なぜお前はいつもそうなのだバーヴァンシー 作:信号機の赤い方
一応モチベ沸いてるので続きも書くかも?
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「キャハハ☆ ざぁ〜こ☆ざぁ〜こ☆ 勇気があっても何も出来ない役ただずぅ〜……だから退きなさいデクの棒、足手纏いは邪魔よッ!」
僕がかっちゃんを助けに走ってなんとか体に絡みつく泥をかき分けていた時、そんな場違いな人を小馬鹿にしたような声が聞こえた。その直後だろう、物凄い衝撃が突然発生してかっちゃんに絡み付いていた泥を吹き飛ばす。
「ッハ! 何コレぐらいで気を失ってるのよ。いつもはストーカーみたいにしつこい癖に……コレじゃ張り合いないじゃない」
血のように真っ赤な髪にモデルのような華奢な体。僕の通っている学校の有名人の1人、バーヴァンシーさんがかっちゃんをまるでお姫様抱っこのように抱え、まるで絵本の中の王子様のようにそこに居た。
彼女は何かとかっちゃんと同じように有名だ。棘のある言動に加え人を寄せ付けない態度を取る様はまさに不良のようだけど、彼女の評価は何故か高い。コレは僕の学校に通っている生徒ならば誰でも知っている事だが、彼女は何かと文句を言いながらもどんな人に対しても同じ態度であり慈悲深く、困っている生徒を見つけると放ってはおけないお人好しな人だから。だけども一度でも理不尽に晒されば正面からそれを撃ち破る度胸を持ち合わせる。そんな彼女に実は今日、僕も救われた。かっちゃんの捨てた僕の大事なノート。それをなんだかんだと文句を言いながらも一緒に探してくれたから。
見つかった時には一緒に喜び、それが鯉の生簀に落ちている事を知ったら一緒に悲しんでくれた良い人。だけど、そんな良い人であってもこの場合に居合わせてこのように駆け付けて来るんだろうか……そう思うけれど事実、彼女は来た。
「くっくくく、ちょっと効いたぜお嬢ちゃん。だけどな、俺の体は流体的、そんな攻撃効かないんだよ!」
「ッヘ、流体的? そんなので調子着くなんて馬鹿みたいね。効かないのなら効果があるまで打撃を表面に与え続ければいい事よ! あとそこのデクの棒。コイツ、持ってなさい」
「うわぁ!?」
かっちゃんを雑に投げ渡された途端、空気が一変しピリピリと肌を刺すような感覚と共に戦闘は瞬間的に始まった。
泥状の体を巧みに扱い、鞭の如く伸ばした自身の腕を振るうヴィラン。そして、それに対し彼女の繰り出すは素人の僕から見てもわかるほど洗練された格闘術。鞭を正面から受け止めかと思いきや、受け流しいつの間にかヴィランの懐に入るとその小さな拳を叩き込んでいた。
そしてそれは信じられない事に先程経験したのと同じ、耳を塞ぎたくなるような轟音と共に彼女よりも何倍も大きなヴィランを吹き飛ばす。
「ッグハ!」
「キャハハ☆ 最高ね、まだまだいけるわ!!」
それから始まるはヴィランの反撃の余地を許さないほどの怒涛のラッシュ。その一撃一撃は信じられないほどの衝撃と打撃音を生み出し次々と復活していく泥の体を素早く、そして正確に効率よく削ぎ落としていっている。その姿はまさに強個性を扱い戦うヒーローよう。だけども僕の記憶が間違えてなければ彼女は僕と同じ無個性。本来なら僕と同じでヴィランと怯える立場にある人間のはずだ。だけども、今僕の目に映る彼女の姿はどうだ。怯える? 間違っても彼女にそのような感情はない。今目に映る彼女は心底楽しそうに僕達を襲おうとするヴィランを相手に、戦っている。その姿はまさにオールマイトが僕へと言放っていた言葉の対を成すよう。無個性でもヒーローになる事の出来る証明。そしてそんな彼女の後ろ姿に、僕は僕自身のヒーローになりたいと言う諦めかけていた夢を見た。
「────ッコノ! 鬱陶しいッ!」
ヴィランは大きくバックステップして距離を取り火災によって倒壊していた建物の一部だろうか、真っ赤で巨大な鉄骨を持ち上げる。
「死ね、女ぁあああああッ!」
「アッハハハ、そんなモノで私を止められは────ッ!」
そしてそれは投げられた。彼女ではなく、僕たちは向かって。
その瞬間、まるでスローモーションの如く僕の視界に映る光景はゆっくりと遅くなっていった。投擲された鉄骨は真っ直ぐに僕たちの元へと向かって来ている。そしてさっきまで優勢だった彼女は学校では見たこともない、焦った表情で必死にこちらへと走って来ている。
そんな状況の中僕は無力感を感じていた。僕も彼女と同じ無個性、そして彼女よりも先にかっちゃんを助けに来ていたはずなのに……結果は足を引っ張りこの状態。助けに駆け付けた事を後悔はしてないけれど僕にもっと彼女のような力があれば良かったのにと思わずにはいられない。せっかく僕にも夢を追いかけることの出来る希望を抱けたのに……このまま死ぬだなんてーーーー嫌だ。
「ああ…あああ……あああああああああッ!」
