アーテリーギア 「白き流星と翼」 作:黒猫
どうも黒猫です。
ライザコラボお疲れ様でした。ピックアップガチャが仕事しすぎてメダルまで回す余裕が出来たのであのイベントには感謝しなければなりませんね。
ドルフロも遅れながらアニメが始まったのでわんちゃんアテギアも…!
いや、ブルーアーカイブが先かな。
遅れながら幕間です。敗者たちの栄光に感謝。
「…身体には問題ない」
「ダメです。調整を受けないと連続的な活動はできないんですから」
「オートランド号」研究室。紫髪で白衣を羽織った女性研究員と、「フリューゲル」は会話していた。
フリューゲルはAGの義肢調整台に座っており、女性研究員は彼の義肢を機械のアームを使って調整を始めていた。すぐ近くにあるモニターでは彼の義肢適合率のデータを含めた開示されているデータが全て表示されていた。
「にしても新型装備のテストもしてないのに大気圏を突破するとは…技術者としては喜ぶべきなんでしょうか」
「…うるさい」
「冗談ですよ。誰も怒ってませんから」
ニコニコと笑いながらフリューゲルを見つめる女性。その妖艶かつ不思議な態度をフリューゲルは嫌っていた。聞こえないように舌打ちをする。
「あらあら、嫌われてしまいました」
「…感謝はしてるつもりだ」
「なら、それなりの態度を見せて欲しいですね」
――「ネイサ」――
ただの研究員だと今は言っているが実際の正体は「オートルナ」から派遣された女。AGの調整をしてくれる唯一の存在でもある。彼女がいなければフリューゲルも傍で眠るもう一人の女の子も万全には動けない。
「人のプライベートに入り込もうとする趣味はない」
「残念」
そのままフリューゲルは調整台から降りる。足の義肢は一体化しているタイプのため基本的には専用の義足、あるいは車いすを使うのだがそのまま部屋を出ようとする。
しかし、部屋を出ると同時に研究室の扉が開く、そこに立っていたのは艤装解除を終え、私服でブリッジに向かおうとしていた「ニオ」の姿だった。パーカーを羽織り、帽子を被っただけの簡単な格好だったがフリューゲルよりは遥かにマシである。
「…フリューゲル?」
「断固拒否する」
「ダメです!全く!早く義肢を外して!」
「…面倒だ、それにフロンティア所属のAGのほとんどは戦闘時に備え、ある程度の義肢は装備していると聞く」
「少なくとも今は大丈夫です!ほら!」
「実に面倒だ」
義肢解除を嫌がるフリューゲルをニオが必死に抑える。女性研究員は笑顔を崩すことなく、その様子をずっと眺めていた。
◇
「オートランド号の航続距離は0なんだね」
「ははは…、恥ずかしながら」
「オートランド号」ブリッジでは四人が間隔を置いて立っていた。ニオ、フリューゲルから指揮官と呼ばれる人物は指揮端末の情報登録を終わらせていた。指揮権が指揮官に移動し起動し始めたことで各端末が起動し、ブリッジには光が灯る。
「進水式の前に傀儡襲撃があったので…」
「フロンティアが阿呆だったということか」
「艦内のシステム、各機関は損傷の激しいところ、または航行に支障が出ている部分を中心に修理していますが、作業はいつ終わるかわからない状況です」
「一週間かかるかもしれないし、もっとかかるかも、ってところか」
「オートランド号」への襲撃は大規模なものだった。「傀儡師」が駐留していた機材倉庫もそうだが、船首は「衛星兵器」によって損傷している。現状ある物資だけでは修理はとてもではないが難しいだろうと指揮官は考えていた。
「ただいま、この瞬間からこの船は支援補給艦として「ユニオン」のものになります」
「ユニオン艦隊」それはニオが「フロンティア」、「オートルナ」に提案し、双方が共同で設立した部隊である。中立の特別行動機構、言い方を変えれば、「フロンティア」でも「オートルナ」でもない第三の部隊である。
オートルナの「衛星兵器」の使用権限は指揮官によるものである。オートルナからは非常事態時、必要な条件を満たしていれば「衛星兵器」の使用を認めるというものだった。
「オートルナ、フロンティアの双方を結びつける存在…か」
フロンティアは「傀儡戦争」勃発後に、地上の国々により結成された反傀儡国家連盟である。
当初は国家同士が互いを認めず、連盟は機能しなかったが、地上の大半が傀儡に奪われると、ようやく力を合わせることにしたのだ。
その後、フロンティアは地上の多くを放棄し傀儡に奪わせることで時間を稼ぎ、各国の兵力と資源を終結させた。そして、スーパーAIに全軍の指揮を任せたのである。
