シンボリルドルフに逆らえないトレーナー君の話   作:くまも

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【閑話】姉妹遊戯

 

『いいか、今から私が言うことを落ち着いてよく聞いて欲しい。ルドルフ、君は邪魔』

 

「えっ」

 

予想だにしなかった返答。

思わず驚愕を漏らした瞬間、ブツリと電話が切られてしまった。

 

分からない。

彼が、トレーナー君がたった今なにを伝えようとしていたのかが理解出来ない。

違う。私の脳みそが理解しようとしない。最後に彼からなにを言われたか。それを反芻することを強烈に拒んでいる。

 

それでも、なんとか正気を保って。

 

ビジートーンを繰り返すウマホの画面から、再びコールをかける。出ない。諦めずにもう一度。出ない。まだだ、今度こそは。出ない。次こそはきっと。それでも彼は応答しない。

私は私が思っている以上に重症だったらしい。ふわふわと、宙に浮くような感覚が身を包む。

どこか夢見心地にタップを繰り返す私の指は、内の激情から反して酷く柔らかく丁寧な力加減ではあったものの、その先端はみっともなく震え続けていた。

 

出ない。

 

トレーナー君は全く電話に出てくれない。着信拒否されているわけでもないから、意図的にこちらを無視しているのだろう。

正直なところ、それは重要なことではなかった。たぶん、今の私の目的は彼と話すことではなく、ひたすら呼び出しを続ける行為それ自体なのだろう。

そうしている間だけは、ひたすら思考を外界に縛り留めておくことが出来るから。すなわちこれは現実逃避の一環である。

 

とはいえ、それもいよいよ限界が来たらしい。

もう何度目かも分からない留守電の案内を聞いて、ようやく私はウマホから顔を上げた。満足したのではなく、とうとう現実に追いつかれてしまったから。

 

リビングの大開口窓を正面に捉える。

つい数分前まで東に大きく傾いていた筈の太陽が、気づけばもう真上ほんの手前まで昇っていた。

慌てて時刻を確かめようと手にしたウマホを確認してみるものの、しかし目の前にあるのは真っ暗な画面のみ。電源ボタンを押してみるも、数秒間だけ電池切れのマークが表示されるだけ。

そうか、私がコールに没頭している間に、いつの間にか充電が切れてしまっていたんだな。プッシュに夢中で気づかなかったよ。

ふふ、そうか。これじゃあトレーナー君も電話に出んわけだな。うん。

 

冷静に……冷静にだ。頭を冷やさなければ。

 

落ち着いて聞いて欲しいとトレーナー君だって言っていただろう。切り替えの巧みさは私の長所だった。まぁ、それを育ててくれたのも彼だったのだが。

そんな人から、私はこう言われたんだったな。

 

君は邪魔だと。

 

邪魔……私は、シンボリルドルフはトレーナー君にとって邪魔であると。そう解釈せざるを得ないような。

いや、解釈もなにも無いだろう。あんな短いメッセージのどこに考察の余地があるというのか。

それとも、実は全く別の意味を伝えるつもりで、たまたまタイミング悪く通信が切れてしまったなんて……いや、いい。そんなの慰めにもならないただの妄想だ。もしそうだとするなら、どうして彼はかけ直しに応答しない。

 

もういい加減、現実を見る時だ。

君は彼にとって邪魔なんだよ、シンボリルドルフ。

 

「なんで……」

 

ふと零れたそんな呟き。

自覚して思わず自嘲の笑みを浮かべる。

 

当たり前の話じゃないか。

既にかのミスターシービーとの契約が有力視されているトレーナー君。

そんな彼に執着し、ミスターシービーとは対立し、入学式の翌朝に大事件をかまして、挙げ句の果てに一方的にコンタクトを取ったかと思えば早口で一方的に捲し立てて。

これが逆の立場だったら、などと考えまでもない。明らかに、今の私は彼にとっての厄介者だろう。

 

