幼馴染が怖いですが、どうしたらいいですか?   作:始まりの0

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幼き日の約束

 蛇喰夢子、名から分かる様に桃喰に連なる一族の者。

 

 父と母は夢子が幼い頃に亡くなり、母の妹である叔母と姉と共に暮らしていた。桃喰一族とは言え末端の一族の為、夢子と姉は一般の家庭とあまり変わらぬ生活をしていた。

 

 そして姉妹にはある才能があった「ギャンブル」である。

 

 当時、姉は百花王学園に通っており、学園で行われるギャンブルで家計を助けていた。

 

 夢子はとある出来事で、始めてギャンブルをした。夢子は生まれ持ったその才能で、大切な物を失う結果となってしまった。

 

 

 

 

 ー私はお姉ちゃんと叔母様をギャンブルで失ってしまいました。だと言うのにギャンブルと言うのは素晴らしいものだと考えてしまうのは我ながら業が深いと思います。

 

 始めて感じたあの感覚、高揚感、今でも忘れられません。またギャンブルをしたい、あの感覚を、高揚感を味わいたいと考えてしまう。

 

 お姉ちゃんと叔母様は賭けに負けてしまったからあの様になってしまった。

 

 と割り切っていた筈なのに……時々、胸が痛む、寂しくなる、私はなんて自業自得なんでしょうかー

 

 

 自身の所為で姉と叔母を失った罪悪感が気付かぬ内に幼い彼女の心を蝕んでいく。そしてある時、壊れてしまった姉と叔母を見るのに耐えられなくなった彼女は飛び出し公園で人知れず泣いていた。

 

 そんな時に出会ったのが翔である。

 

 翔は泣いてる夢子を見てハンカチを差し出したのである。

 

「大丈夫? どうして泣いてたの、悲しい事であった?」

 

 

「なっ……何でもありません。ただ……いえ、何でもないんです」

 

 夢子はハンカチを受け取らず着物の袖で涙を拭くが、翔が直ぐにそれを止め、ハンカチで涙を拭った。

 

「折角の着物が汚れちゃうよ? 

 

 それに悲しいなら我慢しない方がいいよ、人は悲しい時は泣いた方がいいって母さんも言ってたし」

 

 そう言われると、夢子は今までせき止めていた物が決壊したらしく、わんわん泣き出した。翔は黙ったまま、それを受け止めていた。

 

 10分程すると夢子は落ち着いた様だ。彼女は始めて会った男の子の胸の中で泣いていたのに気付くと顔を真っ赤にし、翔から離れた。

 

「えっと俺は天姫 翔。君は?」

 

 

「私は夢子……蛇喰 夢子です」

 

 

「じゃばみってどんな字を書くの?」

 

 

「えっと……蛇と喰です。こう書きます」

 

 夢子はそう言うと落ちていた木の棒を使い地面に文字を書いた。

 

 

「へぇ……こんな字を書くんだ。そう言えば綺羅莉ちゃんとリリカちゃんもこんな字だった様な……」

 

 

「あまきさんはどんな字を書くのですか?」

 

 

「俺は天の姫と書いてあまき。と言っても男なのに姫と言われるの嫌だから翔って呼んで」

 

 

「では私は夢子と」

 

 

「夢子だから夢ちゃんね」

 

 

「夢ちゃん?」

 

 

「嫌だった?」

 

 

「いいえ! そんな事はありません! そんな風に呼ばれたのは始めてなので」

 

 幼い頃の翔は、初対面の泣いてる女の子の涙を拭い、慰めるとは中々に紳士である。とは言えどんな相手にもこの態度の為、この男の落とした女性は歳下から歳上まで数多く、その分、綺羅莉とリリカが動いたのは言うまでもない。

 

 

 彼らはそれから学校が終わると遊んでいた。

 

 夢子にとって初めて出来た異性の友人。泣いてる所を慰められ、理由も聞かず傍に居てくれる翔に惚れない方がおかしいと思うのだが、幼い彼女にそれは理解出来ないでいた。ただ、彼が傍に居てくれるだけで嬉しい彼女であった。

 

 彼女にとって彼と過ごす時は夢の様な時間だった。そしてある時、夢子は話を翔にある事を相談していた。

 

 それは夢子が以前に泣いていた理由だ。

 

 自分の所為で大好きな姉と自分達姉妹を愛してくれた叔母を壊してしまった事を話した。途中、その時の事を思い出してか涙を流す夢子。翔は少し考える。

 

