おっす、オラ、翔。
百花王学園では日常的にギャンブルやってるんだってな! つぇー奴がいっぺーいるみたいだな、オラ、ワクワク……するかー! 日常的に高校生が数十万~数百万を動かすんだぞ! 恐いわ! 恐すぎる!
此処の奴等の金銭感覚は可笑しいんだよ! 平然と十万単位を出してくるとかマジ可笑しい! でも最近……綺羅莉とリリカの所為か、俺の金銭感覚も狂ってきたな、だって財布の中に万札が百程あるからな。それが当たり前になってるの恐い、少し前ならこんな金額を持ってたら恐くて外に出れないもん。
「さてと……綺羅莉め、また無理難題を言いやがって」
事の始まりは昼休み。昼食を食べる為に食堂に向かおうとした所、リリカが現れた。まぁそこまではいい、翔にとっては普通の事だ。
何時もと違ったのは綺羅莉からの伝言だ。
『翔、たまにはギャンブルをしなさいな。一応生徒会付きの人間なのだし、多少はギャンブルが強いと証明なさい。元手の十万を五百万にしてきなさい。元手は此方で出してあげるわ、だって貴方、あまり資金がないもの。後、今日中に完遂させなさい。
出来なければ…………今度の連休、私とリリカの従者をして貰おうからしら』
等と言われた。1日……正確には昼休みと放課後のみの合計数時間のみで、50倍にするなんてかなり難しい話だ。
だが出来なければ貴重な連休が無くなる。しかし翔の場合はそれだけじゃない。
「出来なかったら連休潰れだけでなく、その間、絶対にえげつない事を要求されるのがお約束なんだよ! そんなん、嫌だぁー!
こうなったら死ぬ気でやってやる!」
と始まった翔のギャンブル。昼に言われ、昼休みの間に元手を十倍にした。後はこれを五倍にするだけだ。
「さてと……近くの高額な賭場は……」
取り敢えずさっさと終わらせる為に高額な賭場へと向かおうとすると、複数の生徒が溜まっている場所を見つけた。
よく見てみると、気の弱そうな女子生徒とそれを庇う女子生徒、その2人を囲う複数の男子生徒がいた。
「ぁ~……面倒事だな」
そう思いながらも通り過ぎようとした。
「…………ぁあもう! ちょっとそこの君等!」
放っておけない性格の為に、声を掛ける。
「何してるんだ? 男が女を囲うなんて格好悪いぞ」
「ぁあ!? んだ、テメェ! この俺を誰だと思ってやがる!」
「知らんわ」
柄の悪いリーダーらしい男子生徒が怒鳴り散らす。翔は全く怯まずそう言った。
「まぁ……取り敢えず、話からしましょうか」
取り敢えず話を聞く事にした。
まず、女子生徒達はギャンブルで彼等に負けたらしい。しかし手持ちがなくなり払えなくなった。本来なら生徒会がそれを肩代わりする形で支払う事になるのだが、この男子生徒達は今払えないなら身体を差し出せと言い出したらしい。
(まぁ……ギャンブルしたのは自業自得だけど、身体を差し出せとは……しかしコイツ等は)
自業自得ではあるのだが、金の為に女が汚されるのは許せなかった。それに目の前の男共をこのまま放置したくなかった。
「成程ねぇ……OK、なら、俺とギャンブルしようか。
此処に100万ある。取り敢えず……」
翔は何処かに電話すると、数秒で遠くから黄色い何かが走ってきた。
「えっ!?」
その黄色い何かの正体が分かって男子生徒達が驚愕する。
「アハハハハハハ! かけっち! ギャンブルするって本当! 私がディーラーするよ!」
電話の相手はるなだったらしい。るなはかなり嬉しそうだ。
「よっ黄泉月!?」
「なんで選挙管理委員会長が此処に?!」
るなの登場に男子生徒達は驚いている。
「俺がギャンブルする時は絶対に呼べってうるさいからね、るなっちは」
「当たり前じゃん! かけっちのギャンブルなんてレアだもん! 普段絶対しないもんね! そのレアな勝負のディーラーはこの私をおいて他にいないでしょ!」
「じゃあ始めましょうか」
るなの登場に驚いたものの男子生徒は勝負を行う事にした。
この男子生徒も翔が呼んだ、るなを怪しんでいたが、選挙管理委員会のトップを務める人間であり、彼女が絶対中立である事をよく知っていた為、彼女がディーラーをする事を了承した。
