Z戦士に恥じぬ強さを持っているのは確かだ。

 

四葉「でも私はまだまだ修行させていただきます!孫さんの迷惑でなければの話ですけど!」

 

悟飯「うーん……。でもそろそろ勉強もした方がいいんじゃない?最近修行ばかりだったでしょ?」

 

四葉「一応家に帰ってからみんなで勉強してたんですけどね…。あはは……」

 

出会ったばかりの頃からは考えられない言動である。四葉は元々協力的であったとはいえ、他の3人(風太郎にとっては4人)は反抗的だった。そんな5人が一つになって勉強していると考えると、悟飯は感慨深い何かを感じた。

 

悟飯「それじゃ、今日はもう勉強に切り替えようか!」

 

そう思った矢先、当たり前のようにビーデルが孫家の前にいた。その為仕方なく今日も修行にすることにした。

 

 

ビーデル「大分浮けるようになったわ…!」

 

悟飯「凄い凄い!1日でそこまで浮けるようになるなんて!」

 

ビーデルは浮けるようになるまでが早かっただけでなく、舞空術の上達も早そうである。ただ四葉は基礎を掴むのが遅かったが、基礎を掴んでからは一人で勝手に急成長してしまったのだ。ビーデルはある意味安定して急成長していると言える。やはり武道家だから素人とは育ち方が違うのだろう。

 

 

そのような日々が過ぎていき、気がつけばビーデルが舞空術を習得しに通い始めてから1週間程が経った。

 

ビーデル「あはは!!すごいすごーい!!見て見て!!」

 

ようやく自由自在に飛べるようになってビーデルは大喜びをしている。

 

四葉「……あれ?ビーデルさん、いつの間に髪を切ったんですか?」

 

悟飯「僕のアドバイスを聞いてくれたんじゃないかな?」

 

四葉「アドバイス?」

 

悟飯「うん。髪が長いと相手に髪を掴まれて行動が制限されるリスクがあるから短い方がいいよって」

 

四葉「・・・・」

 

悟飯「……?どうしたの?」

 

だが、四葉は知っている。ビーデルの様子が最近変わったのを。最初はツンツンしていたビーデルだったが、日が経つに連れて角が剥げて丸くなってきたかのように素直になってきたのだ。そして悟飯の顔を見ると少し顔を赤くする始末。恋愛関係に敏感な四葉は、ビーデルが悟飯に対して少なからず好意を持っていることを察するには十分だった。

 

ビーデルは、今まで過保護に育てられてきた。一人娘だからというのが大きな原因かもしれないが、父親であるサタンは『私より強い男以外の交際は認めない』と何度もくどく言われていた。そしてMr.サタンの娘という看板が逆にビーデルの邪魔をしていた。要は憧れの存在だが、父親のことを考えて近づき難い存在でもあったのだ。クラスメイトを除いて中々ビーデルに親しくしてくれる人はいない。

 

だが悟飯は違った。悟飯だけは"サタンの娘"ではなく、ビーデルという一人の少女として接していたのだ。それを自覚したビーデルは、無意識に、確実に悟飯に惹かれていったのだ。

 

その為、髪型を変えるように提案された時は、好みの髪型に変えようかとウキウキしていたのだが、案の定悟飯の鈍感提案によってビーデルは怒ってしまうものの、結局は悟飯のアドバイスを受け入れてショートヘアにしたのだ。

 

四葉「………孫さんが天然の女タラシになってる……!!!」

 

四葉は危機感を覚える。このままビーデルが恋愛という名の戦争に参加するとする。まずは間違いなく二乃と衝突するだろう(というか既にしたことあるし)。それだけではない。恐らく姉妹達(主に3人)が結託して妥当ビーデル同盟を結成するに違いない。

 

メタな話になるが、ある世界ではビーデルは悟飯の嫁として嫁いでいる。四葉はそれを認知しているわけがないのだが、それを無意識に感じ取ったのか、はたまた女の感というものかは不明だが、四葉はここ最近で一番焦燥感を覚えてしまう。

 

四葉「(ど、どうしよう!?みんなに言うべきかな!?でも言ったら間違いなく喧嘩になっちゃう…!!うぅ…!!)」

 

四葉としては、姉妹に幸せになってほしいので、ビーデルの味方をする確率は限りなく低い。とはいえ、ビーデルを突き放すような真似は四葉の性格上できない。

 

ビーデル「悟飯君ありがとう!!これならもう大丈夫だと思うわ!」

 

悟飯「今更聞くのも変だけど、どうして舞空術を習おうと思ったの?」

 

ビーデル「ちょっとパパを驚かせたくって。最近のパパは調子に乗ってるから、娘が本気を出しているところを見て焦ってほしいのよ」

 

四葉「あれ?意外ですね?お父様に勝ってほしくないんですか?」

 

ビーデル「ううん。むしろ負けてほしいくらいだわ!チャンピオンになってから女遊びばっかり!!天国にいるお母さんが泣いてるわよ!!」

 

