なぜお前はいつもそうなのだバーヴァンシー 作:信号機の赤い方
「なぜお前はいつもそうなのだ、バーヴァンシー」
鼻に残る焦げ臭い匂いが充満し、どんよりとした湿気の含んだ空気が漂う商店街。野次馬達が列をなし、携帯のカメラを向ける先には見るも無惨な光景が広がる。建物が融解し、火災の痕跡が色濃く残るそこはヴィランと呼ばれる犯罪者が暴れ回った犯罪現場。そこで活動するはレスキューにと駆け付けた消防隊とヒーローと呼ばれる人達。その両者が協力し、懸命な救助活動を続ける。そんな中、俺はポツンと救助活動の邪魔にならない場所で駆け付けて来た母親からお叱りを食らっていた。
「で、でもお母様───」
「言い訳無用。お前の行動は少しばかり目に余る。何故そのようなことしか出来ないのだお前は」
銀色の長髪を靡かせ、その特徴的な青い目で背筋を凍らすような冷たい目線を俺へと送る女性が俺の母親。名をモルガン・ル・フェ。
元はイギリス人らしく、外国人特有の綺麗な容姿や俺も嫉妬したくなるほどナイスボディーで見る者全てを魅了する自慢の母親だ。まぁ、正直気後れするぐらいには綺麗。
あえて欠点を上げるとしたら他者へと求める理想が高い事……かな?
「大体バーヴァンシー、お前は無個性の人間だ。そんなお前がそのような事をしてどうする」
「───ぅ……」
そんでもってそんな完璧ッ! 抱いてくださいそこのあなたぁーな、母に正座を自主的にしてながら叱られている赤髪の女の子が俺ことバーヴァンシー。苗字は無い、ただのバーヴァンシー……元男の転生者だ。
前世の記憶は定かでは無いけれど何か、何か大きな事をしている途中に死んだ人間だと思う。ま、前世なんで今となってはどうでもいいけれど。
「それにやるならやるでもっと他にやり方があった筈だ。今回のようなお前自身の身を危険に晒してまでやることでは無い」
話を戻して今世の俺はとことん2度目の生を楽しんだ。気分はそう、枷から解放された獣の如く自由に、そして気楽に楽しんでいた。けれどそんな風に生活していても年齢を重ねれば否応なく判る事も出てくる。
俺の場合はそう、母親から向けられる期待だ。
直接言葉では言われた事はないけれど俺の母はきっと、俺に何か悪い事をして悪役に、ヴィランになる事を期待してるんだと……思う。 何故かはわからないけどこう、ビビビッと直感的にそれを俺は感じ取った。だからこそ今世では大好きな母親からの期待に応えるべく、自分なりにワルになるよう奮闘した。まず、他者に向かっての悪口や小馬鹿にした態度だろ……一応後に引かない奴。ゴミはゴミ箱へのポイ捨て当たり前……その地域の人達のご迷惑になるからマジのポイ捨てはダメ。
学校の風紀は守らずド派手な装飾……母が苦労して産んでくれたからピアスとか体に傷をつける物は付けてない、だって痛いから。あと改造制服と色々していた。……一応言っておくと知り合いの先輩が捨てるからあげるともらった制服を改造してるから母に買ってもらった物は無事だ。
そんなワルになる為の毎日を過ごしている俺だけども……今回は何故かヴィランの起こした事件に巻き込まれてしまった。おっかしいな、昔下校途中に小火騒ぎを起こそうかな〜ってな感じで計画はしたけど、周りの迷惑を考えて実行には移さなかったはずなんだけどなぁ……あれか、今年って厄年だっけ?
「で、でもこうでもしないとお母様の期待に応えられない「馬鹿者ッ!」───ピギャ」
「────なぜお前はいつもそうなのだバーヴァンシー」
あぁ、母が失望してる。ヤバイ、不味い、極めて不利! このセリフが出るって事は俺への期待が無くなりつつある事を意味しているからな。
その証拠に母親は先程からきっとこう言ってる。
「お前の行動は(私の期待外れな行動ばかりで)少しばかり目に余る。何故そのような(甘い)ことしか出来ないのだお前は」
「大体バーヴァンシー、お前は無個性(つまり役立たず)の人間だ。そんな(屑のような存在の)お前が(そのように自身の身の丈に合わない)そのような事をしてどうする」
「それにやるならなるでもっと他に(極めて悪い)やり方があった筈だ。(そんな役立たずなお前は)今回のような(私の期待外れな行動に加えて)お前自身の身を危険に晒してまでやることでは無い(大人しく身の丈に合った事をしていれば良いのだ)」
ってな感じでな。ヤバイ、不味い、極めて不利! このままだと俺ってば失望されて捨てられちまう。そんなのはゴメンだ。せっかく暖かい家庭の一部と────お母様と本当の家族になれたんだから。
だからそんなのは────ヤダ!
ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ……ワタシヲステナイデ
「泣くなバーヴァンシー、私はお前をそのような弱い人間に育てた覚えはないぞ」
ふわっとした柔な感触と暖かい温もりが俺を包む。クンクンッハ! これは母の匂い。ってか、アレ? 俺ってばいつの間に涙なんて流してたんだ? てか、記憶飛んでだけどなにそれウケる。ワロスワロス。
「お母ぁ、さま?」
「泣くなバーヴァンシー」
いつの間にか流していた涙を拭い、声の方向へ目を開けるとそこには困り顔の母の姿が。この状況、整理するに泣いている俺を慰める為に抱きついているのだと思われ────ってダメじゃん!
や、やべぇ。母を困らせるなんて娘失格だ。後で戒めのためにリスカしなきゃ。
「お前はよく頑張っている。今回だってどんな過程があったであれ、お前の成したかった事を果たしている。誰に何を言われようがそれは私にとって大変誇らしい事だ」
「ホヘェ?」
お、これは急降下気味だった俺の株がジリジリと上昇気味って事か? よし、俺自身よ、今回はこの辺にしといてやる、喜べ、リストカットは次回は延期だ。
「ッグスン」
「だから、そのように泣くでないバーヴァンシー。綺麗な顔が台無しだ」
「ッグスン、お母様の方が綺麗だから問題ないッグスン」
「……なぜいつもそうなのだバーヴァンシー。私をヨイショするのは止めろと散々言っているだろう」
いや、これは変えようの無い事実なので譲れません。例え母の自身の言いつけだろうと俺より綺麗で可愛いという現実は変えようが無いのだー!
「それはともかく、お前のやった事はまるでヒーローのような誇らしい事なのだ。だからそのように泣く事は────」
俺は母の言葉が理解できなかった。ヒーロー? ヒーローとはなんぞや?
ヒーロー
ヒーロー……
ヒーロー=正義
正義=良い人
良い人=ワルと対極の人間
つまり俺ってば期待外れって事じゃん。うわぁ────ん
「ど、どうしたのだバーヴァンシーッ!?」
泣き続ける俺にあたふたとする母。そんな俺達であるけれど元気に暮らしています。
でも、ワルへの道は遠そうだなぁ……