IS~神の名を冠するIS~   作:大神

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第八話  分からない例えがあったら、身近なモノに変えて考えよう

「(神夜~助けてくれ~)」

 

「(・・・・・・)」

 

――無視かよ・・・・・・

 

二時間目が終わった時点で、一夏は早くもグロッキーだった。

 

――まずい・・・・・・

 

多少の事は神夜に教えてもらったが、それでも多少(・・)。中学校の時から知識を蓄えた女子には勝てない。

今の一夏の状態は、何度やっても解けない数学の問題を解いてるみたいだ。公式を知らないと解けないタイプの。

 

――うーん・・・・・・ここまで来ると俺が本当にISを使えるのが不思議に思えて

くる。

そういえば神夜はなんで使えるんだ?

俺の場合は何となく分かる。知り合いの『とある天才』が何らかの『仕掛

け』をしたんだろう。しかし、神夜のに面識は無かったはず・・・・・・

 

一夏がそんなことを考えている間にも、真耶は時々詰まりながらも、生徒にISの基本動作を教えていた。

 

「というわけで、ISは宇宙活動を目的として作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生態機能を補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これは心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィン等があげられ――」

 

「先生、それって大丈夫なんですか?なんか、体の中をいじられているみたいでちょっと怖いんですけども・・・・・・」

 

生徒の一人が不安な面持ちで真耶に尋ねる。

確かにISを起動した時の感覚は人によっては不快に感じる人もいるだろう。

 

「そんなに難しく考えることはありませんよ。そうですね、例えば皆さんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそすれ、それで人体に影響が出るということはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと、形崩れしてしまいますが――」

 

ふと、一夏と神夜に視線が止まる。一回キョトンとした真耶。数秒後、ボッと赤くなった。

 

「え、えっと、いや、その、お、織斑君達はしてませんよね。わ、わからないですよね、この例え。あは、あはははは・・・・・・」

 

その真耶のごまかし笑いは何となく教室中に微妙な雰囲気を漂わせた。一夏達よりもむしろ女子が意識しているみたいで、腕組するフリで胸を隠す。

神夜は髪の毛先ほども気にせず、持参のパソコンを叩く。

 

「ん~・・・・・・ふぅ。一夏、俺達の場合は靴だと思え。あれはサイズが小さかったら自分の足がその靴に沿って変化し、変な形になるが、自分に合ったサイズだと変化をしないどころか、歩行をサポートしてくれる」

 

神夜はパソコンの画面から目を離し、伸びをしてから言う。

 

「ああ、なるほど。それなら分かる」

 

「分からない例えがあれば自分の使う自分の身近なものに修正して考えろ。何も言われたことをそのまま理解しろとは言われてないんだ、自分の分かりやすいものに考えを修正する柔軟性を覚えろ。お前にはその考え方が合っている」

 

「お、おお。分かった」

 

――さすが俺の幼馴染。六年ぶりだと言うのに、俺のことをよく分かってる。

 

神夜はそれだけ言って、またパソコンに目を戻す。

 

「ほえ~」

 

真耶は真耶で神夜の解説に聞き惚れていた。

 

「んんっ!山田先生、授業の続きを」

 

「は、はいっ」

 

そんな真耶に千冬は咳払いをして授業の再開を促す。少し怒気が含まれていたのは気のせいだろう。

 

「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話―――つまり一緒に過ごした時間。操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

 

――おお、練習は裏切らないんだな。

 

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

 

「センセー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

 

「そっ、それは、その・・・・・・どうでしょう。私には経験がないので分かりませんが・・・・・・」

 

経験とはもちろん男女交際のことだろう。赤面してうつむく真耶を尻目に、クラスの女子はきゃいきゃいと男女についての雑談を始める。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「山田先生、何か?」

 

「あっ、いえっ、何でもないです!」

 

両手を振ってお茶を濁す真耶。どうやら一夏と神夜を交互に見ていたようだ。おそらく二人のどちらかを相手にした妄想を繰り広げていたのだろう。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「あっ。えっと、次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 

そう言い真耶と千冬は職員室へと戻って行った。

それを号令にと周りの女子達が一夏と神夜の周りに集まる

 

『ねぇねぇ、織斑くんさぁ』

 

『紅くんっ!少し良いかな!』

 

『ハイハーイ。質問しつもーん!』

 

『今日の昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ?』

 

「いや、一度に聞かれても「すまない、通してくれるかい?」神夜?」

 

やっと持参のパソコンから目を離した神夜はパソコンを脇に挟みそう言う。

 

「すまないね。私は少し職員室に行きたいので通してもらえるかな?」

 

『あ、うん。どうぞ』

 

「ありがとう。私に関する質問はまた今度にして貰えるかな?一夏にならどんどん質問していいから。あと、そこで整理券を配ってる人。あとで売上金の七割を徴収するからね、他人で商売をしない。箒、そんな離れて聞き耳を立てるくらいならもう少し近づいたら?」

 

――コイツまさか逃げるつもりか!?