勝負内容は一般的なクローズドポーカー。
ルールは簡単に、互いに参加費を払い、ディーラーがカードを5枚配り、手札を確認。その後、一回目のベットを行い、カードの交換の判断。そして二回目のベットを行い、手札を公開、その時の役の強さで勝敗を決め、勝った方が互いに賭けたチップを総取りする。
チップは1枚で10万円の物を使用する。
但し翔は今回、トランプにジョーカーを混ぜて行う事を提案し、男子生徒……先輩(一応3年らしいので)はそれを受けた。
この先輩、家がそこそこの金持ちで資金も翔と違い多い。この相手に翔はどう戦うのだろう。
勝負が始まって、数ゲーム。
先輩はツイていた。何故ならこれまでの勝負、全て勝利しているからだ。
翔のチップも半分を切っていた故に、先輩は既に勝った気でいる。
そこで翔はこう尋ねた。
「先輩、なんでアンタ等、この娘達に身体を差し出せと?」
「ぁあ!? そんなん決まってるだろ! コイツ等は敗者、俺は勝者! 勝者は何を負け犬に何をしてもいいだろ!」
「……成程。しかし時間があれば普通に金は入ってくる、なのにか?」
「あぁ、まずはコイツ等を無茶苦茶にした後、それから撮影でもして稼いでやるよ! アハハハハハハ!」
それを聞き女子生徒達は脅え、泣いている。どうやらこの男、性根が腐ってるらしい。
「はぁ……分かった」
「テメェはどうs「お前の様な輩は徹底的に潰す」はぁ? 状況分かってるのかテメェ! どうみても俺が圧倒的に有利だろうが!」
「さて……どうだろうね。るなっち、次だ」
「はいはい~」
るなは次のカードを配り始め、ゲームが始まった。
「オールイン」
翔は手札の確認を終えると、チップを全て賭けた。
(馬鹿が。こっちはストレートフラッシュだぞ!)
「両者ともいいかな! じゃあ
るなの合図と共に両者の手札を公開。
「なっ!?」
「ろっロイヤルストレートフラッシュ……」
「ばっ馬鹿な……手札交換なしに揃えたって言うのか!?」
ロイヤルストレートフラッシュ。ジョーカーを入れたこの勝負では上から2番目に強い手だ。
それを揃えられる確率は約65万分の1だ。65万回やって1度揃えられるかどうかと言う確率、翔はそれを引き寄せた。
それから運が翔に味方し始める。
強役、
現在、翔のチップ2000万、先輩のチップが残り50万。加えて先輩は完全に翔の勢いに飲み込まれていた。
「勝負ありか……」
「……ありえねぇ。こんな事あってたまるか! 黄泉月! テメェ! グルだろ! じゃなきゃこんな事ありえねぇ!」
先輩はるなに詰め寄る。
「はぁ? ないない……選挙管理委員会長、舐めんなよ」
るなの目が鈍い光を放ち、部屋の空気が重くなる。
「っ!?」
「【絶対中立】それがこの学園での私のルールであり存在意義だ。これは決して変わらない、例え友人のギャンブルであってもね」
そう、黄泉月るなは決してどちらかに付くことはない。絶対中立こそ、彼女の学園でのルールだからだ。
「じゃ……じゃあ、何か! コイツは運だけで強役を引いたっていうのか?!」
「そ・の・と・お・り! かけっちは自分の運と技術だけで引き付けるんだよ! 本当にすっごいよね!」
「ハハハ、るなっち、褒めても飴くらいしか出ないぞ」
「なのに会長からは逃げらんないだよね!」
「ごふっ……」
るなの言葉で椅子から落ちる翔。しかし直ぐに椅子に座り直すと何もなかったかの様な顔をしている。
「さて……先輩、これで終わりですね」
「ふっ……ふざけんな! 次が最後だ! 黄泉月! チップ追加だ! 2000万だ!」
「おっ……いいの? 現金ないならこっちで貸す事になるけど」
「構わねぇ!」
「止めればいいものを……」
翔はそう言いながら参加費を払う。るながカードを配る。
(くそっ! あり得るのか! こんな事が! だが俺がこんな所で……)
カードを交換すると
(ロイヤルストレートフラッシュ! 勝った俺の勝ちだ!)
