【悲報】起きたらウマ娘になってたんだが【助けて】   作:らっきー(16代目)

33 / 35
みんなフォルティシームってどんな見た目のイメージ?


リクエスト……?(お家デート)

 トレセン学園において、ウマ娘達は基本的に寮での生活を義務付けられている。とはいえそこまで堅苦しいものではなく、平日も日帰りならば外出出来るし、週末などは申請すれば外泊も出来る。

 一方、トレーナー。トレセン学園の敷地内にはトレーナー寮も用意されており、申請すれば格安で利用することが出来る。居住が義務付けられている訳では無いが、家賃の節約や通勤時間の短縮の為に利用しているトレーナーは多い。

 

 ちなみにウマ娘寮へのトレーナーの訪問、及びトレーナー寮へのウマ娘への訪問は禁じられている。過去に諸々の問題があったらしい。

 まあつまり、ウマ娘とトレーナーが交流しようとしたら門限までにグラウンドででもしろという事なのだが……抜け穴もある。

 

 実に単純な話で、学園の外で会ってしまえばいい。生徒のプライベートにまで干渉出来ない以上、外泊申請を出して一緒に遊べば夜遅くなろうと制度上は何の問題もない。とはいえウマ娘という目立つ存在が夜出歩いていれば嫌でも注目を集めるため中々それをする者はいないが。女子校というのは実に噂が広まりやすいものなのである。

 

 だが、その問題も解決する方法がある。街に出ると目立つのなら、街に出なければいいのだ。トレーナーの中には、寮に住まず外部に住んでいる者もいる。結婚していたり、寮での生活が性に合わなかったり、ただなんとなくの気分だったり。

 

 前置きが長くなったが、そう大したことではない。フォルティシームがトレーナーの家に遊びに行くといういつぞやの約束が果たされただけである。

 

 お邪魔します、と既に耳も尻尾もご機嫌に揺らしながらトレーナーの家に上がり込むフォルティシームと、長い付き合いの相手だからこそ自宅というプライベートな空間を見られるのが恥ずかしいトレーナー。

 

 色んな所に視線をやるフォルティシームを何とか抑制して二つある部屋の片方に押し込める。別に見られて恥ずかしい物は……きちんと隠されているが、それはそれとして家の中を見られるのは気恥しいものだ。

 

 台所に立って夕食の準備をするトレーナーを何をするでもなくぼんやりと眺めるフォルティシーム。トントンと包丁とまな板が奏でる音に、何故か懐かしい気持ちを覚える。別に誰かに手料理など作ってもらった覚えは人生で一度も無いのだけれど、不思議なものだ。

 ちなみにフォルティシームは料理などした事は無いし、包丁の握り方すら分からない。今回はめでたく戦力外通告を下され、こうして椅子の上で脚をブラブラとさせている。

 

 部屋の中でなんとなく人柄が分かりそうなものに目をやる……つまりは、部屋に置かれた本棚の中身を確認する。

 月刊トゥインクルをはじめとするレース雑誌。雰囲気に似合う少女漫画。何故か歯抜けで数冊ある少年漫画。

 適当に一冊取ってパラパラとめくる。少女漫画は中々読む機会も無かったが、なるほど意外と面白い。女性向けというともっとドロドロとした内容だとばかり思っていたけれど、少女が夢見るようなお綺麗な恋愛で、なんというか安心して読める。トレーナーの嗜好の問題だろうか。

 

 そんな事をしているうちに料理……というか鍋が運ばれてくる。食材を切って鍋の元と一緒に温めるお手軽料理。更に寒い日に食べれば美味しさ倍増。野菜も取れて栄養バランスも良いし酒にも合う。

 まあ手料理と言うには少々色気に欠けるかもしれないが、本人達が喜んでいるのだから良いのだろう。

 

 ウマ娘の例に漏れず健啖家なフォルティシームは食い気優先で、トレーナーは晩酌がてら日本酒をちびちびと飲みつつ、箸を進めていく。

 

「……なんか、意外。貴女とお酒というのはどうにもイメージが結びつかないけど」

 