だが、だがなトレーナー君。

悪いがこの件に関しては、これだけについてはこちらは絶対に退くつもりはないんだ。

 

恨んでくれても構わない。

君の隣に立つその日まで、私に諦めるなどという選択肢はない。

たとえ他ならぬ君自身に拒絶されようとも、私は負けるわけにはいかない。その為ならなんだってしてやるさ。

私は許さない。

私以外の誰かがそこに居ることは絶対に許さない。それが皆に望まれた結果だったというなら、私は私自身のエゴだけでそれを汚して引きずり落としてみせよう。

 

我が儘だと詰るだろうか。

はしたないウマ娘だと罵るだろうか。

 

どれだけ嘲笑ってくれても構わない。それでも私は、君の隣に居続けるから。

だってそこは私の場所だから。決まっていたことだろう。何年も前からずっと、その椅子にはシンボリルドルフの名前だけを刻みつけてきた。

だから決して譲らない。絶対に離さない。私は死んでもそれを渡さない。そこには私だけいればいい。

 

なら、やるべきことはなにも変わらない。

これが駄目なら次の手を、それも駄目なら次の次の手を打てばいいだけなのだから。

 

ああ、本当に簡単なことじゃないか。

ゴールが決まっているのなら、あとはそこに向かって全力で駆け抜ければいい。

いつも通りだ。いつも通り、私はこのレースを一着でゴールするだけだ。それは私がなにより得意としてきたことだから。

 

 

「ふふ……」

 

 

ようやく、すうっと心が落ち着いていく。

 

 

すまないな、トレーナー君。

その抗議は受け付けないよ。後悔噬臍、4年程言うのが遅すぎたな。

 

だいたい、君にも少しは責任があると思うが。

あの時の誓いはまぁ……思い出せないなら仕方がないとしてもだ。あの家を出て以降、一度でも連絡をくれていたらこうはならなかったんじゃないかな。

おおかた君にとって私は、よく遊びに来るウマ娘の一人という認識に過ぎなかったのだろうが。

甘すぎる。それなりの立場の者が雨の日も雪の日も何十キロも歩いて会いに来る意味を、一度でもよく考えるべきだった。

あの女についても、どうせ君が誑かしたんだろう。そのつもりはないと言っても、相手がそれで納得するかはまた別の話なのだから。

 

 

さて、取り敢えずやることは済んだ。

 

交渉こそ破談になったものの、最大の目的であったトレーナー君の電話番号は手に入ったわけだし。

さらに寮部屋を漁ってみてもいいが、これ以上有益な情報は得られまい。

 

一つ気にかかるのは、彼がたった今どこでなにをしているかということだ。

昨晩学園に戻っていないことは調べがついているが、しかし今日になっても学園に姿を見せていない。他のトレーナーと同様に休暇を取っているのだろうか……取り敢えずは報告を待つしかないな。

職員専用のコミュニティにアクセス出来れば捗るのだが。仕事用の端末を放置しておく程、彼女も間は抜けていないということだろう。残念だ。

そろそろ潮時と見極めて、退散しようとリビングの出口へと振り返る。

 

 

「あっ………」

 

 

「おや、人の顔みて随分な反応だね。ルナ」

 

……そこには、緩やかに腕を組んで扉にもたれている一人のウマ娘。

どうしてここに、ととっさに出かけた言葉を飲み込む。どうしてもなにも、元々ここは彼女の部屋なのだから当然だろう。不馴れ故か、自身が侵入者であるという事実をうっかり失念しかけてしまう。

 

「どうしてここに……というのは聞かないでおこうか。だいたい察しもついてるし。それより知りたいのはどうやっての方かな」

 

「普通に、ここの職員カードを使って玄関から入ってきただけですよ」

 

「だから、それをどうやって入手したのかを聞いているのだけれど」

 

