幼馴染が怖いですが、どうしたらいいですか?   作:始まりの0

25 / 31
主人公だって風邪くらいひきます。タイミングが最悪なだけです。

 〜翔の自宅〜

 

「はぁ……疲れた。何だか身体が怠い……調子崩したか?」

 

 生徒会室の仕事に加えて、女の戦いに挟まれる日々により精神的に肉体的に疲れていた。帰宅した彼はそのまま倒れ込む様にソファに腰をかける。

 

「綺羅莉、リリカ、夢子……3人に惚れられるとは……しかも愛の重いヤンデレって……どうすりゃいいんだよぉ」

 

 ソファに座りそう呟く翔。彼は現在、1人で家にいるので、その呟きに答える者はいなかった。

 

 彼なりに迷い、悩んでいる様だ。それだけ彼女達をおもt「取りあえず置いとこう。綺羅莉とリリカもいない、学校じゃないから夢子も居ない、こんな時は嫌な事は忘れよう!」

 

 疲れの溜まっていた彼は考えを止めた。

 

「後々考えよう。そうだ、今日は誰もいないから飯にしないと」

 

 そう言って冷蔵庫を開けようとするとピンポーンとチャイムが鳴った。

 

「誰だ?」

 

 チャイムが鳴ったはいいが、以前、父親達が帰ってきた時に壊したままにしていたのでモニターが映らない。なので玄関まで行くことにした。しかし彼は後悔するだろう……【インターホン直しておけば良かった】と。

 

 

 

「新聞とか訪問販売はお断り……」

 

 と言いながら扉を開けると玄関前には夢子が立っていた。

 

「…………お疲れ様でした〜」

 

 そのまま扉を閉め、鍵、チェーンをかけた。

 

「ふぅ……疲れてるな、早めに寝よ」

 

 

『翔さーん、開けて下さい〜。貴方の夢子が来ましたよ!』

 

 

「ないない、知ってる訳がない。教えてないし……」

 

 家を教えてもないのに来れる訳がないと考え、あの夢子は日々の疲れからくる幻覚、幻聴の類だと思うことにした翔。

 

 外から開けて下さい〜と聞こえているが聞こえない振りをしていた。

 

 

『私の初めて(キス)を捧げたのに私を捨てるんですかぁ?』

 

 と大声で叫ぶ夢子。

 

「ストーップ、夢子、ストップ! 俺のご近所での評判が死ぬ!」

 

 堪らずに扉を開けて夢子の口を防ぐ翔。そして、そのまま家の中に引き込んだ。

 

「はぁはぁ……お前なぁ、なんて爆弾発言をしてるんだよ!?」

 

 

「だって翔さんが私を閉め出すからですよ」

 

 

「くっ……唯でさえ親父がチャランポランで嫁に養われてるとか、綺羅莉やリリカが出入りしてるから変に噂されるのに、これ以上は勘弁してくれ」

 

 

「大丈夫です! 私はどんな評判でも貴方を愛してますから!」

 

 

「俺が困るの! と言うか、何で家の場所知ってるんだ?」

 

 

「先生から聞きました」

 

 

「先生? ……個人情報を? ……いや、待て……もしかして」

 

 

「はい、お考えの通りです」

 

 翔の脳裏には此方が困ってるのを見て笑っている叔母・希愛晶の姿を浮かんだ。

 

「あの……ババア、後で仕返ししてやる。ふぅ……それで何の用だ?」

 

 その言葉に夢子は持っていた手提げ袋を翔に見せる。

 

「翔さんの夕食を作りに来ました」

 

 

「えっ?」

 

 間の抜けた声を出す翔を他所に「お台所お借りしますね」と台所へと向かった夢子。

 

「ちょっと待った! 綺羅莉とリリカが居たらどうしてたの?」

 

 

「翔さんが1人なのは知ってましたし、この機会に距離を詰めるチャンスかと思いまして」

 

 

「何で知ってるの!? アイツ等が用で出掛けたのは放課後だぞ?」

 

 

「愛です!」

 

 

「えっ……あっ……そうですか……」

 

 それ以上は聞くのが怖くなって聞かないことにした。

 

 台所に立ち料理を始めた夢子。翔はソファに腰掛けため息を吐く。

 

「♪ 〜♪ 〜」

 

