煙と蜜短編集 千代紙と自鳴琴(オルゴール)   作:ユンカース

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お茶出しを間違ったやり方で姫子にやらせてしまった龍子の話。
こちらもTwitterで掲載したssです。


お茶と相好

「星子!月子!お茶の準備できた?土屋さまにお出しして」

「龍姐、お茶だしなら姫子さまが私がやります!と言って急須と湯呑みを持って行ったけど…大丈夫かしら」

「えっ…姫子さまが茶の準備を、何故止めなかったの?」

 

「龍姐も野暮なんだから、姫子さまがやりたいといったら私達はやらせてあげることにしてるのねえ?月子」

「そうよ、奥さまもやりたいと言うならやらせてあげなさいって言っていたし」

「だめよ…お茶だしは本当は私達の仕事です!姫子さまにはまだ早いわ」

慌てて龍子は応接間へと急ぐ。客へのお茶だしする時にお盆に湯呑みに茶托を乗せ、急須を一緒にしお盆に乗せていくことと、客の目の前で茶を入れるのは失礼だからだ。

息を切らしながら応接間にたどり着くと、姫子と文治が楽しそうに話しているのが聞こえてきた。

 

「許嫁殿、前にお会いした時よりも随分大きくなりましたね」

「そうでしょうか?私はこまちゃんみたいになりたいのでまだまだ小さいです」

「ハハハッこれは一本取られましたな。」

龍子が中へ入ると、姫子が茶托ごと湯呑みをテーブルに置いて急須で茶を注いでいた。

遅かったか…と龍子が肩をがくりと落とすと姫子が龍子に気づく。

「龍ねーね。どうしたんですか、お茶なら私が用意したので」

にこりと笑うその顔は優しく、いつまでも眺めていたくなるが、龍子は気を引き締めて顔を険しくすると「土屋さま、失礼いたしました。私の不注意でお茶を姫子さまに出させてしまったことと、お茶をその場で注がせてしまうという無作法を犯してしまいました。どうか、お許しを」

深く頭を垂れて謝る龍子を文治は叱りもせずにどうか、頭を上げてくださいと優しく言う

「ですが!」

「私も軍人、規則や決まり事を守ることが大切なのはわかっています。ですが、この場では軍帽を脱いでおりますゆえ、軍人ではありません。ただの一人の人厳しいことは言いますまい。軍のしきたりにも辟易していましてね。やれ髪が長い、やれ服装が乱れているなどとね。ここでは自由に過ごしたいのです」

 

「土屋さま本当にいいのですか、無作法をしたのは私が原因ですのに」

「いいんですよ。私が許嫁殿に直接、お茶を入れてもらいたかった。だからそうしてもらっている。それでいいじゃないですか」

「わかりました。お邪魔してしまいすみません」

「私、間違ったことしてしまいましたか?」

不安な顔でおろおろしながら姫子が言うと

「いいえ、許嫁殿は何も間違ったことはしていませんともさあ、話の続きを」

文治が相好を崩すと姫子もつられて満面の笑みを浮かべた。それを見て龍子も少しだけ微笑むとゆっくりと応接間をあとにした。

 

終わり




お茶と吃逆の前
この話は少し訳ありでして、煙と蜜のミスをTwitterで指摘した方のツイートをきっかけに書いたものです。お茶の出し方のルールは大事かもしれません。ですが時と場合によってそのルールが変わること緩くなることもあるのではと思うのです。
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