仮面ライダーウィザード High school in Showtime! 作:くが月
「ふぅ……久々にこんな長く寝るとかえって首痛いなぁ……」
「おお、陽希……朝食ならもう出来てるぞ」
「うん、ありがとう……輪島のおっちゃん」
陽希がそう呼んで慕う中年の男性は彼が居候している喫茶店のマスターにして唯一指輪を作れる人物·輪島
「ん、もしかして新作の指輪が出来たの?」
「そうだ……これからこの街に集まってきてるファントムと戦うなら、ぜひともコイツらを役立ててやってくれ」
小箱の中に入っていたのは衝撃波を纏った足が彫られた指輪とウィザードの顔によく似た装飾が彫られた指輪だった。
「右側の奴は何となく見ただけでも効果が分かりそうだけど……こっちの顔の形した模様の指輪はどんな効果があるんだか」
「すまんなぁ……俺はただ石がこう作ってくれと頼んできたからそのようにやっただけだよ」
「またそのパターンか……あ、ごちそうさま。俺ちょっと約束事あるから……行ってきます」
「おお、気を付けてな」
―桜並木の通学路
「朝早くから呼び出したりしてごめんなさいね……い、一応ボディーガード的な事をしてほしいなって……」
(由実……確かに皆にバラさないって約束は守ってくれそうだけど、俺らだけの秘密ってのをいい理由にあれこれ頼み過ぎなのでは?)
「ま、まぁ確かに……昨日は本当に襲われてたし……嫌とは言わないけどさ……」
「ならいいじゃない。それに、転入生に学校の規則を教えるのは私の役目ですから」
「そっか。頑張れー」
「授業中に寝たりしないで下さいね?」
「ぜ、善処するよ……」
(ここんところあんまし寝れてないから何とも言えないなんて由実の前じゃ通じなさそうだな……)
―3-A教室
「あれ、大門さんと操真くんが一緒に登校なんて珍しいね。何か話とかあった感じなの?」
「ま、まぁな……それはそうと朝からよく甘い物づくしでいられるよな、幸平って」
「そう?これが普通だと思うけど?あー……むっ!んー……美味しいー」
(もう色んな意味で凄いよ、幸平……俺は付いて行けないぞ)
「確かに校則には菓子類の持ち込みは禁止になってませんけど……もう少し加減してね、幸平くん」
「うん……明日からなるべく厳選して持ってくるようにするよ」
(あまり反省してる感じがしない……!ある意味ファントムより凄いよ……)
陽希は内心で肩を落としつつも表では鞄の中から教科書を取り出して自分の正面に立て始めた。
「あくまでも授業中に寝たらだめなんだろ?だったら今のうちに寝かせてもらうから……起こしてねー」
「ちょっと、陽……転入2日目でこれって……貴方も大概ですよ、陽希くん。ん……?」
由実はふと自分のスマホに友人からのメッセージが入った事に気付き、画面を開いて詳細を確認し……少し顔色を変えた。
(やっぱり私じゃなくて……美春がゲートなのね……頼んだから……陽希くん)
―ファントムの拠点デスペア
『指輪の魔法使い?』
『は、はい……あともう少しという所で突然奴が使い魔と共に姿を現して俺の計画を妨害したんです!』
『そう……ワイズマン様の予言通りね。私達が事を大きく起こせば必ずそれを嗅ぎ付ける……いいわ。ミノタウロス、貴方にラストチャンスを与えるわ……今度こそゲートを絶望させなさい』
『かっ、必ずしもこのご恩に報いる為にもゲートを絶望させ、新たなファントムをここへ連れて参る事を約束しましょう!』
先の戦いの後、何事も無かったかのように蘇ったミノタウロスは蛇女を模したファントム·メドゥーサに跪くとそう宣言した。
『オレはお前がウィザードに勝てるとは思わないが?』
『フェ、フェニックス様……!?』
『あの魔法使いはファントムを抑え込んだ……つまり、莫大な魔力を持っていながらそれを制御できるって訳だ。ま、せいぜい上手くやれよ』
『は、はい……』
―昼放課·食堂
陽希は由実の紹介で彼女の友人かつここ数日の間に怪物に襲われたという美春の話を聞く事にした。
「なるほど……こないだ由実が襲われた事と結びつけると、ミノタウロスはやり方を変えたって感じだな」
「ど、どういう事ですか?」
「ゲートからファントムを生み出す最低条件はゲートを絶望に落とす事だけど、その絶望の程度によってはより強い個体を生成する事が出来るっぽいからな……恐らくは回り道覚悟でとんでもない大物を出そうとしてるはずだ」
「そんな……そもそも私の中にもそんな怖い存在がいるなんて……」
「大丈夫、俺が何とかするから……ううん、必ず助ける」
「あ、ありがとう……操真さん」
「陽希でいいよ。また何かあったら連絡してよ……必ず駆けつけるから」
