【悲報】起きたらウマ娘になってたんだが【助けて】   作:らっきー(16代目)

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原作と絡ませようとしたら沖野トレーナーと絡んでました。(沖野トレーナーって公式では名前では無いらしいですね)

時系列とか年齢については気にしないでください。ウマ娘においてそこを考えると死ぬらしいです


リクエストその3(アニメ世代のチームとの絡み)

 トレセン学園最強のチームはどこか。その質問には誰もが口を揃えて言うだろう。リギルこそが最強のチームであると。

 

 では最強のウマ娘とは誰か。リギルのエースシンボリルドルフ? シンボリルドルフに勝ったミスターシービー? 英国から来たダンシングブレーヴ? 

 

 リギルのトレーナー、東条ハナは否定する。誰もがリギルを最強と口にするが、そうではないのだと。

 

 最強をその名に冠し、手に入れた冠は二桁を超えた。気紛れにレースに現れ全てを蹂躙する魔王。チームに所属せず、しかしチームの総勝利数と見紛う程の成績を残すウマ娘。

 

 フォルティシームこそが最強であると。

 

 

 

 

 

 その日、最強と名高いチームリギルは入団試験を行っていた。単純に入団希望者の中から一番速かった者をメンバーとして迎え入れるというもの。

 希望者の中で目立つ者は、やはりまずはエルコンドルパサーか。この世代の中では一番強いと言っていいだろう。少なくとも、今のところは。

 そして転入生であるスペシャルウィーク。こちらは強さでは無く単純に新顔であるという目立ち方だが。

 後は……ハルウララは有名人だと言っていい、が、今回は割愛する。

 

 それを見守るのはリギルエースのシンボリルドルフを筆頭に、テイエムオペラオー、ナリタブライアン……並べていくとキリが無いが、ともかくリギルのフルメンバーが揃っている。

 

 トレセン学園の四強のうちの一人、シンボリルドルフ。やはりその人気は大きいようで、姿を現しただけで黄色い歓声が上がる。

 

 そしてそんな様子を更に遠くから眺める一組の男女。

 咥えた飴が特徴的な男性と、白銀の髪に、恵まれたスタイルが特徴的なウマ娘。

 男性の方は双眼鏡を用いて。ウマ娘の方は身体能力のスペックによるゴリ押しで選抜を見ている。

 

「あの笑われてる子が沖野君の推しの子? 転入生なんだっけ」

 

「ああ、実にいい脚をしてい……え、笑われてるのか?」

 

「うん。日本一のウマ娘になりたいんだってさ。良い目標だと思うけど、有象無象には気に入らないんだろうね。……人の夢を笑う権利なんて、誰にも無いのにね」

 

「なんか意外だな。お前は、もっと冷めたタイプだと思ってたよ」

 

「んー? まあ昔の私ならその通りだけど、色々とあったからね。そんなことより始まるよ、レース」

 

 そいつはいけない、と双眼鏡を構え直す男。

 レースの結果だが、転入生は健闘したと言っていいだろう。他人の夢を嘲笑うような連中が、真剣に夢を追うウマ娘に敵うはずも無い。実に素晴らしい末脚をもってちぎっていった。

 ただ、勝ったのはエルコンドルパサー。レース慣れの差だとかなんだとか、理由は色々あるのだろうが、結果は結果だ。

 

「良かったね、沖野君。あの子リギルには入らなそうだよ」

 

「ウマ娘が負けるところを見て喜ぶほど落ちぶれちゃいないさ」

 

 でも自分のチームに入れたいんでしょ? と問われて言葉に詰まる男性と、そんな様子を見てニヤニヤと笑う銀色のウマ娘。

 

「……しょうがないだろ。ウチはメンバーも少ないし、あんないい脚してたら欲しくなるのはトレーナーの性だ」

 

「チーム作るのも大変だねえ。……ところで、いい脚ってまさかまたセクハラしたんじゃないよね?」

 

