ロボトミとラオルの世界に転生しました!割とマジで勘弁してくれ!!   作:ライドウ

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5日目(後半)

5日目の業務が終わり、私は自分の部屋でこれまでのアブノーマリティの情報を整理していた。

たった一つの罪と何百もの善、罰鳥、自由を与える小魚たち、幸福のゆりかご。

 

罪善と罰鳥の情報はすでに知っているので、あのゲームの中の情報そのままを書いておいておく。

だけどここはもう、現実の世界だ。この情報もできるだけ正しいということにしておこう。

現実なのだから、何が起きてもおかしくはないのだ。もしかしたら、白夜があのゲームの中よりも混沌とした存在になっている存在になっているかもしれないし...終末鳥がもっと恐ろしいものかもしれない...さらに言えばあの盲愛...規制済みや何もない、笑う死体の山がゲーム内そのままのような存在というわけというわけがない。

 

私が知らないアブノーマリティがいるのも間違いがない。そもそもすでに知らないアブノーマリティが2体も出ているのだ。

まあ両方とも意外としょうもないのだが...

自由を与える小魚たちは、ただただ職員にまとわりついて殺してきたり寄生したりして数を増やすというわけでもない。しかも倒す際はRED属性の武器でも職員が死ぬこともないのだ。そう考えると、脱走するだけのただの魚となる。

そして幸福のゆりかご。寝たまま忘れられて業務終了したとしても死ぬことがなく、寝ることでHPとSPを回復できる。一見すればかなり善良なツール型アブノーマリティなのだが...正直に言うと、各メインルームの再生リアクターと比べると回復量が少ないのだ(すぐに回復するという点で再生リアクターの方が正直...)

 

だけど、先ほどと同じ言葉を繰り返してしまうが、もうここはゲームの世界ではない現実の世界だ。

下手になめてかかれば、私が死ぬということは間違いがないだろう。あの小魚たちだって、下手すれば3鳥のように合体して終末鳥と似たアブノーマリティになるかもしれないのだ。

私の杞憂でなければいいのだが...

 

...いや、杞憂を気のせいではないということにして、常に最悪の想定をしておこう。

その最悪の想定の中で最も最善の手を打つ。それしかないのだ。

今回の事で分かった、今回の職員たちは間違いなく私がよく知っている職員たちが来るということを。

エヴァ君、エミリア、ティファニー、そしてクリストファー。

この流れで行けば、私がプレイしてきたプロジェクトムーンの作品の職員や司書たちがやってくるのだろう。

その職員や司書たちを、私がいる限りでは死なせることなんてしない。

これは私の偽善だ...よくわかってる。だけど、一人一人がゲームの中の0と1のプログラムの存在なんかじゃない。

これはもう現実なんだ、プログラムによって表示されプログラムによって行動するゲームの中の存在じゃないんだ。

 

だからこそ...だからこそッ!!

 

 

コンコン...

 

と、そこまで熱くなったところで、扉の叩く音が聞こえて冷や水をぶっかけられたみたいに冷静になる。

既にノートは1冊目を終えて2冊目の中盤に入っていた。

 

私の部屋の入り口を見てみれば、そこにはビニール袋のようなものを持ったエヴァ君がそこにいた。

 

「よっ、反応がないから無理やり入った。悪いな」

 

そう言いながら、靴を脱いで私の部屋に上がり込む。ノートを片付けてローテーブルの上を綺麗にすると、エヴァ君は私の隣に座りビニール袋をドンとローテーブルの上に置いた。

中身を見ようと、袋をずらすと...そこには大量のビールが入っていた。あれ?ビールなんてないはずなのにどうして...

 

「不思議な顔だな?こいつは購買で売ってたんだ。ネツァク様が自販機にビールを追加してくれって言うのは、購買まで買いに行くのが面倒だからな。」

 

「第一、あの人あの体でどうやってビール飲むのかしら。」

 

「ははっ、まっそうだな。」

 

笑いながら袋の中のビールを取り出しカシュといい音を鳴らさせた後、私に手渡しする。

それを受け取ると、もう一本取りだして同じようにカシュといい音を鳴らした。

 

「酒。飲めるだろ?」

 

「一応、成人済みよ。」

 

そう言ったあと、私はビールに口をつけて飲み始める。

味は苦みが少しだけ強いが、のどごしが随分といい。だけど、感じたのはアルコールが強くてお酒の耐性が強くないとすぐに酔いつぶれてしまいそうだ。

エヴァ君は、グイッと一気飲みをし...