悟飯「(よし!)」

 

悟飯はサタンを負かしてもいいことを悟ると、こっそりとガッツポーズを取る。

 

ビーデル「そうだ!せっかくだしあなたも出たら?」

 

ビーデルは四葉に天下一武道会に出場するように進言した。四葉はそんなお誘いが来るとは思わず、ポカーンとしている。

 

ビーデル「あなただって、謂わば悟飯君の弟子みたいなものなんでしょ?きっといい線行くと思うのよ!まあパパには勝つのは無理だと思うけど」

 

ビーデルは父親がセルを打ち倒したものだと信じているのかどうかは定かではないが、サタンが武道家として優秀なのは事実。その為、悟飯がメタルクウラ達を撃退した事実を知っていてもサタンの方が強いと思っているようだ。

 

しかし四葉は知っている。目の前の悟飯がセルを倒したことを。だからといって敢えてそれを口にするほどお馬鹿ではない。

 

四葉「わ、私が……?」

 

ビーデル「前に組手したことあったでしょ?あなたの腕も中々だったと思うのよ!だからあなたにも是非出場してほしいわ!そうすれば今年の天下一武道会は盛り上がること間違いなしよ!」

 

四葉「あはは…。検討してみます……」

 

ビーデル「それじゃあまたね〜!!」

 

悟飯「うん!」

 

ビーデルはジェットフライヤーを使わずに舞空術で帰宅していった。

 

四葉「………孫さん」

 

悟飯「…?どうしたの?」

 

四葉「もしも、もしもですよ……?ビーデルさんに好きだって言われたら、孫さんはどうお返事します?」

 

悟飯「なんでそんな突拍子な質問を……」

 

四葉「…………」

 

悟飯は四葉がふざけて質問するしているのかと思ったが、四葉の真剣な顔を見て、何故かは分からないがふざけていないことは察し、悟飯も真面目に回答することにした。

 

悟飯「…悪いけどビーデルさんの気持ちには応えられないよ。だって、僕は既に3人も待たせている人がいる。僕自身もその3人にしっかりと返事をするって決めたんだ」

 

悟飯の意見は揺らぐことは無さそうだった。今にして思えば、ビーデルの性格を考えると、とても控えめなアプローチだったと四葉は感じている。もしかすると、自分の恋はもう叶わないものだと密かに感じ取っていたからなのかもしれない………。そう考えると複雑な気持ちになった。

 

悟飯「…って、これじゃまるでビーデルさんが本当に僕のことを好きになっているみたいじゃないか……。何言ってるんだろう僕……」

 

四葉「今、聞いちゃダメですか?」

 

悟飯「……?」

 

四葉「孫さんが、誰を選ぶのかを…!!」

 

四葉は悟飯の決意を聞いていたとはいえ、やはり姉妹の今後にも関わることなので、悟飯が誰を選ぶのかをいち早く知りたかった。

 

悟飯「………誰も選ばない」

 

四葉「…………!!!!!」

 

四葉はその言葉を聞いて、思わず悟飯をビンタしそうになる。だが、次の言葉を聞いてその手は止まった。

 

悟飯「……最初はそう考えていた。でもそれは3人を傷つける。いや、3人だけじゃない。一花さんと四葉さんも傷付くことになるだろうね…。だからそんなことはしないよ」

 

四葉「孫さん……………」

 

悟飯「……二乃さんは、最初こそ険悪な関係だったけど、関わっていくうちに本当は優しい子で、可愛い子で、人に気を使うことができる子だということは分かった。僕は二乃さんの料理は好きだし、僕に向けてくれる笑顔も好きだ」

 

四葉「じゃあ、二乃を選ぶんですか?」

 

しかし、悟飯は首を横に振る。

 

四葉「えっ……?」

 

悟飯「次に三玖さん。何故か分からないけど、彼女は守ってあげたくなる。最初は内気でネガティブだったけど、段々表情が豊かになってきて、僕が褒めると凄く嬉しそうな顔をしてくれるんだ。それに僕の為にチョコを作ってくれたり、料理を頑張ってくれてると思うと、なんか嬉しくなるんだ………。それに、何故か分からないけど、五つ子ゲームで決まって最初に見分けられたのは三玖さんなんだ」

 

四葉「えっ………?」

 

第一回五つ子ゲームは、林間学校後の0点事件の時。全員ポニーテールにして顔だけで見分けろと言われたあれだ。悟飯は気で区別することをやめ、顔だけで見分けようとした。その時、一番最初に見分けることができたのが三玖だった。

 

続いて第二回五つ子ゲーム。これは虎岩温泉の旅館で写真を利用して全員五月の格好をした5人を見分けるというものだった。時間はかかったが、一番最初に見分けられたのはこれまた三玖だった。

 

五つ子を…。三玖を見分けられるということは、三玖に対して愛が存在すると言っても過言ではなかった。

 

四葉「では、三玖ですか……?」

 