制服の懐に突っ込んでいたカードを見せつけてみるも、やはりそれで誤魔化されてくれる姉ではなかった。

コンコンと扉の脇にあるモニターを示してくる。ああ、そうか。あれで解錠の履歴を確認出来るのだったな。

 

「管財課で一時的な貸与を受けました」

 

私がシンボリフレンドが同性同士であり、かつ実の姉妹ということも上手く作用したのだろう。

レース界隈で長きに渡り名の知れた家系であるぶん、信用もそれなりにあるらしい。まぁ、たった今それを私が貶めている真っ最中なのだが。

罪悪感はあるが、しかしこの件で手段を選ぶつもりは毛頭ない。行儀のよさで戦争に勝てれば誰も苦労しないのだから。

 

「管財課……本当にあそこは、いつもいつも脇が甘い。連絡ぐらい寄越して当然だろうに、それすら手間なのかアイツらは」

 

「昨日今日と忙しかったからではないでしょうか」

 

「誰のせいだと……ッ!!」

 

一瞬、凄まじい表情でこちらを睨み付ける姉。

 

無理もない。

ミスターシービーのトレーナーであり、尚且つ私の実姉といういわば明け方の事件の両当事者と最も近い立場にある彼女は、今の今まで責任者として管財課と学園上層部に拘束されていたのだから。

とはいえ、元はといえば貴女が原因だとも思いますけどね。私は。

 

「……まあいい。それにしても、入学早々やらかした問題児によくもまぁそんな"柔軟な対応"をしてくれたもんだね」

 

「あぁ、申請したのは昨日のことだったので。HRが終わった直後のことです」

 

新年度初日はどこも忙しいから、きっと簡単にこちらの言い分が通ると考えての事だった。

期待通りにカードを貰えてからは、ここに立ち入る機会を虎視眈々と狙っていたのだが、まさかこんなに早く訪れるとは。

 

「迅速果断だね。だけどその結果についてはちゃんと考えたのかい。この件を上に報告すれば、いよいよルナの退学は免れないだろう。連日で騒ぎを起こす総代なんて前代未聞だ」

 

「その時は一緒にこの学園を後にしましょうか。ああ、二度も顔に泥を塗られた管財課への挨拶も忘れずに」

 

「ねぇルナ、私を困らせてそんなに楽しいかな?」

 

「楽しくはありませんが、いい気味だとは思っていますよ」

 

私がトレーナー君に向ける想い、そして私と彼のデビューが奇跡的に一致することも全て知った上であの移籍を進めたな。

ミスターシービーの実力も、その立場もよく理解している。どう考えても推薦移籍の対象となるウマ娘だとは思えなかった。それは誰の目から見ても明らかだったろう。

 

私とトレーナー君が契約を交わすにおいて、最大の障害となるのはお互い中央に入れるかどうかだった。

そこを乗り越えた以上、本来であればこうしていらぬ手間を踏む必要もなければ、無意味な騒ぎを起こす意味も無かったのだ。誰かが余計なことをしていなければ。

 

「勘違いしているようだけど、私はなにもルナの敵というわけじゃないさ。今回の件に関しては中立。どちらにも肩入れするつもりはない」

 

不機嫌な表情を引っ込めて、代わりにいつものへたへたとした不気味な笑顔を貼り付けながら、姉は余裕たっぷりに両腕を広げる。

 

「感謝して欲しいな、むしろ。本来であれば、私は全面的にシービーの肩を持つのが筋なんだよ?それを姉妹の情けで五分にしてあげてるんだからさ」

 

「……ならどうして、あんなわけの分からない移籍を認めたんだ!!」

 

「決まってるだろう。あの子のためさ」

 

あの子……というのは、トレーナー君のことだろう。

姉は昔から彼のことをそう呼んでいた。実際にはそこまで歳も離れてないというのに。

 

「あの子には最初から推薦をあげるつもりだった。そもそも、その為にスカウトしたのがシービーだったんだ。それがここまで大成したことこそが想定外だったんだよ。もっともそれは、私の未熟な審美眼故だけども」