誰かの悲鳴が聞こえる。そして次の瞬間、不思議な事が起こった。
「ーーーーフェッチーー」
僕の目からはゆっくりと駆け付けていた彼女の姿が一瞬消え、迫り来る鉄骨の真横に追いつくと右手を握りしめーーーー拳を振るった。
「ーーーーフェイル・ノートッ!」
拳が鉄骨に触れた瞬間、鉄の軋むような耳感触な轟音と共に鉄骨は折れ曲がり、僕達とは別の場所。両端に広がる燃え盛る建物へと勢いよく殴り飛ばされた。
「……最悪。お気に入りのネイル、かけちゃったじゃない。どうしてくれるのよこのデクの棒」
「あ、あぁ。き、君、腕と脚がーーーー」
こちらに振り返り、僕をジト目で見つめるその表情はいつも通り。だけども、彼女の鉄骨を殴り飛ばした方の腕は曲がってはならない方向へと曲がりながら何処からか血を流し、その独特な改造された制服を真っ赤に染め、ネイルが欠けた云々どころではない状態とわかる。足に関してもそう。履いていたあろうストッキングは破れ、一眼でわかるほど青く腫れ上がり一部は赤黒く変色した部分もあってどう見てもまともな状態でない。けれどそんな状態であっても彼女は変わらず、何処か面倒くさそうに思わず目を引かれる笑みを浮かべた。
「バッカじゃないの? 私がこんな程度で倒れる訳ないじゃん。君みたいなデクの棒とは違ってな。 だからさ……役立たずはさっさと消えろよ。お前達が私以外から怪我させられるのを見るのはかなり気分が悪いんだからさ」
彼女は僕へそう言い放つと振り返り、大怪我を負っている事を感じさせない軽快な歩みで歩きながら不気味な笑みを浮かべて近付いて来るヴィランへと向けた。
「よくもやってくれわねのヘドロ。でも、まだまだ私は遊び足りないわ!」
そう言っていつものように優雅に歩いてゆく。
あんな凄いことが出来たとしても初戦は僕と一緒で無個性。勝てるはずも無い……だけど、彼女は笑っていた。
いつものように楽しげに、気分よく、そして残虐的な笑う姿。けれど、燃え盛る商店街の炎が照らし出していたのはそう言う笑みでは無く、初めて見る誰かを心配させない為に浮かべた笑みだった。
「俺には打撃系は聞かないと言っただろぉ、おじょぉぉぉちゃぁぁぁぁん!!!」
「キハハ⭐︎ なら聞くまで殴り続ければ問題ないな、もう一発だ!」
絶望的な状況のはずだ。けれど彼女は守る者の為立ち上がり、どんな理不尽、どんな逆境にも逆らう姿はまさに僕の夢に見た姿であるーーーー
「ーーーーヒーロー」
それからの戦いは集まったヒーロー達の介入を許さないほどの激化の一途を辿って行った。一見優勢のように見える、しかし怪我を感じさせないような見事な武術を続ける彼女だがあのヴィラン相手には厳しく、戦いは劣勢だった。長引けば長引くほど彼女に不利と思った僕は彼女に助言しようとするがーーーーそれは叶わない事となる。
「フェッチーーーー」
「君も僕の中に入りなぁあああ!!!」
二人の拳と泥の塊が触れる。そう思った瞬間、突如として全てをかき消す突風が吹き荒れた。
「ファーハッハー!」
高らかな笑い。
「もう大丈夫」
僕よりもうんっと高い身長に大きな肩幅、そして画風を間違えるほどの筋肉を備えたその人。
「何故かって?」
正義の炎と言わんばかりの青い瞳を輝かせながら、笑いながら彼はこう言い放ち、この場に現れたのだから。
「私が来たッ!」
ナンバーワンヒーローであるオールマイト、彼が現れたのだから。
それからは僕もよく覚えていない。いつのまにか事件が解決し、いつの間にか病院へ行ったかと思うと警察での軽い事情聴取。その後はあのオールマイトから後継者としてスカウトされたりなどなど……本当にこの1年間は濃い物だった。だけど、僕にとっての特別だった1年間は彼女にとってはいつもの事のよう。中学を卒業しても彼女は彼女らしく生きるのだと言う想像が容易につくからね。でも、これだけは言える。
僕の持つヒーローへの理想像、その具体的な例は多分バーヴァンシーさん、彼女のような人の事を言うんじゃないかな? そう心に問うけど誰も答えてはくれない。まぁ、当たり前のことなんだけどね。
だからさぁーーー
※※※
「なんでデクの棒がここにいるのよ! あとついでにうに頭」
「誰がうに頭だこのソ連女ぁぁぁぁぁ!!!」
「キャハハ⭐︎ ネーミングセンスクソ雑魚のチリチリ頭ぁ、そんなに嫌ならシベリアの大地に木を植える仕事から人生やり直したら?」
「乗ってくんじゃねぇぇぇぇ!」
「ーーーーまさか彼女も僕と同じ雄英志望なんて聞いてないよ」
神様のいたずらか、はたまた僕の運命なのか……ヒーローに全く興味のなかった彼女はヒーローになりたいようです。
(ほんとにあの子で良いのかい?)
(いいんじゃねぇの?)
(適当だな)
(おれにはわからん)
(でもスゲー身体能力だ)
(あれで無個性だなんて……まるで8代目のようだな)
(似て……る、のかな?)