 

「ぷはぁッ!これこれ、このクソ不味いビール。これ、クリストファーが好きだったんだよなぁ。」

 

えっ、何それ私知らない。

 

「アイツの顔を思い出したらさ、飲みたくなっちまって...付き合わせて悪いな、アンジェリク。」

 

エヴァ君の苦笑いの横顔はどこか寂しさを感じさせるものだった。

多分、昼間のアレでクリストファーとのやり取りを思い出して、寂しがっているのだろう。

いや...まあ、エヴァ君の目の前で煽り顔ダブルピースとかやってたんだけどね...

 

「なあ、アンジェリク。」

 

寂しそうな顔のまま、ビールを見つめ...私に話しかけてくるエヴァ君。

 

「アンタから見た俺たちって、設定を与えて描いたキャラクターだったんだろ?」

 

「...うん、姿を見て勝手に考えて、勝手に設定して...過去も未来も、その人間関係も全部。」

 

「...そうか。まあ、確かに俺以外の全員は図書館が発生しなかったパラレルで幸せな日常に戻ってたな」

 

「ふふっ、図書館が発表される前の奴も知っているんだ。」

 

ちょっとした話を弾ませつつ、安いビールを開けては飲みあけては飲み...

私が知らない職員たちの事や、逆にエヴァ君の知らないことなんかを語り続けている。

 

「...なあ、アンジェリク。」

 

ふとエヴァ君が、私を真剣な表情で眺める。私は、その眼を見て少しだけドキリとした。

綺麗なのだ、お酒の力で思考が弱っているということもあるが...元々エヴァ君は私好みの顔をしているのだ。

そしてそんな顔で見つめられたりなんてしたら...そりゃドキドキする。

 

「俺が生きてきた運命って言うのは、一から十までアンタが考えてきた設定...何だろ?」

 

「...うん、エヴァ君以外の自職員は全員簡単にしか書いてなかった。でも、エヴァ君のは全部本気で書いた。」

 

「......どうしてそこまで、俺に執着したんだ?べつに、誰だって―――」

 

「誰だって、というわけでもないんだ。」

 

そう、エヴァ君は私の中では一番のお気に入り職員と言う事だ。

間違いなく言えることは、エヴァ君は私にとってのナンバーワンだし...それが誰だっていいというわけでもなかった。

元々、エヴァ君は2週目の初期職員だ。1週目の初期職員はエベレットという職員で、初心者ゆえのミスで捨てられた殺人鬼を相手に死んでしまっていた。

エベレットも好みと言えば好みだったのだが...それ以上にエヴァ君のデフォルメ姿に一目惚れしたのである。

 

「君の姿に一目ぼれした。惚れた弱みは何とやら、だよ。」

 

ニコッと笑って見せると、エヴァ君が顔を真っ赤にして視線を逸らした。

正直に言えば、言った自分でも恥ずかしい。耳まで赤くなっていないか心配である。

 

「酔いがさめるような恥ずかしい言葉をどうも。」

 

「ふふ、照れちゃって...かわいいー。」

 

エヴァ君の方にポンと頭を乗せる。

...うん、温かい。トクン、トクンと暖かな心臓の音が聞こえてくる。

こうして、誰かに寄り添うのも久しぶりだ。

 

「...ねえ、エヴァ君。」

 

「なんだ、アンジェリク。」

 

「私、幸せになりたいんだ。」

 

前世ではゲームの中でしか私の逃げ場はなかった。

そんな時にプロジェクトムーンのゲーム作品に出合い...その世界に引き込まれた。

最初は、職員たちに同じようにブラック企業に勤めている私を重ねて楽しんでいた。

それがどんどんと、私はそのキャラたちに引き込まれ愛着がわき、あの世界を書き上げた。

へたくそながらも私の絵を評価し、私のことを認めてくれることも多かった。

だけど私は、どういうわけかアンジェリクとなった。

 

アンジェリクとしての記憶も、随分と悲しいものだ。

両親には優秀な兄と比べられ、その兄からは家族愛・兄弟愛を向けられるが...それが、同情のように思えて。

兄の...爪という超エリートの兄名前の七光りで扱われるのが嫌で、家出して...気づいたら私になっていた。

 

「ずっと、ずっと...孤独で一人だった。」

 

誰一人、理解なんてしてくれなかった。でも兄だけは私を理解しようとして、私から拒絶したのだ。

劣等感を抱き、その原因が私に慈愛を向けても...理解はできない、分かり合えなかったのだ。

 

「それに私には、拭いきれない罪がある。」

 

アンジェリクとしての私もそうだし、前世の私にもだ。

アンジェリクの罪は...ううん、罪悪感は両親の期待にこたえられなかったこと、自分が生き残るために殺人を犯したこと。

そして前世の私の罪は、ゲームの中だけじゃない...本来なら助けるべき働いていた会社の後輩を売ったり、古くからの親友だった子を裏切ったり...