ロイヤルストレートフラッシュを引いた先輩は勝負に出る。
「こっちも1枚交換だ」
翔もカードを交換する。しかしそのカードを捲る事はなかった。
「なんでカードを見ない!」
「必要ない……これでいい」
「ふざけやがって! 2000万オールインだ!」
先輩は2000万全てを出す。翔も同じく2000万を賭けた。
「2人とも覚悟はいい? これが最後だよ! オープン!」
るなの合図と共に先輩が先に手札を開ける。
「ロイヤルストレートフラッシュだ! 俺の勝ちだ!」
「気の早いことを……」
翔は自分のカードを裏向きで並べると1枚ずつ捲っていく。
♠️2
「この手に勝てる訳ねぇだろ!」
♥2 ◆2
「まさか、かけっち……この手は」
♣️2
「フォーカードだと? ふざ……いや待て、そっそんな訳が」
JOKER
4枚の同じ数字に加え、
「ばっ……そっ……そんなこと……」
「かけっち! すっごいよ! まさかこの手を揃えるなんて!」
るなも感動していた。
「うん、まぁ……(予想外だった)
さてと、るなっち。判定を」
「勿論、かけっちの勝ち! そっちは……ありゃりゃ、気を失ってるし。
これは続行無理だね。じゃあ、私の判断で……終了!」
「ふぅ……慣れない事をすると疲れた。計4000万か、おい、お前ら」
翔は先輩の取り巻き達に声を掛けた。
「この娘等の借金が、それぞれ500万、計1000万のチップだ。これで文句ないな?」
「はっはい」
「よし……後、君等もあまり調子に乗って賭け過ぎない様に」
「はっはい! ありがとうございます!」
「これにて一件落着」
~翌日~
「と言う訳で3000万になった」
「あらっ……そう、それは残念。折角、執事服を用意したのに」
綺羅莉は想定内と言う顔をしていた。
「あのなぁ……まぁいい。これで次の休みは自由に……」
「ぁあ、そうだ。リリカ、あれを」
「あぁ」
リリカは何かの紙を翔に渡す。
「何々……請求書? ひぃ、ふぅ、みぃ……4000万!?」
それは請求書だった。
「何の請求……あのクソ親父ぃー!」
それは父親が作った借金であった。
「だけど、俺がこの学園に入って」
「えぇ、私がパトロンになったわよ。でもそれは別、お義父様が他の人達に借りてた物を私が立て替えたのよ」
「そっそれって……」
「えぇ、お義父様の仕事とは関係ないので個人的に支払ったものよ」
「残り1000万だな」
翔はその場に膝をついた。
「まぁ、別に私からしたら在っても無くても困らない金額だけど……残り1000万どうしようかしら? ……そうねぇ、まずは今度の休みに私とリリカに付き合って貰おうかしら」
「はぃ……ヨロコンデ」
その日の夜通し、翔は父の写真に釘を打ち付けていたとか。