「で爺ちゃん、それはなんだ?」
翔は突然やってきた完全武装の祖父を迎えると話をする為に椅子に座る。
「フム、あのクズが帰ってきたと情報が入ってな。成敗してやろうと思っての」
「どうぞ、翁」
「お茶とお茶菓子です」
祖父が来た事を察した綺羅莉とリリカは身支度を整え、祖父にお茶を出していた。
「おぉ、桃喰の双子か。来ておったのか……しかしこんな早く……成程、泊まっておったか! 翔! 曾孫か!?」
「ねぇよ!」
「なんじゃ……曾孫の顔を見れるかと思うたのに」
「もう一息なのですが、翔ったら一緒に寝てるのに中々手を出さなくて」
「わっ私達は何時でもいいんですけど」
「なんと……翔や、お前もしかして「違うからな! 普通に女が好きだからな!」」
男色の気でもあるかと思い口に出したが、翔は即効で否定する。
「安心したぞぃ……ふむ?」
祖父は翔の顔をジッと見る。
「やっぱり婆さんに似てるのぉ……年を経る度に似てきとる」
「婆ちゃんねぇ……俺は会った事ないけど」
「そりゃそうじゃ、お前がまだ赤ん坊の頃に死んでしもうたからのぉ」
「……それで、翔よ」
「なんだ?」
「家を継ぐ気にはなったか?」
「嫌だよ」
「むぅ……そうかぁ」
吾朗座は凄く残念そうである。
「俺が居なくても分家から養子をとりゃいいだろ」
「そう言う訳にもいかんのじゃ、お前さん程、我が一族を率いるに相応しい人間は居らんからのぉ。
まぁいい、まだワシも現役だしそんなに急く事もないか」
どうやら吾朗座は家を翔に継いで欲しい様だ。
「最悪の場合、二人に子供を作って貰えば翔も観念するだろうしのぉ」
「おい爺、今何て言った? 凄く不吉な事を言ってた?」
吾朗座の言葉に不安になる翔、言葉をハッキリ聞いた綺羅莉は嬉しそうに笑い、リリカは顔を真っ赤にしている。
ガシャンと音がする。皆が音のした方へ向く、それは玄関の方だ。
「ただいま〜」
「息子や帰っ……うげっ!?」
どうやら辰彦と椿が帰ってきた様だ。辰彦は吾郎座を見つけると顔を引き攣らせる。
「あらっお父様来てたのね」
「おぉ儂のかわいい椿……かわいい娘が外国に行くなんて儂は寂しくて寂しくて。
それも貴様の所為じゃ!」
吾朗座は殺気の籠もった目で辰彦を睨む。
「貴様じゃ! 貴様が居るから儂の椿は!」
「おっ落ち着いて下さい! お義父さん!」
「誰がお義父さんじゃ! 儂は貴様なんぞ認めておらんわ! しかも貴様は金の為に孫まで売ったそうじゃな!?」
「いっいやそんなことは……なぁ、翔?」
「綺羅莉、リリカ、出かけるぞ。母さん、飯までには戻るから……爺ちゃん、始末宜しく」
「任せとけ!」
「翔! パパを見棄てる気!?」
「先に俺を売ったのは誰だった?」
そう言うと翔は綺羅莉とリリカと共に去っていった。
「この外道め! 覚悟せぃ!」
吾朗座は刀を引き抜き辰彦に斬りかかる。
「翔ちゃん、綺羅莉ちゃん、リリカちゃん、晩御飯までには戻ってくるのよ〜」
後ろで起きてる事をスルーして出掛ける息子達を見送った椿。
〜夜〜
吾朗座は娘、孫との夕食を終え、彼等に別れを言うと黒塗りの高級車に乗り帰路へとついていた。
運転席には黒服を着た屈強そうな男性が座り、吾朗の向かいの席には初老の執事服を着た男性が座っていた。
「吾朗座様、翔坊ちゃんはお元気そうでしたか?」
「あぁ、元気だったわぃ」
「それで例の件は?」
「駄目じゃな、継ぐ気はないと言いおったわ。全く我が一族の跡取りはあやつしか居らんと言うのに。源次、どうにかあやつをその気にさせる方法はないかのぅ?」
執事の名は源次と言うらしく、話の内容は吾朗座の跡継ぎの話の様だ。
「中々難しいかと、翔坊ちゃんは外見こそ、菊様に瓜二つですが性格に関しては吾朗座様に似て頑固者ですからな」
「はぁ……まぁよい、いずれあやつも選択の時がくるであろうからな」
吾朗座はそう言うと、懐から一枚の写真を取り出す。そこには1人の女性が写っており、その顔は翔そっくりであった。