【悲報】起きたらウマ娘になってたんだが【助けて】   作:らっきー(16代目)

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高松宮と天皇賞は判定無しの自動勝利です。ルドルフがいないので

あと勘違いしている人が多いので明言しておきますが尻尾の裏は自撮りです。シービーに撮ってもらうのは普通の写真。またって言ってる一回目はシビフォルのツーショットのこと。書き方が悪くてすまんな


おまけ9

 ファン感謝祭の日がやってきた。

 

 トレセン学園に所属しているウマ娘達のファンが押し寄せる、文化祭とでも言うようなイベントである。

 

 生徒会長が開会の挨拶を済ませる。熱心なファンは最初から最後までファン感謝祭を楽しむ為にこの時点で参加を始めている。噂では前日から近くのホテルを予約したり、近くに徹夜で並んでいるファンもいるんだとか。

 当然トレセン学園としては周辺への迷惑を考慮して徹夜組は禁止している。良い子のみんなには、イベントのルールはしっかりと守って楽しむ事を心がけていただきたい。

 

 開会式が終わると、ファン達は各々自分の目当てのウマ娘を求めて会場を動き回る。

 例年であれば、それぞれのファンがそれぞれの推しているウマ娘のもとに集まり──もちろん量の多い少ないはあるが──それなりの混雑はあれど、どこも同じ程度で収まっていたのだが。

 

 今回ばかりは少し事情が違う。原因は簡単で、三冠バ達の存在だ。

 たとえ一人存在していただけでも大衆を引き寄せ、混雑を生み出すであろう存在。それが三人。集まる人の数は推して知るべきであろう。

 

 そして更にそれを加速させる事前の発表。

 三冠バ三人によりファン感謝祭の出し物を行うとの告知がさらなる民衆の呼び水となった。何をしてくれるのかという期待。単純に三冠バに会いたいという野次ウマ心。後は美人に心を奪われた者たち──元々ウマ娘とは見目麗しい者が多い種族ではあるが、この三人は特に才色兼備という言葉が相応しい美人である──そんなところか。

 

 まあそんなわけで、三冠バ達の担当するブースには大量の人が押し寄せてきたということである。

 

 さて肝心の、三冠バ達三人が何をするのかについてであるが……そこまで奇をてらったものではない。ただの喫茶店である。とはいえ国民的スターである三冠バに給仕してもらえるというのは得難い経験ではあろうが。因みに、提供するのは飲み物のみである。流石に調理まで行うには人も機材も足りなかった。

 

 一つ。普通の喫茶店との差別点を挙げるとすれば、その服装か。

 本人達の趣味か、はたまた彼女等のトレーナーの誰かの趣味か。男装、執事服に身を包んだ三冠バ達。

 

 訪れた客──幸運と執念で先頭の景色をもぎ取った女性──は、一目見た瞬間に静かな奇声を上げて失神しかけた。元々この三人はその顔の質故か女性のファンが多いのだ。

 

「おっと。大丈夫かい? お嬢さん」

 

 キザな仕草でスッと支えに入ったのはミスターシービー。

 

「こんな序盤で倒れてたら勿体無いよ? 今日はアタシ達が最高の一日にしてあげるからさ!」

 

 近距離で顔の良さの暴力を浴びたその女性は、一周回って無事に平静を……いや、平静にはなれていないが、ともかく失神は免れた。

 

 震える声で注文を、コーヒーを頼んで、一息入れる。

 コーヒーとは言ってもインスタントの簡易的な物ではあるが、無敗の七冠たる皇帝が作り、つい先月皇帝と冠の数を並べた白銀の革命家が配膳してくれる。あまりに贅沢なコーヒーブレイク。

 

 完璧主義な面のあるシンボリルドルフなどは豆から挽きたいと希望したが、そんなことをしていては永遠に客が捌けないと止められた。ついでにフォルティシームは可能な限り客とコミュニケーションを取りたくないからドリンクを入れるのに専念したいと希望を出したがあえなく却下された。役割は持ち回り制の時間交代となっている。ただの余談である。

 

 大勢の客が訪れる。混雑してくれば諦めて他のところに回るだろう、という楽観的な思考はすぐに撤回させられた。

 コンセプトを守れたのは最初の数人だけで、後はほぼ飲み物を手渡して帰ってもらうこととなった。三冠バ達はともかくそのトレーナー達はこうなるだろうと予測していたため、持ち帰れるような使い捨ての容器はたくさん用意してある。