「夢ちゃんは以前のお姉さんや叔母さんに戻って欲しいって思う?」

 

 

「もし可能なら戻って欲しいと思っています。でも」

 

 夢子はそれが叶わないと理解していた。

 

「よしっ、分かった!」

 

 

「えっ?」

 

 

「また明日、此処に来てね。それじゃ!」

 

 翔はそれだけ言うと走り去ってしまった。

 

 

 

 〜翌日〜

 

 翔は1人の女性を連れてきた。

 

「夢ちゃん、こんにちわ!」

 

 

「こんにちわ、翔さん。あの」

 

 夢子は女性の方を見る。

 

「この人は俺のおb「んっ?」……」

 

 何かを言おうとすると女性に笑顔を向けられた。翔は言いしれぬ圧を受け黙ってしまった。

 

「コホン、俺の叔母で希愛晶(きあら)叔母……お姉さん」

 

 

「こんにちわ、小さなお嬢さん。私は桜井希愛晶、この子のお……親戚のお姉さんです」

 

 女性はそう言うと、夢子の前にしゃがんで彼女と視線を合わせる。

 

「こっこんにちわ、蛇喰夢子です」

 

 

「宜しくお願いします」

 

 希愛晶は聖母の様な笑みを浮かべると夢子の手を取る。

 

「安兄にも、そうして笑いかければいいのに」

 

 

「なっ何を言うんですか!? なんで私があの男に笑いかけないといけないんですか!」

 

 

「本当に素直じゃないよねぇ〜。人の相談には素直にとか言ってるくせに……いたい! いたい! ほおほひっはらないで」

 

 希愛晶は顔を真っ赤にしながら、翔の頬を引っ張り続ける。

 

「私の甥は何時から人を誂う事を覚えたのですか?」

 

 希愛晶は数分間、翔の頬を引っ張り続けた。

 

「いたい……酷いなぁ、可愛い甥にこんな扱いをするなんて」

 

 

「大人を誂うからです。全く……さてと、夢子ちゃん」

 

 

「はっはい!」

 

 

「お姉さんの事はこの子から聞きました。私は精神・心理の……簡単に言えば心の病気のお医者さんです」

 

 

「心のお医者さんですか?」

 

 

「えぇ。お姉さんに一度会わせて頂けませんか? 

 

 ほんの少しでもお力になれるかもしれません」

 

 希愛晶はそう言った。勿論、夢子は

 

「あの……お姉ちゃんをお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 希愛晶が夢子の姉、想子の治療を始め、2週間が経った。

 

 想子の状態は芳しくなく、希愛晶の病院へと行くことになった。因みに叔母も精神的に追い詰められていたが、翔のおかげで正直に自分の言葉で話せる様になった夢子と腹を割って話をしたので、持ち直したらしい。

 

 そして希愛晶の病院は場所がかなり遠いため、これからは会いにくくなると聞いた夢子は悲しんだ。

 

 そして、出発の日

 

「翔さんとおわかれなんて」

 

 

「まぁまぁ……二度と会えなくなる訳じゃないんだし、夢ちゃん、泣かないで」

 

 

「ぅう」

 

 

「えっと……じゃあまた会う為にこれ」

 

 そう言って翔が渡したのは以前、夢子に差し出したハンカチだった。

 

「これ夢ちゃんに貸すから今度会った時に返してね」

 

 

「分かりました! 絶対返しに来ます!」

 

 ハンカチを返す約束、これだけで終わっていたなら未来で翔は苦労する事はなかっただろう。

 

「あっあの……翔さん!」

 

 

「なに?」

 

 

「ハンカチを返す時……つまり次に再会した時に」

 

 夢子は顔を真っ赤にし、大きく息を吸った。

 

 

 

 

 

 

私をお嫁さんに貰って下さい! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜人物紹介〜

 

 桜井 希愛晶(さくらい きあら)

 

 

 

 翔の父の姉、つまり翔の叔母にあたる人物。年齢●●歳。本人曰く永遠の16歳だそう。

 

 医師免許を持っているが、精神・心理の方を専門にしており、若くして自分の病院を持っている。誰にでも優しく、傷付いた心に寄り添い、患者を助けている。

 

 そんな完璧超人のような希愛晶でも、自身の恋愛に関してはクソ雑魚(翔 談)。

 

 何でも幼馴染の小説家に恋しているが、恥ずかしがって顔を合わせれば互いに文句を言い合っているらしい。

 

 イメージは型月のキアラさん。

 

 幼馴染イメージは勿論先生である。

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