~生徒会室~
連休が終わり、再び生徒会の仕事を行っている翔。
「あひゃひゃ! なぁ! あまきぃ~! アタシとギャンブルやろうぜぇ!」
普段からサボりがちな翔だが、今日は真面目に書類を整理していた。
「しない。これをアイツが帰ってくるまでにやらないと俺がお仕置きされるんだよ。生志摩」
「アタシが勝ったらアタシと組んで会長とギャンブルしろ! アタシがまけたらアタシの身体を自由にしていい! 勿論アタシと組んでくれたらアタシの身体を自由にしていいぜ! お前には損はないだろ!」
「うるさい! このド変態が! そんなに綺羅莉とやりたきゃ本人言え!」
生志摩妄……百花王学園生徒会、美化委員長。綺羅莉とのギャンブルで負け三億の負債を負ったが、眼球の裏側をみたいと言う綺羅莉の要望を聞き、自ら左目を抉り取った。綺羅莉の様な強者に支配され、負けたいと言う形で自分が傷つくことを望み、死ぬことすら厭わない自虐欲求を抱くようになった。そして綺羅莉から「生徒会に入れば、いずれ殺して上げるわ」と言われ、生徒会に入った。
「と言うか学園の規律と風紀を正す筈の美化委員長をコイツにしたのは間違いだろ! 最も規律と風紀を乱す奴を選ぶなよ! なぁ、楓!」
と前で作業をしていた楓に同意を求めた。
「確かに……しかし天姫、それを決めたのは会長だ。それと名前で呼ぶな」
「ぐだぐだ、言ってないでやろうぜ! そうだな、ゲームの内容はコイツで決めようぜ!」
妄は机の上に拳銃を置いた。
「だからやらないって! リボルバー? モデルガンか? お前、こんなん持ってきてるのか……」
「ぁあア?」
妄は拳銃を持つと翔に銃口を向ける。
「はぁ……【ズガッン】」
鼓膜が破けそうな程の凄まじい音と共に翔の顔の横に何かが通った。
「はっ? えっ?」
何が起きたのか分からなかった翔。一先ず後ろを向いて見る、後ろの棚にあった花瓶が砕け散っており、壁に穴が空いていた。
再び妄の方に視線を向ける。妄の持つリボルバーの銃口から煙が出ていた。
「本物!?」
「当たり前だろ、ロシアンルーレットやるのに偽物な訳ねぇだろぉ!」
「銃刀法って知ってる?」
「知らねぇなぁ!」
翔は思った、法律なんてこの女には関係ない。自分の欲を満たす為なら法律など無視するだろうと。そう思うと一周回って冷静になった。
「さぁ! やろうぜ!」
「しねぇよ!」
「なんでだよ! 折角アタシを好きにしていいって言ってるのに!」
「だから綺羅莉とやりたいなら本人に言えよ!」
「会長は相手してくれねぇんだよ! だからお前と組めば会長はアタシとやってくれるんだろ! そうすりゃ、アタシは会長からご褒美貰えるんだよ!」
妄は綺羅莉とギャンブルをする事を想像してか興奮し始めた。
「はぁはぁ……想像しただけで身体が熱くなるぜぇ。なぁ?」
妄が翔の方を見ると、そこには翔の姿はなかった。
「奴なら出ていったぞ」
居ない翔に代わり楓がそう答えた。
「あんでだよぉぉ!?」
「知らん」
「逃がすかぁぉ!」
妄も翔を追いかけ外へ出ていった。
「全く騒がしい……埃をたてるな」
楓はそう呟くと、部屋の窓を開け換気を行い、自身の仕事へと戻ったのであった。
「まぁてぇぇぇ!」
「そんな物騒な物を持った奴に待てと言われて待つ奴はいねぇよ!」
学園内を走り回る翔と妄。
「ちくしょう! 誰だよ! あんな物騒な物を渡したのは?!」
本物の銃を手に入れれるのはこの学園でもそうは多くないだろう。
「あらっ翔、仕事は終わったのかしら?」