 目を逸らす男性の姿が言葉よりも雄弁に答えを物語っていた。

 

「……おハナさんとうちのトレーナーちゃん。言いつけられるならどっちがいい?」

 

「勘弁してください」

 

「沖野君はセクハラしないとウマ娘とコミュニケーションが取れないの? 私、今でも初対面の時の事は忘れてないからね?」

 

 

 

 世界最強のウマ娘として日本に帰ってきて。シンボリルドルフやミスターシービー、ダンシングブレーヴとG1を荒らしていた頃。

 

 トレーニングも終わってトレーナーと別れて、フォルティシームがさて今日のご飯はなんだろな〜と鼻歌交じりに食堂までの道を歩いていた時。

 不審者がその脚に触れてきた。反射的に蹴り飛ばそうとして、校内で殺人はマズイかと躊躇って。触ってくる手の感覚にそういうつもりでは無さそうだと直感して。取り敢えずしたいようにさせておくことにした。

 

 下手人の顔を見る。男。多分トレーナー。見覚えは無いがフォルティシームが顔を覚えているのは極ひと握りだからそれはあまりあてにならない……というか、今のところ男性で顔を覚えている相手は一人もいない。

 

 じゃあこいつは誰なんだと誰何しようとしたが、子供のように純粋な笑顔を浮かべて脚を触っては褒めちぎってくる姿を見ると、何だか邪魔するのに罪悪感もあって。

 結局そのまま十分程、世界最強の脚に夢中になる男性の姿と、困った顔で立ち尽くすレアなフォルティシームの姿があった。

 

 

 

「……うん、なんか今思い返してもロクな出会いじゃないね。一回ぐらい殴ってもいいと思うんだ私」

 

「おかげで仲良くなれたしいいじゃねえか」

 

「そのせいで私は沖野君には敬語を使う気が無くなったよ」

 

 本当になんであんな出会いから仲良くなったのか。フォルティシームはよく覚えていないが、まあ相性が良かったのだろう。

 人の悪意に敏感な、人に期待していないフォルティシームは。それ故に悪意の無い人というものにとても弱い。古くはフォルティシームがトレーナーちゃんと呼ぶ女性との出会い。そして最新は今話しているこの人との出会い。

 

 本人は自覚していないが。幼い頃からずっとマトモな人間関係を築いてこれなかったフォルティシームは、人との繋がりに飢えている。彼女に根深く残っていた人嫌いはトレーナーや先輩達、たった一人の友人のおかげで大分削ぎ落とされている。マスコミは除くが。

 

 結果どうなったか。端的に言えば愛嬌が良くなった……とはいえ、悪意を感じない相手に限るが。具体的には後輩に優しくなったり、担当トレーナー以外のトレーナーからも話しかけられれば答えるようになったり。今ならきっとバレンタインに後輩からチョコを貰えるだろう。因みに同期とは相変わらず仲が悪い。

 

「さて、それじゃあ転入生ちゃんとお話してきますか。……スピカ勧めといていい?」

 

「俺としては助かるが……いいのか?」

 

「いいのいいの。トレーナーちゃんとの間にこれ以上ウマ娘増やしたくないしね」

 

 ウマ娘と書いて、邪魔な女と読む。愛嬌が良くなっても気性難が消えた訳では無い。どちらも含めてフォルティシームである。

 ひらひらと手を振って男性と別れる。目指すは転入生のところ。傷心につけ込んで思い通りに動かす……というのは露悪的すぎる言い方か。まあレースに負けて落ち込んでいる迷える後輩を導いてあげようと、そういうことである。

 

 とぼとぼと歩いている転入生を見つけて声をかける。後輩と喋る時用のいつもの仮面を身につけて。

 

「やあ、転入生ちゃん。見てたよ、さっきのレース。惜しかったね」

 