 

「神夜!逃げんな!俺に全部押し付けるんじゃねぇ!」

 

「逃げねぇよ、仕事だ」

 

『そんな!せめて六割!』

 

「これ以上はまけられません」

 

「聞き耳なんて立ててない!」

 

「どうだか」

 

――三者三様の反応だな、うん

 

「それじゃあまた後で」

 

そう言い、神夜は教室から出て行った。

その後も何分か同じような質問を繰り返され、一夏は精神的にやつれていた。

 

――しかし参った。箒か神夜にISのことを教えてもらおうと思ったんだが・・・・・・こりゃ夜に聞くしかないな

 

「ねーねー、織斑君。千冬様って自宅ではどんな感じなの!?」

 

「えっ?案外だらしな――」

 

パアンッ!

 

「休み時間は終わりだ。散れ」

 

――おお、いつの間に背後に。その後ろに神夜もいるし。しかもこのタイミングの叩きはあれだな。個人情報をばらそうとしたからだな。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

 

「へ?」

 

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」

 

「つまりそれって政府からの支援が出てるって事で・・・・・・」

 

「ああ~。いいなぁ・・・・・・。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

「???」

 

――どういう事だ?何がそんなに羨ましいんだ?

 

「はぁ・・・・・・。紅、説明を」

 

「はい。よく聞け一夏。一度しか言わん。

『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切公開されてません。現在世界中にある467機、その全てのコアは篠ノ之博士が作製したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作る事を拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引する事はアラスカ条約第七条に抵触し、全ての状況下で禁止されています』

以上、IS学園推奨『みんなのためのIS知識』6頁目5行目から12行目より抜粋。

つまり『沢山あるように思えるコアだが一定数しかない上に世界各地で研究やらなんやらで使ってるから数が少ねぇんだ自分個人で使えるだけで特別なんだよ。感謝しやがれバカヤロー、コノヤロー』って訳だ。分かり易いだろ?」

 

神夜は教科書も開かずに(・・・・・・・・)そう言った。

クラスメイトの大半、いや、箒以外の全員が目を丸くして神夜を見つめる。

それほどに信じ難い光景なのだ。

 

「にしても昔から思ってたが、何で神夜はそんなこと覚えてられるんだよ。普通なら無理だろ」

 

「まあ、確かに普通なら無理だな。だが、『俺は普通じゃない』。俺がこれらのことを覚えてられるのにはちゃんとした理由がある。もともと記憶力がよかったものあるし、前々から学習していたというのもある。それこそ摩穿鉄硯の如くな。それに俺は仮にも大企業の最高責任者だぞ?自分の会社の製品(・・・・・・・・)の事を一番に判って無くてどうする」

 

――ああ・・・・・・そうだよな。よくテレビでやってる通販番組の社長も新製品は客に公表する前に自分で性能を確かめてるって聞いた事あるし。って、え?

 

「・・・・・・自分の会社の製品?」

 

「おう。知らなかったのか?その教科書を始めとし、ここ(IS学園)の備品の大体がCOU社製だぞ?」

 

「そうなのか!?」

 

試しに全部の教科書の最後の頁を開いて見てみるとやはり全部の教科書に

 

『著作者 紅 神夜・古鳥 刃九郎  他四名

 発行者 株式会社COU  代表者 紅 神夜

 発行所         同         』

 

とあった。

 

「話しは戻るが、織斑。専用機についてお前には選択権がある」

 

「選択権?」

 

「ああ、お前の専用機の制作を二つの企業が表明したんだが、技術面の問題で共同制作は出来ない。そこでお前にどちらが良いか決めてもらうことになった」

 

「ちなみに表明した企業はウチ(COU)と倉持技研だ」

 

――そうか、そのためにさっき職員室に行ったんだな

 

「ちなみに神夜のところはどの能力が高いんだ?」

 

「ウチは量産機IS製造世界シェア一位なだけあって色々な注文があるからな。希望する能力を操縦者に合った数値まで上げ下げできる」

 

「安全性は倉持技研が特化しているだけあって、倉持よりは劣りまするが、それなりにあるでござる。攻撃力、防御力、使いやすさ、機動力、S・E(シールドエネルギー)共に一流だと我は思うでござる」

 

「・・・・・・兄さんの会社の整備・製造班は腕がいいですから」

 

「へ~」

 