「は、はい……!」
(ミノタウロスの狙いは美春だけど美春じゃない……彼女の希望になってる存在……由実を優先して狙ってくるはずだ。やけに手応えがなかったから多分奴は味をしめてそう来る……後はおっちゃんが作った指輪にかけるしかない)
―放課後
「わっ……学校にこんな鳥いたっけ?」
『ピィ(陽希に頼まれてキミの護衛を任されたよ!よろしくね)』
「……何となく誰が飼い主か分かったよ。ふふっ、よろしくね」
美春は自分の側をクルクルと飛び回る赤い鳥に優しく声をかけつつ、帰路に着いた。
「あのね、鳥さん……私、あまり友達がいなくて……こうして誰かと話しながら帰る事に凄く憧れてたんです。だから……付いてきてくれてありがとう」
『ピィ(気にすんなよ、嬢ちゃん)』
「ふふっ……鳥さんってちょっとキザだったりするんだね」
『ピィ(アイツの癖がうつっただけだよ)!?』
『なるほど……それがお前の希望か。やはりこの女を潰しておいて正解だったな』
ミノタウロスは突然姿を現すと同時に傷だらけの由実を美春の目の前に晒した。
「あぁっ……そんな……」
「ご、ごめんなさい……美春……あまり時間稼ぎは出来なかったみたい……」
その一言を最後に由実はピクリとも動かなくなってしまった。
「い、嫌……ダメ……由実ちゃん……!」
由実の凄惨な姿を目の前で見せられた事によって美春の中にあった希望が消え、彼女は胸を押さえてその場に崩れてしまった。
『フハハハ……いいぞ……その表情はやはりいつ見ても素晴らしい……!』
「思った通り……回り道してまで強いファントムを生もうとしたつもりだったんだろうけど、俺の前じゃそんなの逆効果だよ?」
『な、何だと……取り巻きのグールがいたはずだ!』
「あんなんが取り巻きに出来るなんて過信してる時点で負け確定してるよ、お牛さん♪」
美春の真後ろから煽るような言葉を並べつつ陽希がやって来た。そしてその右手にはガンモードのウィザーソードガンが握られていた。
「そ、操真……さん……?」
「美春も由実も助ける……俺が最後の希望だからな……」
〈ドライバーオン、プリーズ〉
〈シャバドゥビタッチヘンシーン〉
「変身」
〈フレイム、プリーズ〉
〈ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィ!〉
『さぁ……ショーの時間だ。ハァッ!』
ウィザードはウィザーソードガンをソードモードに切り替えつつ、軽快なステップを踏んでミノタウロスを切りつけた。
『ガルちゃん、2人の守りは任せるよ!』
〈ビッグ、プリーズ〉
ウィザードが腰のベルトにリングをかざすと、赤い魔法陣がガルーダを包み、ガルーダは彼とほぼ同じ大きさに変化した。
「操真さんが……魔法使い……なの?」
『ピィ(まぁね)』
『ハァッ……ヤァッ!』
『ぬぅっ……!こ、こんなはずでは……』
「だから言っただろ……負け確定だって。さて……勝負の末も見えた訳だし、幕を下ろすとしようか」
〈ルパッチマジック、タッチゴー!〉
〈チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〉
ウィザードは腰のベルトを再度操作して新しくはめ変えた新作のリングを翳し、足元に魔力を収束させた。
『ハァァ……ダァーッ!』
ウィザードの炎を纏ったキックがミノタウロスの腹部に直撃し、程無くしてミノタウロスは断末魔を残す間もなく爆散するのだった。
「化け物はいなくなったけど……私のせいで……由実ちゃんが……」
それとほぼ時を同じくして美春の体には紫の光を放ちながら亀裂が入り始めていた。
『まずいな……このままだと美春からファントムが出てきちゃう……ん、もしかしてこの指輪って……美春、ちょっと手を貸してね』
「え……?」
〈エンゲージ、プリーズ〉
ウィザードは少し戸惑いながらももう片方の新作リングを美春の右手にはめた上でベルトに翳してみた。すると彼女の体から魔法陣が浮かび上がった。
『エンゲージって事は、これは魔法陣の形をしたマジの門って訳ね……だとすると、こん中に入らなきゃ美春を助けられないって感じだな。よし……行くか!』
ウィザードは意を決してその中へと飛び込み、その先に広がる世界へ向かった。
陽希先生のウィザードリング講座!
第2回で紹介するのは〈キックストライク〉!
これ使うとキック技が強化されるみたいでさ……今回のショーの場合だと炎を纏わせて強烈な一撃が出せるんだ。
ぶっちゃけ効果はこれだけだから他の魔法を重ねるなんて荒業もやれなくないな、ははっ
次回もよろしく!