推奨BGM:L∴D∴O(dies irae)
「…………………………は?」
その男が間抜けな声を出して固まる状況、知る者が見れば驚愕に値する光景だった。
「いや、だからさー、僕はどうでもいいんだけどハイドリヒ卿がねー、
『カールも一応騎士団員なのだから仲間に入れてやってくれ』ってさ」
「いや、私は別に……」
「言っとくけど、拒否権はないからね。
騎士団員は強制参加だよ。
で、どれがいい?」
ヴェヴェルスブルグ城の一室、珍しく城に立ち寄っていたメルクリウスはシュライバーに捕まっていた。
常にない程困惑する彼の前で、シュライバーは楽しそうに目の前に広げたものを見せる。
そこにあったのは楽器、楽器、楽器の山。
オーケストラに使用される様々な楽器が一通り揃えられていた。
「いや、どれが良いと言われても……」
「折角人員増えてきたから3管編成にしようって話になっててね、
一度は人員足りたんだけど管楽器でもいいよ」
「私は指揮……」
「あ、指揮者はマキナだから駄目だよ」
唯一の逃げ道が塞がれ、メルクリウスは肩を落とした。
そんなメルクリウスにシュライバーが無邪気に微笑みかける。
「あ、ちなみにだけど真面目にやった方がいいと思うよ?
下手な奴は最下層の髑髏行きだし、本番で演奏ミスしたら楽器になっちゃうから。
これは皆同じ条件だからね、副首領だからって例外はないよ」
「なぁ!?」
まさかかつての世界で『座』に居た自分がそんな扱いになるとは思わずメルクリウスは驚愕する。
仮にも親友に対して容赦ない対応に、黄金の獣の演奏に対する本気度が窺える。
『獣殿、この世界に来てから私の扱いが酷くなっていないかね?』
『私は総てを愛している、差別はなく平等に。
卿だけ仲間外れにするわけにはいくまい』
脳裏に描いた言葉に幻聴が返ってきた。
と言うか、この件に関しては仲間外れのままの方が嬉しかった……。
ちなみに、メルクリウスはかつての世界で悠久を生き、端末を通じてありとあらゆる知識を吸収している。
当然、楽譜の読み方など完璧だし、様々な時代の曲を記憶している。
……が、知識があるということと芸術センスがあるかということは別問題だ。
そもそも、聴くことはあっても弾くことなど、如何に永い時を生きていても殆どなかったのだ。
「で、どれにするの?
僕のオススメはパーカッションかな。
メルクリウスにはシンバルとか似合うと思うんだよね」
シンプルではあるが難しく、加えてミスをしたら明らかにバレる楽器を推してくるシュライバー。
表情は楽しそうな笑顔のままで、それが本気で推奨しているのか嫌がらせなのかが分からない。
ぐいぐいと押し付けてくる様子を見ると後者である可能性が高いが。
メルクリウスはただただ冷や汗を掻きながら硬直していた……。
(後書き)
たまには水銀が酷い目に遭う話があってもいいと思うんです。
ちなみに、本作騎士団員の楽器割り当て。
カイン :★コントラバス
ヴァレリア :パイプオルガン
ヴィルヘルム :★ヴァイオリン
螢 :★パーカッション(カスタネット)
ベアトリス :★パーカッション(マラカス)
マキナ :★指揮者
ルサルカ :ホルン
エレオノーレ :★チェロ
シュピーネさん:ハープ
リザ :オーボエ
シュライバー :★フルート
メルクリウス :パーカッション(シンバル)
イクスヴェリア:ヴィオラ
なお、頭に★マークがあるものは公式設定ですので変更しません。
カスタネットとマラカスは使い所が難しい気がしますが。
シュピーネさんは原案的にヴァイオリンという声はあるかも知れませんが、ベイオリンは譲れない。
まぁ、弦楽器は別に1人ずつである必要はないと言えばないのですが……。