夢子から語られた幼き日の翔との出会い、日々、そして別れ、約束。
幼い夢子の涙を拭い、夢子の姉を助けた。当時の翔には下心も、益も関係ない、夢子が泣いていたから助けたかっただけの事なのだが、夢子にとっては自分と姉ら叔母を救ってくれた王子様だ。将来、彼と共に居たいと思うのは恋する乙女心だろう。
普通なら夢子ほどの美人に迫られたら両手を上げて喜ぶが……
「女の子の涙を拭いて、助ける。そして再会……何処かの恋愛物みたいね、翔」
無表情で正座する翔を見下ろす綺羅莉、その横で無言で圧をかけているリリカ。
その視線に恐怖を感じ、震える翔。もし彼が綺羅莉達と出会ってなければ夢子の事を受け入れるだろう……多分。
しかし綺羅莉とリリカと言う幼馴染兼
「それで……貴方はどういう返事をしたのかしら」
「翔、答えろ」
冷たい2つの視線が翔に突き刺さる。
「えっとですね…………」
「翔さんはこう言ってくれました! うん、貰うね! と」
中々口を開かない翔に代わり、そう言った夢子。
(はい、終わった……俺の人生終わった)
綺羅莉とリリカが翔に近づき、彼の顔に触れる。
「翔、貴方、昔から色男だったのね。【許嫁】としては複雑ね」
「あぁ、全くだ。【私達の許嫁】は昔から優しくて、モテていたんだな」
そう言う綺羅莉とリリカは翔の耳を引っ張る。やけに許嫁、私達のと言う言葉を強調していたのは多分気の所為だろう。
「いだだだだっ! ちょっと待って! 千切れる! 千切れるから!」
半泣きになりながらそう訴えると綺羅莉とリリカは大人しく手を離す。
そして綺羅莉は夢子の正面に座り、リリカはその後ろに立つ。
「話してくれてありがとう、夢子。
折角の紅茶が冷めてしまったわね。翔、淹れ直してちょうだい」
「えっ俺?」
「何か問題でも?」
「いえ! ありません! 淹れ直してきます!」
部屋を飛び出す翔。
「さてと……夢子、悪いのだけど翔の事は諦めてくれないかしら?」
「翔には私達と言う婚約者がいる。お前の入る余地はない、蛇喰夢子」
綺羅莉とリリカがそう言うが、夢子は笑顔でこう答える。
「嫌です、そもそもあの人を好きになったのも、結婚の約束も私の方が早いですし!」
勝ち誇った笑顔でそう言う夢子。その言葉に笑顔が引き攣る綺羅莉、リリカも仮面で分からないが綺羅莉と同じ顔をしているだろう。
「……確かにそうかも知れないわね、子供の口約束と言えど約束は約束だものね」
と綺羅莉が言う、彼女にしてはやけに大人しい回答だ。しかしあの桃喰綺羅莉がそれで終わる訳もない。
「でも私達は既に【(忍び込んで)彼と同じ布団で寝ているの】。夢子も子供ではないからそれがどういう意味か分かるわよね? つまり、翔は私達に責任を取らなければならないの」
次は夢子の笑顔が崩れた。暫くの沈黙の後
「フフフッ」
「ウフフッ」
「アハハッ」
3人は突然笑い始める。
「「「ハハハハハハッ!」」」
笑っているのに目だけが笑ってない。けれど3人は笑い続けている。
その様子を少し空いた扉の隙間から覗いていた翔。
(怖っ! なに、この状況?!)
どうやら湯を沸かし、紅茶を淹れ直してきた様だ。しかし笑い声が聞こえてきたので少し覗いてみると3人が笑っている状況だ。翔はそっと扉閉める。
(ふぅ……俺は何も見なかった。そういうことにして少し此処で待機していよう)
問題を先送りにしても解決などしないのに動かない主人公。
「はぁ……俺、これからどうなるんだろ? と言うかこの世界はなんて残酷なんだ……あっ、そうか! こんなギャルゲーみたいな事が現実に起きる訳がない! きっとこれは夢で目覚めば自室のベッドの中なんだ!」
今起きてる状況を夢だと思い込もうとする翔。
「……無理だな、無理がある。悲しいことにこれは現実なんたよね。仕方ない、逝くか!」
覚悟を決め、扉を開けるとハイライトオフの綺羅莉と夢子が目の前に立っていた。
(やっぱ無理、逃げよう)
恐怖を感じた翔は逃げようとするがいつの間にかリリカが自分の後におり、退路を断たれていた。
翔は3人に掴まれると生徒会室へと引きずり込まれた。
ーえーと、これを読んでる皆さん。
ヤンデレとの約束には気を付けましょう! 破ってしまうと命が幾つあっても足りないと思います!
くれぐれもヤンデレと約束する時は、小さい頃の事でも言葉に責任を持ち、忘れない様にして下さい。
経験上、相手が金持ちだと気付かぬ内に包囲網をしかれて詰みます。そうなると逃げれません。
どうか皆さん、俺の様にならないで下さい。
それが俺のたった1つの望みですー
そしてその日、夜遅くまで生徒会室から男の悲鳴が学園中に響き渡り、七不思議に加わったのはまた別の話である。