百喰一族は桃喰一族を筆頭に多数の分家で構成されている。
一族の共通点として、名字に『喰』の文字が入っており、それぞれ社会的地位が高い名家が多い。
そして分家の次世代達もまた、優秀である。
彼女の一族の生業は「調整」であり、各分家のリーダー的存在、
彼女は生まれついて足が不自由で車椅子の生活であるが、同じ一族の
定楽乃は人柄もよく、一癖も二癖もある分家達のリーダーを務めれるだけの統率力を持っていた。分家の皆も定楽乃の事を信頼し、彼女の言う事であれば大抵の事は受け入れていた。
大きなマスクで顔を隠していた少女、
彼女はマスクとボサボサな髪で隠していたが、
銀髪のスタイル抜群の少女、
彼女の一族の稼業は「掃除」である。表向きは清掃やクリーニングを生業としているが、裏では一族の不純物の排除を行う暴力装置だ。彼女自身もその役割を果たす実力を持っていた。
犬を連れている少女、
「金融」を稼業とする狛喰家の娘。彼女の家は金融を生業とするだけあり百喰一族の中でもトップの金持ちである。
彼女は努力家で、真っ直ぐな性格である為、騙されやすい。しかし家の代表を任されるだけの素質と実力を持っている。
そんな彼女達は綺羅利とリリカ、夢子の前で顔を真っ青にしながら正座し震えている翔に抱き着いていた。
残りの分家のメンバーは綺羅利達の横に固まっており、4人の行動に困惑していた。
因みに生徒会役員達は全員、外に出されている。
「どういう事か聞きたいのだけど……」
「それよりお前達」
「そろそろ離れて下さいません?」
綺羅利、仮面を外したリリカ、夢子が抱き着いている4人にそう言った。
「百喰の人間でもなく、名足カワルでもなく、
それを止める権利があるのかしら?」
淑光がそう言うと、綺羅利の額に青筋がたつ。
「お前達は彼と一緒だったのだろ?
我々とて彼に想いを寄せる者……多少なり彼と時間を過ごす権利はある筈だ」
ミラスラーヴァが翔にもたれながらそう言うと、リリカの口元が引き攣っていた。
「彼が拒否してないんだから問題ないですよね?
私達は数年会えなかったんだから、少しくらいいいじゃないですか!」
希は翔の腕に引っ付きながらそう言い放つ。因みにその隣では大きなセントバーナードがお座りしていた。それを聞いた夢子は冷たい空気を放ったのは言うまでもない。
そんな中、翔はと言うと
(お願い! お願いだから、煽んないで! 怒りを通り越して真顔になってるから!)
綺羅利、リリカ、夢子からの怒りをひしひしとその肌に感じ恐怖していた。
(膝に、両腕、背中に女の子ならではの柔らかい感触に皆、いい匂いすんだけど!)
と案外、余裕がありそうである。思っている事がバレて綺羅利達からの圧が強くなったのは言うまでもない。
そんな光景を見て楽しそうに笑う男がいた。彼は定楽乃達と一緒に来た百喰の人間の1人だ。
(あの綺羅利だけじゃなく、普段から自分の感情を出さないリリカまでが此処まで感情を出すなんて……それに定楽乃達までも。
天姫 翔……見た感じ何処にでもいる高校生だけど、彼を上手く使えば……)
その男はそんな考えをしながら、翔を観察していた。
「綺羅利」
「何かしら、定楽乃」
今まで黙っていた定楽乃が綺羅利に声をかける。
「私達は老人達から言われてお前から生徒会長の座と百喰の当主の座を奪う為にここに来た。
だが、私、淑光、ミラ、希の4人は正直、生徒会長の座も当主の座も興味はない」
「「「「はぁ!?」」」」
定楽乃の言葉に驚きを声を上げる残りの分家の代表達。
「ちょっ……定楽乃、本気!?」
「貴女達、問題発言よ!」
定楽乃の発言は各分家の命令を無視すると言う事、百喰の人間に取ってそれは家を裏切ると言う事だ。
「お前達の言い分は分かる。私の言ったのがどれ程、重いのかもな。
通常の場合は……だ」
「どういう事だい?」
翔を観察していた
