なぜお前はいつもそうなのだバーヴァンシー   作:信号機の赤い方

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なぜお前はいつもそうなのだパーヴァンシーの裏側【1】

 私は──―……別世界で目が覚めた。

 

「こ、ここは……一体どこだ」

 

 私の名はモルガン・ル・フェ。ブリテン島にて玉座を構え統治していた女王……だった者だ。まぁ、最後は家臣に裏切られ、玩具のように捨てられてしまう末路を辿った辺り、愚かな女王と私自身の事ではあるがそう自負している。そんな私が死に、次に目が目覚めるとそこはあの長い人の中でも見たこともない場所であった。

 ここは私が長らく統治していた妖精卿でも、汎人類史の私である存在に教えられた世界でもまるで違う何とも奇妙な誰しも個性と呼ばれる超常の力を持つ世界だった。最後の記憶は私の体が反逆に狂った妖精達にズタズタにされていく感覚と、あの呪い眠る大穴に投げ入れられるバーヴァンシーの姿のみ。そんな私がどうしてこの世界にいるのか、何故死んだはずの私がまだ生きているのか……様々な疑問は尽きない。けれどそんな事、どうでも良いのかもしれない。

 

「ねぇねぇおかあさま、きゅうにたちどまってどうちたの?」

 

「ッ!?」

 

 この世界の私には戸籍があった。まるでこの世界に最初から刻み込まれている存在の如く違和感なく別世界の人間である私が存在し、そして家庭を持っていた。旦那は存在せず、養子である娘のみ。そしてその養子と言うのが────バーヴァンシーの事であった。

 

「んーっと、んーっと。おかあさま、おーるまいとぉのようにわっははははごっごあきちゃったの?」

 

 穢れを知らぬバーヴァンシー、純粋無垢なバーヴァンシー、妖精ではなく人間として生まれたバーヴァンシー。妖精としては既に生きる事を許されず、人間に落ちて直その純粋な善の心を感じさせるその笑顔は私には眩しい。

 

「いいや、そんな事はないぞ。そんな事は……な」

 

「?」

 

 妖精卿での教育は間違っていたのかもしれない。けれど彼女が生き続けるにはそうするしかなかった。だけども、この腕に収まるこの子はそんな柵にさえ解放された人間のバーヴァンシー。それが私は嬉しい。

 

「おかあさまないてる……どうした? かなちいの?」

 

 私の妖精眼に嘘はなく、その笑顔に秘められた彼女の心を映し出す。

 

「────いいや、ただ嬉しいのだバーヴァンシー」

 

 あぁ、この子の本質は人間として生まれてさえこんなにも美しく、そして尊いのか。

 

「! おかあさまうれしいとわたしもうれちい!」

 

「あぁ、とても喜ばしい事だ」

 

 今思えばその時に私の心が決まったのだと思う。この子がやっと手に入れた幸福、守らねば。この子がやっと心から笑顔を浮かべる事の出来るこの人生を守らなければ……と。

 この世界において最低限の魔術しか使えず、神秘に関しては皆無の私であるがこの異常な世界で私は出来る限り努力奮闘してバーヴァンシーを守って来た。教育に関して邪になるものを徹底的に排除し、妖精卿にて私が施した教育とは真逆の性格を目指して頑張ってきたが────これは失敗だったか。

 

「ねぇねぇお母さま! あのヒーローデカくないッ! いいなぁ~私もあんな風になりたぁーい」

 

 彼女はヒーローと言う危険極まりない職業へ憧れを持ってしまった。ま、不味いぞ。バーヴァンシーの意志は出来る限り尊重してやりたいが流石にコレは駄目だ。無個性であるバーヴァンシーにヒーローなど勤まるはハズが無い! そう、言いたかった。だが、気付いた時にはもう遅く。

 

「見て見てお母さま! 知り合いの麻婆豆腐大好きなちょー胡散臭い神父様に教わったマジカル☆八極拳!」

 

「」

 

