幼馴染が怖いですが、どうしたらいいですか?   作:始まりの0

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幼馴染がお嬢様で、俺が執事、2日目(綺羅莉編)

 本日は執事2日目、今日は綺羅莉専属となった。明日はリリカ専属らしい。

 

「それで綺羅莉、今日の予定は?」

 

 

「これよ」

 

 そう言って綺羅莉が渡してきたのは、スケジュール帳だった。それを受けとると中身を見る。

 

「うぉ、すげぇ、細かく書かれてる。俺には無理だわ」

 

 翔は自分ではこんなにもびっしりとスケジュールを書き込まないだろうと思いながら目を通す。

 

「何々……10時から本家で会議、13時から食事、ん? このホテルって滅茶苦茶高いって噂のレストランがある所じゃ」

 

 

「そうよ、私が株主やってる所なの。だからお昼は個室でゆっくりと食事をしましょう」

 

 

「成程、それからが空白になってるけど?」

 

 

「そうよ、それさえ終われば自由ね……そうだ、どうせなら翔には買い物に付き合って貰おうかしら」

 

 

「別にいいけど……金は出さんぞ?」

 

 

「大丈夫よ、貴方はお金ないの知ってるし」

 

 綺羅莉にそう言われて泣きそうになる翔。心の中では(高校生なのに何千万単位を安いと言う奴とは金銭感覚が違うんだよ)と思っていた。

 

「それはそうと……今、8時半だけど時間は大丈夫なのか?」

 

 

「えぇ、そろそろ迎えが来るわ」

 

 綺羅莉がそう言うと彼女のスマホに着信が入る。

 

「噂をすればね……さぁ、行くわよ翔」

 

 

「俺もかよ……まぁそうなるとは思っていたけど」

 

 出ていく綺羅莉に着いていく翔、この時、思っても居なかった。

 

 家に帰るだけで、自家用ジェットに乗る事になるとは。

 

(黒塗りに、自家用ジェットって……車と飛行機……内装、燃料代とか含めりゃ物凄い金額になりそう)

 

 興味深そうに飛行機内の内装を見回したり、窓から外を見ていた。

 

「楽しそうね」

 

 

「滅多に飛行機なんて乗れないからな。それにこんなファーストクラスの席なんて座る事ないと思ってたし」

 

 

「安心なさいな、私達と結婚したら飽きる程、乗る事になるわ」

 

 

「結婚って……アレは親父が勝手に決めた事でだな」

 

 

「私やリリカの何処が不服なの?」

 

 

「別にお前らが嫌と言う訳では……ただ、一生の問題なんだし」

 

 

「貴方だからよ…………私とリリカを平等に扱い、リリカ以外で最も私を理解してくれる貴方だから婚約の話を受けたのよ」

 

 真っ直ぐ翔を見て綺羅莉はそう言った。それを聞いて顔を赤くする翔。

 

「けどなぁ……現代の日本は一夫一妻制だろ、それはどうするんだよ?」

 

 

「あらっ忘れたの? 私は百喰家の当主よ? 法律くらいどうとでもなるわ」

 

 

「法律くらいって……流石に……いやでも、お前ならやりかねない」

 

 

「貴方との時間の為だもの苦労は惜しまないわ。

 

 あっそうだ、法律を変えなくても貴方を屋敷に閉じ込めてしまえば、面倒な事をしなくていいし他の女に取られる心配もないし一石二鳥ね」

 

 とんでもない事を言い出した綺羅莉に「どうかそれだけは」! とすがる翔。

 

「そうね、これからの貴方次第と言うことにしましょう」

 

 それを聞いて安堵した翔は力が抜けた様に座り込んだ。

 

「ぁ~たす……「まずは翔が巧妙に隠している厭らしい本や動画から処分しましょうか」かってない!」

 

 

「今月中には処分しなさい」

 

 

「でっでもですね『しなさい』

 

 始めから翔には拒否権などなく「はい」と返答するしかなかった。

 

 

 

 

 ~桃喰家 屋敷~

 

 桃喰の屋敷の一室の端で翔は綺羅莉を待っていた。

 

 現在、この部屋では着物を着た綺羅莉と百喰の老人達とが会議を行っており、彼はそれを待っていた。

 

(暇だなぁ……話の内容も何を言ってるか分からんし、唯一理解出来るのは綺羅莉の機嫌が最高に悪い事だけだし)

 

 老人達の話を聞いている綺羅莉は外面的には無表情であるものの、実際の所、かなり機嫌が悪かった。

 

(話が続くにつれより機嫌が悪くなってるし……このままじゃ爆発しそうだな。ってこの後、俺がどうにかしないといけないのか……)

 

 機嫌が悪い綺羅莉の相手をすると考えると頭が痛くなってきたらしい。

 

(何やら綺羅莉に対する暴言も出てきた……ん? 綺羅莉、調子悪いのか?)