 

 さて、するとどうなるか。当然のように、不満が出る。提供する品物の方には然程手をかけられない以上そうなるのもむべなるかな。執事服の麗人という外見の暴力によるゴリ押しでなんとか繋いでいる。

 

 そんな危機を解決したのは、意外にもフォルティシーム。

 

 注文を受けて、ドリンクを手渡す……前に、ぎゅっと相手を抱きしめてみせた。自分の顔と身体の良さを理解している卑しい作戦である。

 偶然その対象にされたフォルティシームのファンであった女性は、ヒュッと短い息を吐いて崩れ落ち……いや、抱きしめられているので崩れ落ちはしなかったが、全身から力が抜けた。

 果たして相手が他の二人のファンであったり男性だったりしたらどうしていたのだろうか。何も気にせずに抱きしめそうでもあるが。

 

 それを見たミスターシービーが面白がって真似をしてファンの呼吸を止め始め、フォルティシームの行為にフリーズしていたシンボリルドルフも、最終的には真似をし始めた。

 流石に三人ともハグは女性限定ではあるが。男性客には笑顔で手をぎゅっと握っている。客の心臓は止まった。

 こうして三冠バによる執事喫茶改め、三冠バふれあいパークは熱狂を見せた。少なくとも、リピーターが来る程度には盛り上がった。

 

 フォルティシームだけに任せているとそういうお店のようになりかねなかっただけに、単純にカッコいいミスターシービーや、照れがありぎこちなさ、初々しさを感じさせるシンボリルドルフがいてよかったのかもしれない。

 フォルティシームは相手が女性だとか男性だとかで対応を細かく変えられるほど頭が良くないから。きっと男性客でも平然と……いや、むしろ男性客の方が喜ぶだろうと計算してやっていたかもしれない。バカだが頭はいいから。

 

 話が逸れた。ともかく大量の客達に満足感を与えつつ捌き切る事に成功して、ファン感謝祭を乗り切って。

 三人でドリンクの残りを飲みながらほっと一息。シンボリルドルフはコーヒー。ミスターシービーは炭酸飲料。フォルティシームは紅茶。

 

「いや、それにしても驚かされたよ。まさかあのような手段でお客さんに満足感を与えるとは」

 

「アタシもびっくりしちゃった。フォルティ、結構大胆だよね」

 

「そうですか? トレーナーちゃ……トレーナーにはよくやってるんですけど……」

 

 ヒュウ、と口笛を吹くシービーと驚いたように目をパチパチとさせるルドルフ。

 

「……なんというか、情熱的なのだな。もっと冷めた人物を想像していたが……やはり、これからも相互理解を進めていく必要があるな」

 

「相変わらずルドルフは回りくどいね。素直にもっと仲良くなりたいって言えばいいのに」

 

 ぐっ……と言葉に詰まるルドルフを置いておいて、シービーはフォルティシームの方を向く。

 

「ね、フォルティ。アタシにもしてよ、せっかくだし」

 

「へ……?」

 

「ハグ。いいじゃん。アタシにはしてくれないの?」

 

 椅子に座ったまま、いわゆるハグ待ちの姿勢をとるミスターシービー。その表情はいたずらっぽい笑み。

 

「待たれるとやりづらいんですが……あー、分かりました! だからそんな顔しないでくださいよシービー先輩!」

 

 やりづらいと言われた時点で露骨に悲しげな顔を浮かべて見せ、結局してくれるとなった瞬間ぱあっと嬉しそうな顔をしてみせる。素でこのような反応をしている辺りが彼女が人誑しと陰で呼ばれている所以である。愛嬌がある者は誰からも好かれやすい。

 

 ぎゅうっといつもよりちょっと強めに抱き締める。今までの業務的に行っていたのとは違い照れが混じっているからである。因みにシービーは抱きしめられるためにわざわざ立ち上がっている。シービーの上背のおかげでフォルティシームのトレーナーや今日の客の何人かのように胸に顔が埋まる事態にはなっていない。

 

 しばらくフォルティシームの温かさと柔らかさを堪能して、顔を上げて一言。

 

「九十六?」

 

「は……? ああ、いえ。九十八です」

 

「え! うそ! そんなに!? ちょっと揉んでも──」

 

 コホン、と咳払いが一つ。当然、シンボリルドルフのものである。

 

