〜生徒会室〜
夢子との再会から1週間、生徒会室の机に突っ伏している翔。
「ぁ〜かけっち大丈夫?」
放課後、予定もないるなが生徒会室にやってきてボロボロの翔に話しかけた。
「……」
翔は頭だけるなの方に向ける。しかし何も話さない。不思議に思ったるなは耳を近付けてみると
「無理、死ぬ」
と言う声が聞こえてきた。
(うわぁ、今にも死にそうな声……会長達と蛇喰夢子、何してるんだろう?)
この数日の事を思い返するな。
先の騒動の翌日……引っ掻き傷、赤く腫れた頬、ボロボロ状態の翔。
騒動から2日……怪我はある程度消えていたものの、常に綺羅莉、リリカ、夢子の誰かが傍にいる。
騒動から3日……傍にいる綺羅莉、リリカが夢子と笑顔(目は笑ってない)で火花を散らせている。
それ以降、同じ様な光景が続いていた。
「う〜ん……どっちを選んでも地獄だね!」
満面の笑みで言うるな。
「胃が痛い……」
「同情はするけどさぁ、この騒動の原因はかけっちだし、自業自得だよねぇ」
「ぐはぁ……でもさぁ、この場合ってどうするのが正解なの?」
図星を言われて更にダメージを受ける翔は泣きながらるなにそう聞いた。
「分かんない!」
「ですよねぇ……ねぇ、るなっち。俺はこの間まで忘れてたけど、子供の頃の結婚の約束って重要?」
るなはそれを聞くと、机を叩き立ち上がる。
「あったりまえじゃん!
本気で恋する女の子の想いを舐めんじゃないよ!」
珍しく感情的に叫ぶ、るな。
「えっ、あっ、はい……」
「そもそも話を聞く限り、かけっちは蛇喰夢子の白馬の王子様じゃん!
そんなん、女の子が惚れるの当たり前じゃん! しかも約束して肯定してるでしょ!」
「そうらしい」
「らしい? ……かけっちもそんなんも覚えてないの?」
翔に「最低」と言う目を向ける、るな。
「夢子によればそう言ったらしいんだけど……返事をする所から別れる所までの記憶がスッポリと抜けてんだよ。
それ以外はハッキリと思い出したのに」
「返事と別れの記憶だけ?」
「そう。そこだけ全くない……思い出せないんだ」
そう言う翔、彼が嘘を言っている様に見えない、るなは首を傾げる。
「えっ、そうだったんですか?」
声のした方向……翔の後ろ見た。そこには蛇喰夢子がいた。
「おわっ!? 何時からいたの!?」
いつの間にか居た夢子に驚いた翔は座っている椅子から落ちた。
「フフフッ驚きましたか?」
「因みに私が怒鳴った辺りに入ってきたよ」
るなは気付いていたらしくあえて言わなかったらしい。
「翔さんと一緒に帰ろうと思って来たのですが、懐かし話をされてましたね」
「ねぇねぇ、蛇喰夢子。かけっちが記憶がないって言うけど心当たりがある?」
「ぇ〜と……多分あれでしょうか?」
どうやら心当たりがある様だ。夢子は頬を赤くし、手を頬に当てる。
「わっ私のファーストキスを捧げました」
そう言う夢子に対して、固まる翔。
しかし、るなは此処で不思議に思う。それくらいで記憶が飛ぶだろうかと。
「きっキス? ぅ……頭が」
キスと聞いて頭を押さえる翔。
「はい! 私の【は・じ・め・て】です!」
初めてを強調する夢子。
「おっ思い出した……あの時、俺、押し倒されて」
〜2人の別れの時〜
「私を翔さんのお嫁さんにして下さい!」
別れの際に言った逆プロポーズ。そして幼き日の夢子は返事を聞く前に翔を押し倒した。
「いたたっ……夢ちゃんどうしたの?」
「はぁはぁ……ごめんなさい翔さん、でも先生がこうすればいいって」
先生と言うのは希愛晶の事だろう。翔は叔母の方を見る。
「あらあら、若いって良いですねぇ。若い2人に気を使ってあげましょう」
と言い少し離れた所にいた。
「蛇喰夢子、行きます!」
「えっ、ちょ……ん!? 〜〜〜」
翔は7歳にして初キスを奪われたのであった。
〜現在〜
「じゃあ、俺の記憶が思い出せなかったのって」
「ぁ〜多分、その時の事が衝撃的過ぎて記憶を封印してた……ってところかな?」
翔とるなは、衝撃的な事態を忘れたいが為に記憶を封印していたと結論付けた。
「俺、ファーストキス奪われてたのか……」
「ウフフッ」
翔はショックを受けており、俯いていた。夢子は翔に抱き着いていた。
(あっちゃ〜コレはあの2人が黙ってないよねぇ。バレたら大変……とは言っても絶対バレるな、コレは。
桃喰綺羅莉、リリカ、蛇喰夢子、揃いも揃って愛が重いわぁ。
かけっちも大変だよねぇ。まぁ、それで困ってるかけっちは見てて飽きないんだけどね)
夢子を引き剥がそうとしている翔を見ながらポケットから飴を取り出す、るな。
でも会長もリリカも蛇喰夢子もまだまだ甘いなぁ。自分達だけって思ってるんだもん
るなはそんな事を考えニヤッと笑い飴を舐めるのだった。