「綺羅莉?!」
そんな場面に綺羅莉と清華が現れる。どうやら2人は学内での仕事を終え生徒会室に戻る所であった様だ。
「助かった! 生徒会長としてアイツを何とかしてくれ!」
そう言いながら綺羅莉の後ろにピッタリと引っ付き隠れる翔。
「貴様! 会長に抱き付くな!」
清華は翔が綺羅莉に引っ付いた事に腹を立て、引き離そうとするがそこに妄が登場。
「あらっ妄」
「げっ……会長」
「一体なにがあったのかしら?」
翔は状況を説明する。何時もの翔なら綺羅莉を頼らず、逃げるなり自身でどうにかする筈だが今回は珍しく綺羅莉を頼っている。
「そう……でも駄目よ妄。同意がなければギャンブルにならないわ」
「会長ぉぉ……あまきぃ! 何でしてくれねぇんだよ!? アタシを好きにしていいって言ってるのに!」
「へぇ……」
妄の言葉に綺羅莉は反応した。翔は綺羅莉の変化に気付く、
「お前だって男だろぉ! 自分にリスクなしで女とヤレるなんて役得だろぉ!?」
「断る!」
「アタシがヤって「妄」」
冷たい綺羅莉の声が響く。それと同時に周囲の空気が冷めた。
「貴女が誰と何を賭けるかは自由よ。でも……」
ずいっと妄の顔を引き自身に近付ける。
「ギャンブルをするなら未だしも……翔自身に手を出そうと言うなら」
綺羅莉の瞳から光が消え、凄まじい圧を放つ。
ゾッとする程、低い声が響く。
清華はそんな綺羅莉を見て恐怖し震える。妄もまた恐怖するが、それは彼女にとっては望んでいたものだ。
「そうねぇ……貴女の場合どんな事を喜びそうだし……」
何時もの声色に戻ると、辺りの空気も元に戻り、綺羅莉は考える様に顎に手を当てる。
「転校して貰おうかしら……此処ではない遠くに」
「へっ?」
それを聞いた妄は唖然とし、震え出す。
「ちょっ……ちょっと待ってくれよ、会長」
「そうすれば安心ね」
「たっ頼むよ! 会長! それだけは勘弁してくれよぉ! 会長に何もして貰えなくなっちまうなんて嫌だぁ!」
「ならどうすればいいか分かるわね?」
「はぃ……」
妄は頷くしかなかった。妄にとっての地獄は無視される事、関わりを絶たれる事である。転校などさせられたら、綺羅莉と関わる事が難しくなる。そんなものは妄にとっては耐えられないだろう。そんなのは無視すればいい話だが、綺羅莉には妄を遠くへと送り戻って来れなくするだけの権力と資金があるから無理だ。
妄は転校させられない事から少し安堵してこの場から離れて行った。
「ぁ~助かった……」
「翔」
「ん?」
「あぁ、なると分かっていてあの子を連れて来たのかしら?」
「此処でお前らにあったのは偶然だ。まぁ、お前を見てこの方法を思いついたのは確かだ」
どうやら綺羅莉が妄に対してこう言う対応をすると予想していた様だ。
「あぁ言うタイプの人間はこうすれば暫く大人しくなるからな……いやぁ、本当に助かった! ありがとう! 綺羅莉!」
翔はそう言うと綺羅莉に抱き付いた。
「ふぇ?」
「なっ!?」
急な事で普段は出さない様な声を出す綺羅莉、清華に至っては驚愕している。
「これでゆっくりと仕事が……でき……」
「きっきさまぁ!」
そこには怒り狂った
「あっやべぇ……」
「会長を汚す獣がぁぁぁ!」
懐からスタンガンを取り出すと翔を追い掛け出した。勿論、翔は逃げることに。
「あらっあらっ」
我に帰った綺羅莉はそんな2人を見て笑っていた。
※勿論、仕事を終わらせられず、綺羅莉を利用した事で、翔はお仕置きされました。