「君達、少々気を抜き過ぎではないか? 確かに客はもういなくなったが、勝って兜の緒を締めよ、という言葉もある。つまり──」

 

 そんなルドルフの忠言だったが、しかし。

 

「はいはい、ルドルフも羨ましいんだね。行け! フォルティ!」

 

 ドンとフォルティシームをルドルフの方へ突き飛ばす。

 

「……あー、じゃあルドルフ先輩、失礼しますね」

 

 そういって座っているルドルフを、抱き締める。今度は丁度、頭が胸に埋もれる形となった。

 

 少し抵抗して、その後大人しくなるというフォルティシームのトレーナーと同じような反応に、今までとイメージ違うな……と少し前のシンボリルドルフのようなことを思いながらぎゅっと一回強く抱きしめて皇帝様を解放してあげる。

 

 どう? 凄かったでしょ? などとシービーが囃し立てている。それに知らん! と顔を赤くして怒るシンボリルドルフ。

 あと二人をいつもの微笑みで、でもいつもより楽しそうな雰囲気で眺めているフォルティシーム。

 

 今まで友人のいなかったフォルティシームにとって、とても幸せな時間だったから。諸々大変ではあったが、今は心地良い疲労感と達成感から少しテンションが上っている。

 

 あとはトレーナーちゃんがいてくれればなぁ。そんな事をぼんやりと考えていたフォルティシームの元に待ち人が来る。

 フォルティシームの……というよりここにいる三人のトレーナー達である。

 

 お疲れ様ー! と労いの言葉と、しっかりと栄養バランス、量、味の整えられたお弁当を持って──今日は食堂は開いていないので各自食事は自力調達である──元執事喫茶に入ってくる。因みに三人は未だに執事服である。少々色々なところが緩んではいるが。

 

 トレーナーちゃんの手料理!? といち早く反応したのはフォルティシーム。別に初めてというわけではないが、何回貰おうと嬉しいものは嬉しいのである。

 

 はしゃぎだしたい気持ちを微笑みで隠して。作り上げた余裕で、ありがとうとお礼を言う。

 ついでに椅子を引いてエスコートも忘れない。

 

「せっかくだから、貴女もなにか飲んでいくかい? と言っても、大したものは出せないけれど」

 

 移し替えるだけでいいボトル飲料と、それらを混ぜた簡単なノンアルカクテルのようなもの。提供できるのはそれぐらい。

 

 まあとりあえずカクテルでいいかと、トレーナーの好みを考えて作るものを決める。手早くボトルから注いでちゃっちゃとかき混ぜて完成。

 今回はあまり披露する機会に恵まれなかった、練習した執事らしい──と言ってもアニメのマネだが──動作でトレーナーへと提供する。

 

「ありがとう! ……なんかフォルティ、カッコいいね。あ、いやいつもカッコいいんだけど、いつも以上にというか」

 

「ふふ、ありがとう。貴女にそう言ってもらえるなら、私としても甲斐があったというものさ」

 

 先輩達二人がこちらを見ているような気がするが、とりあえず意識の外においておくことにする。

 ちなみにシービーはこれを見せつけられて、トレーナーにアタシもやってあげよっか? と誘いをかけて断られている。

 ルドルフはフォルティシームほどカッコつけず、普通に飲み物を渡している。

 

 人数が倍になって、みんなでワイワイと騒ぐ。今までのフォルティシームからは考えられないことだ。

 トレーナー一人しかいなかった彼女の世界は、少しずつではあるが広がり始めている。対等なライバルと言っていい二人の先輩のおかげで。

 

 ああ、このまま時が止まってしまえばいいのに。

 フォルティシームは思う。

 

 今が永遠に続けばいい。この瞬間を引き伸ばしたい。

 

 しあわせは、いつか壊れてしまうものだから。




Q 自撮り
A 尻尾の裏はフォルティの自撮り、シービーに撮ってもらうつもりでいるのは普通の写真

Q 終わるの?
A あと凱旋門行ってトレーナーちゃんと温泉旅行行くぐらいしかイベント無いし…

Q バクシンオー
A 世代が違うからセーフ

Q ダート君
A ナレ勝ちで終わっちゃーう

Q トレーナーちゃんのメンタル
A いつかのトレーナー視点で書かれるらしい

Q 三着ソロ
A 無敵のメンタルを手に入れたらしい。もうフォルティのデバフも平気だね

男トレ×フォルティシーム

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