【悲報】起きたらウマ娘になってたんだが【助けて】 作:らっきー(16代目)
A まだオヤジギャグを身に付けていない頃なので
Q マルゼンスキーは?
A 名前だけ出演の予定です
高評価、感想、お気に入り、ファンアートください!(強欲で貪欲な壺)
一年の終わりは、有マ記念。そんな認識のファンは多い。
実際にはホープフルステークスが一年を締めくくるG1レースとして存在しており事実と反しているのだが、知名度や人気から大半のファンに聞けば有マ記念こそがという声が上がるだろう。
要は、それだけの歴史と人気のあるレースだということである。
そんな有マ記念ではあるが、今年は異常とも言える盛り上がりを見せていた。その理由は単純明快。無敗の六冠フォルティシームと無敗の七冠シンボリルドルフ、この二人がとうとう同じレースに出走する事となったからである。
高貴な血を引き、絶対者として君臨する皇帝が八つ目の冠を手にするのか、それとも血も歴史も無い寒門出身の白銀の革命家が七つ目の冠を手にするのか。
最早どちらのファンだとかそんな事は関係無く、ただひたすらにその時を見たいと心待ちにしている者が多かった。 シンボリルドルフに比べると、フォルティシームはメディアに姿を現さない分ややファンが少ないが。メディア嫌いを極め過ぎてとうとう諦められつつある彼女である。
どちらが勝っても、無敗伝説は終わる。これほど心を惹き付ける謳い文句はそうそうないだろう。
そういう意味ではやはり、ミスターシービーの時とは違う。前回は三冠バ同士の対決と銘を打ち、今回は無敗のウマ娘同士の対決と銘を打つ。URAの策略が見え隠れしている気がする。
因みに。相変わらずグッズはとんでもない売り上げを見せている。三冠を取った時に生産されたフォルティシームのグッズは更に増産された上で完売を記録し、今回改めて作られたシンボリルドルフのグッズも同じく完売している。
やはりパカプチが売り上げ、人気共に高いが、レース場にぬいぐるみを持ってくる訳にもいかないため、有マ記念を見に来た観客が身に付けているのはTシャツやタオル、お金に余裕のある者は腕時計、といった感じである。
真に余裕のある者は全て買っているが。
つまりは、観客達の身に付けているものを見ればどちらのファン……というか、今回のレースにおいてどちらを推しているのかが分かる。4:6でフォルティシームが優勢と言った所であろうか。やはり寒門からの成り上がりには夢があるからであろう。
というか、シンボリルドルフにはそういう意味での人気はあまり無いのである。三冠バ達三人の仲では一番グッズの売れ行きが悪いであろう……といっても、他のウマ娘と比べればとんでもないレベルではあるのだが。
ミスターシービーは鮮烈な追込が、フォルティシームは圧倒的な逃げがある。それに比べるとシンボリルドルフは王道の差しである為にやや地味な印象を与えるのである。
ついでに言うと、ミスターシービーはその気侭故の変わったカリスマで、フォルティシームは一切メディアの前に現れない──ジュニア級のたった一回を除いて、だが──神秘的なカリスマでファンを深く魅了しているのである。
分かりやすく言うと、家族で凄いねーとレースを見て記念にグッズを買うのがシンボリルドルフのファン、一人でレースを見て心奪われグッズを買い漁るのがミスターシービーとフォルティシームのファンということである。まあ別にどちらが良いという話でもない。
話が逸れたが、ともかく。
今年の有マ記念は、トゥインクルシリーズでも類を見ない程の注目が集まっているということである。
ジャパンカップの時と同じ様に。地下バ道でイチャイチャしていたフォルティシームとトレーナーの元に一人のウマ娘が訪れる。
鹿毛に、軍服のような勝負服。皇帝、シンボリルドルフその人である。
しかし、フォルティシームがまた邪魔された……と怒るような事態にはならなかった。皇帝はその辺の空気を読むのが上手いのである。しっかりと見せつけられた光景は独り身には少々目の毒でもあったが。
「初めまして、フォルティシーム。まずは、今回のレースに出て来てくれた事に感謝を。……正直、君はレースには興味が無いと思っていたからね」
「……初めまして、シンボリルドルフ。流石に貴方の事は知っていますよ」
嘘では無いが真実でも無い。最近まで全く知らなかったが、トレーナーと一緒に研究の為にシンボリルドルフのレース映像を見まくったので覚えたというのが真実である。基本的にフォルティシームの記憶力はトレーナーとの時間を覚える為にしか使われない。
光栄だね。などと言っているが、知らぬが仏とはこの事だろう。
「それで? 三冠バというのはレース前に話をしなければならないとでも決まってるんですか?」
