百花王学園……上流階級・政財界の子女が通う名門校だ。
この学園では日常的にギャンブルが行われており、ギャンブルにより階級が決められていた。
その原因となったのは、1年前に入学した桃喰綺羅莉の打ち出した改革だ。その改革により、ギャンブルにより負け、生徒会に上納金を納められなかった者達は「家畜」と呼ばれる様になる。家畜は男子生徒は「ポチ」、女子生徒は「ミケ」と呼ばれ差別的な扱いを受けている。
家畜から解放される為には特別上納金である100万円を一括で払う事、後は一か八かで生徒会役員に公式戦を申し込み勝つ事だ。後者に関してはほぼ不可能だ。なんせ生徒会役員は揃いも揃って資金が膨大だ、自分もそれなりに資金がなければならない。そんな金があるなら上納金を払った方が早いからだ。
そしてこの学園の生徒会はどいつもこいつも頭がおかしい……クレイジーな奴等ばかりだ。
まず生徒会長・桃喰綺羅莉、人一倍……どころか万倍好奇心が凄い。そして自分の欲を満たす為なら一般常識はお構い無し、金は幾らでも積む、俺を幼い頃から振り回す金持ちお嬢様だ。そして糞親父の所為で半年前から幼馴染から許嫁になった。いい加減に解放して欲しい。
副会長・桃喰リリカ、普段は隠してはいるが綺羅莉の双子の姉だ。産まれた時から綺羅莉の影武者の様に育てられていた。俺はリリカをリリカとして接しているので、問題ないが、家では苦労していた。許嫁の1人です。
生徒会選挙管理委員長・
生徒会書記であり綺羅莉の秘書・
生徒会美化委員長・
生徒会庶務・
生徒会広告・
生徒会会計・
多分、この世界でこんな濃い奴等に囲まれてるの俺だけじゃないかな?
「翔」
「ん?」
綺羅莉に呼ばれたので顔をそちらに向ける。ニッコリと笑っている、端から見れば見惚れそうな笑顔であるが、俺には悪魔の微笑みにしか見えない。
「紅茶の葉が切れたの、買ってきてくれるかしら?」
「……何時ものでいい?」
「会長! 私が!」
「いいのよ、清華。翔は暇そうだから」
(この書類の束を見て何で暇そうと言えるんだ?)
「えっ? えっ?」
楓と清華は書類を見て疑問に思っている、当然の反応だ。翔は慣れたのか諦めた顔をしている。
「はぁ……分かったよ」
「かけっち、私、ジュースとお菓子よろしく~」
「では、序でに俺もコーヒーを頼む」
全然序でじゃないよ、と思いながら翔は立ち上がる。
「何時もの店まで行くから少し時間掛かるぞ?」
「えぇ……そうだ、リリカ、貴女も一緒に行きなさいな」
「……私もか?」
「たまにはいいでしょう」
綺羅莉なりに半身であるリリカに気を遣っている様だ。
「分かった」
こうして、翔はリリカと出掛ける事になった。
「と言う事はこの書類は手分けして「帰ってきたら貴方がやるのよ」……ですよねぇ~」
大きな溜め息が出る。
「あら、溜め息吐くと幸せが逃げるわよ?」←原因
反論しようとしたが、取り敢えずは買い物を先だと考えリリカと共に外に出た。
頼まれた買い物を済ます為に学園の外に出る。
並んで歩く翔とリリカ。翔は学園から離れた場所で、リリカの方を見た。
「外でくらい、取ったらどうだ、
それとは恐らくリリカの着けている仮面の事だろう。
「そう言う訳にもいくまい、人の目がある……それに綺羅莉の方g……」
そう言うリリカの手を引き、裏路地に入る翔。
「そうやって綺羅莉と自分を秤にかけて、自分を卑下するのはお前の悪い癖だ。
綺羅莉は綺羅莉、リリカはリリカだ。そう言う環境で育ったのは分かるが俺と一緒の時くらい自分で居ろ」
リリカの仮面を剥ぎ取ってそう言う翔、言われた本人は顔を真っ赤にしている。
「ぅ~翔はずるい……」
「何が?」
(私の欲しい言葉を言ってくれるし、私を私として見てくれる)
リリカは顔を真っ赤にして、仮面で顔を隠している。
「はぁ……ならあっち向け、髪を結ってやる」
慣れた様子でリリカの髪を結っていき、綺羅莉と同じ髪型にする。
「これなら、俺が綺羅莉と出掛けている様にしか見えないだろ。綺羅莉が生徒会室にいるのを知ってるのは生徒会メンバーだけだし問題ないだろ?」
「確かに……」
「まぁ、話し掛けられたら綺羅莉の振りをしたらいい。ほらっ行くぞ」
そう言ってリリカに手を差し伸べる。
「あぁ……翔」
「?」
「翔は幸せか?
綺羅莉や私に付き合わせ、百花王学園に無理矢理入学させたり、振り回している。辛くはないか?」
「綺羅莉がいて、リリカがいて、お前らに振り回される日々……昔からだからな、俺の生活の一部になってるし……まぁ、幸か不幸かと言われると……あれ? どっちだろ?」
翔は今までの事を振り返る。
(コイツ等に会ったのが5歳、今年で17歳……これまでに命の危険に晒されたのが1,2,3……100は越えてるな、あれ? コイツ等に出会ってなかったら、俺、平和に過ごせてた? でもなぁ)
ふっと綺羅莉とリリカに出会わなかった日常を想像してみる、確かに平和に過ごしていけるだろう。
「お前等に会わなかったら、それはそれで寂しかっただろうな。だからお前等に出会った事は間違いじゃなかったと思ってる」
「っ……」
「でも綺羅莉に言うなよ! こんなのアイツに聞かれてみろ、今以上に無理難題を吹っ掛けられるからな! 絶対だぞ!」
「フフフ……あぁ、言わないよ」
リリカは翔の手を取り、2人は買い物へと向かった。