 

「どうしてそんなことを。姉さん……」

 

「その方が合理的だからに決まっているだろう?どうせ組ませるつもりなら、最初から互いの特性と噛み合うように育てた方が将来の実績が望めるからね。ああ、そういう意味ではシービーのためとも言えるか」

 

「違う。そういう意味ではない。あまりにも手厚すぎるだろうと言っているんだ。貴女はそんな、面倒見のいいウマ娘じゃないだろう……それが、どうして彼にだけ」

 

特別移籍の趣旨についても私は知っている。

姉の行ってきたことは、確かにそれに沿うものではあるだろう。

 

だが、余りにも手が込みすぎているのだ。

元々チーフトレーナーに旨味がなく、推奨でしかない制度。ましてや、移籍した後のことまで考えて教育するなど度が過ぎている。

だいたいトレーナー君がそうして実績を積み上げたところで、彼女にとって手強い商売敵が一人増えるだけなのに。

それを弁えた上で、なお善意で塩を送る程シンボリフレンドは甘いウマ娘ではない。姉をこう評するのは気が引けるが、彼女は極めて偏屈なのだ。とりわけ人と深い付き合いになることを拒む性質の筈だ。

 

いきり立つ私を平然とした顔で見返しながら、彼女はゆっくりと、嘲笑するように唇を引き上げる。

 

「君と同じ……と私が言ったら?」

 

「それはどういう意味だ。またのらりくらりと誤魔化すつもりか」

 

「そのまんまの意味さ。少し話をずらすけど、そもそもルナがシービーに張り合える部分はなんだい?お遊びじゃない、真面目に仕事の一環としてあの子はこの一年間、彼女と向かい合ってきたんだよ。それと比べて君にはなにがある」

 

「それは……でも、私は昔からずっとトレーナー君と一緒に」

 

「それは私も一緒なんだけどね。私とルナが最初にあの子と出会った日の違いなんてほんの数日だろう。それとも異性としての交わりの深さだと言いたいのかな?それなら……私の方がルナよりずっと先を行ってると思うけど」

 

「え……」

 

「なにを驚いた顔をしているのかな。私とあの子は大人同士なんだから不思議でもなんでもないだろうに。そしてそうして積み上げた情愛が、先の質問の答えだとしたらどうする?」

 

嬲るような、勝ち誇るような囁き。

その流星が走る前髪の下で、私と同じ色をした瞳が蝋燭のように揺らめいている。

 

その言葉の意味が分からない程、私はもう子供ではない。だけど、その裏に潜む真意については全く読み取ることが出来なかった。

どうにもならず押し黙ってしまった私を、姉はさも可笑しそうに笑い飛ばす。

 

「ふっ……はは、あっはははははっ……あー……普段クソ生意気なルナもそんな顔するんだ。大丈夫大丈夫、ちょっとからかってみただけだから」

 

「もし冗談だとするなら余りにも品が無さすぎます。言葉を返させて頂きますが、私を困らせてそんなに楽しいですか」

 

「楽しいよ。なにせ私は君のことがこの世で一番大嫌いだからね。本当なら顔だって見たくもない。あの夏もそう。贅沢な悩みでうじうじしてるガキを何度ぶん殴ってやろうと思ったことか。一瞬、私への当てつけかとすら思った」

 

「逆恨みですか。ここまでいくといっそ清々しい」

 

「カインコンプレックス。君には一生理解出来ないだろう。アスカもまぁ、ルナを越えるのは流石に厳しいかな……うん、だからあの子のことはちゃんと好きだよ」

 

かつて競技ウマ娘として戦った学園に、今度はトレーナーとして挑んでからはや数年。

同期の星として随分名を上げた彼女だが、その捻れた性格は完全には矯正されていないらしい。カストルの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい程だ。