 

 端から見ていると綺羅莉の顔色が変わってきているのに気付いた翔。そんな中、綺羅莉は何かに耐える様に黙っていた。

 

「よく分からんが……俺、今は執事だし……やるか」

 

 翔は何を思ったのか近くにあった水のピッチャーを持ち歩き出した。

 

 それを見たこの屋敷の使用人達は止めようとするが、翔はそれらをひらりっと避けて綺羅莉に暴言を吐く老人達に近付く。

 

 彼はピッチャーの蓋を開けると

 

 

 

バシャッ

 

 

 中身の冷水を老人達にぶっかけた。

 

「きっ貴様!」

 

 

「なんと無礼な! 使用人の分際で!」

 

 

「我等を誰だと思っている!?」

 

 勿論かけられた老人達は翔に怒った。

 

「失礼、(現在)俺は綺羅莉お嬢様の執事なものでしてお嬢様に無礼を働く輩に放っておけなかったもので」

 

 老人達に笑みを浮かべながらそう言う翔。

 

「揃いも揃っていい歳した老人達が女子高生囲んで罵詈雑言とは情けない……」

 

 

「ふざけるな!」

 

 老人の1人が怒りに任せて翔を殴りつける。彼はそれを避けず額で受けた。

 

「っ……」

 

 

「ぐっ!」

 

 どうやら翔の頭は固かったらしく拳を痛そうに押さえている。翔本人は少し額から出血しているが大した怪我ではない様だ。

 

「さて……お嬢様は体調が悪そうなのでこれで失礼させて頂きます」

 

 

「待て貴様! 名を名乗れ!」

 

 

「天姫 翔」

 

 

「その名前覚えたぞ! ……ん? 何処かで聞いた様な……」

 

 

「じゃ、参りましょう。お嬢様」

 

 

「ちょっ……翔」

 

 翔は綺羅莉を抱き上げるとそのまま部屋を出ていった。因みにお姫様抱っこである。

 

 

 

 帰りの車に乗っていると

 

「翔」

 

 

「はい……本当にごめんなさい、つい」

 

 先程やらかした事を謝罪する翔。

 

「別にそんな事はいいのよ。老人達の面白い顔も見れたし……問題はその怪我よ」

 

 

「ぁあ、これか。かすり傷だ」

 

 

「駄目よ……貴方を傷付けるのは私とリリカの特権なのに」

 

 

「初耳だわ、それ」

 

 綺羅莉は運転をしている使用人に救急箱を持ってくる様に指示した。使用人を待ってる間、綺羅莉はハンカチで翔の傷を押さえていた。

 

「それにしても何で私の調子が悪くなったと思ったの?」

 

 

「見てたらそんな感じがしたから」

 

 

「……フフフ、そう」

 

 翔の言葉に一瞬唖然としていたが、嬉しそうに笑う綺羅莉。

 

「それはそうとお前こそ大丈夫なのか?」

 

 

「えぇ、問題ないわ。ただ女には辛い日もあるだけの話よ」

 

 

「……ぁあ、成程。まぁ体調が悪くなった訳じゃなくて良かった」

 

 それから彼等は食事を終え、買い物へと向かった。

 

 

 

 その日の夜

 

 翔は先に寝てしまい、綺羅莉とリリカは互いに今日あった事を報告し合っていた。

 

「そうか……翔のあの怪我はそう言う理由か」

 

 

「えぇ……少し驚いたわ」

 

 

「それでお姫様抱っこされたと」

 

 リリカにそう言われると、すっと視線を反らし顔を赤くする綺羅莉。

 

「ずるい」

 

 

「しっ仕方ないじゃない、いきなりだったし……」

 

 

「だからってずるい……私だってされたい」

 

 頬を膨らませ拗ねるリリカ、それを宥めようとする綺羅莉。普段では見られない光景である。

 

「それで綺羅莉、翔に怪我をさせたクズはどうするんだ? まさか放置するのか?」

 

 

「ありえないわね……少ししたら処理するわ。問題は」

 

 

「翔が名前を出したことか……老人達が気付かなければいいが」

 

 

「そうね……まぁ気付かれたら【翁】に動いて貰いましょう」

 

 

「そうだな……」

 

 その意味は2人にしか分からない。

 

 

 

 綺羅莉は先に翔が寝ているベッドに来ていた。

 

「本当に……貴方と言う人は」

 

 寝ている翔の顔に触れそう呟く綺羅莉。

 

「私の些細な変化に気付いて後先考えず感情のままあんな行動をして……馬鹿ね。でもありがとう、愛しているわ」

 

 そう言う綺羅莉の何時も狂気を含んだ笑顔ではなく、年相応の恋する少女の笑顔だった。

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