しかし、悟飯は再び首を横に振る。

 

四葉「じゃ、じゃあ…………」

 

悟飯「最後に五月さんだね。五人の中で初めて会ったのは五月さんだった。彼女は上杉君と度々衝突して大変だったよ。でも本当は素直で、甘えたがりだということが分かった。僕も彼女に散々振り回されたかもしれない。でも何故か憎めないんだ。むしろ振り回されて嬉しくなっている自分がどこかにいる。それに五月さんが何かを食べている時のあの笑顔が好きなんだ。見ていてこっちも幸せな気分になれる……」

 

四葉「………ということは、五月?」

 

悟飯は今度こそ首を縦に振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思われたが、なんと横に振った。

 

四葉「……………えっ?」

 

四葉は頭が真っ白になる。悟飯は先程誰も選ばないということはしないと言った。にも関わらず、さっきのような状況だ。四葉には何が何だか訳が分からなくなってしまった。

 

四葉「ど、どういうことですか…?五月でもないって…………」

 

悟飯「……………分からないんだ」

 

四葉「分からない……?」

 

悟飯「…いや、違う…。一人選ばなきゃいけない。それは自分でもよく分かっている。だけど、誰か一人を選べば残りの2人は悲しむ……。僕は誰も悲しませたくないんだよ……。泣いている顔なんて、見たくないんだ…!」

 

四葉「…………孫さん」

 

悟飯の言い分も分かる。だが、四葉は変に慰めるようなことはしない。ここは敢えて厳しく言おうと心を引き締める。

 

四葉「孫さんはそんなことで二乃が、三玖が、五月が傷付くと思っているんですか?」

 

悟飯「えっ………?」

 

四葉「確かに、選ばれなかった2人は悲しむかもしれない。でもそれは一時的なものです。きっとみんなは孫さんの意見を尊重してくれると思います。ですから、覚悟を決めるべきです。返事をあやふやにすれば、それこそ3人は傷付きます!」

 

悟飯「……ありがとう。そうだよね…。…………分かった。覚悟を決めることにする」

 

四葉「ということは、既に孫さんには好きな人がいるんですよね…?勿論、あの3人の中で…………」

 

悟飯「………まあ、そういうことになるね………」

 

四葉「……やっぱりそうなんですね。私にだけでいいから教えて下さいよ〜!」

 

悟飯「…本当は学園祭の時に打ち明けるべきだけど……。他の誰にも言わないでね…?」

 

四葉「はい!!」

 

悟飯「僕は………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉は悟飯の答えを聞き、どこか満足気に、そして哀しげな表情だった。姉妹が幸せになる。それは四葉としてはとても嬉しいことだった。だが、同時に他2人の姉妹は悟飯と結ばれないのだ。それが分かってしまうと、彼女はどこか複雑な気持ちになった。

 

四葉「……孫さんが迷っていた気持ちが少し分かる気がします」

 

四葉は舞空術を使って帰宅しながら呟く。悟飯の覚悟は本当に思い切ったものであろう。悟飯の様子から察するに、もしかすると、3人とも好きなのではないだろうか?しかし彼は3人と付き合うという不貞なことはしない。本当に、悩みに悩んだ末に決めることができたのだろう。

 

四葉「ただいま〜!!」

 

四葉はこのことは誰にも言わないと心に誓い、現在住んでいる部屋の玄関をくぐるのであった………。

 




 今回は悟飯の花嫁について解説。
 悟飯は既に相手が決まっていると発言しています。そして実際に作者である私自身も決めています。悩みに悩んだ末にようやく決断できたので、もう変更することはないと思います。まあifストーリーで別の子が花嫁になった場合とかも書くつもりですけどね。

 ちなみにですが、実は私は最初から悟飯の花嫁を決めていたんですよ。『えっ?あんた散々決まってないって言ってたよね?』と思っている方は多いと思います。実際何度もくどくそう言ってきました。けどこれは、悟飯の花嫁が他の子に変更される可能性がまだあったから、敢えて未定だと言ってきたのです。もしこの説明で混乱している人がいたらすみません…。
 見返してみれば分かるんですけど、原作のごと嫁よりも非常に簡単な伏線があったりするんですよ。いや、本当にシンプルですよ。多分答えを見たら納得すると思います。まだ答えを出す気はありませんが、悟飯の花嫁を本編で判明させたら答えを出したいと思います。

 他のごと嫁二次創作を書いてる方の中には、曖昧エンドにする方もいますが、私はちゃんとはっきりさせます。ですので、皆様のご希望に沿うことは難しいと思いますが、ご了承下さい。その代わりと言ってはなんですが、それぞれのヒロインのifストーリーを出す予定です。アンケートでダントツに票が多いハーレムルートもifストーリーとして出す予定です。

 最後に、次回とその次は映画では悲しくもカットされたツンデレツン回になるのですが、原作のようなコミカルな感じではなく、結構シリアスになると思います。解釈違いが出ないか少々不安です。

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