とにかく、私は罪に汚れていた。

 

「きっと私は、裁かれて...地獄に落ちるべき人間なんだと思う。」

 

「ッ......」

 

顔を伏せるエヴァ君。わかってる、私が背負うべき罪は簡単に降ろせるものではないしエヴァ君がどういってもこれだけは降ろしてはいけないのだ。

 

「でもね、私は......幸せになりたいんだ。温かい家族を持って、温かい家で暮らして、温かい毎日を過ごして......」

 

「......俺じゃ、だめか?」

 

「えっ――――んむ!?」

 

エヴァ君が、私の背中に手を添え左手首を掴んで私にキスをする。

触れ合うだけのフレンチキス。けれど、それだけで私の胸はドキドキし、顔がどんどんと赤くなってゆく。

でもそのキスはとっても温かくて、それで...ちょっとだけ苦みがあった。

 

「アンジェリク、俺にも罪はある。その罪は、アンタが一番よくわかってるはずだ。それにアンタは...俺の気持ちすらわかってるんだろ?だから、俺はダメなのか?」

 

「でもっ...でも私はッ!」

 

「アンタと同じ十字架を背負うぐらいが何だ。アンタの為なら、白夜だって終末鳥だって...頭の責任者すらぶっ殺してやる!!」

 

強い覚悟の目で私の目をじっと見つめてくる。

その言葉に、期待してしまう。

 

「ほんとに、本当に?」

 

「ああ、嘘はつかねぇ。俺のこの命をかけてもいい」

 

「だったら、もう一回。こんどは、長く...息がきれるくr―――っ!」

 

また、温かいフレンチキス。だけど、さっきよりちょっと激しく、そして長く。

私とエヴァ君はキスをしたまま体を移動させ、私がエヴァ君に跨る体制に代わる。

それでもキスはやめない、私は...本当に愛されてると理解し、彼のキスに舌を絡める。

 

「はぁ...はぁ...」

 

「ンぅ...はぁ...」

 

へなへなと、身体の力が入らなくなりエヴァ君に体重を預けてしまう。

エヴァ君は、そんな私を...そっと抱きしめてくれる。

 

「これで...いいか?」

 

「うん......うんっ。」

 

ポロポロと大粒の涙がこぼれだす。

あぁ、だめだ。まだ泣いちゃだめだ。この涙はもっと先まで取っておかないと。

だけど、私は...ただエヴァ君に体を預けることしかできず...涙は彼のシャツへとただただ吸い込まれていった。

 

「アンタの罪がどれほどのものかなんて知らねぇ。だから俺が言う事は何もない、けど俺はお前の隣にいる。どんなことがあろうとな。」

 

「うんっ...!ありがとう...ありがとうっ、エヴァ君っ!!」

 

 

~~~~~~~

 

ベットの上、私はエヴァ君に抱きしめられながら彼という安心感に身を任せていた。

互いに抱き合ったまま、服越しでもわかる温かさが...これまでにない安心感を与えてくれている。

 

「なあ、」

 

彼のぬくもりを感じていると、エヴァ君が話しかけてくる。

 

「アンタの本当の名前、なんていうんだ?」

 

「...アンジェリクじゃない方の名前?」

 

「ああ、そっちも知っておきたくて...あぁ、答えずらかったr―――」

「ミユキ...蜻蛉 深雪(かげろう みゆき)。それが、私...私たちの名前...」

 

「...いい名前だな。」

 

「でしょ」

 

互いに笑い合い、再びベットの上で抱きしめあう。

トクン、トクンと聞こえるエヴァ君の心臓の音が...とても心地がいい。

 

「ねえ、エヴァ君。」

 

「なんだ?」

 

「これから二人の時は、ミユキって呼んでほしい...」

 

「...いいのか?」

 

「うん、私は...アンジェリクでもあり、ミユキだから...でもアンジェリクも結局は私...なら、私はミユキ。でも、エヴァ君の好きな呼び方でいいよ?」

 

「ああ...そうさせてもらう」

 

ギュッと抱きしめられる力が強くなる。

それが、ちょっとだけ痛いけど...私も彼も生きているという安心感につながる。

 

あぁ、できることなら...この時が永遠になってほしい。

彼の与えてくれる安心感が、温もりが...私をゆっくりと眠りに誘うのだ。

 

 

「...おやすみ、ミユキ。」

 

 

うん、おやすみなさい。

 

私は、彼の声を聞いて...ゆっくりと眠りにつくのであった。





最終回ではありませんし、R-18展開にはなりません。
R-18解放は図書館が終わった後にします。
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