「んー……まぁ、大人には色々とあるんだよ。お酒の力を借りないと見たくもない現実とかね」

 

 食事は進めつつ、お酒を嗜んでいるトレーナーにチラリと視線を向ける。まだフォルティシームでなかった頃には付き合いで飲酒をした事もあったけれど、どうにも自分から進んで飲もうとは思えなかった。楽しく酔えるぐらいにアルコールに弱ければ良かったのだろうけれど、無駄にアルコールに強かったせいで苦くて高い飲み物程度の印象しかない。それなら安くて美味しいジュースでも飲んでいた方がいいというのがフォルティシームの本音だ。

 

 だがまあそれはそれとして。好きな人と同じ物を飲みたいという気持ちもある。好きな人が使っているものを真似るような、子供っぽいそれ。

 

「ねえ、トレーナー。私にも一口──」

 

「ダーメ。二十歳過ぎたらね」

 

 そう言われてしまえば何も言えない。諦めて鍋のつゆを飲んでおく。具材の味が染み出してて結構美味しい。別にいいし。発酵したお米なんて飲みたくないし。

 

 食事を終えて、後片付け。この程度ならフォルティシームにも出来る。二人で流しに並んで食器を洗う。ご機嫌にパタパタと揺れる尻尾が時々トレーナーを掠めているが、尻尾の持ち主は気づいていない。

 好きな人と一緒にやれば面倒な家事も楽しくやれるくらいには単純なウマ娘である。

 

 洗い物が終わればやる事もひとまず無くなる。食事をした机に戻って、ジュースとお酒で乾杯をする。向かいではなく、敢えて隣り合わせに座る。交わされるのは大して中身のないダラダラとした会話。

 休みの日は何してるの? とか、最近話題の映画のこととか、数少ない友達の話とか。

 

 酒も進んで口が滑らかになってきたところで、フォルティシームがずっと気になっていた事を尋ねる。

 

「ところでトレーナー。貴女はここに誰と住んでいたんだい?」

 

「にゃ──何を、急に」

 

「二人分あった食器とか、家具の大きさとか、趣味じゃ無さそうな漫画とかさ。そもそも、一人暮らしならトレーナー寮に住まずに態々家を借りたりしないだろう?」

 

「……別に、一緒に住んでた訳じゃないよ? トレーナーになる前から一人暮らしの為に借りてて、よく遊びに来てた人が置いてっただけで──」

 

「彼氏? 彼女?」

 

 椅子から立ち上がって、座ったままのトレーナーの背後に回り、耳に息がかかるくらいに顔を近づける。そしてトレーナーの言葉を遮って確信に迫る。嫉妬心で少々かかっているのかもしれない。

 

「か、彼氏……ひゃう!」

 

 答えを聞くのと同時に首筋を甘噛みする。歯型が付く程度に強く。強い痛みが生じないように優しく。

 もう居ない相手に対して所有権を主張したって何の意味も無いのだけれど、胸に産まれたモヤモヤを解消する為にマーキングする。

 

「ふぅーん。まあ貴女は魅力的な女性だからね。それは交際ぐらいしていただろうけど。仲良かったのかい?」

 

「な、内緒! この話はやめ──ひゃ! ちょ、耳舐めないで……!」

 

「……隠さなきゃいけないような事をしていたのかい? それは……うん、嫉妬で狂いそうなのだけれど」

 

 言葉と共に、もう一度噛み付く。今度は先程よりも少しだけ強く。貴女は私のものだと主張するように。

 甘い痛みは痺れとなって、アルコールで鈍った彼女の頭を更にぼんやりとさせる。

 

「その……ね、向こうから押されて付き合ったんだけど。勉強とか忙しかったし、……そういう事するのも怖かったし。そんな付き合いだったから結局浮気されちゃって。あんまり良い思い出じゃないんだよね」

 

「ふぅん。……ごめんね、嫌な事思い出させて」

 

 そんな事を言いつつも、トレーナーに見えない尻尾は少し嬉しそうに揺れている。これでもしトレーナーがベタ惚れだったら、フォルティシームは嫉妬に狂って押し倒すぐらいの事はしていたかもしれない。