オートルナは、元々フロンティアが宇宙実験を行うためのスペースコロニーであった。
傀儡戦争の勃発、そして、地上から国家の概念が薄れ始めると、スペースコロニーの設立者は優秀な人材を引き抜き始めた。
それによりスペースコロニーは急速に成長し、一つの国家が出来上がった。それが「オートルナ」である。
「お互いは協力することを拒みあい、互いに人員と資源を動かせないから…」
「人類は依然、困難な続いていた。か」
「その通りです。指揮官。そして、このオートランド号は今後、支援補給艦と合流し、艦隊を編成、正式にあなたの指揮本部になります」
指揮官と呼ばれる人物の後ろにいる、黒の軍服を纏い、杖を持つ少女、「カペラ」が元気よく答える。その二人の後ろから研究室で検査を終えた「ニオ」と「フリューゲル」が合流する。お互い装備を外し、非戦闘時の服になっている。
「お疲れ様」
「…ユニオンの申請を通すのは楽じゃなかった。頭の固い連中を納得させるには骨が折れたぞ」
「でも結果、見事設立は「受理」されたんです!お二人のおかげです!」
「皆さんの期待に応えようとしただけです」
「AG-01B、ニオ・サイレン、ただいまをもって現場に復帰します」
「AGX-01、ゼロ・フリューゲル、通常任務に復帰する」
◇
「ゼロ。身体は大丈夫かい?」
誰もいなくなったブリッジ。ニオとカペラは偵察隊編成のため先に準備をしている中、指揮官はフリューゲルへと声をかける。
ブリッジの一角にある、椅子に座っているフリューゲルは自身の義肢のデータをまじまじと見ていた。
「…心配いらない」
「ニオから聞いたよ。まだ慣れてないんでしょ」
「旧型からすぐに変えて実戦だったからな。異常が起こるのは当然だ」
ニオが指揮官に提出した報告書、そこには本来関係ないはずのフリューゲルの義肢状態の報告も書かれていた。
戦闘用義肢は本来ならテストを重ね、使用者本人にも影響が出ない迄に調整をするのがベストなのだ。彼らは人間ではないとはいえ、半分は人間なのだ。治せないところに影響が出るのだけは避けなければならない。
「元の戦装はオートルナの倉庫の中だ。今更返してはくれない」
「…交渉、するところだけど君がいいなら、いいかな」「現状でも問題ない。それにこの戦艦には専用のバスターライフルが来ていたはずだ。しばらくは足りる」
「迷惑をかけるね」
「いつも通りだと思えば楽だ。それに交渉をするにしても「お姫様」の承認が必要になる。君にはその権限がない」
指揮官の手元にあるタブレット端末、そこに映し出されていたのはかつての「フリューゲル」の姿。
人工の翼を広げ、敵味方関係なく破壊する天使の姿。
人工の翼を広げ、敵味方関係なく切り裂く悪魔の姿。
「俺は勝者にはならない」
「そうだったね。約束…覚えててくれて嬉しいよ」
◇
「久しぶりだな」
『よう相棒。元気そうだな』
「オートランド号」連絡用通路、フリューゲルは情報端末から連絡を取っていた。
連絡先からは爆発音とともに、傀儡の悲鳴にも似た奇声が聞こえる。その直後、踏み砕かれる音が耳に響く。
「フロンティアは「アジュールシティ」に停滞している傀儡師を討伐する作戦をとっていると聞くが」
『「オピス」からある程度聞いてるぜ。無茶苦茶するよな「スーパーAI」さんはよ』
「情報が欲しい」
『了解。全く、相変わらず人使いが荒いぜ』
「「オピス」たちは、一緒じゃないのか?」
『あぁ、今は「ファイヤーストーマイナー」って組織と合流してる。俺もそこの所属ってところだ』
「ファイヤーストーマイナー」。「フロンティア」のやり方、組織形態に異を唱えたAGたちが作り上げたAG集団。主に傭兵としての仕事を引き受け、軍事品の取引もある程度してくれる傭兵団と聞いたことがある。
「フリューゲル」を除いた他のメンバーは皆「ファイヤーストーマイナー」にいるようだ。異を唱えた彼らの行き先としては申し分ないが、「フロンティア」はそんな脱退したAGの行方を掴んでは強制的に呼び戻したり、強制的に協力を仰いだりする動きがあるらしい。安心はできない、という事だろう。
『お前も来るか?』
「…遠慮する」
『全く。硬いやつだ。了解した、情報収集は任せな』
その言葉を最後に連絡を切る。すでにニオたちの先遣隊が「アジュールシティ」周辺の「傀儡」の排除に向かったころだろう。本命が見えれば、フリューゲルももちろん戦場へと向かう。
「傀儡はすべて駆逐する。俺の…俺たちの戦いは終わらない」