私の名前は五十嵐 清華。百花王学園の生徒会で書記をしている者です。
私は会長を敬愛している。会長にお仕え出来る事が幸せです。そして今日はクリスマス、こんな日まで会長のお側に居れるなんて幸せなのですが……その反面とても機嫌が悪い、理由はただ1つ。
生徒会室で書類作業をしていた翔は清華に睨まれた。
「えっと……五十嵐さん、何か?」
「いぇ、別に……」
(めっちゃ睨まれてる……何かしたっけ?)
翔は清華に睨まれている理由が分からずにいた。
「翔、少し疲れたわ。紅茶をお願い」
「はいはい……」
「それと髪を結い直して貰えるかしら?」
「紅茶淹れてからな」
慣れた様子で紅茶を淹れ、綺羅莉の髪を結い直していく。
「手際良くなったわね」
「そりゃなぁ、小さい頃から何度やらされたか……」
「そうね……懐かしい。あの頃の翔は素直で可愛かったのに……最近は素直じゃないわね」
「お前に何度も死にそうな目に合わされてるからな」
(何故……何故、会長のお側にこんな奴が!)
清華は翔に嫉妬していた。自分が敬愛する綺羅莉の側におり、自身より頼られているからだ。
「それはそうと……今日は早く終わりそうだ。さっさと帰ろ」
「あらっ、駄目よ。貴方には家に来て貰うわ」
「断る……いだだだだ!」
翔が断った瞬間、頬をつねられた。
「来てくれるわね?」
「ふひやだ(嫌だ)」
それでも断る翔。綺羅莉はニッコリと笑うと更に力を込める。
「わはった! わはったから!」
「あらっ素直で嬉しいわ」
「脅しだろ……ぁ~いて」
(会長の家にお呼ばれだと!!)
「はぁ……俺の自由が」
そう言いながら立ち上がると部屋から出ようとする。
「どこ行くの?」
「トイレついでに売店」
「あらっそう、いってらっしゃい」
綺羅莉に見送られ翔は出ていった。
一通りの用事を済ませて翔は売店で買ったジュースを飲んでいた。
「はぁ……また俺の自由が……俺ってこのまま行けば本当に監禁されそう」
タメ息を吐きながら呟く翔。
「本当に不愉快ですね」
顔を上げるとそこには清華が立っていた。
「何か用?」
「サボりですか? 死ねばいいのに」
「酷い! 前から思ってたけど、俺への当たり酷くない!?」
「そんな事ありません」
「はぁ、そんなに嫌いなら関わらないで欲しいんだが……」
「えぇ、関わりたくありません……しかし1つだけ尋ねたい」
「?」
「貴方と会長は本当にただの幼馴染なんですか!?」
「そうだけど?」
「嘘だっ!!」
「ひぇ……」
雛○沢に居そうな少女の様な声を出す清華。
ー貴方が転入してきて約半年! 会長は毎日の様に笑顔です!
私には向けられない慈愛に満ちた笑顔を向けられている貴方が私は嫌いです!
何あの聖母の様な笑顔を私には向けて下さらない。なのに何故貴方の様な、ぱっとしない男に!
そもそも何なのですか貴方は! 突然現れて、会長の幼馴染!? つまり貴方はあんな会長やこんな会長を知っているってことですか?! なんて羨ましい! 代われ! その立ち位置代わりなさい! ー
「ぇえ……」
清華の言葉に呆気にとられる翔。
「貴方は会長の事をどう思ってるんですか!?」
「綺羅莉のこと? ……ん~どうと言われてもな」
綺羅莉との思い出を振り返ってみる。
「(死にそうな目にしかあってないな)アイツの事は一言じゃ言えないな」
「つまり会長とは言葉で言えない様な関係って事ですか!?」
「なんでそうなるの!?」
何やら誤解がある様だが、清華はヒートアップしている。それにつられて翔もヒートアップする。
「そもそも親が勝手に結婚を決めただけで……あっ」
ヒートアップした所為で綺羅莉との婚約の話は誰にも話してなかったのに余計な事を口にしてしまった。
「かっ会長と婚約……ですって!?」
「戦略的撤退!」
その場から逃げ出した翔、後ろから追いかけてくる清華。
「ハハハハハ! 綺羅莉の所為で身体は鍛えられたからな! おいつけ……追い付いてきたぁ!?」
直ぐ後ろに迫る清華。何故こんな事が出来るのか、人間が普段使える力は本来の3割程度で、残りの7割は力が出せない様にリミッターがかかっている。だが命の危機などの場面ではそのリミッターが外され、何時も以上の力を出せる事がある。
清華は今、綺羅莉と翔の婚約を知り、怒りでそのリミッターが外れたのだろう。つまりブチ切れたと言うことだ。
「うっそぉ~!?」
「まぁてぇぇぇ!」
この日、日が暮れるまで校舎内を追い回される翔と般若の様な女子生徒(顔が怖すぎて誰だか分からなかった)が目撃された。