だいたいこういう性根の癖して、私やアスカがねだれば遊んでくれるのも中途半端というか振り切れてないというか。シリウスぐらいに偏ってくれていれば扱いやすいものを。

 

「うん、だからね。そんな私があえて手を引いていてあげるというんだから、精々頑張ることだね。ここで逃したら、ルナがあの子を捕まえるチャンスはこの先ほぼ無いだろうから」

 

「分かっていますよ。だからこうして形振り構わずやっているんでしょう」

 

「言っておくけど、ルナが負けても私は君を拾わないから。悪いけど別のトレーナーの所に行ってね」

 

「言われなくとも。そもそも悪いとも思ってないでしょうに。それにしても、トレーナー君とは酷い扱いの差ですね」

 

「師弟の繋がりは血の繋がりよりも濃いからね。まぁ、どうせルナなら私と違って引く手あまただろうから、行くところには困らないだろう」

 

そういうところも嫌いなんだけどね、と彼女は皮肉げに独りごちる。

 

「あの子を捕まえようが他の連中の所に行こうが、将来君に初めて土をつけるのはこの私だ。ああ、実家の連中がどんな顔を見せるか今から楽しみで仕方ない」

 

「面白いことを言いますね。私は誰にも負けませんよ。絶対にね」

 

「レースに絶対なんてありはしないさ。ルナがつい昨日まで、"絶対に"あの子の担当になれると盲信していたみたいにね。現実は非情だろう?」

 

言いたいことを言ってすっきりしたのか、姉は私の横を抜けてリビングのソファに向かう。

スーツも脱がず、ネクタイだけを緩めると深々と背中を沈めて気だるげに足を組んだ。

 

「お仕事は?」

 

「休み。あんまり有給を溜め込みすぎると理事長にどやされるからね。こういう時にせっせと消化しておかないと」

 

「となると、トレーナー君も休みでしょうか」

 

「知らない。知ってても教えるわけないだろ。個人情報なんだからさ。どうしても気になるんならたづなさんにでも聞いてみたらいい」

 

「とっくに尋ねてはみたんですけれどね」

 

なんだかんだと上手いことはぐらかされてしまった。

そもそも彼女は今日も仕事だ。曰く彼女自身が昨晩潰してしまった人員も兼ねているらしく、一年で最も忙しい一日らしい。なので、あまり粘るようなこともしなかった。

 

折角ここまで来たのだから、もう少し姉と話をしていこう。

ひょっとしたら、なにか手がかりぐらいは掴めるかもしれないからな。

 

対面のソファに腰かけた私を、彼女は特に拒む様子もなく受け入れる。

一人部屋に二つは過剰な気もするが、おおかた応接間としての役割を担っているのだろう。それに、この部屋のソファはどちらもだいぶ使い込まれているらしい。

顔を上げて、リビングに漂う残り香に精神を傾ける。……ほんのりと、トレーナー君の匂いがした。それに少しだけ心が落ち着く。

 

「あの子なら、前は毎晩のようにここに来ていたからね。サブトレーナーなんてのはとにかく知識と経験を積み込む時期だから」

 

私が考えていることを察したのか、そんないらない解説をくれる。

さらには肘の下からぬいぐるみを取り出して見せつけてきた。見栄えのしっかりしたそれは、自身を抱えるウマ娘と全く同じ外見をしている。

 

「ぱかプチ……?いや、姉さんは実装されていない筈……」

 

「そう。これはあの子が私のために作ってくれたの。気が向いたからって。すごいよね」

 

「………」

 

胸がムカムカしてきた。

姉の自慢気な態度が癪に障ったからだ。これは嫉妬じゃない。

 

そっと、私は右耳に提げたイヤーアクセサリーに触れる。

少しだけ揺らして見せた瞬間、彼女は不機嫌そうにこちらを睨むとややあっておもむろに口を開いた。

 

「折角だから話してあげようか。ルナのいなかったあの一年間。私とあの子の蜜月について懇切丁寧にね…」

 

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