 鼻歌とトンットンッと包丁の音が聞こえてくる。

 

 翔は夢子の方を見た。

 

 心の底から楽しそうな顔で調理をしている夢子。

 

「なぁ、夢子」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

「変な話だが、何で俺なんかを好きになったんだ?」

 

 その言葉を聞いてピタッと音が止まる。

 

「正直、昔の事も、俺の事も忘れて、あt『バスっ』……えっ?」

 

 気が付くと夢子が自分を押し倒しており、音のした方向に向くと顔の横に包丁が刺さっていた。

 

 状況を理解し、視線を夢子に戻すと、彼女の顔が目の前に迫っていた。

 

 

 

 

俺なんかなんて言わないで下さい。貴方は誰かの為に怒り、悲しみ、動くことの出来る素晴らしい人です。貴方を貶める様な事は聞きたくありません。例え貴方の自身の言葉でも

 

 

全部忘れる? そんなの無理に決まってるじゃないですか! 貴方は私をあの女の手から解放し、お姉ちゃんと叔母様を救った。そして私の心も救った。あの時、貴方は私の心を奪ったんです。だから貴方は私と結婚する義務があります

 

 何でそうなると言いたかった翔だが、狂気の宿った夢子の瞳に釘付けになる。

 

そして私と家庭を築きましょ? 子供は3人は欲しいです。でも翔さんが望むなら何人でも良いですよ。翔さんに似た男の子、私に似た女の子、逆パターンもありですね。名前も幾つも考えてノートに纏めてるのでお父さんが決めてくださいね。

 

 

(……やっべぇ〜、綺羅莉とリリカとは別ベクトルで怖い!)

 

 

今、別の女の事を考えましたか? 貴方の前にいるのは私です、私の事だけ見て、私の声だけを聞いて、私の温もりだけを感じて、私の事だけを考えてください

 

 夢子の手に掴まれ顔を動かす事は出来ない翔。体調を崩していたからか、力があまり出ない様だ。

 

(どうする?! どうすればいい!?)

 

 翔は必死に頭を回転させる。

 

【選択肢】

 

 ①諦めて夢子を受け入れる。

 

 ②逃げる為に夢子を押し返す……包丁あるし無理、諦める。

 

 ③もう諦めて若さを爆発させようぜ。

 

 

「(無理だ! 碌な考えが浮かばん!)ゆめ……あれ? なんだか視界がまわ……る……?」

 

 突如、翔の視界が歪み、気を失う。

 

「かっ翔さん? 翔さん! しっかりして下さい!」

 

 

 

 

 

 

 〜翔の部屋〜

 

「ぅう……ここは? 俺の部屋?」

 

 翔は目を覚ますと見慣れた天井が見える。どうやら自分の部屋のベッドの上の様だ。

 

「確か……夢子に押し倒されて」

 

 翔は気を失う前の事を思い出しながら体を起こすと、頭から何かが落ちた。それを手に取ると濡れたタオルだった。そして横を見ると夢子がベッドの横で座ったまま寝ている。

 

 どうやら夢子が此処まで翔を運び看病してくれていた様だ。

 

「……ぅ……まだ頭痛い」

 

 まだ熱が下がっていないのか、そのまま横になる。窓を見てみると外は真っ暗だ。

 

「もう夜か……こんなに調子を崩したのは何年ぶりか」

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 その声の方を向くと夢子が起きていた。

 

「看病してくれてありがとう」

 

 

「いぇ妻として当然です……熱は……むっまだありそうですね」

 

 夢子は翔の額に手を当て熱を確認する。翔はまだ調子が悪く何時もの突っ込みがない。

 

「みたいだな……またねむく……」

 

 どうやら翔はそのまま寝てしまった様だ。

 

「フフフ……お休みなさい」

 

 夢子は翔を愛おしそうに見つめていた。そして顔を彼の顔に近付けた。

 

 そして2人の影は重なり合う、それを知るのは夜空に輝く月だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 〜翌日〜

 

「……」

 

 目を覚ました翔が目にしたのは、優越感に浸った顔で自身を抱き締めている夢子。

 

 そして、その向かいには冷たい目をした綺羅莉とリリカだった。

 

 こんな事ならさっさとインターホン直して居留守しておけば良かったなどと思う翔であったが、後の祭である。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。