何処と無く棘のある言い方は、しかし別に機嫌が悪いという訳ではなくただ単純にコミュニケーション能力の不足故である。それならいっそ、何か用? と一言だけ言えば良いものを。皮肉混じりなのは素である。
「勿論決まりがある訳では無いさ。ただ、これだけ世間が注目しているレースの相手だ。気になるのも当然だろう?」
「……要は、宣戦布告でしょう? 少し前までの私なら無視していたでしょうが。今は少しだけ、乗ってもいい気分です」
微笑みの仮面が剥がれ落ちる。ミスターシービーの時と同じ様に見えて、しかしその下から現れた顔は違う。
フォルティシームが一度たりとも見せたことの無い、獰猛な笑み。トレーナーを若干怯えさせたその顔は、シンボリルドルフにとっては期待していたものでもあった。
もっと覇気の無い、興味の無さそうな様子を予想していただけに、そんな顔を引き出せたのは素直に嬉しい事であった。シービーをけしかけた甲斐もあるというもの。
全力を出しても容易ならざる勝負。その上での勝利。それこそが望むもの。今までそれを行えたのはたった二人のウマ娘だけ。
「ああ、それは何とも喜ばしい事だ。君との出会いに感謝を。──砕け散るほどに愛させてくれ。私を、失望させないでくれよ?」
フォルティシームと同じように笑顔を浮かべる。絶対者としての威圧感を持った笑みを浮かべる。
皇帝、シンボリルドルフは全てのウマ娘を愛している。世界中の全てのウマ娘に幸せになって欲しいと心の底から思っている。そこに寒門だとか貴族だとか、優れているだとか劣っているだとか、美しいだとか醜いだとか。そんな差別はありはしない。
そこに悲劇があるとしたらたった一つ。シンボリルドルフは、あまりにも強過ぎた。
同年代に競い合える相手などおらず、トレセン学園に来てからも満たされぬ日々。ようやく出会えたうちの一人は既に第一線を退いており、もう一人は中々好調が噛み合わない。
歯がゆい日々を送っていた。速さを求めるのがウマ娘の本能なら、強い、全力を出せる相手を望むのもウマ娘の本能だ。
全力で競い合いたい。全てを出し尽くして、全てを受け止めたい。──心の底から、愛してやりたい。
今ここにいるのは皇帝、シンボリルドルフではない。
満たされぬ渇きに喘ぎ、飢えを満たすべく獲物を狙う。一人の捕食者である。
「……こ、怖かった……」
「大丈夫かい? トレーナー」
シンボリルドルフが去った後。重圧から解放されたトレーナーから出たそんな気の抜けるような一言に、フォルティシームの纏う空気も穏やかなものに戻る。
「な、なんとか。それよりフォルティ、あんなのと走るなんて……その……」
続けようとした言葉は、大丈夫? だろうか、勝てるの? だろうか。それとも頑張れというような応援だろうか。
フォルティシームは不敵な笑みを浮かべて、トレーナーの唇に指を当てて言葉を遮る。
「いつも通り、勝つさ。貴女に勝利の栄光を」
ウマ娘達がゲートに入る……この時点で、フォルティシームとシンボリルドルフを除いた全てのウマ娘達は、逃げ出したい衝動に駆られる。無敗の六冠と無敗の七冠に同席するプレッシャーとはいかほどか。
ゲートが開いて、逃げ場を見つけた数人のウマ娘が飛び出す。シンボリルドルフにとっての定石。プレッシャーで他のウマ娘を掛からせ、逃げを潰す。先頭に蓋をしてしまえば、後は力押しで終わるから。
フォルティシームも、その戦法は承知している。だからこそ、トレーナーと顔を突き合わせて慣れない作戦などというものを立ててきたのだ。
掛かったウマ娘達を追い抜いて、そのまま先頭へ。そしてペースを上げて、圧倒的な差をつけに行く。
菊花賞でやられた事。スタミナの温存など考えない、破滅的な逃げ。
百のうち九十九を捨て、一パーセントの勝利に賭ける無謀とも言える作戦とも言えないような作戦。だがこちらに利することが二つ。
一つ。菊花賞に比べて五百メートル距離が短いこと。一センチ進むのにも魂を削るような破滅的な逃げは、少しでも少ない方が勝ち目があるというのは子供でも分かるような理屈だ。
二つ。フォルティシームの底力。菊花賞で同じ戦法をとったウマ娘の一人ですら最後に底力を見せ、フォルティシームに食らいついて……いや、食らいつこうとしてみせた。
ならば。強者たるフォルティシームならば、或いは二千五百メートルを全力全開で走り抜ける事が出来るかもしれない。
全てを置き去りにして突き進むフォルティシームを見て、しかしシンボリルドルフに焦りなどは無く、寧ろ笑みを浮かべてみせた。
元よりこの程度の仕掛けだけで勝てるなどとは思っていない。こんな小細工はシンボリルドルフの本質ではない。
レース全体の流れを殺人的なまでに加速させているフォルティシームと比べれば、ゆったりとも言えるような静けさで中央のあたりに陣取る。レースの全体を把握し、流れを操る皇帝の特等席。