「え……っと、ありがとうございます……? リギルの方、ですか?」

 

 その言葉にちょっとだけ驚いて、クスリと笑いを零す。少しムッとした転入生に言い訳をするフォルティシーム。

 

「ああごめん。私を知らない人に会うのは久しぶりでね。実は私、ちょっとだけ有名人なんだ。ちなみに、リギルでは無いよ。……本題に入ろうか。君に、チームを紹介したくてね。スピカって言うんだけど……おや、聞いたことある?」

 

「聞いた……というか、見た、というか……」

 

「ああ、あの看板か……センス悪いから変えなって言ったんだけど。アレを見ちゃったならしょうがない。──ゴールドシップ!」

 

 パチリと指を鳴らすと同時に現れる芦毛のウマ娘……と、二人のウマ娘。全員マスクとサングラスを付けた不審者スタイルである。

 

「だから最初からゴルシちゃんに任せとけって言っただろ? スカーレット! ウオッカ! ジェットストリームアタックをしかけるぞ!」

 

 転入生にずた袋を被せ三人がかりで担いで運んでいく。後から悠々とついて行くフォルティシーム。正直三人に任せた時点でもう仕事は無いのだけれど、単なる好奇心のようなものだ。何も無かった頃の彼女とは違い、今では楽しみを生活に見出そうとしている。

 

 部室に到着して、転入生が解放される。ついでに三人が付けていた無駄な変装用具も外される。

 

「チームスピカへようこそ!」

 

「ふぇ!?」

 

「お前にもチームスピカに入ってもらう」

 

「はい!?」

 

 そんな実に和やかな勧誘風景を見て、チームってやっぱ大変なんだなぁ……と嘆息するフォルティシーム。多分大半のチームはこんな事していない。

 

「日本一のウマ娘になるんだろ?」

 

「なんで知って……」

 

「なぁ、日本一のウマ娘ってなんだ?」

 

 G1に勝つこと。有マ記念に勝つこと。日本ダービーに勝つこと。……誰かに夢を見せられるウマ娘になること。

 

「お前はどう思う? フォルティシーム」

 

「私? うーん……私未だに有マ勝ってないしな……まあ、私達に……私に勝てばいいんじゃないかな?」

 

「フォル……!?」

 

 転入生が動揺していた。フォル? 名前がどうか……いや、さては

 

「もしかして名前だけは知ってたかな? 凱旋門賞で勝ったあのフォルティシームだよ。よろしくね」

 

「は……? え、あ、あの! 私スペシャルウィークって言います! よろしくお願いします!」

 

 そう。相も変わらずメディア嫌いなフォルティシームは、映像で流れるのはレース中の映像くらい。顔がはっきり分かるはずのブロマイドも入学時の使い回しという始末だ。パカプチはデフォルメされているのであまりあてにならない。後はファン感謝祭の時にファンが撮った写真くらいか。それもあまり共有されるものでもない。

 

 まあつまり。フォルティシームの名前は知っておれど、姿は知らないというファンも、数は少ないが存在してしまっているのである。

 

「まあそれより今は沖野君だ。ほら、ここらで一発名勧誘を見せてみなさい」

 

「振りが雑なんだよ……スペシャルウィーク。俺達と一緒に、日本一のウマ娘を目指さないか?」

 

 結局、転入生ことスペシャルウィークはこの誘いを了承する。夢を笑われなかったこと。憧れたサイレンススズカが居ること。その辺が理由だろうか。

 

 スピカのメンバーとトレーナーに挨拶をして──サイレンススズカに対してやけに熱が籠っていたのは気の所為ではないだろう──最後にフォルティシームに一緒のチームなんて光栄ですと言って。

 

「ん? ああ。私はスピカじゃないよ。……ごめんね?」

 

 困惑の絶叫が部室に広がった。




オリ主持ち上げすぎじゃない?
たたかないで…たたかないで…

男トレ×フォルティシーム

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