「以前から綺羅利に不満を持つ老人達は多いのは知っていた。だが今回の事は性急だったんでな、少し調べた。
綺羅利は我儘で、人の迷惑も考えず好き勝手にやっている。正直、私も綺羅利の所為でどれだけ迷惑を被ったか思い出したくもない」
「だから老人達が綺羅利は当主に相応しくないと判断したから僕達がこうしてやってきたんだろう?」
「あらっ、随分と嫌われたものね」
綺羅利がさらりと言った言葉で、全員が彼女に注目した。
「当の本人がこれだ、他者の迷惑など考えてもない。と言うより自身が楽しければそれでいいと思ってる」
定楽乃の発言に翔、リリカも含めた全員が頷いた。
「とは言え、少なくとも綺羅利は百喰の当主として仕事はしっかりとこなしている。
誰の影響かは置いといてな」
定楽乃は笑いながら翔の顔を見た。翔は良く分からない顔をしていたが、少なくとも綺羅利に影響を与えられるのは彼だろう。
「凛、老人達が今回の件を言い出したのは何時だ?」
「確か……1〜2ヶ月前だったかな。それがどうしたんだい?」
「当主を変えようと言うのに、数ヶ月と言う短い期間で事を押し切った。不思議に思わないか?」
定楽乃の言葉に、皆が確かにと納得した。
当主を入れ替える、言葉にすれば簡単だが、百喰一族程の大きな一族のトップを代えるとなると数ヶ月で話が決まるとは思わないだろう。
「それだけ、一族全体が綺羅利に不満を持っていたとか?」
「それもあるかも知れんが、私が調べた限り、今回の件に賛成しているのは一族の四分の一だ。
綺羅利に不満を持ってはいても、入れ替えに賛成してるのは一部」
では何故、性急に入れ替えの話が決まったのか、凛や他のメンバー達も疑問に思った。
「今回の件、事の発端は去年の夏前の一族の会議だ」
「夏前、会議…………」
綺羅利は何かを思い出しのか、はっとする。
「会議中、綺羅利に詰め寄っていた老人達に水を浴びせた人物がいた。
どうやらその者は臨時の綺羅利の従者だったみたいでな。
そこで恥をかかされた老人達と、元々綺羅利が気に食わなかった一族の者達が結託し今回の件に繋がった」
「ぁ〜〜あの時の」
翔も思い出したのか去年の事を思い出していた。
「と言う事は今回のは俺が原因……」
「「「それは違う(わ)」」」
綺羅利を含め、彼に想いを寄せる全員が翔の言葉を否定する。
「あの老人達の事だから、難癖つけて同じ状況にもって来てたわ」
「綺羅利に同意だ」
綺羅利と定楽乃の言葉に同意する他のメンバー達。
「ちょ……ちょっと待って下さい!」
「三欲」
「つまり老人達の自分勝手の都合で、鬱憤晴らしで我々が動かされたと言うことですか!?」
声を上げた、彼女の名は
「馬鹿げているがそうなる」
「では生徒会長の座を手に入れたら当主と言う話は」
「此処に来る前に改めて各分家の家長に尋ねたが、本気で賛成しているのは一部だけ。しかし老人達の言う事は無視できないから、我々の家は代表を出したと言う所だろう。
綺羅利が同意があったとしても、一族の半数以上の反対があれば無かったことになる」
三欲は苦虫を噛み潰した様な表情になる。
「三欲、此方へ」
定楽乃はそう言うと彼女を自分の元に招いた。三欲は怒りの表情をしていたが、定楽乃の性格上、意味のない事はしないと考え、それに従い定楽乃の前に膝を付く。
定楽乃は三欲の耳元で何かを呟いた。
「! ……定楽乃、貴女」
「私は少なくとも誰もが幸せになる方法を取る。それは今も昔も変わらない」
「……分かりました。定楽乃を信じましょう」
三欲は大きく深呼吸すると、少し落ち着いたのか定楽乃にそう言った。
「他の者達も思う所はあるだろう。詳しい話は後日しよう」
定楽乃はそう言うと、綺羅利の方を向いた。
「さて、綺羅利、リリカ、蛇喰夢子。
此処からは女として話をしようか」
定楽乃はそう言って3人を真っ直ぐ見つめた。
と言う訳で、当主交代の原因の1つとなった主人公でした。
次回は『女』の話し合いです。