じっくりと、詰将棋でも行うかのように一手ずつフォルティシームに迫っていく。
逃げウマ娘達にプレッシャーをかけ追い立てる。自分の前を塞ぐウマ娘達の僅かな隙間を見つけ、こじ開ける。
出せる速さの上限などとっくに超えているフォルティシームに、しかし皇帝は僅かずつ近づいていく。
フォルティシームはその速度故に僅かにコーナーで膨らむ。シンボリルドルフは理想的という言葉を体現するようにコーナーを曲がる。
フォルティシームは呼吸のためにほんのごく僅かに速度が緩む。それに合わせてほんの少し加速する。
じわりじわりと先頭集団との距離を詰める。それも体力はほぼ使わずに。レース全体を把握し、マークした相手の呼吸すらも読む。圧倒的な才覚とスペックによる単純なゴリ押しとも言える戦法。
しかし、それにどう太刀打ちできるというのか。
最終コーナー。
垂れてきた、皇帝に追い立てられた哀れな逃げウマ娘達を追い抜く。一人、二人、三人。
シンボリルドルフのルーティーン。自分の世界を構築するための手順は整った。
フォルティシームの耳に、雷鳴が轟く。視界の端に、紫電が走る。
皇帝が、そのスペックを十二分に発揮して、フォルティシームに迫る。
破滅的な逃げを、速度を保ったまま続けるのは不可能だ。
つまり、シンボリルドルフとの距離が縮まり始めた時点で、後は最初の貯金が尽きるのが早いかレースが終わるのが早いかの勝負になるということである。
最終直線。
最早フォルティシームにスタミナは残っていない。シンボリルドルフは驚異的な速さで近づいてくる。
汗など最早一滴も流れはしない。呼吸は出来ているのかも分からない。視界は半分以上黒に染まっている。
シンボリルドルフがフォルティシームに追いつく。観客達は皇帝が八つ目の冠を得ると確信して歓声を上げる。
僅か、ほんの僅かだが、シンボリルドルフの身体がフォルティシームの前に出た。
ここに、勝負は決した。皇帝に挑んだ革命家は、哀れにも紫電に貫かれ──
──いいや、まだだ。
再びフォルティシームが前に出る。呼吸は最早止まった。脚はこれ以上動かすなと激痛を訴えてくる。
黙れ貴様ら私の身体だろうが。勝つと誓った。勝利の栄光を彼女にもたらすと。ならば私が諦めていい理由など一つもない。
ほんの一瞬、シンボリルドルフと目が合って、紫電と荘厳な城を幻視した。雷も、城も。到底一人で太刀打ちできるようなものではない。あるいは以前のフォルティシームが負の方向に突き進めば、彼女の世界、闇に呑む事も出来たのかもしれないが。フォルティシームの世界はミスターシービーに壊された以上、語っても詮無きことか。
太刀打ちできない。勝ち目がない。それがどうした。そんなものが諦める理由になるかよ。泣き言を言う暇があれば脚を動かせ。
栄光などはどうでもいい。シンボリルドルフも眼中から消え去った。最早自分自身さえも考慮に入れない。
約束のために。ただトレーナーのために。──愛のために。
貴女の笑顔が見たいから。貴方の笑顔が好きだから。私が走る理由など最初からその一つだったし、それだけでいい。
フォルティシームの身体が、有り得ない加速を見せる。シンボリルドルフを突き放す。
皇帝が驚愕の顔を浮かべる。白銀の革命家の刃は、確かに皇帝を貫いてみせた。
──それでも。皇帝は死なず。シンボリルドルフは死なず。
驚愕の顔も消え、最早狂気的と言うしかない笑みを作り、シンボリルドルフも加速してみせる。
お前に出来たのだ。私もやってみせる。そうでなければ失礼にも程がある。
レースである以上、いつかは終わる。時間にしてみればそう長い時間でもない。互いに限界を超えた熾烈な争いも決着を迎えた。
結果はハナ差。
一着、シンボリルドルフ。二着、フォルティシーム。
最早漆黒に染まった視界の、僅かに残った部分でその結果を見届ける。
ああ。負けたのか。ごめんね、トレーナ──―
倒れ伏す身体──をギリギリのところでシンボリルドルフが支える。
しかし、シンボリルドルフにも最早一片の余力も残ってはおらず。
結果として、二人仲良く担架で運ばれることとなった。
Q 大総統。ブラッドレイかよ。賢者の石で出来てそう
A そうだよ
Q 後書きで結果が分かる
A 正直喋りすぎた
Q アプリ版フォルティシーム
A 男女問わず一目惚れしてくるし、ストーリーの最後で、何もかもどうでもよかったけど君だけは輝いて見えたとか言うよ
Q 普段の学園生活
A お前らと同じで寝たフリしてるよ
Q 言えたじゃねえか
A 毎日更新、やっぱ辛ぇわ
男トレ×フォルティシーム
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焼き直し部分はカット
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被りも書く