「後、カイトが少し言っていたが倉持技研は安全性に特化している。その他に、格闘能力。主に刀剣系統の精度が高いな。銃火器は他の企業には劣るが、お前には関係ないだろう。どうせ使えないんだから」

 

「何でだよ?俺だって銃を使いたいぜ?」

 

「お前なぁ、銃を使うのがどれだけ知ってるか?目標の行動先の予想、反動の計算、細かく挙げるならまだまだ沢山あるぞ?お前にできるのか?いまだ授業に付いて来れないお前に」

 

「うっ・・・・・・」

 

「今できることを最大限に生かせ。お前は一つの事をやり通す方が合っているだろう?」

 

「・・・・・・わかった」

 

「ま、それを極めたらやり方を教えてやっても良い。精進しろ」

 

「本当か!?よし、やってやる!」

 

「意気込むのは良いが早く決めろ。馬鹿者」

 

――最近は語尾に馬鹿者を付けるのが流行ってるのか?千冬姉

 

「どっちを選べば良いんだ?神夜」

 

「それはお前が決めることだろう。俺が薦めるとしたら俺の会社を薦めるに決まってるだろう?ヒトとはそういう汚い生物だ。ただ、少し助言をするとしたら・・・・・・倉持技研は規模が少ないが国が支援してるとだけあって注文量が多い。故に優先されればそれだけ妬みをもたれる。現に四組に居る日本の代表候補生が倉持技研に依頼をしてるらしい。ウチは注文量は多いが、規模がデカイだけあって注文された順に制作されるため、妬みを言われることはない。ただウチの場合は製造部の主任に少し問題があるがな・・・・・・」

 

――問題?なんか変な武器を作るとかか?

 

「んーじゃあ、神夜のところで頼む。妬まれたくねぇし・・・・・・」

 

「了解した。では織斑先生、私はこれから四日ほど学園を休ませていただきます。今日一日はここに居ますが・・・・・・・」

 

「分かった、ではこの書類にサインをしろ。外出届けだ」

 

「分かりました・・・・・・織斑先生この書類に書いてある条件はなんですか?」

 

神夜は渡された書類に視線を走らせ、ある一点でそれを留める。

 

「・・・・・・外出するときに課す条件だ」

 

「それは分かりますよ。この条件の意味を聞いてるんです・・・・・・」

 

神夜がある一文を指して言う。

神夜が指差した部分をこっそり盗み見る。そこにあったのは

『条件 一時間毎にメール、または電話による連絡を入れる』

 

――なんだこれ。まるで小説とかである最愛の恋人が遠くに行ってしまい寂しい女性が男性に無理難題を言う感じだ。

 

「それは・・・・・・あれだ。お前は世界に二人しかいない男性IS操縦者なのだからなっ。いくら警備が万全だとは言え、安全を確認したいんだ・・・・・・!他意はないぞ!けしてない!(//////)」

 

――ああ、なるほど。確かにそれは必要だよな。

ただ千冬姉の顔が何故か赤くなってるけどなんでだ?

 

「フフッ・・・・・・まぁ・・・・・・そういうことにして置きましょう」

 

神夜は何かを悟ったように言って最後の書類にサインをした。

 

「では私はこれから仕事に移ります」

 

「あ、ああ」

 

神夜は何時も授業中に開いているノートパソコンの他に、もう一台取り出して起動させた。

そのノートパソコンは普通のノートパソコンとは違い、随分と厚かった。

起動の際、少し盗み見たが尋常じゃないほどのセキュリティロックがかかっていた。

 

「・・・・・・一夏お兄ちゃん。兄さんのパソコンの起動画面を見ましたね?」

 

「え?」

 

一夏が神夜のパソコンの画面を見たことに気付いた士音が一夏に詰め寄る。

そしてはっきりと答えず聞き返したからか、士音はさらに詰め寄る。

 

「・・・・・・見ましたよね?」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

再び繰り返され、今度は直ぐに頷く。

 

「・・・・・・忘れてください」

 

「え?」

 

いきなりの解答でまた聞き返してしまう。

 

「・・・・・・今見たものは忘れてください。兄さんのあのパソコンにはCOU独自の商品の流通ルートは勿論、社員の皆さんの個人情報が沢山入っています。いくら一夏お兄ちゃんでもメッ!です」

 

「そ、そうなのか・・・・・・」

 

――正直、そこまで重要なモノだとは思わなかった。そうだよな。あれだけロックが厳重なのだからよほど見られてはいけないものがあるってことだもんな。いくら俺でもそれくらい、分かっていたはずだ。反省しなくちゃな。

 

「それでは授業を始める」

 

千冬の声が教室に響く。

 

――良し、神夜も俺なんかに構ってられないだろうし、俺もいつまでも神夜に頼ってられないんだ。一人で頑張ってやるぜ!

 

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