 私の知らぬ間にマジカル八極拳なる強固に張った魔術的防御さえ突破してくる、理解できない武術を習得していたり────

 

「聞いて聞いてお母さま! 友達のヴァンパイアハンターなちょーこぶしの効いた話し方をする神父様によると暴力をふるって良い相手はヴィランと異教徒だけなんだって~」

 

「」

 

 おかしな理論を称するおかしな神父に異常存在との戦い方を習っていたりと──―手の施しようがない状態だった。既に遅れで彼女が彼女らしくない存在へと変わったかと危惧していたが……意外と今回のバーヴァンシーは強かだった。そんなおかしな思想にさら晒されながらもヒーローへの正しい憧れは変わっておらず、夢へと突き進んでいた。だが、現実はそんなにも甘くはない。どんなに技術を鍛えようが無個性は無個性。強力な個性持ちに敵うはずが無い。彼女は人間、不変の存在である妖精だった頃とは違い心一つでそのあり方を変える事が出来る生き物。だから私は反対する。彼女がヒーローへと至る道を。なにも自分からそのような辛い道を目指さなくてもいいのだから。

 そんな甲斐あってか中学生になる頃には妖精卿で過ごしていた頃のバーヴァンシーとなり、ヒーローとは無縁の性格となっていた。

 これで危険は訪れない、これで彼女が不幸への道を辿る事はない。そう思っていたのに……パーヴァンシーは私が考えていたよりも愚かで、そして優しい子であった。

 

「無事ですか、バーヴァンシー!」

 

 近所の商店街で起こったヴィラン騒ぎ。いつもの事かと思い関係ない話と聞き流していたが、この世界にて知り合ったヒーローから私の娘が巻き込まれていたと連絡を得てすぐさまにその場へと駆け付けた。

 聞いた話によると学友の男の子が飛び出したのを皮切りにあの子も取り込まれつつあった別の学友を助ける為、暴れるヴィランへと走っていったと言う。なんと愚かな。勇気と蛮勇は違うモノ。

 今回は運良く知り合いのヒーローが全てを丸く納めてくれたおかげで助かったが、次こんな事に巻き込まれたら命の保証は、ない。

 最近の様子からそんな事をしでかすとは考えもしなかった。

 これは認識を改める他あるまい。彼女のあり方は人間の体になってさえも変わらず、唯々善人であると。

 その証拠にその駆け付けた現場で。火傷傷を多数負って体をボロボロし、私が駆けつけてなお2人の学友のことを最後まで心配していた彼女を見ていれば判ることだ。

 

「お母様! 私、雄英に行きたい!」

 

 どんな酷い目にあっても、どんなに私がその夢を押さえつけても彼女は変わらず。善人のまま。世界や人種、例え生まれ変わってもそれは変わらなかった事実。過去の私はそれに対して憎悪を抱き、憎しみさえ抱いていた────

 

「なぜお前はいつもそうなのだ、バーヴァンシー」

 

 ────だが、今ではそんな彼女また愛おしく感じる。これが世に言う親バカというモノだろうか? そう思いながらも私は今日のお説教と言う毎日のちょっとした楽しみを始めるのだった。




キャラ解説

・パーヴァンシー

異世界からの魂が何故かは入った女の子。
お母様大好きでお母様の期待に応えるべくワルになる為、日々自分なりに努力している。気分が沈むと記憶が飛ぶらしい。
最近のマイブームはケルヌンノス人形を抱きしめて寝る事。

・モルガン・ル・フェ

異聞帯、妖精円卓領域キャメロットにて死した孤独の女王。
気付いた時には別世界に人間として転生していてその謎を探っている。
現在では銀行員をしているが元はかなりの実力を有したプロヒーローだった。その為、ヒーロー業界ではかなり顔が広い。
最近のマイブームはパーヴァンシーから送られた自撮り写真を寝る前に見ること。でも稀に黒い手が写真の隅に写っていることがある為、その確認も兼ねている。
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