 好きな人の不幸を喜んでいる自分を嫌悪しながら、少しだけ顔を離すと自分が付けた歯型が視界に入る。嫉妬に任せて振舞った罪悪感と、マーキングを付けた事への暗い快感が湧き上がってきて、次にとるべき行動に悩む。

 

 お風呂が沸いた事を知らせる電子音が流れてこなかったら、果たして何をしていただろうか。

 

「あ、沸いたね。どうする? フォルティ先入る?」

 

「家主より先に入るのはちょっとね。どうぞ先に。……結構お酒飲んでいたけど、大丈夫かい?」

 

「あはは、そこまで弱くないよ。なんかあったら呼ぶね」

 

 浴室に向かう彼女を見送り、机に突っ伏す。どうにも弱くなっている気がすると、フォルティシームは自嘲する。

 誰かにこんなに夢中になる日が来るとは……というか、誰かに恋をする日が来るとは思ってもいなかった。つくづく一目惚れとは恐ろしいものだ。

 だからこそ。しっかり自分の気持ちに手綱を付けなければいけないというのに。独り善がりの愛ほど醜いものは無い。母のように自分の理想を押し付けるのも、先程聞いた元彼のように欲望を押し付けるのも駄目だ。

 

 愛したいし、愛されたい。この気持ちが同じなら良いのだけれど。

 ふとした時に不安に感じてしまうし、相手の想いを確かめるのが怖いと感じてしまう。本当に、弱くなったものだ。

 

 私は貴女のもので、貴女は私のもの。

 

 かつての言葉は本心で、今もその想いは変わらない。ただ、偶にどうにも泣きたくなるのだ。

 愛を知らないフォルティシームは、未だに心から愛を信用出来ないから。

 

「私がこんなに弱くなったのは。貴女のせいだよ、トレーナー……」

 

 言葉は誰にも届かずに、宙に消えた。

 

 

 

 交代で入ったお風呂から上がって、髪と尻尾をトレーナーに乾かしてもらう。あまり他人に預けたい部位では無いけれど、彼女は例外だ。髪を梳いてくれる手の感触が心地良い。

 しばらくされるがままになって、毛並みが整ったら今日はもう寝るだけだ。

 布団は二つ用意されたけれど、結局ひっついて二人で一つを使って寝る。

 

「トレーナーの匂いがする……幸せ……」

 

「なんか恥ずかしいんだけど……」

 

 眠気で惚けた頭とアルコールで惚けた頭で取り留めのない会話をする。明日は何をするかとか、近くにある店の話とか、人付き合いの話とか。お互いに大して思考せずに話しているから話題がころころと変わる。

 

「フォルティって結構寂しがりやだよね」

 

「そうかな……そうかもしれないね」

 

 移った話題は、ある意味ではフォルティシームの本質。親から引き継いだ、愛されなかった者から愛されなかった者への呪い。

 産まれた時に愛情を貰えなければ、一生愛に飢えて生きていくしかない。父の代替品としての愛も、家を出てからの偽物の愛も飢えを満たすには至らなかった。

 

「でも、貴女も寂しいのは嫌だろう? 少なくとも、押しに負けて人と付き合うくらいには」

 

「うん、まあ……そうだね」

 

「大丈夫だよトレーナー。私は貴女を離さないから」

 

 だから貴女も私を離さないで。

 

「死ぬまでひとりぼっちじゃなくなる約束をしよう」

 

 願わくば、この言葉が呪いとなりますように。




私のフォルティシームのイメージは、アークナイツのブレイズを幼く、銀髪に、馬耳馬尻尾にした感じです
何故こんな事を言うかというとファンアートが欲しいからです。誰か書いてくれ

追記

【挿絵表示】

マジで貰えました!!!みんなも君だけのフォルティを書こう!!!
エゴサしてるんでフォルティシームって入れてくれたら見つけ出します

男トレ×フォルティシーム

  • 焼き直し部分はカット
  • 被りも書く

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。